スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
上 下
56 / 224
第3章 大賢者の遺産

第24話 女性活用の真意①

しおりを挟む
なぜ女性優先にするのかきちんと説明する必要がある。

説明しようとしたらレベッカ夫人が先に話を始めた。

「あなた達は大前提が分かっていないみたいね。あの場所はエルマイスター家がずいぶん昔から大問題になっていた土地だったわ。それをアタルさんが調査して、問題の解決策を見つけてくれたのよ」

レベッカ夫人はそう言って2人を睨みつける。

「その見返りとしてあの土地はアタルさん個人の所有になったけど、彼の好意で施設を彼が建ててくれるのよ。それにあれこれ文句を言うのは筋違いじゃないかしら?」

これにはアランさんは申し訳なさそうな顔をする。

「しかし、」

サバルは発言をしかけて、慌てて手で口を塞いだ。

レベッカ夫人は溜息を付き、アランさんが何故か笑顔を見せた。

「すみません、少しだけお時間をもらえますか?」

そういいながらサバルの頭を掴んで引きずって行く。

「お許しください!」

引きずられながら、必死にアランさんに懇願するサバル。

「く、首を刎ねるのは、」

「大丈夫ですよ。少しだけ自覚できたのか口を塞いだので、もう少し自覚を促すだけですから」

そのまま部屋からサバルが引きずり出されるのを見送る。

レベッカ夫人はメイドを呼んでお茶の準備をさせる。

メイドがお茶の準備している間も、庭の方からは殴ったり蹴ったりする音が聞こえてくる。

この領なのかこの世界なのか、想像以上に暴力的な世界なのか!?

暫くするとアランさんが笑顔で戻ってくる。

あれはサバルなの?

引きずられて来たのは、顔が腫れ上がり血だらけになったサバルだろう。

その様子を見てもレベッカ夫人は動じる様子はないのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


何とか意識のあったサバルはアランさんの横で正座させられている。

「それでは話の続きをしましょうか?」

この状況でするのぉーーー!

「たしかアタルさんが、領の為になるはずだと言っていましたわよ」

そうだったかな? まあ、いいや。

「先に確認したいのですが、戦争とか対魔物の戦闘で男性が女性より極端に少ないですよね」

「「ええ(はい)」」

「残っている男性は戦闘が得意な人が多いですか? 得意な人ほど亡くなって数が少ないんじゃないですか?」

「そ、そんな事はありません。たしかに優秀な者が戦争で多く亡くなりましたが、残った者は強くなって戻ってまいりました」

それって、少数精鋭になっただけでは……。まあ、別に問題はないかぁ。

「残っている男性が少ないから、能力とか関係なく兵士にされていませんか?」

あからさまにアランさんは動揺しているみたいだ。心当たりはあるんだろう。

「た、確かにそういったことは有りますが、仕方ないのではないでしょうか!?」

まあ、確かにその通りではある。

「この世界、……人の能力や才能はステータスとか、スキルで左右されていますよね?」

「そうとも言えますが、鑑定スキルを持つものが少ないので、何となくでしか判断は出来ませんね。あっ!」

レベッカ夫人は話しながら、最後に気が付いたようである。アランさんはレベッカ夫人の反応に不思議そうにしている。

その事は後でまとめて話をしよう。

「この領では女性が多く、仕事をしていない人も多いですよね?」

「そうですが、女性は子を産み育てることが一番の仕事ではないですか」

アランさんは戸惑いながらも話してくれる。

「その考えを否定する気はありませんが、もう少し女性を活用することを考えてみたのです」

「女性に危険な魔物の相手や、戦地に行けというのですか!」

おっと、アランさんが熱くなり始めてる。

「そういう事ではありませんが、クレアさん達のように能力が高く、男性だけで足りない場合はそうなる事もあるのかもしれません」

「しかし……」

アランさんは納得できないようだし、レベッカ夫人も抵抗がありそうな感じだ。

「これほど女性が多く残っていて、男性というだけで兵士にさせられた者より能力や才能が高い女性も多くいるのではないですか?」

「………」

アランさんは不満そうだが反論できる答えは無いようだ。

「アタルさん、そうかもしれませんが、女性を危険な任務に押しやる事は、私も賛成できません!」

おお、アランさんが嬉しそうにレベッカ夫人を見ている。

「ええ、私も同じような考えです。ましてや戦地に行かせるなど許せません!」

「「「えっ!」」」

レベッカ夫人とアランさんだけでなく、サバルも驚いている。

「戦闘に向いた能力のある女性を鍛えるのは必要ですが、何も戦地や魔物相手の前線に出せと言っている訳ではありません。
門番や町中の巡回など、比較的危険が少ない任務なら何とかなるんじゃありませんか?」

レベッカ夫人は考え込んでいる。

「それでも危険ではありませんか!?」

アランさんはそれでもまだ納得できていないようだ。意地というよりは優しさなのかもしれない。

「危険かもしれませんが、その程度なら才能のある女性を鍛えれば問題ないのでは?」

「し、しかし……」

「危険が全く無くなることは有りませんが、う~ん、……例えば、男性兵士3人で町中を巡回していたのを、男性1人と女性3人で巡回させれば、鍛えた女性なら問題ないのでは」

「う~ん」

それでもアランさんは納得しきれないようだ。しかし、レベッカ夫人はこの例えで、一番重要な事を理解してくれたようだ。

「アタルさんは、その結果余った男性兵士を他に回せると考えたのね」

アランさんとサバルは、レベッカ夫人の話で驚いた顔をする。

「はい、そうなれば危険な任務に人が増やせることになり、結果的に男性兵士の負担や損失を防ぐことになるのではないかと考えました。
それは、男性兵士にも領にとっても損な話ではないと思います」

「なるほどねぇ」

レベッカ夫人は普通に納得してくれたようだし、アランさんとサバルさんも首をコクコクとさせている。

さらに追い打ちをかける。

「それに魔力や魔法は、男性より女性のほうが才能のある人が多いみたいですよ」

それを聞いて3人は固まってしまったが話を続ける。

「そんな女性たちに魔法で遠距離から支援してもらい、後方支援させれば全体としてさらに安全になるし、私のように土魔法が使えるようになれば、安全な拠点を簡単に作ることもできますよね。それに、町や村、道などもこれまでより安全、快適な環境が作れて領は間違いなく発展するんじゃないですかぁ」

調子に乗って持論を説明するが、固まった3人には伝わっているか分からなかった。

しおりを挟む

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

★☆ 書籍化したこちらもヨロシク! ☆★

★☆★☆★☆ 『転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。』 ☆★☆★☆★

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 



ツギクルバナー
感想 154

あなたにおすすめの小説

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...