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第3章 大賢者の遺産
第19話 ハロルドの怒り
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孤児院に向かいながらハロルド様の方を見てみると、随分大きな大剣を受け取っている姿が見えていた。
アランさんも冒険者ギルドにハロルド様と一緒に行くことになったようだった。他の騎士ではハロルド様の暴走を止められないと、他の騎士から必死に頼まれていた。
その暴走する可能性のあるハロルド様に、あんな大剣を渡して大丈夫なのか心配になる。
荒事の苦手な私としては、怪我人や死人が出ない事を祈りつつ、アランさんにポーションを追加で渡すくらいしか出来なかった。
まさか敵地と言える冒険者ギルドで、拷問の為にポーションは使わないだろう。
そんな風に考えていた自分の甘さを、後の報告で痛感するのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
ハロルドは3桁近い騎士を連れて冒険者ギルドに向かっていた。
冒険者ギルドのギルドマスターが半年以上前に代わってから、領からの依頼の報告が上がってこなくなり、ダメだと言ったダンジョン前の店舗も冒険者ギルドは勝手にやり始めていた。
何度も役人が冒険者ギルドに抗議に行っていたが、明確な回答もなく、そんなさなかに今回の事件が発生した。
まさかここまでエルマイスター家を軽視にしてくるとは思っていなかったハロルドは、他の誰も想像していないほど腹を立てていた。
戦争の時にやり過ぎたことで、自領に戻っても領民からも恐れられるようになってしまったので、領内では出来るだけそう言った部分を見せないようにしてきたのだが、結果的に領民だけではなく、ギルドや教会、他の貴族から舐められるようになっていた。
そんな自分に苛立ちを覚えながらも、必死に自重していたのだが、そろそろ我慢の限界に来ていた時に、まるっきり自重しないアタルに出会ってしまった。
自重しないアタルに苛立ち事が多かったが、同時に羨ましく思っていた。
そんな矢先に騎士の増長と冒険者の犯罪である。
騎士の増長などは定期的に見せしめを作ることで何とかなっていたが、このところ各ギルドや他の貴族からも軽視されていると思っていた。
その結果、領の弱者が犠牲になってしまったのだ。
元々儂に自重など無理な話だ!
アタルと出会って、クレイジーオーガと恐れられた本来のハロルドの本性が目覚め始めていた。
◇ ◇ ◇ ◇
ハロルドは冒険者ギルドに到着すると、騎士達に指示する。
「建物を包囲して、無断で建物から出ようとしたら捕縛せよ。抵抗するものは切り殺しても構わん!」
予想以上に本気で冒険者ギルドとやり合おうとするハロルドに、騎士達に緊張が走る。
本来のハロルドの事を知っている騎士団長のアランは、冷静に配置の指示をだす。
「良いかぁ、これ以上エルマイスター辺境伯家が舐められないように徹底的にやるぞ!」
ハロルドはそう宣言すると先頭に立って冒険者ギルドに入って行く。その後ろからは騎士団長のアランと、見た目でもわかる騎士団の精鋭が続いて入ってくのだった。
冒険者ギルドに入ると、ハロルドは受付の職員に声を掛ける。
「領主のハロルドじゃ。大至急ギルドマスターを呼んできてくれ!」
ハロルドが受付に話をしている間に、アランはギルドの出入り口の封鎖や、酒場に居る冒険者をけん制するために騎士を配置していく。
その様子を見た受付のギルド職員は顔色を変えて、ギルドマスターを呼びに走って行った。
「ハロルド様、この物々しい状況はどういったことでしょうか?」
年配の男性のギルド職員がハロルドに訊いてくる。
「それはギルドマスターと話す。んっ、お主は会った事があるのぅ」
ハロルドの質問にそのギルド職員は冷静に答える
「前はサブマスターをさせてもらっていました。その時に何度かお会いしたことがあります」
ハロルドはその返答を聞くと、思い出したように話をする。
「そうじゃ、前はお主が報告に良く来ておったのぅ。お主がサブマスターをしていた頃は、冒険者ギルドもきちんと報告してくれていたが、最近は何度催促しても報告書すら届かなくなっておるのじゃ」
「そ、それは……」
そのギルド職員は苦虫を噛み潰したような顔をして、言い淀んでしまった。
彼は何度もギルドマスターやサブマスターに忠告していた。ハロルド様を怒らせては不味いと……。
それでもこの物々しさは尋常でないとそのギルド職員は感じていた。
「確かお主は、……ランベルトと言ったな、お主が居ながら孤児院の子供たちを食い物にするようなことを、なぜ放置しているのじゃ!?」
「………」
ランベルトは答えようがなかった。彼もその事には不満を感じて、ギルドマスターに止めるように話したが、それすらも強硬に命令するギルドマスターの指示に従うしかなかった。
ランベルトが俯いて答えられなくなっていると、酒場に居た冒険者が割って入って来た。
この時間は、ほとんどの冒険者がお金を稼ぐために出払っているのだが、ギルドマスターが王都から連れてきたガラの悪い冒険者たちは、ギルドマスターからの依頼が無いと酒場でこんな時間でも平気で酒を飲んでいるのであった。
その一人が会話に割って入って来たのである。
「おいおい、冒険者ギルドは国とは関係ない組織だぞ。領主だからと言って騎士を連れて来て脅迫でもするつもりか。そんな事をすれば大問題になるぞ!」
その冒険者は酔っぱらっていることもあり、ハロルドの噂を少しは聞いたことがあったが、見た目が体格は良いだけの老人としか感じていなかった。
それに冒険者ギルドと揉めようとする騎士や兵士が居るはずがないと思っていた。
実際に王都でも冒険者ギルドが間に入って、冒険者を守ることも過去にはあったからだ。
それが地方貴族の横暴が原因で、冒険者に非がなかったので守れたに過ぎなかったのだが、その事で冒険者ギルドの立場が上だと彼は勘違いしていた。
彼は文句を言いながらハロルドに近づこうとした。
「動くな!」
アランが止まるように言い、剣に手を掛けるとその冒険者は激怒して、更に文句を言いながら剣を抜いてしまった。
「ふざけんじゃねぇ! 冒険者ギルドと喧嘩する気なら、俺が相手になって、」
ズシャッ! ゴトン。
彼が全部言い終わる前に、剣を抜いた瞬間にアランに首を刎ねられてしまった。
ランベルトも冒険者が剣を抜いたのを見て止めようとしたが、その前に首を刎ねられてしまったのだ。
その光景にフロアは静かになり、剣を抜いた男の首が転がり、遅れて体が倒れていった。
彼の仲間たちも笑いながら彼が文句を言うのを見ていたが、彼が剣を抜いた瞬間に殺されて、すぐには反応できなかった。
それでも酔っていた彼らは仲間が殺されたことを理解すると、武器を持って立ち上がろうとしたが、立ち上がる前にアランと他の騎士達に囲まれて、立ち上がるのを止めて椅子に座り直すしかなかった。
そんな状況の中にギルドマスターのアラゴとサブマスターのエウスコが姿を現したのだった。
アランさんも冒険者ギルドにハロルド様と一緒に行くことになったようだった。他の騎士ではハロルド様の暴走を止められないと、他の騎士から必死に頼まれていた。
その暴走する可能性のあるハロルド様に、あんな大剣を渡して大丈夫なのか心配になる。
荒事の苦手な私としては、怪我人や死人が出ない事を祈りつつ、アランさんにポーションを追加で渡すくらいしか出来なかった。
まさか敵地と言える冒険者ギルドで、拷問の為にポーションは使わないだろう。
そんな風に考えていた自分の甘さを、後の報告で痛感するのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
ハロルドは3桁近い騎士を連れて冒険者ギルドに向かっていた。
冒険者ギルドのギルドマスターが半年以上前に代わってから、領からの依頼の報告が上がってこなくなり、ダメだと言ったダンジョン前の店舗も冒険者ギルドは勝手にやり始めていた。
何度も役人が冒険者ギルドに抗議に行っていたが、明確な回答もなく、そんなさなかに今回の事件が発生した。
まさかここまでエルマイスター家を軽視にしてくるとは思っていなかったハロルドは、他の誰も想像していないほど腹を立てていた。
戦争の時にやり過ぎたことで、自領に戻っても領民からも恐れられるようになってしまったので、領内では出来るだけそう言った部分を見せないようにしてきたのだが、結果的に領民だけではなく、ギルドや教会、他の貴族から舐められるようになっていた。
そんな自分に苛立ちを覚えながらも、必死に自重していたのだが、そろそろ我慢の限界に来ていた時に、まるっきり自重しないアタルに出会ってしまった。
自重しないアタルに苛立ち事が多かったが、同時に羨ましく思っていた。
そんな矢先に騎士の増長と冒険者の犯罪である。
騎士の増長などは定期的に見せしめを作ることで何とかなっていたが、このところ各ギルドや他の貴族からも軽視されていると思っていた。
その結果、領の弱者が犠牲になってしまったのだ。
元々儂に自重など無理な話だ!
アタルと出会って、クレイジーオーガと恐れられた本来のハロルドの本性が目覚め始めていた。
◇ ◇ ◇ ◇
ハロルドは冒険者ギルドに到着すると、騎士達に指示する。
「建物を包囲して、無断で建物から出ようとしたら捕縛せよ。抵抗するものは切り殺しても構わん!」
予想以上に本気で冒険者ギルドとやり合おうとするハロルドに、騎士達に緊張が走る。
本来のハロルドの事を知っている騎士団長のアランは、冷静に配置の指示をだす。
「良いかぁ、これ以上エルマイスター辺境伯家が舐められないように徹底的にやるぞ!」
ハロルドはそう宣言すると先頭に立って冒険者ギルドに入って行く。その後ろからは騎士団長のアランと、見た目でもわかる騎士団の精鋭が続いて入ってくのだった。
冒険者ギルドに入ると、ハロルドは受付の職員に声を掛ける。
「領主のハロルドじゃ。大至急ギルドマスターを呼んできてくれ!」
ハロルドが受付に話をしている間に、アランはギルドの出入り口の封鎖や、酒場に居る冒険者をけん制するために騎士を配置していく。
その様子を見た受付のギルド職員は顔色を変えて、ギルドマスターを呼びに走って行った。
「ハロルド様、この物々しい状況はどういったことでしょうか?」
年配の男性のギルド職員がハロルドに訊いてくる。
「それはギルドマスターと話す。んっ、お主は会った事があるのぅ」
ハロルドの質問にそのギルド職員は冷静に答える
「前はサブマスターをさせてもらっていました。その時に何度かお会いしたことがあります」
ハロルドはその返答を聞くと、思い出したように話をする。
「そうじゃ、前はお主が報告に良く来ておったのぅ。お主がサブマスターをしていた頃は、冒険者ギルドもきちんと報告してくれていたが、最近は何度催促しても報告書すら届かなくなっておるのじゃ」
「そ、それは……」
そのギルド職員は苦虫を噛み潰したような顔をして、言い淀んでしまった。
彼は何度もギルドマスターやサブマスターに忠告していた。ハロルド様を怒らせては不味いと……。
それでもこの物々しさは尋常でないとそのギルド職員は感じていた。
「確かお主は、……ランベルトと言ったな、お主が居ながら孤児院の子供たちを食い物にするようなことを、なぜ放置しているのじゃ!?」
「………」
ランベルトは答えようがなかった。彼もその事には不満を感じて、ギルドマスターに止めるように話したが、それすらも強硬に命令するギルドマスターの指示に従うしかなかった。
ランベルトが俯いて答えられなくなっていると、酒場に居た冒険者が割って入って来た。
この時間は、ほとんどの冒険者がお金を稼ぐために出払っているのだが、ギルドマスターが王都から連れてきたガラの悪い冒険者たちは、ギルドマスターからの依頼が無いと酒場でこんな時間でも平気で酒を飲んでいるのであった。
その一人が会話に割って入って来たのである。
「おいおい、冒険者ギルドは国とは関係ない組織だぞ。領主だからと言って騎士を連れて来て脅迫でもするつもりか。そんな事をすれば大問題になるぞ!」
その冒険者は酔っぱらっていることもあり、ハロルドの噂を少しは聞いたことがあったが、見た目が体格は良いだけの老人としか感じていなかった。
それに冒険者ギルドと揉めようとする騎士や兵士が居るはずがないと思っていた。
実際に王都でも冒険者ギルドが間に入って、冒険者を守ることも過去にはあったからだ。
それが地方貴族の横暴が原因で、冒険者に非がなかったので守れたに過ぎなかったのだが、その事で冒険者ギルドの立場が上だと彼は勘違いしていた。
彼は文句を言いながらハロルドに近づこうとした。
「動くな!」
アランが止まるように言い、剣に手を掛けるとその冒険者は激怒して、更に文句を言いながら剣を抜いてしまった。
「ふざけんじゃねぇ! 冒険者ギルドと喧嘩する気なら、俺が相手になって、」
ズシャッ! ゴトン。
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ランベルトも冒険者が剣を抜いたのを見て止めようとしたが、その前に首を刎ねられてしまったのだ。
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彼の仲間たちも笑いながら彼が文句を言うのを見ていたが、彼が剣を抜いた瞬間に殺されて、すぐには反応できなかった。
それでも酔っていた彼らは仲間が殺されたことを理解すると、武器を持って立ち上がろうとしたが、立ち上がる前にアランと他の騎士達に囲まれて、立ち上がるのを止めて椅子に座り直すしかなかった。
そんな状況の中にギルドマスターのアラゴとサブマスターのエウスコが姿を現したのだった。
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