スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第3章 大賢者の遺産

第3話 大賢者の屋敷

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レベッカ夫人の指示に従って、クレアさんの治療と言うか浸食した魔力を散らしただけというか、その結果が皆さんに睨まれるのは納得できないが……。

どんな言い訳をしても納得してもらえない気がするので、本来の目的に戻ろうと考える。

「クレアさんの体調も戻ったことですので、私は調査を継続します」

「それでは私も、」

クレアさん無理ですから!

「いえ、我々も護衛です。クレア隊長は待機していてください」

「ミュウもいくのぉ~」

「私は問題なく行動ができるのが確認できました。他の人は無理だと思います。一緒に行けばクレアさんと同じように倒れて、同じような治療をすることになりますが、そうしますか?」

クレアさんと護衛のメンバーは驚くほど速く、出口付近に移動する。一緒に来られては面倒だし、彼女らの気持ちも分かる。

それよりも、そこぉーーー!

シャルとアリスお嬢さんがミュウを抱きかかえ後ろに下がり、レベッカ夫人がまるで彼女たちを守るように両手を広げて、真剣な顔で私を睨んでくる。

「犠牲になるなら私が……」

何の犠牲だぁーーー!

クレアさんを犠牲にしたのはレベッカ夫人ではないかぁ!

「私は最初から一人で行くと言っていたし、クレアさんを治療したのもレベッカさんの指示ですよね?」

「そ、そうだったかしら」

レベッカ夫人に尋ねると、彼女は動揺する。周りの皆もそう言えばそうだと頷いている。

「はぁ~、頼むから一人で調査させて下さい。正直なところついてこられると迷惑なんです!」

少し強めにそう話すと奥に向かって歩いて行く。さすがにもう何も言ってこなかったのでホッとする。


クレアさんが倒れたときに来ていた辺りまでは普通に歩いてきたが、それから先は慎重に進んで行く。何度か魔力感知のスキルを使ったが、目の前が真っ赤になり何も見えなくなるので魔力感知を使うのは止める。

奥に進むほどに体に何かが絡みつく感覚が強くなるが、特に体調に問題がないというより、体がますます軽く感じて体調が良くなるようだ。

最奥にある大きな屋敷の門扉まで到着する。

これが大賢者の屋敷かぁ。

敷地の広さはエルマイスター家の屋敷より随分広い、奥に僅かに見える建物は敷地の広さから考えると小さい気もするが、それでも大きい。
横には納屋と言うか、馬車でも入れる大きな扉のある小屋が立っていて、屋敷を挟んでもう一つ建物が立っている。

庭は植物が生え放題で、見たことのない植物もたくさん生えている。

門扉に触れると結界に覆われていて触れない。レベッカ夫人に入る時に使うように紋章のような結界の鍵を預かっている。

鍵を触れさせる場所があり、そこには魔法陣が書かれているが、これが鍵の認証の魔法陣だとすぐに理解できたけど、その魔法陣があまりにも稚拙で、セキュリティーと言えるような構造に見えなかった。

これって鍵がなくても、簡単に解除できるんだけど……。

それに結界の魔法陣そのものも、効率も効果も低いと思う。

もっと効率的な魔法陣にかきかえるかなぁ?

『やめるのじゃ』

突然音が頭の中に響き、神託が届いた。

『魔法陣を効率化すると、魔力が更に溢れてしまうのじゃ』

神託《い》われてなるほどと感心したが、何かが引っ掛かる。

んんっ、やっぱり心を読んでるなぁ!

『そんなことないのじゃ。あっ!』

相変わらず馬鹿としか言いようがない。

『馬鹿とはなんじゃ!』

『神々《みなさん》には確認したいことが沢山あります。今は人も待っていますので、改めて話をしたいと思います』

『………』

返答は帰って来ないが、合意してくれたと判断しよう。

今は大賢者の屋敷の調査を優先しよう。


結界の鍵を預かっているのでそれを使って結界の中に入る。中に入るとこれまで以上に魔力が体に纏わり付く。まるで魔力と言う水の中を歩いている感じだ。

屋敷の玄関に鍵である紋章を嵌め込む場所があり、そこに鍵を嵌めると屋敷全体の制限がなくなったことが分かる。

玄関扉は問題なく開き、中に入ると新築された家の中のようにピカピカの玄関ホールになっていた。そして何となく違和感がある。

ん~と、なんだろうな……、あぁ、玄関ホールが広すぎるんだ!?

外から見た屋敷の大きさと、玄関ホールの大きさがどう考えても不自然である。
吹き抜けになっているので天井が高いのは理解できるが、外からは普通に2階建ての高さの屋敷に見えたのに、吹き抜けは3階くらい高さがある。
正面に見える階段も、外から見た2階の高さではなく、まるで3階に続くぐらいの高さがある。
ホールの横幅も、建物の半分以上を占める広さがある。

取り敢えず1階の中を調べていく。
広いリビングとそれよりは狭いが十分な広さのリビングがもう一つあり、その奥には20人ぐらいは座れそうなダイニングや、沢山の魔道具の設置されたキッチン。
別の廊下を進むと広い図書室は3階構造になっており、1階から3階までの本棚が吹き抜けになっていて見える。少し本を抜いて見てみるが、風化などによる劣化はない。

様々な工房も設置されていた。

屋敷内には空間拡張や時間停止、自動洗浄の魔法陣がそこら中に施されているのが理解できた。

魔法陣は思ったより稚拙だな。もっと効率が良かったら、この街は魔力で溢れかえっていた?

更に1階の奥には大きな風呂場が設置されていたが、魔道具が起動していないのでお湯は張られていないけど、非常に広く奥の庭が一望できるようになっていた。

2階には執務室などもあったが、ほとんど住空間になっているようだ。

1階に降りて廊下の突き当りの扉を開いて、中を覗くと馬車に石の馬が付いたままになっていた。
近づいてよく見ると、馬車も特殊な効果が付与されて、馬車の中は大きな部屋と思えるほどの広さがあり、物理攻撃や魔法攻撃の防御効果もあるが、効率が悪くて相当に魔力を待つもの以外は運用できそうにない。

石の馬はゴーレムのようで、魔力を流すと主人登録されてしまった。

まあ、やってしまったのは仕方ない。

細かいことを気にしても仕方がないと思い、屋敷に戻って廊下を進んで反対側の扉を開いて中に入る。そこは予想通り屋敷の横のもう一つの建物のようだ。

中には屋敷ほどではないがキッチンもあり、ダイニングやリビングは無いが食堂のような広い空間にたくさんのテーブルと椅子が並んでいた。
建物の1階は会議室のような部屋や事務室もあり、奥には4人部屋のような部屋がいくつもあった。

2階は居住空間だけで、2人部屋や家族部屋のような部屋まであった。

ここは屋敷で働く人の従業員部屋なのかな?

もう一度屋敷に戻ると玄関ホールに戻る。

玄関ホールにある階段の下に行くと、壁に手を添える。認証用の魔法陣にハッキングして強引に認証させると、岩の壁が左右に開いて下に続く階段が現れる。

階段を下りて行くと左右にたくさんの扉のある廊下に出る。

扉の中に順番に確認していくと、中は隣の扉の間隔とは関係のない広さをしており、やはり空間拡張されていて、倉庫のようにたくさんの棚があり、それぞれの棚に時間停止や自動修復などの魔法陣が設置されていた。

そんな部屋が10部屋以上あり、魔物素材から、金属素材、魔道具屋や食材まで驚くほど大量の物資があることがわかった。

地球の私の資産を奪ったとしたら、確かにこれぐらい貰っても不思議ではないが…。

これって、誰に所有権があるんだ?

絶対に神々に所有権があったとは思えない。

最後に廊下の突き当りの扉を開くと、真っ暗な廊下が続いている。地図スキルで確認すると、廊下は屋敷の外に続いていて、道の下を通って内壁の手前まで行くと、内門の方に伸びていた。

秘密の通路?

通路の詳細は後日に確認することにして、1階に戻ると昼頃になっていたので、長時間レベッカ夫人やクレアさんを放置すると危険だと思い、一度彼女らの元に戻ることにする。
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