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第2章 エルマイスター領
第9話 領都観光
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ハロルド様とそのまま徒歩で兵舎に向かう。
昨日見た砦にあるようで、隣の建物になるのだが敷地や建物も大きいので思ったより距離があるようだ。
砦の門を潜るとすぐに左へ行き、騎士が沢山行き来する大きな扉に入って行く。
中に入り扉のない少し大きな倉庫のような部屋に入っていくと、そこにはヨアヒムさんやクレアさんを含め昨日一緒に行動していた人達がいた。他にも初めて見る人もいる。
「みんな揃っておる様じゃな」
ハロルド様がそう言うと全ての者が右手を胸に当て敬礼をする。
ハロルド様に促されて部屋の中央にあるテーブルに遺体を出す。すると初めて見る少し貫禄のある騎士が指示をする。
「午後にはケルビンの家族が対面しに来る。綺麗にしてやってくれ」
「「「おう!」」」
皆は力強く返事をするとすぐに作業を始めた。
ハロルド様は先程の騎士とクレアさんを呼んで、アタルと一緒に別室に移動する。
部屋の中には、奥に執務机があり木製の棚やロッカーのようなものがあり、簡単な椅子とテーブルのセットもある。
「アラン、報告は聞いておると思うが、この者が昨日助けてくれたアタルじゃ」
「私は騎士団長のアランです。閣下と配下の者を助けて頂きありがとうございます。また部下の遺体まで運んで頂き感謝に堪えません」
見た目は四十代ぐらいの筋肉質で隙のない雰囲気の男性で、髪型は短髪で見た目からして剣が得意そうな感じだ。
「私はアタルと申します。お役に立ったのであれば良かったです」
自己紹介を終えると、ハロルド様が話を始める。
「それからこれから話すことは絶対の秘密じゃ」
「「はい!」」
「クレアは知っておるが、ポーションはアタルが作ったものじゃ。しかしそのことは絶対に秘密にせよ!」
アランはその話を聞いて驚いた顔をする。
「そのことを知っておるのは、儂とアリスとクレアだけなので問題はないはずじゃ。提供してもらったポーションはアタルが旅の途中で手に入れた事としておく。良いか!」
「「はい!」」
ヨロシクお願いしまーす!
「あと収納については馬車半分ぐらい入る事にする。それ以上入る事は同行した他の者も気付いているだろう。口外せぬように釘を刺しておいたがアランはその事を改めて確認し、周知せよ!」
「了解しました」
本当にすみません……。
「それとクレア、アタルに教えてもらった灯《ライト》じゃが皆に広めて構わん。但しアリスが考案したことにせよ。子供の発想でたまたま発見したことにして、アタルが目立たないようにする。昨日同行した者にもそう伝えよ」
「了解しました」
クレアはすぐに返事をしたが、アランは解ってないような顔をする。
当然何の話か分からないよねぇ。
「クレア、アランに見せてやれ」
クレアさんが灯《ライト》を使うとアランさんは驚いた顔をする。
「どうじゃアラン。これは明るいだけではないぞ。魔力効率が非常に良い。同じ魔力で2、3倍は明るい」
まさかと言う顔でアランさんはハロルド様に問いかける。
「この明るさで? これは騎士団としても助かりますが、普段の生活でも非常に役立つと思いますよ」
「そうじゃ、だから遠慮なく広めよ。街中でも広めて構わん。
ただし先ほど言ったようにアリスが考案したことにせよ。たぶん少し広めれば自然と広まるじゃろう」
アランさんとクレアさんのふたりは頷いた。
「アタルはこの後どうする? まだ時間も早い屋敷に戻って休むか?」
「出来ましたら街中を見てみたいです」
やはり、じっくり異世界観光をしてみたいでしょ!
「そうか、───クレアは隊から口の堅いものを2名護衛としてアタルに付けろ。その者たちにはアタルの監視も必要じゃ。
こやつは常識がないところがある。とんでもないスキルや知識を無警戒に使う可能性がある。そうならないように護衛と監視をせよ」
そんなぁ、監視って言うのはあまりにも……。
「だ、大丈夫ですよぉ、町中なら危険も無いし、少し見て回りながら買い物をするだけだから、一人でも大丈夫ですよぉ~」
「本当か? 街中で襲われてウルフを倒した魔法で人を殺すんじゃないぞ!」
「た、たぶん、そんな事はしないと思います。そ、それより、町中で襲われる!?」
えっ、えっ、そんな危険なの!?
話しとしては、街中でも人に襲われることがあるという事だろうか?
3人から疑いの目を向けられて居心地が非常に悪い。でも、そんなに危険なら行くのを止めようかと考える。
「でしたら私ともう一名で護衛します。私はある程度事情も知っておりますので適任かと」
一緒に行ってくれるなら安心だぁ。
1人で大丈夫だと言っていたのを、すぐに忘れていた。
「体調は大丈夫か? クレアが行ってくれるのは助かるが?」
「自分でも驚くほど体調が良いです。早速準備してきます。」
そう話すと、クレアさんは部屋を出て行く。
そう言えば、昨日クレアさんが死にそうになったことを思い出し、護衛をして貰うのは申し訳ないと思うが、断るような事はしなかった。
すぐにクレアさんがもう1名を伴って戻って来たので出かけることにする。
出口に向かっていると、先程遺体を置いた部屋の前を通ると、部屋から今朝のメイドさんが出て来た。顔色が悪く辛そうな表情をしている。
不思議な事にクレアさん達は、特に声を掛ける事もなく通り過ぎる。私も後ろから付いて歩いていたが、メイドさんと目が合ってしまう。
メイドさんは少し驚いた顔で私を見た後、丁寧なお辞儀をしてくれた。
兵舎の外まで来ると、クレアさんが彼女の事を説明してくれた。
「今回亡くなったケルビンは彼女の弟です」
私はそんな悲しい思いをしている彼女に、寝ぼけていたとはいえ、とんでもなく失礼な事をしてしまった。
今朝の事を思い返して、落ち込んでしまうアタルだった。
アタル達は徒歩で昨日とは逆に道を辿りながら進んでいく。
「アタル様、本日一緒に護衛に就くことになりました7番隊の副隊長のカルアです」
クレアさんは、同行した護衛を歩きながら紹介してくれる。
「そうですか、アタルと言います。お手数をお掛けしますがよろしくお願いします」
「7番隊で副隊長をしておりますカルアです。こちらこそよろしくお願いします」
カルアさんは胸に右手を持って来て挨拶をしてくれた。
クレアさんより一回り大きく176cmのアタルとほぼ同じ身長で髪は濃いブラウンといった感じだった。顔つきは整っているが綺麗というより精悍な顔つきという表現が合いそうである。
「女性で副隊長とは凄い方なのですね」
「あのぅ、7番隊は女性だけの隊なので凄いわけではありません。それに隊長はクレア隊長なので凄いのは隊長になります」
「えっ、クレアさんが隊長なのですか? 全然知りませんでした」
驚いてクレアさんを見る。
「全然凄くはありません。昨日もアタル様に助けて貰えなければ死んでいましたし、まだまだ未熟です。それより何処に行かれますか?」
そんな事は無いと思う。それよりどこを見ようかなぁ?
「買い物が気軽にできる所はありますか?」
「もちろんあります。ではそちらに案内します」
クレアさんが先導して前を歩き始めた。
相変わらず綺麗な女性だと思う。今日は昨日とは違い防具など付けていないシンプルな服装をしている。二人とも同じデザインなので隊の制服なのだろう。
ピッタリとした服装のため昨日とは違いスタイルがハッキリと分かる。
カルアさんは肩幅も広く筋肉質で腕もアタルより太いかもしれない。クレアさんは女性らしい体形で剣をもって戦うようには全く見えない。胸当てがないのに昨日より胸が大きく見えるのを不思議に思う。
現在の所持金は金貨150枚分になる。昨日ハロルド様に貰った金貨50枚と、金貨90枚、銀貨90枚、銅貨100枚の合計で金貨100枚分が神様から貰った分になる。
どの通貨も1円玉ぐらいの大きさで、思っていたよりかさばらない。
【通貨】
銅貨 … 1枚=100円の価値
銀貨 … 1枚=1000円の価値
金貨 … 1枚=10000円の価値
白金貨 … 1枚=100000円の価値
基本的にどの国も同じ通貨らしい。
内門を抜け何度か道を曲がると市場だと分かる通りに入って行く。
市場は元々広い通りの両脇に露店が並んでいる感じだ。店の種類も多く食材を売る店や屋台などもあるし、服や小物を扱う店まである。
驚いたことに買い物客も露店の売り子も女性ばかりだ。子供も女の子ばかりだ。不思議に思いクレアさん達に聞いてみる。
「買い物客や売り子が女性なのは分かりますが、連れている子供も女の子ばかりなのは何故ですか?」
「我が領では男性が少ないので、悲しいことですが人攫いの被害の大半が小さな男の子なので、あまり連れ歩かないのです」
「そうですか、私も気を付けないとダメですねぇ」
冗談のつもりで話したのだが真面目な顔で、
「自分たちがお守りしますのでご安心ください」
と言われ逆に不安になる。再び色々な露店を見て回る。
美味しそうなキウイフルーツがあったので、買おうとして自分が買った物を入れる物がないことに気付き、先程服を売っている露店で肩から掛けられる袋を売っていたのを思い出して少し戻る。
「すみません。これはいくらですか?」
目的の袋を手に取り売り子に聞く。
「それは銀貨5、2枚だよ」
最初はたぶん銀貨5枚と言おうとして護衛のふたりを見て2枚にした感じかな?
それよりも売り子の女性はたぶん狐系の獣人なのだろう。頭の上にピンと立ったケモミミが護衛を見た瞬間からピクピクと動いている。思わずケモミミを凝視してしまう。
銀貨2枚をストレージから手の中に出し支払いをする。その時今度は尻尾に気付いてまた凝視してしまう。
何とか異世界初の買い物を済ませて歩き始めると、クレアさんに注意される。
「アタル様、あのように獣人の耳や尻尾を見るのはお止め下さい。特に尻尾を見るのはダメです。人間で言えばお尻を見ている事になります」
「す、すみません。獣人を見たのはこの街が初めてだったので」
「もし近くに恋人や旦那がいたら喧嘩沙汰になることもあります!」
「ち、注意します」
クレアさんは怒っているようだ。確かに良くなかったとは思いますが、クレアさん厳しすぎませんか?
クレアさんは不機嫌そうな顔をしているが、どうしようもないので先程の果物の露店へ急いで向かう。そこでは気になる果物を次々と購入し袋に入れる。
それからも色々な露店で購入しては袋に入れる。移動の時に袋の中の物を収納する。実際購入したのはたぶん5袋を超えていたと思う。カルアさんも少し驚きクレアさんは溜息をついていた。
小物を売る露店では綺麗な小箱が売っていたので3個ほど購入した。
「もうすぐお昼ですがふたりは普段どうしていますか?」
「殆どは兵舎の食堂で済ませます。外回りの場合はどこかで食べることもあります」
「そうですか。ではどこか良い所を教えてもらいますか? ふたりの分も私が払いますので」
「それでは案内させて頂きます。ただ支払は自分達でしますので大丈夫です」
「え~と、私の以前いた所では、こういった場合は男性が払うのが普通でしたのでお願いします」
「わ、分かりました。今回は御馳走して頂きます」
クレアさんの案内で食事をしに行くが、相変わらず味の薄い食事で言うことはない。支払は1人銅貨6枚、全部で18枚だけである。
食事をしながらなぜ男が少ないのか聞いてみると、10年ほど前に他国と戦争があり、男は兵士として戦場に行き沢山亡くなってしまったそうだ。
普段から魔物討伐などは男の兵士が中心で、やはりそれで亡くなってしまうことも多く、冒険者なども男が多いので、どうしても男性が少なくなってしまうらしい。
昔は貴族や王族ぐらいしか一夫多妻はなかったが、今では平民でも一夫多妻が当然となっているようだ。
昼食後は冒険者ギルドや商業ギルドを外から見てみた。両方とも他の建物とは比較にならないほど大きく。両方ともこの街では珍しい3階建で幅も奥行きも他の3、4倍もあり、大きな広場に向かい合って建っていた。
冒険者ギルドや商業ギルドは、大昔に召喚された大賢者や剣聖が組織を創ったそうだ。どちらも国とは関係ない組織で、本部はそれぞれ独立した街があるそうだ。
広場は非常に栄えており、色々な商店が他にも沢山あり、幾つかの店にも入ってみた。
生地や金属素材などを購入したが、比較的高額だった為に少量しか購入できなかった。
帰りに教会の前を通り過ぎたが、出入りする教会関係者は成金のような装飾品をつけており、あまり良い印象はなかった。
屋敷に戻るとクレアさん達にお礼を言って別れ、すぐにハロルド様達と夕食を食べると、部屋に戻ってすぐに寝てしまった。
昨日見た砦にあるようで、隣の建物になるのだが敷地や建物も大きいので思ったより距離があるようだ。
砦の門を潜るとすぐに左へ行き、騎士が沢山行き来する大きな扉に入って行く。
中に入り扉のない少し大きな倉庫のような部屋に入っていくと、そこにはヨアヒムさんやクレアさんを含め昨日一緒に行動していた人達がいた。他にも初めて見る人もいる。
「みんな揃っておる様じゃな」
ハロルド様がそう言うと全ての者が右手を胸に当て敬礼をする。
ハロルド様に促されて部屋の中央にあるテーブルに遺体を出す。すると初めて見る少し貫禄のある騎士が指示をする。
「午後にはケルビンの家族が対面しに来る。綺麗にしてやってくれ」
「「「おう!」」」
皆は力強く返事をするとすぐに作業を始めた。
ハロルド様は先程の騎士とクレアさんを呼んで、アタルと一緒に別室に移動する。
部屋の中には、奥に執務机があり木製の棚やロッカーのようなものがあり、簡単な椅子とテーブルのセットもある。
「アラン、報告は聞いておると思うが、この者が昨日助けてくれたアタルじゃ」
「私は騎士団長のアランです。閣下と配下の者を助けて頂きありがとうございます。また部下の遺体まで運んで頂き感謝に堪えません」
見た目は四十代ぐらいの筋肉質で隙のない雰囲気の男性で、髪型は短髪で見た目からして剣が得意そうな感じだ。
「私はアタルと申します。お役に立ったのであれば良かったです」
自己紹介を終えると、ハロルド様が話を始める。
「それからこれから話すことは絶対の秘密じゃ」
「「はい!」」
「クレアは知っておるが、ポーションはアタルが作ったものじゃ。しかしそのことは絶対に秘密にせよ!」
アランはその話を聞いて驚いた顔をする。
「そのことを知っておるのは、儂とアリスとクレアだけなので問題はないはずじゃ。提供してもらったポーションはアタルが旅の途中で手に入れた事としておく。良いか!」
「「はい!」」
ヨロシクお願いしまーす!
「あと収納については馬車半分ぐらい入る事にする。それ以上入る事は同行した他の者も気付いているだろう。口外せぬように釘を刺しておいたがアランはその事を改めて確認し、周知せよ!」
「了解しました」
本当にすみません……。
「それとクレア、アタルに教えてもらった灯《ライト》じゃが皆に広めて構わん。但しアリスが考案したことにせよ。子供の発想でたまたま発見したことにして、アタルが目立たないようにする。昨日同行した者にもそう伝えよ」
「了解しました」
クレアはすぐに返事をしたが、アランは解ってないような顔をする。
当然何の話か分からないよねぇ。
「クレア、アランに見せてやれ」
クレアさんが灯《ライト》を使うとアランさんは驚いた顔をする。
「どうじゃアラン。これは明るいだけではないぞ。魔力効率が非常に良い。同じ魔力で2、3倍は明るい」
まさかと言う顔でアランさんはハロルド様に問いかける。
「この明るさで? これは騎士団としても助かりますが、普段の生活でも非常に役立つと思いますよ」
「そうじゃ、だから遠慮なく広めよ。街中でも広めて構わん。
ただし先ほど言ったようにアリスが考案したことにせよ。たぶん少し広めれば自然と広まるじゃろう」
アランさんとクレアさんのふたりは頷いた。
「アタルはこの後どうする? まだ時間も早い屋敷に戻って休むか?」
「出来ましたら街中を見てみたいです」
やはり、じっくり異世界観光をしてみたいでしょ!
「そうか、───クレアは隊から口の堅いものを2名護衛としてアタルに付けろ。その者たちにはアタルの監視も必要じゃ。
こやつは常識がないところがある。とんでもないスキルや知識を無警戒に使う可能性がある。そうならないように護衛と監視をせよ」
そんなぁ、監視って言うのはあまりにも……。
「だ、大丈夫ですよぉ、町中なら危険も無いし、少し見て回りながら買い物をするだけだから、一人でも大丈夫ですよぉ~」
「本当か? 街中で襲われてウルフを倒した魔法で人を殺すんじゃないぞ!」
「た、たぶん、そんな事はしないと思います。そ、それより、町中で襲われる!?」
えっ、えっ、そんな危険なの!?
話しとしては、街中でも人に襲われることがあるという事だろうか?
3人から疑いの目を向けられて居心地が非常に悪い。でも、そんなに危険なら行くのを止めようかと考える。
「でしたら私ともう一名で護衛します。私はある程度事情も知っておりますので適任かと」
一緒に行ってくれるなら安心だぁ。
1人で大丈夫だと言っていたのを、すぐに忘れていた。
「体調は大丈夫か? クレアが行ってくれるのは助かるが?」
「自分でも驚くほど体調が良いです。早速準備してきます。」
そう話すと、クレアさんは部屋を出て行く。
そう言えば、昨日クレアさんが死にそうになったことを思い出し、護衛をして貰うのは申し訳ないと思うが、断るような事はしなかった。
すぐにクレアさんがもう1名を伴って戻って来たので出かけることにする。
出口に向かっていると、先程遺体を置いた部屋の前を通ると、部屋から今朝のメイドさんが出て来た。顔色が悪く辛そうな表情をしている。
不思議な事にクレアさん達は、特に声を掛ける事もなく通り過ぎる。私も後ろから付いて歩いていたが、メイドさんと目が合ってしまう。
メイドさんは少し驚いた顔で私を見た後、丁寧なお辞儀をしてくれた。
兵舎の外まで来ると、クレアさんが彼女の事を説明してくれた。
「今回亡くなったケルビンは彼女の弟です」
私はそんな悲しい思いをしている彼女に、寝ぼけていたとはいえ、とんでもなく失礼な事をしてしまった。
今朝の事を思い返して、落ち込んでしまうアタルだった。
アタル達は徒歩で昨日とは逆に道を辿りながら進んでいく。
「アタル様、本日一緒に護衛に就くことになりました7番隊の副隊長のカルアです」
クレアさんは、同行した護衛を歩きながら紹介してくれる。
「そうですか、アタルと言います。お手数をお掛けしますがよろしくお願いします」
「7番隊で副隊長をしておりますカルアです。こちらこそよろしくお願いします」
カルアさんは胸に右手を持って来て挨拶をしてくれた。
クレアさんより一回り大きく176cmのアタルとほぼ同じ身長で髪は濃いブラウンといった感じだった。顔つきは整っているが綺麗というより精悍な顔つきという表現が合いそうである。
「女性で副隊長とは凄い方なのですね」
「あのぅ、7番隊は女性だけの隊なので凄いわけではありません。それに隊長はクレア隊長なので凄いのは隊長になります」
「えっ、クレアさんが隊長なのですか? 全然知りませんでした」
驚いてクレアさんを見る。
「全然凄くはありません。昨日もアタル様に助けて貰えなければ死んでいましたし、まだまだ未熟です。それより何処に行かれますか?」
そんな事は無いと思う。それよりどこを見ようかなぁ?
「買い物が気軽にできる所はありますか?」
「もちろんあります。ではそちらに案内します」
クレアさんが先導して前を歩き始めた。
相変わらず綺麗な女性だと思う。今日は昨日とは違い防具など付けていないシンプルな服装をしている。二人とも同じデザインなので隊の制服なのだろう。
ピッタリとした服装のため昨日とは違いスタイルがハッキリと分かる。
カルアさんは肩幅も広く筋肉質で腕もアタルより太いかもしれない。クレアさんは女性らしい体形で剣をもって戦うようには全く見えない。胸当てがないのに昨日より胸が大きく見えるのを不思議に思う。
現在の所持金は金貨150枚分になる。昨日ハロルド様に貰った金貨50枚と、金貨90枚、銀貨90枚、銅貨100枚の合計で金貨100枚分が神様から貰った分になる。
どの通貨も1円玉ぐらいの大きさで、思っていたよりかさばらない。
【通貨】
銅貨 … 1枚=100円の価値
銀貨 … 1枚=1000円の価値
金貨 … 1枚=10000円の価値
白金貨 … 1枚=100000円の価値
基本的にどの国も同じ通貨らしい。
内門を抜け何度か道を曲がると市場だと分かる通りに入って行く。
市場は元々広い通りの両脇に露店が並んでいる感じだ。店の種類も多く食材を売る店や屋台などもあるし、服や小物を扱う店まである。
驚いたことに買い物客も露店の売り子も女性ばかりだ。子供も女の子ばかりだ。不思議に思いクレアさん達に聞いてみる。
「買い物客や売り子が女性なのは分かりますが、連れている子供も女の子ばかりなのは何故ですか?」
「我が領では男性が少ないので、悲しいことですが人攫いの被害の大半が小さな男の子なので、あまり連れ歩かないのです」
「そうですか、私も気を付けないとダメですねぇ」
冗談のつもりで話したのだが真面目な顔で、
「自分たちがお守りしますのでご安心ください」
と言われ逆に不安になる。再び色々な露店を見て回る。
美味しそうなキウイフルーツがあったので、買おうとして自分が買った物を入れる物がないことに気付き、先程服を売っている露店で肩から掛けられる袋を売っていたのを思い出して少し戻る。
「すみません。これはいくらですか?」
目的の袋を手に取り売り子に聞く。
「それは銀貨5、2枚だよ」
最初はたぶん銀貨5枚と言おうとして護衛のふたりを見て2枚にした感じかな?
それよりも売り子の女性はたぶん狐系の獣人なのだろう。頭の上にピンと立ったケモミミが護衛を見た瞬間からピクピクと動いている。思わずケモミミを凝視してしまう。
銀貨2枚をストレージから手の中に出し支払いをする。その時今度は尻尾に気付いてまた凝視してしまう。
何とか異世界初の買い物を済ませて歩き始めると、クレアさんに注意される。
「アタル様、あのように獣人の耳や尻尾を見るのはお止め下さい。特に尻尾を見るのはダメです。人間で言えばお尻を見ている事になります」
「す、すみません。獣人を見たのはこの街が初めてだったので」
「もし近くに恋人や旦那がいたら喧嘩沙汰になることもあります!」
「ち、注意します」
クレアさんは怒っているようだ。確かに良くなかったとは思いますが、クレアさん厳しすぎませんか?
クレアさんは不機嫌そうな顔をしているが、どうしようもないので先程の果物の露店へ急いで向かう。そこでは気になる果物を次々と購入し袋に入れる。
それからも色々な露店で購入しては袋に入れる。移動の時に袋の中の物を収納する。実際購入したのはたぶん5袋を超えていたと思う。カルアさんも少し驚きクレアさんは溜息をついていた。
小物を売る露店では綺麗な小箱が売っていたので3個ほど購入した。
「もうすぐお昼ですがふたりは普段どうしていますか?」
「殆どは兵舎の食堂で済ませます。外回りの場合はどこかで食べることもあります」
「そうですか。ではどこか良い所を教えてもらいますか? ふたりの分も私が払いますので」
「それでは案内させて頂きます。ただ支払は自分達でしますので大丈夫です」
「え~と、私の以前いた所では、こういった場合は男性が払うのが普通でしたのでお願いします」
「わ、分かりました。今回は御馳走して頂きます」
クレアさんの案内で食事をしに行くが、相変わらず味の薄い食事で言うことはない。支払は1人銅貨6枚、全部で18枚だけである。
食事をしながらなぜ男が少ないのか聞いてみると、10年ほど前に他国と戦争があり、男は兵士として戦場に行き沢山亡くなってしまったそうだ。
普段から魔物討伐などは男の兵士が中心で、やはりそれで亡くなってしまうことも多く、冒険者なども男が多いので、どうしても男性が少なくなってしまうらしい。
昔は貴族や王族ぐらいしか一夫多妻はなかったが、今では平民でも一夫多妻が当然となっているようだ。
昼食後は冒険者ギルドや商業ギルドを外から見てみた。両方とも他の建物とは比較にならないほど大きく。両方ともこの街では珍しい3階建で幅も奥行きも他の3、4倍もあり、大きな広場に向かい合って建っていた。
冒険者ギルドや商業ギルドは、大昔に召喚された大賢者や剣聖が組織を創ったそうだ。どちらも国とは関係ない組織で、本部はそれぞれ独立した街があるそうだ。
広場は非常に栄えており、色々な商店が他にも沢山あり、幾つかの店にも入ってみた。
生地や金属素材などを購入したが、比較的高額だった為に少量しか購入できなかった。
帰りに教会の前を通り過ぎたが、出入りする教会関係者は成金のような装飾品をつけており、あまり良い印象はなかった。
屋敷に戻るとクレアさん達にお礼を言って別れ、すぐにハロルド様達と夕食を食べると、部屋に戻ってすぐに寝てしまった。
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そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした
メイ(旧名:Mei)
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この度、書籍化が決定しました!
1巻 2020年9月20日〜
2巻 2021年10月20日〜
3巻 2022年6月22日〜
これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます!
発売日に関しましては9月下旬頃になります。
題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。
旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~
なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。
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主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。
とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。
これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
加護とスキルでチートな異世界生活
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高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
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初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた! 〜仲間と一緒に難題を解決します!〜
藤なごみ
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簡易説明
異世界転生した主人公が、仲間と共に難題に巻き込まれていき、頑張って解決していきます
詳細説明
ブラック企業に勤めているサトーは、仕事帰りにお酒を飲んで帰宅中に道端の段ボールに入っていた白い子犬と三毛の子猫を撫でていたところ、近くで事故を起こした車に突っ込まれてしまった
白い子犬と三毛の子猫は神の使いで、サトーは天界に行きそこから異世界に転生する事になった。
魂の輪廻転生から外れてしまった為の措置となる。
そして異世界に転生したその日の内に、サトーは悪徳貴族と闇組織の争いに巻き込まれる事に
果たしてサトーは、のんびりとした異世界ライフをする事が出来るのか
王道ファンタジーを目指して書いていきます
本作品は、作者が以前に投稿しました「【完結済】異世界転生したので、のんびり冒険したい!」のリメイク作品となります
登場人物やストーリーに変更が発生しております
20230205、「異世界に転生したので、ゆっくりのんびりしたい」から「異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた!」に題名を変更しました
小説家になろう様にも投稿しています
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