スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
上 下
12 / 224
第1章 異世界確認

第7話 獣人姉妹

しおりを挟む
何故か獣人と睨み合う状況になっている。

見た目は子供、実は凶暴な獣人なの?

やはり逃げたほうが良いのか迷う。ギラギラと警戒して私を見る目は、正直ちびりそうなくらい怖い。

けれども見た目は子供で、栄養状態も悪いのかガリガリに痩せており、ケモミミはフワフワであって欲しいが、明らかにベトついた感じがする。

それに凄く幼い獣人を庇うようにしている。

見た目は子供、実は親なのか?

んんっ、赤い!? 小さい獣人の腕に血が…?

手負いの獣は余計に危険な感じがする。でも全然動いていない……。

ストレージからポーションの入った水筒を取り出す。

「これはポーションだ。その子供が怪我しているならポーションを渡すよ!」

勇気を振り絞って声を掛ける。一瞬、獣人の目に戸惑いが浮かんだ気がする。

「言葉はわかるかい?」

ポーションを前に出しながら少し前に出る。
相変わらず目がギラついて歯も見せているが、最初より迫力が弱くなっている気がする。

「これを掛ければ怪我は治るはずだよ」

更に前に進みながら、刺激しないように優しく話をする。それでも警戒の目つきは変わらない。

言葉が通じれば……。

「ほら、飲んでも問題ない」

少し飲んでいるところを見せる。言葉が通じないなら行動で示すしかない。

あと5メルぐらいまで近づく。小さな獣人はピクリとも動かない。よく見ると2人とも粗末だが服を着ているようだ。

更に一歩近づくと、小さな獣人は腕に怪我して血が出ていて、驚くほど痩せて生きているようには見えない。

あっ、呼吸している!

呼吸しているような胸の動きは無いが、もうひとりの髪の毛は呼吸に合わせるように揺らめいている。

さらに顔を良く見てみる。

「みゆ!」

私はそう叫ぶと一気に近づき、ポーションを怪我に振りかける。傷はすぐに塞がっていくが、顔色や肌の感じはまるで死人のようだ。

急いで口元にポーションを持っていくが、意識がないのか飲めそうにない。無理やり口を開けて飲ませるか戸惑う。

「なんで妹の名前を知っている!」

しゃべれるんか~い!

「そんな事より、この子は危険だ! このポーションを飲ませれば何とか、」

最後まで話を聞く前に、ポーションの入った水筒を奪うように私から受け取ると、その子は自分でポーションを口に入れると、口移しで飲ませようとする。

あぁ、全部零れてる……、飲め、飲めぇーーー!

思いが通じたのか、喉が1回動いた。

よし、もっと飲ませろ!

しかし、もう一人は何故か動きを止めている。顔を見ると目に涙が溢れそうだ。

なんで諦めるーーー!

「もう、ポーションが無い! グスッ」

それを言わんかーい!

「こっちのほうが効果は高い」

新しい砂糖ポーションの水筒を出して渡す。また奪うように受け取ると、すぐに口移しで飲ませる。

今度はハッキリと喉が動いた!

さらにもう一度口移しで飲ませると、喉が動いて飲み込み、腕が少し動いて目も少し開ける。

「ミュウ、これを飲むのよ!」

そう言って口に水筒を持っていき飲ませる。最初は少しずつ飲ませていたが、途中から水筒を自分で持って飲み始める。

ミュウ……美優《みゆ》の訳ないよな。

小さい獣人を、思わず幼い頃の美優《みゆ》とダブってしまった。

何となく顔は似ているなぁ。

水筒を抱えて飲む姿を見てそう思ってしまう。

「おねえちゃん、すごくおいしいの」

思った以上に元気になった小さな獣人は、飲み終わるとそう話した。

ミュウと呼ばれた少女が回復したのがわかると、思わず泣きそうになる。

んんんっ、お姉ちゃん?

女の子だったんかーーーい!

思わずお姉ちゃんと呼ばれた獣人を見ると目が合ってしまう。

「なんで妹の名前を知ってる!」

えぇ、私は怒られているん?

「え~と、私の妹の名前が『みゆ』で、少し顔が似ているので思わず……?」

獣人の成長具合や年齢はわからないので丁寧に話す。

それに、この子なんか怖い……。

「そう、なんだ……」

もっとなんか言ってぇええ!

どうしよう……、盗賊とかじゃなかったけど、何を話せば良いのか……。この世界の事も獣人の事も良く分からないし……。

「名前はアタルで28歳、ヨロシク」

とりあえず自己紹介は必要かな…?

「ミュウ、7歳、ヨロシク」

驚くほど元気になったミュウは、嬉しそうに答えてくれた。ポーションは凄いと思うが、ミュウは5歳ぐらいかと思っていた。

「………シャル、12歳」

10歳以下だと思った、……獣人は成長が遅いのか?

見た目より年齢は上だったが、12歳なら子供だ。そこまで丁寧に話さなくても良いだろう。

「建物の中で話さないか?」

「……わかった」

シャルはまだ警戒しているみたいだが、ギラついた目は気の強そうな目つきになり、敵意を剥き出しにはしてこなくなった。

建物の裏から正面に移動して入り口から中に入ると、手をつないで止まってしまった。シャルはより警戒した目つきになっている。

「お金はない。渡せる物もない!」

シャルが突然そんなことを言った。

なんだ、そんな事を心配していたのかぁ。

「ああ、なにも要らないよ。できれば話が聞きたいんだ」

そう話すと、少し戸惑いながらも2人は中に入ってくる。

この体格が獣人の標準的な体格なのだろうか?

2人は驚くほど痩せていて、脂肪などまったくついていない。これでしなやかな筋肉がついていれば納得もできるが、筋肉も碌に付いておらず、どう考えても栄養不足の子供にしか見えない。

この世界で初めての情報源だから大切に話をしないとなぁ。

そう考えながら奥のテーブルに座ると。2人は少し離れた位置に座った。

バリバリに警戒されてるやんけぇ。わ~い!

コミュニケーション能力の低い自分に、この状況から情報を引き出すことに不安を覚える。

「え~と、2人はなんであんな所に? なんで怪我してたのかな?」

うん、ストレートに話を聞くしかできない!

「……あんたのせいだ」

えっ、ええええっ!

「な、なんで、私のせいなのかな?」

「…あんたが急にここにいたから……」

私がここに居たから……、私がこの子たちを追い出したぁ!

悪いのは私じゃない。あの駄女神が悪いんだぁーーー!

「ごめんなさい」

思わずテーブルに手を付いて謝罪する。
良く考えてみると、そこまで私が悪いわけではない。しかし、他の人間に気が付いて逃げ出そうと考えた私からすると、この子たちの気持ちは痛いほどわかった。

2人は驚いていたが、すぐにシャルが話し始める。

「で、でも、アタルは妹を治してくれたから、も、問題ない…」

とりあえず許してくれたようだ。

「それなら良かった。でも、色々話が聞きたいけど、良いかな?」

「な、なにを聞くんだ!」

また警戒されちゃったみたい?

「この辺の事を知らなくて、教えて欲しい。あと……、君たちは私と姿が違うし、……そのことを教えて欲しいかな?」

凄く驚いた顔をするシャルちゃん。

私は変なことを聞いたのでしょうかぁ?

「自分でここに来て、この辺りの事を知らないのか! それに獣人族を見たことがないのか!」

シャルちゃん怒ってます?
もう少し優しく話してくれると嬉しいかな。

しかし、私はまったくこの世界の常識が無いようだ。

なんと話せば良いのかなぁ?

「実はこの世界の神様に、突然ここに連れて来られたんだ。だから、この辺の事も常識的なことも何も知らないんだなぁ」

考えるのが面倒でストレートに本当の事を話してみましたけど……文句ある?

シャルさん、そんな可哀想な奴を見るように、僕の事を見ないでくれます。ほら、ミュウは目をキラキラさせて僕を見ているじゃない。

私がミュウの表情を見て嬉しそうにすると、シャルはミュウを見て話しかける。

「この人は大ウソつきか、少し頭のおかしな人だから信じちゃダメ!」

そこまで露骨に否定しなくても……。
しおりを挟む

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

★☆ 書籍化したこちらもヨロシク! ☆★

★☆★☆★☆ 『転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。』 ☆★☆★☆★

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 



ツギクルバナー
感想 154

あなたにおすすめの小説

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...