転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

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6巻

6-3

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「中央広場はお金持ちの住宅街や貴族様のお屋敷街も近いんです。そのため、平民だけでなく貴族様やその家族なども来ていらっしゃいます。特に周りの大商会には貴族様やお金持ちが来るので、あまり近づかない方が良いですよ」

 確かに屋台には、護衛を付けた金持ちや貴族らしい人達が群がっている。
 そして、商会の前には貴族の紋章もんしょうはたを付けた馬車が止まっていた。
 貴族はすぐに自分勝手なことを言ってくるんだよな。め事は遠慮えんりょしたいなぁ。

「そういえば旅の途中で、ベニスカ商会の大番頭おおばんとうと揉めたな」

 王都へ向かう途中で立ち寄った休憩所きゅうけいじょで、ベニスカ商会の大番頭であるチロルが上からな物言いで、シルとハルを買い取ろうとしてきた。それを突っぱねる際に、ちょっと騒ぎになったのだ。
 もっとも、どうにか穏便おんびんな形で話がついて、チロルは『王都のベニスカ商会に寄ったら全力で歓待する』なんて言ってくれたから、今の関係は良好と言えるが。

「えっ、王都で一番大きい商会である、ベニスカ商会とですか!? ……あそこがベニスカ商会のお店です。私は中に入ったことはありませんけど」

 ミイの指差す方を見ると、他と比べても一回りは大きそうな商店がある。
 近寄りがたいほどに豪華だ。

「おい、ベニスカ商会と揉めたというのは本当か?」

 近くにいた三人ほどの従者を連れた商人風の男が、急に話しかけてきた。

「……誰ですか?」
「私はベニスカ商会の関係者だ。坊主ぼうず、質問に答えろ!」

 なんで高飛車たかびしゃに質問してくるんだ。
 なんだか馬鹿らしくなって、俺も丁寧ていねいに喋るのをやめる。

「関係者って、ベニスカ商会の人間だってこと?」
「そんなことはどうでも良い!」

 どうでも良くないだろ!?
 っていうか、こいつがベニスカ商会の人間だとしたら――

「チロルの話と全然違うじゃねえか!」

 俺が不満といきどおりを爆発させると、相手が驚いた顔をする。
 そんなときだった。

「待ちなさい!」

 なんだ?
 割り込んできたのは、少女だった。
 身なりがしっかりしていて、いかにも貴族のお嬢様然とした高貴な雰囲気を身にまとっている。
 年齢は……俺より少し下かな?
 そんな少女の後ろには付き人だろうか、りんとした少女がもう一人と、護衛が六人いる。

「あなた達はベニスカ商会の人ですか?」

 少女は、商人風の男に尋ねた。

「い、いえ……取引のある商人です」

 おいおい、その程度で関係者だと言っていたのかよ。

「ベニスカ商会の人間ではないにもかかわらず、随分とえらそうでしたね。彼らはチロルのことを知っていらっしゃるご様子。あなたがたの振る舞いが、ベニスカ商会の迷惑になる可能性を、考えたことはありますか?」
「「「……申し訳ありませんでした」」」

 男達は謝罪すると、逃げるようにその場から去っていった。
 おいおい、なんで勝手に逃がしているんだよぉ。
 なんて一瞬思ったが、また揉め事になるよりはマシか。

「それで?」

 んっ、それで?
 このお嬢さんは、俺に何を求めているんだ?
 俺がきょとんとしていると、護衛の男が怒鳴どなってくる。

「助けてもらったら、礼ぐらい言ったらどうなんだ!」

 なんで怒鳴られないといけないのか理解できない。
 別に助けてくれなんて頼んでいないのに……。
 でも、揉め事は避けたいので、大人の対応をしよう。

「すみません。ありがとうございました」
「なら、そこの従魔を譲ってください。お金は払います」

 え~と、もしかしてさっきの連中とグルなのか?
 そんなふうには見えないけど……。

「お断りします」
「何!? なんて無礼な奴だ! こちらにおわしますは、ゴドウィン侯爵のご令嬢だぞ!」

 ……ゴドウィン侯爵の関係者か。
 俺は溜め息を吐いてから、言う。

「何がどう無礼なんですか? 助けたと言いますが、勝手に割り込んできて相手を逃がすのって、助けたと言うんですかね? そして、従魔は売り物じゃないから断っただけ。こちらの対応に問題はないはずです」
「なっ!?」

 なぜか護衛が驚いている。

「でも、私が間に入らなければ困ったことになったのではありませんか?」

 ゴドウィン侯爵のご令嬢の言葉を聞いて、俺はかぶりを振る。

「なりませんね。明らかに向こうが悪かったわけですし、こちらで解決できましたから」

 呆気あっけに取られたような顔をしているゴドウィン侯爵のご令嬢の代わりに、護衛が叫ぶ。

「おい、それ以上無礼を働くと、ただでは済まんぞ!」

 おっ、剣に手を伸ばしたよ。
 俺は敬語を使うのをやめる。

「ほほう、ただで済まないとはどういうことだ? 人の従魔をうばい取るのか?」
「やめなさい!」

 おお、ゴドウィン侯爵のご令嬢が止めた。
 最低限の常識はあるのかな?
 ただまあ、このまま話をしていてもらちが明かなさそうだ。

「『テンマの従魔を買い取ろうとしたが、断られた』と侯爵に話したら良い。俺はつい最近、ゴドウィン侯爵と会った。だから、名前を出せば通じるはずだ」

 護衛は驚いた顔をした。
 俺はたたみかけるように言う。

「そうだ、こう伝えてくれ。『また金でテンマの家族を買おうとしました』とね。きっと、ゴドウィン侯爵は青い顔をするだろうなぁ」

 ゴドウィン侯爵と、その嫡男ちゃくなんのエーメイさんが先日、挨拶に来た。
 その際にエーメイさんがジジを金で買おうとしてきて、俺はブチ切れたのだ。
 恐らく俺が言ったような形で話が通れば、二人は相当焦るだろうし、ご令嬢も大目玉を食らうことになるだろうなぁ。

「おい、そんなうそを言って逃げるつもりだろ!」

 護衛が声を荒らげたタイミングで、ミイが割り込んでくる。

「お待ちください! 私は妖精の守り人のミイです。テンマさんは絶対に逃げません。そのことは妖精の守り人が保証します!」
「お、お前が妖精の守り人のメンバーだと証明できるのか!?」
「よしなさい、見覚えがあるわ。マリアさんの娘さんですよね?」
「「「えっ!」」」

 ゴドウィン侯爵のご令嬢はミイを知っているみたいだ。護衛連中が驚いている。

「ですが……いかに妖精の守り人と言えど、ゴドウィン侯爵に逆らうとまずいことになるぞ!」
「ふふふっ、テンマさんに非礼を働いたとなれば……まずいことになるのはどちらでしょうか?」

 ミイの発言に、ゴドウィン侯爵のご令嬢と護衛の連中は固まってしまった。
 俺達はそんな彼女らを残して、その場を立ち去るのであった。




 第4話 呪いのやかた



 ドロテア、マリア、アンナの三人は王都のとある場所を目指して歩いていた。
 すれ違う人々は三人を見るたびに二度見する。
 ある人はマリアの異世界一大きな胸(テンマ調べ)――優勝カップに注目し、ある人はドロテアの雰囲気に圧倒され、ある人はメイド服を着たアンナの姿に驚いていた。
 ちなみにハルは目立ちすぎるので、今回は姿隠しのスキルを使った状態で三人の上を飛んでいる。
 三人は周囲からの視線を一切気にすることなく、目的地に向かって歩いていく。

「お姉さん、本当にあの呪いの館を手に入れるつもりですか?」

 ドロテアの名前は有名すぎるので、マリアは街中では『お姉さん』と呼ぶようにしていた。
 そしてそのドロテアはと言えば、王都でも有名な呪いの館を手に入れようと企んでいた。
 マリアは正直、なぜそのようなことを考えているのかと、疑問に思っていた。

「あそこは広さも十分にあり、テンマとの愛の巣にするのに適しているのじゃ!」

 当然『愛の巣』というのは、ドロテアの思い込みでしかない。
 旅の途中でテンマは次のようにしか言っていないのだ。

『王都にも研修施設があると便利なんだけどなぁ。ロンダの研修施設が初心者用で、そこを卒業したら王都周辺のダンジョンできたえるとか、アリだと思うんだよね。まあ、さすがに地価が高くすでに多くの人が住む王都で広い土地を手に入れるのは難しいだろうし、無理にってことでもないんだけど』

 それを聞いて、ドロテアは研修施設を造るのに適した場所を探そうと決め、呪いの館に目を付けたのだ。
 なぜ『愛するテンマのための行動』がいつの間にか『愛の巣作り』にすり替わってしまうのかは、ドロテア本人にも分からない、永遠の謎である。
 自信満々なドロテアを見て、マリアは『信じられない』と思っていた。

(教会でも解呪できなかった呪いを、王家秘蔵の魔導具であの館にふうじ込めていたのよね。大丈夫かしら?)

 ドロテアも、そのような事情は知っている。
 呪いが発生して周りにも影響えいきょうが出始めたのは、ドロテアが宮廷魔術師をしていた時期。
 なんならドロテアは王家秘蔵の魔導具を研究・改造して、封印に使えるようにした上で教会と協力して設置までしていたのだから。
 ともあれ、そのような顛末てんまつになったのは、解呪できないから封印するしかなかったということに他ならない。
 故に、マリアはここまで不安がっているのだ。
 どうにかこの計画を変更できないかと、マリアは口を開く。

「あそこはやみギルドが大昔から根城ねじろにしていて、何十年……もしかしたら百年単位の怨念おんねん蓄積ちくせきされているかもしれません。そこを愛の巣にするなんてさすがに……不穏すぎませんか?」

 しかしドロテアは「チッチッチッ」と人差し指を横に振ると、となりを歩くアンナを手で示す。

「マリアはこのアンナの聖魔術のすごさを、誰よりも知っているはずではないか! アンナで無理なら、誰にも解呪はできないのじゃ。そのときはいさぎよく諦めるのじゃ」

 教会の司教は、誰もマリアの石化の呪いを解けなかった。
 そのことから、アンナの聖魔術の実力が教会の誰よりも高いことは疑いようもない。
 とはいえ伝説級の呪いを相手にそれが通用するかは、未知だ。
 それどころか、下手に手を出すことで事態が悪化する可能性だってある。
 故に、マリアの顔はれない。
 少しして、三人は呪いの館がある一つ手前の区画へと到着。
 しかしそこではそれ以上奥に人が立ち入らないよう、冒険者が道を封鎖ふうさしていた。
 三人が近づくと、冒険者の男がマリアに気付いて声を掛ける。

「マリアさん、本当に回復したんですね」

 彼はそう言うと、涙ぐんでしまった。
 マリアはその冒険者に見覚えがなかったが、よくあることなので気にせずに質問する。

「ええ、心配かけたみたいね。それより、私達はその奥に用があるのだけれど、なぜ道を封鎖しているの?」
「実は一ヶ月ほど前から、この先へ立ち入った者が呪いによってくなる事件が何件も発生しまして。十日ほど前に国から商業ギルドへこの一帯を封鎖するように指示があったのです」
(それほどまでに呪いが強いってことよね? そして、封鎖も国が直接行うのではなく、商業ギルドに指示してやらせるだなんて、不自然ね)

 マリアはそう考え、続けて尋ねる。

「商業ギルドに封鎖を依頼したのは、なぜかしら?」
「俺も詳しくは知りません。ただ、呪いの館の封印が弱くなったという噂を耳にしました。宮廷魔術師の人が、毎日朝から調査に来ています。ほら、あそこに陣取っていますよ」

 冒険者の男は小さな声で、マリアにそう説明した。
 男の目線の先――すぐ近くにある簡易かんい的な休憩小屋のまどからは、宮廷魔術師が数人いるのが見える。

「おお、あそこにいるのはエクレアなのじゃ!」

 ドロテアはそう言うと、スタスタと封鎖された区画内に入っていく。
 冒険者の男はあまりにも自然にドロテアが入っていくので、止められなかった。
 ドロテアに次いでアンナ、マリアもあとに続く。

「お、おい。ここは封鎖されているんだ。すぐに出ていってくれ!」

 近づいてくるドロテア達に気付いて小屋から出てきた宮廷魔術師の若い男は、そう口にした。

「うむ、気にするでない。そこに知り合いがおるのじゃ!」
「い、いや、そういうことではなく……」

 無邪気むじゃきかつ不遜ふそんに答えるドロテアを前に、宮廷魔術師の男は口ごもってしまう。
 他の宮廷魔術師も、何を言えば良いのか分からず、沈黙してしまう。
 そんな時、何者かがドロテアの前に飛び出してきて、ひざまずいた。
 そう、彼女こそがドロテアの知り合い――エクレアである。

「ドロテア様、お、お久しぶりでございます!」

 顔を勢いよく上げ、エクレアはそう口にした。彼女は、若干じゃっかん涙ぐんでいる。
 エクレアの実年齢は四十代後半だが、見た目は二十代後半くらいにしか見えない。
 この世界では魔力量が多いと、老化が抑制される。
 つまり、エクレアの魔力量はかなり高い。

「うむ、エクレアも元気そうで何よりじゃ。それより、少し話せるか?」
「はい、喜んで!」

 実はエクレアはこのところ忙しくて、かなりつかれていた。
 ただ、それ以上にドロテアに会えたことが嬉しかったのだ。
 エクレアの案内でドロテア達は休憩小屋の中に入る。
 部屋に入るや否や、ドロテアは人払いするようエクレアに頼んだ。
 それから少しして、休憩小屋の中にはエクレアと三人(プラス一匹)だけになった。

「これで大丈夫です。もっとも、ここで働く者達はバルモアにうとまれているため、情報を口外することはないでしょうから、人払いをする必要はなかったとも言えますが」

 バルモアは、宮廷魔術師のトップに位置する人物である。
 だが彼は政治力だけでのし上がったため、魔術師として圧倒的な力を持つドロテアを目のかたきにしていた。
 それが面倒でドロテアは宮廷魔術師を辞めた――という背景がある。
 エクレアは彼女が宮廷魔術師を辞めたときについていくか迷ったものの、最終的には国のために残ることを選んだ。
 しかし、ドロテアがいなくなるとバルモアは好き放題に振る舞い始めた。
 具体的には自分の地位を固めるための、貴族に対するご機嫌きげん取りに、宮廷魔術師を使うようになったのである。
 それによって、魔術の研究は二の次三の次になっているのが現状だ。
 そのため、バルモアをこころよく思っていない魔術師は少なくない。
 エクレアもその一人だった。

「あんな小物はどうでも良いのじゃ。今回はそれとは関係なく、秘密裏に事を進めたい事情があるのじゃ」
「私は今でもドロテア様の弟子でしでございます。どんな事情があっても構いません。何なりとおっしゃってください!」
「うむ、エクレアのことは信用しておる」

 エクレアはその一言で決心を固めた。

(これはきっと、神様が私にくれた最後のチャンスに違いない! 宮廷魔術師を辞めて、ドロテア様についていく!)

 ドロテアは切り出す。

「それで、呪いの館の封印に問題があるのか?」
「いいえ。最初、バルモアの傘下さんかにいる者達が調査して、『封印に問題がある』と陛下に報告しました。それを受けた陛下はバルモア経由で、私を名指しして『念のため再度調査をするように』との依頼をしてきたのです。私の方で調べたところ、封印には何ら問題がなかったので、その旨をバルモアに報告したのですが『調査をやり直せ』の一点張りで……」
「ふむ……何か理由があって、奴は封印に問題があることにしたいのじゃな。相変わらずバルモアは馬鹿なことに必死じゃのう」
「はい! まったくです!」
「実は、私も呪いの館の調査をしたいのじゃが……」
「はい、喜んで御供おともさせていただきます!」
「そうか、お主もついてくるのじゃ!」

 エクレアはぱあっと花が咲くような笑みを浮かべた。
 彼女に尻尾があれば、ブンブンと左右に振られていたことだろう。


「呪いの館を解呪して、王家から貰い受ける……これまたすごいアイデアですね」

 ドロテアが呪いの館に向かいながら自分の考えを説明すると、エクレアは思わずそう口にした。

「そうじゃ。そしてテックスの研修施設を造るのじゃ」

 テックスは、テンマが異世界で得た知識を、あらゆる情報を登録できたり特許申請できたりする『知識の部屋』という場所に登録した際に、目立ってしまわぬように使った偽名ぎめいだ。
 もっとも、ロンダではテンマがテックスなのではないかという噂が流れている上に、研修に参加した者達には素性すじょうがバレてしまっているのだが。

「実は私も噂を聞いて、テックスさんの教えを受けたいと思っていたんです。でも、バルモアの馬鹿が……」

 エクレアは悲しそうにそう話す。

「エクレアにももちろんテックスの知識を学んでもらう。それに、研修施設ができたら、魔術師部門を任せたいのじゃが、どうじゃ? 王宮魔術師を続けながらでも構わんのじゃ」

 ドロテアは思い付きで提案しただけである。
 だが、エクレアは『ドロテア様にそれほどまでに信頼されているだなんて!』と感動し、涙を流す。

「ひゃい、おまかしぇくだしゃい!」

 鼻水まで流してみまくるエクレアの返事を聞いて、ドロテアは少し軽率けいそつだったかと後悔こうかいし始める。
 横を歩くマリアは、ドロテアにジト目を向けた。
 そんなタイミングで、呪いの館に辿り着く。
 ドロテアは動揺を悟られないように、いつもより少し大きな声で言う。

「おお、久しぶりに呪いの館を見たぞ。んっ、封印は問題ないようだが呪いは強くなっているようじゃな。あと十年ほどで封印が破られそうな状況じゃ!」
「「本当ですか!?」」

 ドロテアの言葉に、エクレアとマリアが驚きの声を上げた。

「私にはそう見えるのじゃ。アンナはどう思うのじゃ?」
「私の見立てでは、封印は持って五年ぐらいってところでしょうか。呪いは年月をるごとに徐々じょじょに強まっていきますし。何種類かの呪いが入り混じっているので、正確な期間は割り出せませんが、このまま放置したら危険なことは確かですね」

 エクレアとマリアはつばを呑む。二人のほほを、あせが伝った。

「どうじゃ、解呪は可能か?」
「……解呪自体は可能ですが、呪いの規模が大きすぎるので、一人では数日かけて数十回聖魔術をかけなければなりません。ただ、テンマ様と一緒なら一日で解呪できると思います」

 マリアはその答えに驚愕の表情を浮かべる。だが、それ以上にエクレアは驚いていた。

「ふふふっ、今日はそこまで分かっただけで目標達成じゃ。行動を起こすのは、バルドーに調整をお願いしてからじゃな」

 ドロテアはそう口にして、楽しそうに微笑むのだった。


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