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番外編② アーリンの残念なチート物語 学園改革と布教活動
第11話 土地神様とマル姫
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ついに土地神様お披露目が明日に行われる。
握手会や自分のフィギュアが売り出されるので、正直なところ気が重い。
こうなったら早めに終わらせてしまったほうが気が楽よね!
どうせ中止などできないなら面倒なことは早めに終わらせて、研修に集中したいと私は考えていた。
「この国の土地神様はいまいちじゃなぁ……」
迎賓館の応接室でマル姫は土地神様や私のフィギュアを両手で持って遊びながら呟いていた。
彼女は『知識の部屋』でテンマ先生の知識を閲覧して落ち込んだ。しかし、すぐに気持ちを切り替えたのか、今度は研修に参加したいと言い出したのである。
だがまだ国内の貴族も参加させていないのに、他国の姫を先に研修に参加させていることが発覚すると問題になる。マリアさんだけでなく、大叔母様ですら、マル姫の研修参加には難色を示した。
だけどウルウルと涙目で私を見つめるマル姫に降参してしまい、迎賓館の地下にある訓練場で秘かに私が研修をさせることになった。
彼女はあれから王宮に戻ることなくロンダ子爵家の迎賓館で過ごしていた。
「ウェルロイトガル国にも土地神様がいるの?」
「うむ、我が国には遥か昔から土地神様が守護しておる。だから様々な金属が尽きることなく我が一族に栄華をもたらしているのだ!」
私のフィギュアを持ち上げて振り回しながら得意気にマル姫は話した。
「ふ~ん、ウェルロイトガル国の土地神様はどんなお姿をしているのかしら?」
「姿は土棲族の男と特徴は似ておる。特に代々の国王に似ていると聞いておる」
「あら、マルちゃんは土地神様に会ったことがないの?」
私が尋ねるとマル姫は驚いた顔を見せたが、すぐに呆れたような表情で話した。
「ふぅ~、土地神様とは秘かにその地を守護しているだけで滅多に姿を見せることはないのだ。国王が幼い頃に姿を見たらしいが、それは二百年以上前の話じゃ!」
なんとなく気付いてはいたが、やはり土地神様が姿を見せることは非常識なのだろう……。
土地神様が姿を見せた話など聞いたことがなかったので、この国の土地神様が特別だと薄々は感じていた。
「そうなのね……。でもこの国の土地神様に明日のお披露目会で会えるわよ?」
土地神様はお披露目の準備が忙しいのか、私に会いに来ても魔力や生命力を吸ってすぐにどこかへ行ってしまう。だからまだマル姫は土地神様に会っていないのだ。
「あははは、お姉ちゃんも見た目通りの夢見る女の子だったのだな。お披露目といっても、これよりも大きい像を作ったので─」
「アーリンちゃ~ん、明日の式典に備えて今日も吸わせてちょうだ~い!」
マル姫が笑いながら今度は土地神様のフィギュアを前に差し出して笑いながら話していたら、そのタイミングで土地神様が姿を見せて私に抱きついてきた。
手に待っているフィギュアと土地神様をマル姫は交互に見つめて、口をパクパクとさせている。
「土地神様、昨日も吸いにきたじゃないですか。今日は大叔母様の順番のはずです!」
「お披露目が上手くいけば信者が増えて神力に余裕ができるの。だから明日の式典では神力がたくさん使って頑張りたいのよぉ。アーリンちゃんお願いよぉ~!」
「はぁ……、わかりました、今回だけですよ。今後は研修で魔力も必要ですから、式典の後は魔力や生命力を吸いにくる間隔を長くしてくださいよ!」
「わかったわ。だから今日は吸わせてぇ~!」
必死に頼み込む土地神様を見て私は頷くと、いつものように首筋を土地神様に見えるようにした。すると土地神様は私の首筋に抱きついてきて、いつものように魔力と生命力を吸い始めた。
「うっ、くぅ~!」
妹のようなマル姫に恥ずかしい姿を見せたくないで、必死に吸われるときのイケない感覚を、唇をかみしめて我慢する。
二日連続なのでHPは回復していたけど魔力は完全には回復していない。土地神様は遠慮なく限界まで吸ったようで、最後には魔力枯渇時の気怠さを感じた。
「ハァ、ハァ、ハァ!」
「美味しかったわ、アーリンちゃんありがとう!」
ステータスを確認するとHPは1割を切り、MPは0になっていた。
こっんのぉー! 吸い過ぎよぉーーー!
魔力枯渇耐性があるからそれほど辛くはないけど、今回はHPまで随分と減っているので予想以上に体がだるい。ソファの背もたれに体を預けながら、回復ポーションや魔力回復ポーションを収納から出して飲む。
すぐに気怠さが治まったのでジト目で土地神様を睨む。
土地神様は睨まれても気に様子も見せず、驚きで固まっているマル姫に視線を向ける。
「あら、アーリンちゃんのお友達? 大切そうに私のフィギュアを握り締めるなんて、嬉しいわねぇ~!」
土地神様は笑顔でマル姫を見ながら話すと、マル姫はフィギュアを頭上に掲げるように待ちながら跪く。
「私はウェルロイトガル国の王族のマルゴットと申します。この国の土地神様にお会いできて恐悦至極であります!」
「うふふふ、そんな堅苦しい挨拶はやめてくれるかしら。私の巫女であるアーリンちゃんの友達なら、私にとってもお友達よ。仲良くしてね!」
土地神様は優しくマル姫に語りかけたけど、マル姫はどうして良いか分からず固まってしまった。従者の二人もマル姫と同じように跪いている。
そんなことより勝手に私を巫女にしないでぇーーー!
土地神様の話に私は心の中で叫ぶのであった。
握手会や自分のフィギュアが売り出されるので、正直なところ気が重い。
こうなったら早めに終わらせてしまったほうが気が楽よね!
どうせ中止などできないなら面倒なことは早めに終わらせて、研修に集中したいと私は考えていた。
「この国の土地神様はいまいちじゃなぁ……」
迎賓館の応接室でマル姫は土地神様や私のフィギュアを両手で持って遊びながら呟いていた。
彼女は『知識の部屋』でテンマ先生の知識を閲覧して落ち込んだ。しかし、すぐに気持ちを切り替えたのか、今度は研修に参加したいと言い出したのである。
だがまだ国内の貴族も参加させていないのに、他国の姫を先に研修に参加させていることが発覚すると問題になる。マリアさんだけでなく、大叔母様ですら、マル姫の研修参加には難色を示した。
だけどウルウルと涙目で私を見つめるマル姫に降参してしまい、迎賓館の地下にある訓練場で秘かに私が研修をさせることになった。
彼女はあれから王宮に戻ることなくロンダ子爵家の迎賓館で過ごしていた。
「ウェルロイトガル国にも土地神様がいるの?」
「うむ、我が国には遥か昔から土地神様が守護しておる。だから様々な金属が尽きることなく我が一族に栄華をもたらしているのだ!」
私のフィギュアを持ち上げて振り回しながら得意気にマル姫は話した。
「ふ~ん、ウェルロイトガル国の土地神様はどんなお姿をしているのかしら?」
「姿は土棲族の男と特徴は似ておる。特に代々の国王に似ていると聞いておる」
「あら、マルちゃんは土地神様に会ったことがないの?」
私が尋ねるとマル姫は驚いた顔を見せたが、すぐに呆れたような表情で話した。
「ふぅ~、土地神様とは秘かにその地を守護しているだけで滅多に姿を見せることはないのだ。国王が幼い頃に姿を見たらしいが、それは二百年以上前の話じゃ!」
なんとなく気付いてはいたが、やはり土地神様が姿を見せることは非常識なのだろう……。
土地神様が姿を見せた話など聞いたことがなかったので、この国の土地神様が特別だと薄々は感じていた。
「そうなのね……。でもこの国の土地神様に明日のお披露目会で会えるわよ?」
土地神様はお披露目の準備が忙しいのか、私に会いに来ても魔力や生命力を吸ってすぐにどこかへ行ってしまう。だからまだマル姫は土地神様に会っていないのだ。
「あははは、お姉ちゃんも見た目通りの夢見る女の子だったのだな。お披露目といっても、これよりも大きい像を作ったので─」
「アーリンちゃ~ん、明日の式典に備えて今日も吸わせてちょうだ~い!」
マル姫が笑いながら今度は土地神様のフィギュアを前に差し出して笑いながら話していたら、そのタイミングで土地神様が姿を見せて私に抱きついてきた。
手に待っているフィギュアと土地神様をマル姫は交互に見つめて、口をパクパクとさせている。
「土地神様、昨日も吸いにきたじゃないですか。今日は大叔母様の順番のはずです!」
「お披露目が上手くいけば信者が増えて神力に余裕ができるの。だから明日の式典では神力がたくさん使って頑張りたいのよぉ。アーリンちゃんお願いよぉ~!」
「はぁ……、わかりました、今回だけですよ。今後は研修で魔力も必要ですから、式典の後は魔力や生命力を吸いにくる間隔を長くしてくださいよ!」
「わかったわ。だから今日は吸わせてぇ~!」
必死に頼み込む土地神様を見て私は頷くと、いつものように首筋を土地神様に見えるようにした。すると土地神様は私の首筋に抱きついてきて、いつものように魔力と生命力を吸い始めた。
「うっ、くぅ~!」
妹のようなマル姫に恥ずかしい姿を見せたくないで、必死に吸われるときのイケない感覚を、唇をかみしめて我慢する。
二日連続なのでHPは回復していたけど魔力は完全には回復していない。土地神様は遠慮なく限界まで吸ったようで、最後には魔力枯渇時の気怠さを感じた。
「ハァ、ハァ、ハァ!」
「美味しかったわ、アーリンちゃんありがとう!」
ステータスを確認するとHPは1割を切り、MPは0になっていた。
こっんのぉー! 吸い過ぎよぉーーー!
魔力枯渇耐性があるからそれほど辛くはないけど、今回はHPまで随分と減っているので予想以上に体がだるい。ソファの背もたれに体を預けながら、回復ポーションや魔力回復ポーションを収納から出して飲む。
すぐに気怠さが治まったのでジト目で土地神様を睨む。
土地神様は睨まれても気に様子も見せず、驚きで固まっているマル姫に視線を向ける。
「あら、アーリンちゃんのお友達? 大切そうに私のフィギュアを握り締めるなんて、嬉しいわねぇ~!」
土地神様は笑顔でマル姫を見ながら話すと、マル姫はフィギュアを頭上に掲げるように待ちながら跪く。
「私はウェルロイトガル国の王族のマルゴットと申します。この国の土地神様にお会いできて恐悦至極であります!」
「うふふふ、そんな堅苦しい挨拶はやめてくれるかしら。私の巫女であるアーリンちゃんの友達なら、私にとってもお友達よ。仲良くしてね!」
土地神様は優しくマル姫に語りかけたけど、マル姫はどうして良いか分からず固まってしまった。従者の二人もマル姫と同じように跪いている。
そんなことより勝手に私を巫女にしないでぇーーー!
土地神様の話に私は心の中で叫ぶのであった。
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