転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字の大きさ
上 下
311 / 315
番外編② アーリンの残念なチート物語 学園改革と布教活動

第7話 偽ピョン吉

しおりを挟む
トボトボと落ち込みながらロンダ子爵家の屋敷に向かって歩いていた。

まさか自分が音痴だったなんて……。

今日だけで様々なことがあったけど、何と言ってもシャル王女達に指摘されて、初めてその事実を私は知ったのである。

気を遣われているのが逆に辛いわ……。

慰めの言葉などいらない。
シャル王女達もそれが分かっているのか、黙って気を遣って後ろからついてきていた。

こんな時にシルちゃんがいてくれたら……。せめてピョン吉でも良かったのに!

シルちゃんをモフるだけで気分が不思議なほど落ち着くのである。でもシルちゃんはテンマ先生がよくモフっているので、代わりにピョン吉のタプタプとした体で癒してもらうこともあるのだ。

でも……、どちらもいないのよね。

テンマ先生が王都を離れる時にシルちゃんだけでなくピョン吉も連れて行ってしまった。元々ピョン吉は大叔母様ドロテアが無理やり従魔にしたのだけど、テンマ先生の旅立ちに前にアンナさんの従魔となり、一緒に旅立ったのである。

仕方ないからゆっくりとお風呂に入ろう!

そんなことを考えていると、ちょうど屋敷の門に到着する。辺りは少し暗くなり始めていて、こんな時間に来訪者などいないので門番もいない。頭の中でエステも受けようと思いながら門を開こうとする。

えっ!

気配察知で真横から近づく存在に気付く。
すぐに横を振り返ったのだが、相手の動きが早すぎて振り返ると同時に懐まで入られてしまった。

あっ、この感触! ピョン吉!

相手は私の腰の辺りに体当たりしてきた。それを受け止めたことで数メートルもずり下がった。幸い相手はそれ以上何かするわけではなかったみたいだ。

うふふ、このポヨンとした感触はまさしくピョン吉ね!

あれっ、子供! 髪の毛が……。

ピョン吉に体当たりされた感触とそっくりだったけど、腰回りに抱きついているのはちょっと丸みを帯びた体型の子供に見える。

ピョン吉じゃないと気付いて混乱していると、相手は抱きついた状態で顔を上げる。

か、可愛いじゃない!

いつも渋い顔をしているピョン吉と違い、顔を上げたのは可愛らしい顔をした少女であった。ちょっとぽっちゃりしているけど、顔自体は間違いなく可愛いい。
そして何と言ってもほっぺたが赤ちゃんのようにポテッとしていて……。

ヒョッホォーーー! ピョン吉みたいにポヨンとして気持ちいい!

無意識に少女のほっぺたを両手でタプタプと感触を確認してしまった。

「お主がテックスの弟子か?」

声も可愛いぃぃぃ!

話し方は子供っぽくないけど、声は見た目とあった可愛らしい声で、瞳に涙をためて必死な雰囲気で尋ねてきた。

「弟子というか生徒かしら」

ほっぺたの感触を堪能しながら答えると、シャル王女が横から話しかけてきた。

「マルゴット姫様、なぜこのような場所においでなのかしら?」

えっ、姫様!? タプタプで癒されるぅ~!

ポヨン少女が姫様と聞いて驚いたのに、ほっぺたから手を放すことができない。

「その方の父であるヴィンチザート国王がテックスを紹介してくれないではないか。臣下に命じて調べて、テックスの弟子に会いにきたのだ!」

マルゴット姫は私がほっぺたを両手で触っているので、シャル王女には視線だけ向けて話した。
声を出すたびにほっぺから伝わる振動でさらに手を離せなくなる。

「一国の王女であるマルゴット姫様が、たった一人で出歩くなど危険ではありませんか?」

「一人ではない!」

マルゴット姫がシャル王女の問いかけに答えると、まるで陰から姿を現したように従者の二人姿を現した。

女性? 小さいだけ?

1人は大きなハンマーのような武器を持ち、もう一人は身体に不釣り合いの大剣を背中に背負うようにしている。だがどちらも顔は大人の女性らしい顔つきだが、身長はマルゴット姫と大して変わらない。

「姫様に対して失礼ではありませんか?」

ハンマーを持つ従者が不満そうな表情で私に向かって言ってきた。

「アーリンさん、確かに失礼ですわ。その手を離しなさい」

シャル王女に言われて渋々ほっぺたから手を離した。しかし、いまだに抱きつくマルゴット姫様の顔を見ると、またほっぺに手が出そうになり必死に我慢する。

その様子を見ていたマルゴット姫様は嬉しそうに微笑んでから言った。

「私の願いを聞いてくれるなら、好きなだけ触っても構わないぞ!」

まあ、本当に!

「ダメですわ!」

思わずほっぺに手が出そうになったが、シャル王女とドナが私の両腕を押さえてしまった。

「何でよぉ~?」

私は手を押さえたシャル王女達に懇願するように尋ねる。

「あなたはお願いの内容も聞かずに何をしているのかしら。もしとんでもない要求だったらどうするの?」

シャル王女に諌められ、私も自分がどれほど危険なことをしようとしていたか気が付く。どうやら相手は他国の姫様みたいだし、そんな相手のお願いを私が叶えられるかと考えて恐ろしくなる。

くぅ~、偽ピョン吉に騙されるところだったわ!

今も私に抱きつきながらプルプルとほっぺたを揺らして私を誘惑するマルゴット姫を見て、必死に手が出そうになるのを我慢するのであった。


しおりを挟む
感想 437

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~

空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。 どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。 そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。 ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。 スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。 ※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。