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番外編② アーリンの残念なチート物語 学園改革と布教活動
第2話 土地神様
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学園の再建だけでなく、テンマ先生絡みの難題があったことを思い出す。
「お任せくださいませ! アーリンさんだけでなく私達も土地神様のお手伝いをさせていただきます」
テンマ先生は土地神様を私に押し付けたのよぉ!
土地神様、それはヴィンチザード王国の地を守護する神様である。
非常識の塊であるテンマ先生のそばに土地神様が現れたと言われた時は何の冗談かと思った。
でも研修施設の端に作られた礼拝堂で初めて土地神様にお会いした時は、その神々しいお姿に涙が溢れそうになったのである。
幾つかの古の物語に土地神様について書かれている。土地神様が現れた土地は肥え災害が減り、その地は栄えるという。
どこまで真実か分からないけど、この国の大司教や国王陛下まで跪いて崇めるような存在であることは間違いない。
今もシャル王女達は跪いている。土地神様が私の肩に座っているので、まるでシャル王女が私に跪いているようにも見える。
「もぉ、そんな風に跪くのはやめてくれるかしら。アーリンちゃんと同じように友達みたいに接してほしいわ!」
私が土地神様と友達のように接するようになったのはいくつか理由がある。
ひとつは土地神様が元々はバルドーさんの母上と私が知っているからだ。
ある時バルドーさんが「母上」と土地神様を呼んでいたのを聞いたのが始まりである。そしてすぐに土地神様からバルドーさんを結婚させたいと協力してくれと頼まれたり、何なら私と結婚したらどうかと言い出したりしたのである。
バルドーさんと結婚なんて……あり得ないわ!
バルドーさんは祖母さまより年上に見える。そして彼は女性よりも……。
もう一つは土地神様が姿を見せることができる条件に関係がある。
土地神様は実体のない半透明な姿でも人に見せれるのは、基本的にテンマ先生の作った礼拝堂だけである。
それ以外の場所で姿を現すには神力が必要だけど、現状の土地神様は信者も少ないので神力が足りない。でも生命力と魔力を大量に使えば神力と同じことができる。
その量が半端じゃないのよねぇ~。
この国でも一番の魔力量を誇る大叔母様と二番目の魔力量を誇る私が、毎日交代で土地神様に吸い取られているのである。
さらに少しでも必要になる神力を減らすために、土地神様は妖精のような小さくて燃費の良い姿をして、王都内ならどこでも姿を見せることができるようになったのである。
「ですが我が国を守護する土地神様に王家の私がなれなれしく接するのは……」
そうなるよねぇ~。
シャル王女の立場からすれば、土地神様は敬うべき存在なのは間違いない。年末のテンマ先生とのこともあり、国王陛下からも何か言われている可能性もある。
「それは勘違いよ! 私は『誰にも親しまれる土地神!』や『会うことのできる土地神!』をコンセプトに信者を増やすつもりなのよ。あなたが仰々しく接したら、恐がられてしまうじゃない!」
え~と、なんでそんなコンセプトなのよぉ。
「土地神様は畏れ、敬うべきなのは普通だと思うけど……」
シャル王女達が困ったような表情をしているので、私が代わりに土地神様に尋ねる。
「ダメよぉ、テラス様から土地神の信者を増やすための方法を教えてもらっているのよ。だからあなた達も協力してほしいのよぉ」
……それって、何か違う気がするぅ。
でもこの世界の最高神でもあり、この世界を創ったとされるテラス様を持ち出されたら断ることなどできるはずがない。
「わ、わかりました……」
シャル王女は渋々といった感じで跪くのをやめて立ち上がって答えた。そして他のみんなも戸惑いながら立ち上がったのである。
「それじゃあ土地神のお披露目の準備について打ち合わせを始めましょう。あっ、その前に今日の分を吸わせてくれるかしら?」
まさかここで吸うのぉー!
「えっ!」
土地神様は私の肩から飛び立って私の正面にまわり、まるで私を捕食するような意味ありげな笑顔を浮かべる。
「優しくするからね!」
どう優しくするのよぉーーー! あぁっ!
土地神様は私の首筋に抱きついて、私のHPやMPを吸い始める。
「くぅ、うっ、あふんっ、そこは……いやぁ! あああぁぁぁぁ……」
土地神様に色々吸い取られるのは独特の感覚がする。
まるで土地神様と繋がったような、蹂躙されているような不思議な感覚である。この感覚は成人前の乙女が感じてはいけないような気がして、後で罪悪感が押し寄せてくるのだ。
「なんか見てはダメなものを見ている気がするわね……」
シャル王女が呟いているのが遠くから聞こえているわ。
私は必死にこの感覚に溺れないように抵抗しようとする。全身に力が入り、手や足が小刻みに震えているのが何となくわかる。
くぅ~、これ以上は、げ、限界よぉ!
開いてはダメな扉が開きそうになる。しかし、扉が開く寸前に土地神様との繋がりが切断された。
あっ、もう少しだったのにぃ……。
あれほど抵抗していた感覚が途切れると、今度は切なく感じてしまう。
「ごちそうさまぁ~。今日もたくさん奉納してもらいましたわ!」
土地神様の肌艶や輝きが増した気がする。
気のせいよね……。
私は一気にHPとMPが減ったことで全身が脱力してしまい、荒い息をしながら机に突っ伏したのである。
「土地神様に奉納できるなんて、アーリンさんが羨ましいわ!」
シャル! アンタは何も分かっていないのよ!
文句を言いたいが起き上がることもできない。でも少しすればこの脱力感は消えるはずである。
「あら、シャルちゃんもあと少し研修すれば、奉納できるようになるはずよ。だから研修を頑張ってね!」
「はい、土地神様に奉納できるように頑張らせてもらいます!」
うん、真実を知らないから言えることよね……。
「お任せくださいませ! アーリンさんだけでなく私達も土地神様のお手伝いをさせていただきます」
テンマ先生は土地神様を私に押し付けたのよぉ!
土地神様、それはヴィンチザード王国の地を守護する神様である。
非常識の塊であるテンマ先生のそばに土地神様が現れたと言われた時は何の冗談かと思った。
でも研修施設の端に作られた礼拝堂で初めて土地神様にお会いした時は、その神々しいお姿に涙が溢れそうになったのである。
幾つかの古の物語に土地神様について書かれている。土地神様が現れた土地は肥え災害が減り、その地は栄えるという。
どこまで真実か分からないけど、この国の大司教や国王陛下まで跪いて崇めるような存在であることは間違いない。
今もシャル王女達は跪いている。土地神様が私の肩に座っているので、まるでシャル王女が私に跪いているようにも見える。
「もぉ、そんな風に跪くのはやめてくれるかしら。アーリンちゃんと同じように友達みたいに接してほしいわ!」
私が土地神様と友達のように接するようになったのはいくつか理由がある。
ひとつは土地神様が元々はバルドーさんの母上と私が知っているからだ。
ある時バルドーさんが「母上」と土地神様を呼んでいたのを聞いたのが始まりである。そしてすぐに土地神様からバルドーさんを結婚させたいと協力してくれと頼まれたり、何なら私と結婚したらどうかと言い出したりしたのである。
バルドーさんと結婚なんて……あり得ないわ!
バルドーさんは祖母さまより年上に見える。そして彼は女性よりも……。
もう一つは土地神様が姿を見せることができる条件に関係がある。
土地神様は実体のない半透明な姿でも人に見せれるのは、基本的にテンマ先生の作った礼拝堂だけである。
それ以外の場所で姿を現すには神力が必要だけど、現状の土地神様は信者も少ないので神力が足りない。でも生命力と魔力を大量に使えば神力と同じことができる。
その量が半端じゃないのよねぇ~。
この国でも一番の魔力量を誇る大叔母様と二番目の魔力量を誇る私が、毎日交代で土地神様に吸い取られているのである。
さらに少しでも必要になる神力を減らすために、土地神様は妖精のような小さくて燃費の良い姿をして、王都内ならどこでも姿を見せることができるようになったのである。
「ですが我が国を守護する土地神様に王家の私がなれなれしく接するのは……」
そうなるよねぇ~。
シャル王女の立場からすれば、土地神様は敬うべき存在なのは間違いない。年末のテンマ先生とのこともあり、国王陛下からも何か言われている可能性もある。
「それは勘違いよ! 私は『誰にも親しまれる土地神!』や『会うことのできる土地神!』をコンセプトに信者を増やすつもりなのよ。あなたが仰々しく接したら、恐がられてしまうじゃない!」
え~と、なんでそんなコンセプトなのよぉ。
「土地神様は畏れ、敬うべきなのは普通だと思うけど……」
シャル王女達が困ったような表情をしているので、私が代わりに土地神様に尋ねる。
「ダメよぉ、テラス様から土地神の信者を増やすための方法を教えてもらっているのよ。だからあなた達も協力してほしいのよぉ」
……それって、何か違う気がするぅ。
でもこの世界の最高神でもあり、この世界を創ったとされるテラス様を持ち出されたら断ることなどできるはずがない。
「わ、わかりました……」
シャル王女は渋々といった感じで跪くのをやめて立ち上がって答えた。そして他のみんなも戸惑いながら立ち上がったのである。
「それじゃあ土地神のお披露目の準備について打ち合わせを始めましょう。あっ、その前に今日の分を吸わせてくれるかしら?」
まさかここで吸うのぉー!
「えっ!」
土地神様は私の肩から飛び立って私の正面にまわり、まるで私を捕食するような意味ありげな笑顔を浮かべる。
「優しくするからね!」
どう優しくするのよぉーーー! あぁっ!
土地神様は私の首筋に抱きついて、私のHPやMPを吸い始める。
「くぅ、うっ、あふんっ、そこは……いやぁ! あああぁぁぁぁ……」
土地神様に色々吸い取られるのは独特の感覚がする。
まるで土地神様と繋がったような、蹂躙されているような不思議な感覚である。この感覚は成人前の乙女が感じてはいけないような気がして、後で罪悪感が押し寄せてくるのだ。
「なんか見てはダメなものを見ている気がするわね……」
シャル王女が呟いているのが遠くから聞こえているわ。
私は必死にこの感覚に溺れないように抵抗しようとする。全身に力が入り、手や足が小刻みに震えているのが何となくわかる。
くぅ~、これ以上は、げ、限界よぉ!
開いてはダメな扉が開きそうになる。しかし、扉が開く寸前に土地神様との繋がりが切断された。
あっ、もう少しだったのにぃ……。
あれほど抵抗していた感覚が途切れると、今度は切なく感じてしまう。
「ごちそうさまぁ~。今日もたくさん奉納してもらいましたわ!」
土地神様の肌艶や輝きが増した気がする。
気のせいよね……。
私は一気にHPとMPが減ったことで全身が脱力してしまい、荒い息をしながら机に突っ伏したのである。
「土地神様に奉納できるなんて、アーリンさんが羨ましいわ!」
シャル! アンタは何も分かっていないのよ!
文句を言いたいが起き上がることもできない。でも少しすればこの脱力感は消えるはずである。
「あら、シャルちゃんもあと少し研修すれば、奉納できるようになるはずよ。だから研修を頑張ってね!」
「はい、土地神様に奉納できるように頑張らせてもらいます!」
うん、真実を知らないから言えることよね……。
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