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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?
第35話 嵌められたのかもぉ!
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改めて国王陛下や宰相様達は先頭訓練エリアに上がり、生徒や教師達を整列させ、まるで謁見の間のような雰囲気になった。
私はシャル王女達と先頭訓練エリアのすぐそばに並んで立っている。
「あのような愚か者達のことはともかく、やはり学園を再開したのは早すぎたのではないか?」
陛下はシャル王女と一緒に入ってきた貴族っぽい男性に問いかけた。
「で、ですが伝統ある学園を閉鎖した状態では不安に思う者も……、愚かな元学園長もこれでいなくなったので……」
「エットルド子爵、そなたが新たな学園長に任命されたときに、シャルロッテ王女殿下が慌てて学園の封鎖を解除するより、大賢者テックス殿の知識を盛り込んだ授業をできるようにするべきだと申したはずだ。大賢者テックス殿の愛弟子でもあるそこのアーリン嬢はレベル一桁で元王宮魔術師の元学園長や騎士出身の教師達を圧倒したのだぞ!」
ちょっとぉ、私の名前を出さないで下さいよぉ!
宰相様に問い詰められているのはその男性、やはり貴族だったエットルド子爵で新しく任命された新学園長らしい。
でも本当に愚かな元学園長のことはともかく、シャル王女は学園の授業にテンマ先生の知識を取り込むことを提案していたみたい。
「しかし、大賢者テックス殿の知識を理解している教師がいません。教師の育成から始めるとなると、いつ学園を始められることか……」
う~ん、それも間違ってないような気もするわ。
「多少時間が掛かろうとも、大賢者テックス殿の知識を取り込めば、あれほどの力を発揮できるのだぞ。それこそ学園で学ぶ期間が短くなろうが、そのほうが結果的には優秀な人材を育てられるのではないか?」
う~ん、それも間違っていない気がするわ。
宰相様の意見も正しい気がする。今日受けた授業をするくらいなら、テンマ先生の知識を取り込めば半分以下の授業でも格段に違いが出そうである。
「大賢者テックス殿が王都に研修施設を作っておる。あちらは平民も参加できると聞いておる。大賢者テックス殿の知識を学んだ平民が増えたとして、今の学園で学んだ貴族で大丈夫だとエットルド子爵は考えておるのか?」
あっ、さすが国王陛下だわ。鋭い指摘!
ロンダでは研修施設を平民に開放する前に、役人や兵士が先行して参加した。そしてその一部が研修施設の講師のような立場になっている。
市民が先に研修施設で知識を得れば、貴族の存在意義まで問われることになる気もする。
エットルド子爵も国王陛下の指摘を聞いて顔色を変えている。
「わ、わかりました。大至急、大賢者テックス殿の知識を取り込んだ改革を進めたいと思います。ですが、私には大賢者テックス殿とつながりが全くありません。どのようにすれば……」
そうよねぇ、テンマ先生の知識を取り込むといっても、簡単なことではないと思う。
あのテンマ先生だからねぇ~。
「王都の研修施設の責任者はドロテア殿がされているようじゃ。そこのアーリン嬢は大賢者テックス殿の愛弟子というだけでなく、ドロテア殿の縁戚でもある」
ちょ、ちょっとぉ、なんか怪しい話の展開になってないかしら!
戸惑ってシャル王女を見るとニヤニヤと微笑んでいる。
あっ、もしかして嵌められたのかもぉ~!
新しい学園長のエットルド子爵や他の貴族は伝統とか慣習にとらわれて、学園の改革にそれほど積極的ではなかったのかもしれない。
そこで元学園長の企みを利用して、大賢者テックスの知識を活用するとどうなるのか、彼らに知らしめたのかもしれない。
ここには多くの貴族家の生徒もいる。彼らが各貴族家に戻って今日のことを話すだろう。そうなれば、悪魔王としてのテックス個人の能力に恐れていた貴族達も、大賢者テックスの知識の有用性を理解することになるよね。
「アーリン殿、どうか手を貸していただきたい!」
もうすでにエットルド子爵は陛下や宰相達の思惑に乗ってしまったようね。真剣な表情で私に懇願してきた。
「そ、そんなことを言われても、私が勝手に決めることはできませんよぉ」
「アーリンさん、明日にでもドロテア様やあなたの先生とお会いする予定でしたわね。その時に少しだけ確認したらいかがかしら?」
くぅ~、最初からそのつもりだったのね!
シャル王女の提案を聞いて、やはり最初からこうなるように考えていたのだと確信した。
でも陛下の前で断ることなどできないわよ……。
「わかりましたわ。ですが相談はしてみますけど、どうなるか分かりません。それに先生から許可をもらったとしても、成人前の私ではお役にたてるかどうか……」
「大丈夫ですわ。すでに私だけでなく、特別騎士団のメンバーもアーリンさんの弟子のようなものですわ。それにアーリンさんの話に耳を傾けないような貴族は、もうこの国には存在しませんわ!」
それって嬉しくないんですけどぉ!
貴族相手でも平気で暴走する大叔母様と縁戚で、すでに陛下や貴族達が悪魔王として恐れるテンマ先生の愛弟子だからといわれている気が……。
普通の学園生活は絶対に無理ね……。
「そなたには色々と頼みごとばかりしてすまぬな……」
陛下は申し訳なさそうに話したのだった。
私はシャル王女達と先頭訓練エリアのすぐそばに並んで立っている。
「あのような愚か者達のことはともかく、やはり学園を再開したのは早すぎたのではないか?」
陛下はシャル王女と一緒に入ってきた貴族っぽい男性に問いかけた。
「で、ですが伝統ある学園を閉鎖した状態では不安に思う者も……、愚かな元学園長もこれでいなくなったので……」
「エットルド子爵、そなたが新たな学園長に任命されたときに、シャルロッテ王女殿下が慌てて学園の封鎖を解除するより、大賢者テックス殿の知識を盛り込んだ授業をできるようにするべきだと申したはずだ。大賢者テックス殿の愛弟子でもあるそこのアーリン嬢はレベル一桁で元王宮魔術師の元学園長や騎士出身の教師達を圧倒したのだぞ!」
ちょっとぉ、私の名前を出さないで下さいよぉ!
宰相様に問い詰められているのはその男性、やはり貴族だったエットルド子爵で新しく任命された新学園長らしい。
でも本当に愚かな元学園長のことはともかく、シャル王女は学園の授業にテンマ先生の知識を取り込むことを提案していたみたい。
「しかし、大賢者テックス殿の知識を理解している教師がいません。教師の育成から始めるとなると、いつ学園を始められることか……」
う~ん、それも間違ってないような気もするわ。
「多少時間が掛かろうとも、大賢者テックス殿の知識を取り込めば、あれほどの力を発揮できるのだぞ。それこそ学園で学ぶ期間が短くなろうが、そのほうが結果的には優秀な人材を育てられるのではないか?」
う~ん、それも間違っていない気がするわ。
宰相様の意見も正しい気がする。今日受けた授業をするくらいなら、テンマ先生の知識を取り込めば半分以下の授業でも格段に違いが出そうである。
「大賢者テックス殿が王都に研修施設を作っておる。あちらは平民も参加できると聞いておる。大賢者テックス殿の知識を学んだ平民が増えたとして、今の学園で学んだ貴族で大丈夫だとエットルド子爵は考えておるのか?」
あっ、さすが国王陛下だわ。鋭い指摘!
ロンダでは研修施設を平民に開放する前に、役人や兵士が先行して参加した。そしてその一部が研修施設の講師のような立場になっている。
市民が先に研修施設で知識を得れば、貴族の存在意義まで問われることになる気もする。
エットルド子爵も国王陛下の指摘を聞いて顔色を変えている。
「わ、わかりました。大至急、大賢者テックス殿の知識を取り込んだ改革を進めたいと思います。ですが、私には大賢者テックス殿とつながりが全くありません。どのようにすれば……」
そうよねぇ、テンマ先生の知識を取り込むといっても、簡単なことではないと思う。
あのテンマ先生だからねぇ~。
「王都の研修施設の責任者はドロテア殿がされているようじゃ。そこのアーリン嬢は大賢者テックス殿の愛弟子というだけでなく、ドロテア殿の縁戚でもある」
ちょ、ちょっとぉ、なんか怪しい話の展開になってないかしら!
戸惑ってシャル王女を見るとニヤニヤと微笑んでいる。
あっ、もしかして嵌められたのかもぉ~!
新しい学園長のエットルド子爵や他の貴族は伝統とか慣習にとらわれて、学園の改革にそれほど積極的ではなかったのかもしれない。
そこで元学園長の企みを利用して、大賢者テックスの知識を活用するとどうなるのか、彼らに知らしめたのかもしれない。
ここには多くの貴族家の生徒もいる。彼らが各貴族家に戻って今日のことを話すだろう。そうなれば、悪魔王としてのテックス個人の能力に恐れていた貴族達も、大賢者テックスの知識の有用性を理解することになるよね。
「アーリン殿、どうか手を貸していただきたい!」
もうすでにエットルド子爵は陛下や宰相達の思惑に乗ってしまったようね。真剣な表情で私に懇願してきた。
「そ、そんなことを言われても、私が勝手に決めることはできませんよぉ」
「アーリンさん、明日にでもドロテア様やあなたの先生とお会いする予定でしたわね。その時に少しだけ確認したらいかがかしら?」
くぅ~、最初からそのつもりだったのね!
シャル王女の提案を聞いて、やはり最初からこうなるように考えていたのだと確信した。
でも陛下の前で断ることなどできないわよ……。
「わかりましたわ。ですが相談はしてみますけど、どうなるか分かりません。それに先生から許可をもらったとしても、成人前の私ではお役にたてるかどうか……」
「大丈夫ですわ。すでに私だけでなく、特別騎士団のメンバーもアーリンさんの弟子のようなものですわ。それにアーリンさんの話に耳を傾けないような貴族は、もうこの国には存在しませんわ!」
それって嬉しくないんですけどぉ!
貴族相手でも平気で暴走する大叔母様と縁戚で、すでに陛下や貴族達が悪魔王として恐れるテンマ先生の愛弟子だからといわれている気が……。
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