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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?
第21話 えっ、知らなかったの?(第三者視点)
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アーリン達が部屋を出ていくと、学園長は苛立ちを隠すことなく文句を言い始める。
「准男爵ごときが偉そうにしていて、絶対に追い詰めてやる!」
学園長は午前中に元老院派閥の中で懇意にしている貴族にアーリンのことを相談に行っていた。
ロンダ領ではテックスという人物により岩塩が持ち込まれ、国が消費する塩の何年分、もしかしたら十年分以上の塩が持ち込まれたと噂になっていた。そして実際にその岩塩はすでに王都に持ち込まれ始めていた。
それまで塩の大半を国外に頼るしかなかったヴィンチザード王国としては、朗報ともいえる話である。
しかし、元老院派閥はその利権に食い込もうとしていたがうまくいっておらず、ロンダ准男爵を追い詰めて元老院派閥に頼ってくるように仕向けようと画策していた。
だから学園ではアーリンを下位のクラスに割当てて、ロンダ准男爵が娘のために学園長に泣きついてくればと考えていたのである。
相談された貴族は入学試験でアーリンが逸材だと学園長が話すと、アーリンを学園で優遇して、元老院派閥でも高位の貴族に紹介するように指示したのである。
学園長は下級貴族に恩を売り、言いなりにさせるなど簡単だと思って、相談した貴族に自信満々に請け負ってきたのである。
それなのに話し合いは最初から学園長が追い詰められる展開になり、話さえすれば相手は喜んで言いなりになると学園長は考えていたが、そんな都合よくことは進まなかったのである。
「下級貴族が生意気な!」「国への反逆だ!」
話合いに同席した教師達は元老院派閥の貴族家出身の者か、元老院派閥の力で教師になった者が多かった。だから口々に学園長に同意するように騒ぎ始めた。
学園長としては派閥貴族に大見えを切って請け負っていた手前もあり、政治的な状況など深く考えず、准男爵程度なら追い詰めて困らせてやろうと息巻いていた。
「そ、そんなことをして大丈夫なんですか?」
心配そうに学園長たちに尋ねたのは、魔術試験を担当していた教師のスージーだった。彼女は中立派閥の貴族の出であった。
「何を心配しているのだ? 准男爵など恐れる必要など全くないではないか。あの生徒や冒険者になったという家族も国への反逆者ともいえる存在だ! そんな家族のいる下級貴族など潰してしまえば良いのだ!」
怒りの収まらない学園長は完全にロンダ准男爵家を反逆者扱いするような発言をした。
「ふざけたことを言わないで! 国の英雄でもあるドロテア様を反逆者というあなた達のほうが反逆者じゃありませんか!」
スージーは涙目で立場など忘れて学園長達に反論した。
彼女が魔術の教えを受けたのは王宮魔術師のエクレアで、ドロテアの弟子ともいえる存在である。ドロテアの孫弟子ともいえるスージーは、国の英雄とも言われるドロテアを尊敬していた。だからこそ若い頃に冒険者をしていたドロテアを、反逆者のように言われるのが我慢できなかったのである。
感情に任せて叫ぶように言ったスージーであったが、さすがに学園長に対しての発言としては言い過ぎたのではないかと思い、学園長達の顔色を窺う。
スージーの予想とは違い、学園長は驚いた表情で固まっていた。それを見て戸惑っていると、学園長が焦ったようにスージーに質問してきた。
「ま、待て、なんでここにドロテア殿の名前が出るのだ?」
学園長の質問にスージーは戸惑う。彼女は尊敬するドロテアのことをエクレアから何度も聞いていた。
「ドロテア様が若い頃に冒険者をしていたのは有名な話ですよ。それにドロテア様はロンダ准男爵家の寄子であるムニル家の出身で、ドロテア様の妹が先ほどのご夫人だったはずです。ドロテア様が久しぶりに王都に来られたと聞いていましたし、まさかドロテア様を侮辱するなんて……」
敬愛するドロテアのことを侮辱されたことで、スージーは悲しそうに答えた。
「あ、あの、ご夫人がドロテア殿の妹だと……」
学園長は呆然としたように呟いた。
ドロテアは帝国から戦争を仕掛けられた時に、彼女の魔術で帝国の兵士を追い払った。そのことで英雄と言われるようになったのだが、それも随分と前のことで教師のほとんどが子供か生まれる前の話であった。
ドロテアは王宮内の権力争いを嫌い、王宮魔術師を辞めたのも学園長以外は成人する前の話でもあり、ロンダ領に引き篭もってからは噂話としてしか、ドロテアの話を聞いていなかったのである。
「えっ、知らなかったの?」
スージーは学園長や他の教師達の表情を見て、ようやく彼らがドロテアの関係者だと気付かずに反逆者呼ばわりしていたことに気付いた。
彼女の問いかけに、学園長や教師達は呆然と頷くしかできなかった。
スージーはそんな学園長達を見て、もう限界だと感じて話した。
「私は今回の件にこれ以上かかわるつもりはありません! 本日をもって学園を辞めさせていただきます!」
実は宮廷魔術師の筆頭は元老院派閥の人間で、実力も人望もあるエクレアは煙たがれていた。それでも元老院派閥の魔術師は実力もなく王宮魔術師として任官していたので、エクレアの魔術師の実力に頼り切っていた。
しかし、ドロテアが王都に来たことで、エクレアは王宮魔術師を辞めてドロテアについていくことになり、スージーにもその知らせがすでに届いていたのである。
スージーはあまりにも愚かな学園長達に見切りを付けて学園を辞め、エクレアと共にドロテアの下へ行こうと決意したのである。
「ま、待ってくれ! 何とか今回の件のとりなしをしてくれないか。上手くやってくれたら君を昇進させることを約束しよう!」
「お断りです!」
スージーは学園長の提案を即座に断ると、軽蔑するような視線を教師たちに向けながら言った。
「国の英雄であるドロテア様を侮辱したあなた達が、どうなるか楽しみですわ!」
彼女はそれだけ話すと、大混乱する部屋を後にしたのだった。
「准男爵ごときが偉そうにしていて、絶対に追い詰めてやる!」
学園長は午前中に元老院派閥の中で懇意にしている貴族にアーリンのことを相談に行っていた。
ロンダ領ではテックスという人物により岩塩が持ち込まれ、国が消費する塩の何年分、もしかしたら十年分以上の塩が持ち込まれたと噂になっていた。そして実際にその岩塩はすでに王都に持ち込まれ始めていた。
それまで塩の大半を国外に頼るしかなかったヴィンチザード王国としては、朗報ともいえる話である。
しかし、元老院派閥はその利権に食い込もうとしていたがうまくいっておらず、ロンダ准男爵を追い詰めて元老院派閥に頼ってくるように仕向けようと画策していた。
だから学園ではアーリンを下位のクラスに割当てて、ロンダ准男爵が娘のために学園長に泣きついてくればと考えていたのである。
相談された貴族は入学試験でアーリンが逸材だと学園長が話すと、アーリンを学園で優遇して、元老院派閥でも高位の貴族に紹介するように指示したのである。
学園長は下級貴族に恩を売り、言いなりにさせるなど簡単だと思って、相談した貴族に自信満々に請け負ってきたのである。
それなのに話し合いは最初から学園長が追い詰められる展開になり、話さえすれば相手は喜んで言いなりになると学園長は考えていたが、そんな都合よくことは進まなかったのである。
「下級貴族が生意気な!」「国への反逆だ!」
話合いに同席した教師達は元老院派閥の貴族家出身の者か、元老院派閥の力で教師になった者が多かった。だから口々に学園長に同意するように騒ぎ始めた。
学園長としては派閥貴族に大見えを切って請け負っていた手前もあり、政治的な状況など深く考えず、准男爵程度なら追い詰めて困らせてやろうと息巻いていた。
「そ、そんなことをして大丈夫なんですか?」
心配そうに学園長たちに尋ねたのは、魔術試験を担当していた教師のスージーだった。彼女は中立派閥の貴族の出であった。
「何を心配しているのだ? 准男爵など恐れる必要など全くないではないか。あの生徒や冒険者になったという家族も国への反逆者ともいえる存在だ! そんな家族のいる下級貴族など潰してしまえば良いのだ!」
怒りの収まらない学園長は完全にロンダ准男爵家を反逆者扱いするような発言をした。
「ふざけたことを言わないで! 国の英雄でもあるドロテア様を反逆者というあなた達のほうが反逆者じゃありませんか!」
スージーは涙目で立場など忘れて学園長達に反論した。
彼女が魔術の教えを受けたのは王宮魔術師のエクレアで、ドロテアの弟子ともいえる存在である。ドロテアの孫弟子ともいえるスージーは、国の英雄とも言われるドロテアを尊敬していた。だからこそ若い頃に冒険者をしていたドロテアを、反逆者のように言われるのが我慢できなかったのである。
感情に任せて叫ぶように言ったスージーであったが、さすがに学園長に対しての発言としては言い過ぎたのではないかと思い、学園長達の顔色を窺う。
スージーの予想とは違い、学園長は驚いた表情で固まっていた。それを見て戸惑っていると、学園長が焦ったようにスージーに質問してきた。
「ま、待て、なんでここにドロテア殿の名前が出るのだ?」
学園長の質問にスージーは戸惑う。彼女は尊敬するドロテアのことをエクレアから何度も聞いていた。
「ドロテア様が若い頃に冒険者をしていたのは有名な話ですよ。それにドロテア様はロンダ准男爵家の寄子であるムニル家の出身で、ドロテア様の妹が先ほどのご夫人だったはずです。ドロテア様が久しぶりに王都に来られたと聞いていましたし、まさかドロテア様を侮辱するなんて……」
敬愛するドロテアのことを侮辱されたことで、スージーは悲しそうに答えた。
「あ、あの、ご夫人がドロテア殿の妹だと……」
学園長は呆然としたように呟いた。
ドロテアは帝国から戦争を仕掛けられた時に、彼女の魔術で帝国の兵士を追い払った。そのことで英雄と言われるようになったのだが、それも随分と前のことで教師のほとんどが子供か生まれる前の話であった。
ドロテアは王宮内の権力争いを嫌い、王宮魔術師を辞めたのも学園長以外は成人する前の話でもあり、ロンダ領に引き篭もってからは噂話としてしか、ドロテアの話を聞いていなかったのである。
「えっ、知らなかったの?」
スージーは学園長や他の教師達の表情を見て、ようやく彼らがドロテアの関係者だと気付かずに反逆者呼ばわりしていたことに気付いた。
彼女の問いかけに、学園長や教師達は呆然と頷くしかできなかった。
スージーはそんな学園長達を見て、もう限界だと感じて話した。
「私は今回の件にこれ以上かかわるつもりはありません! 本日をもって学園を辞めさせていただきます!」
実は宮廷魔術師の筆頭は元老院派閥の人間で、実力も人望もあるエクレアは煙たがれていた。それでも元老院派閥の魔術師は実力もなく王宮魔術師として任官していたので、エクレアの魔術師の実力に頼り切っていた。
しかし、ドロテアが王都に来たことで、エクレアは王宮魔術師を辞めてドロテアについていくことになり、スージーにもその知らせがすでに届いていたのである。
スージーはあまりにも愚かな学園長達に見切りを付けて学園を辞め、エクレアと共にドロテアの下へ行こうと決意したのである。
「ま、待ってくれ! 何とか今回の件のとりなしをしてくれないか。上手くやってくれたら君を昇進させることを約束しよう!」
「お断りです!」
スージーは学園長の提案を即座に断ると、軽蔑するような視線を教師たちに向けながら言った。
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