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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?

第16話 騎士団!?

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女子の実技試験は私で終わった。でも男子の試験は人数も多いのでまだ続いていいて、先ほどの騒ぎに気付いた一部の男子が私に視線を向けている。

は、早く帰りたいよぉ~。

女子の試験官たちは集まって採点結果の集計をしているけど、他の女子からは遠巻きで視線を向けられて居心地が非常に悪い。
軽蔑するような視線はなくなったけど、友達になってくれるような雰囲気ではない。

学園生活はボッチになりそうね……。

テンマ先生のこともあり友人でも話せないことも多い。でも同年代の友達は欲しいと思っていた。

「少し話をさせてくれないかな?」

同年代の女子ではなく、女性隊長が話しかけてきた。後ろには他の女性騎士達もいる。

「はい、何でしょうか?」

「私は王宮特別騎士団の副団長をしているソフィアだ。先程は勢い余って怪我までさせてしまって申し訳なかった!」

騎士団の副団長! 隊長より格上じゃない!

他の騎士より格上だと思って勝手に女性隊長と心な中で呼んでいた。だけど私が思ったより格上の相手だったようだ。

たしか特別騎士団とは女性だけの騎士団で、女性王族や貴族夫人、それ以外の女性を護衛するための騎士団だったはず。女性騎士としては最高の騎士がそろえられているはず。

「い、いえ、戦闘訓練ではよくあることですわ」

テンマ式研修では当たり前のことで、それどころか怪我させることを推奨している。

「言い訳になるが、怪我させない程度にするつもりだった。あそこで左腕を使って防御してくると思わず……、どちらにしてもすまなかった!」

副団長のソフィアさんは神妙な表情で謝罪してくれた。その真摯な態度に彼女が男性なら、女性からの人気が出そうだと感じた。

「普段の訓練では籠手を着けているので、無意識に左手で防御してしまいましたわ。私も反則の身体強化スキルを使ってしまいました。気にしないで下さい」

テンマ先生から皮の籠手を貰っていて、普段の訓練では装備している。なんの皮か分からないけど、魔力を籠手まで広げると、ヘタな金属製の籠手より頑丈になる。

ピピちゃんの攻撃の手数だと籠手がないと防げないのよねぇ~。

「……君は勘違いしているみたいだな。実技試験で身体強化スキルの使用は禁止されてない」

えっ、どういうこと!

身体強化スキルを使って試験を受けている人はいなかったと思う。あの従者の二人も使っていなかったはずだ。

私が驚いた顔をしていると、副団長は説明を続ける。

「学園に入学する前に身体強化スキルを使えるような生徒は滅多にいない。それどころか身体強化スキルを使うことなく君があれほどの動きがしていたことが信じられないくらいだ。私も思わず何回か身体強化スキルを使ってしまったくらいだからな」

何回か……、あっ、そうだったわ!

身体強化スキルは肉体も含めすべての能力値を高めることができる。だけどその代わり消費する魔力も多くなる。それに身体強化スキルはレベルが低いと体の一部にだけしか強化ができないはずだ。
体の一部の強化だけでも魔力量が多くなければ戦闘中にずっとスキルを使い続けることはできない。だから戦闘中に何回かに分けて使っていたのだろう。

瞬間的な使い方だから、気付かなかったのかぁ……。

テンマ式研修では、まずは魔力量を増やすことから始める。そして身体強化スキルを覚えると熟練度を増やすために身体強化スキルを使い続ける。それが可能なほど魔力量は増えているはずだからだ。

え~と、テンマ式研修は非常識みたいね……。

国内でも最高レベルである特別騎士団の副団長でも、戦闘中に身体強化スキルを常に使っていないことになる。学園の試験だから手を抜いていた可能性もあるけど……。

「そ、そうなのですね。誰も身体強化スキルを使っていませんでしたから、てっきり禁止されているかと思ってしまいましたわ」

焦りながらも正直に答えると、なぜかソフィアさんは驚いた表情をした。

「君は相手が身体強化スキルを使っているのが分かるのか!?」

あぁ~、また余計なこと言ってしまったようね……。

身体強化スキルを使うと使った部位に魔力が集まって見える。それにミーシャさんやピピちゃんも研修中は全身に魔力が全身を覆うようになっているのがわかる。

テンマ先生は私相手では身体強化を使っていないけどね……。

相手の魔力の動きが分かるのは魔力感知スキルのレベルがそれなりに高くないと無理だ。

必要に応じて身体強化スキルを瞬間的に使う方が凄い技術だと思う。防御力を高めるために瞬間的になら使えるけど……。

私は自分が予想以上に非常識な存在だとようやく気付いた。

ソフィアさんの目つきが鋭くなる。しかし、敵意というよりは大好物の食べ物を見つけたシルちゃんの目つきに近い。

うわぁ!

ソフィアさんは私に近づいてきて手を握りしめてきた。

「学園を卒業したら特別騎士団に入ってくれないか。いや、すでに学園での授業など物足りないはずだ! 私からすぐに騎士団の訓練に参加できるように学園に話を通そう。一緒に国のために頑張ろう!」

近い、近いわよぉ!

ソフィアさんは顔が触れ合いそうになるほど顔を近づけて話してきた。男性より先に女性に口説かれている気分になる。後ろで話を聞いていた女性騎士達も嬉しそうに頷いている。

私は騎士になるつもりなどないから慌てて断る。

「ダ、ダメです。私は魔術師になるつもりです。だから武器もロッドを使っていますし、剣術などは苦手でまともに剣も振れません!」

「大丈夫だ! 剣術は練習でどうにでもなる。それほどの身体能力があり、身体強化スキルまで使えるなら、すぐにでも騎士団で働けるはずだ!」

「お、お断りします! 私は学園を卒業したら冒険者になるつもりです!」

あっ、またやっちゃった!

思わず大きな声で断ったので、周りの試験会場まで声が響いてしまった。

貴族家の令嬢が冒険者になろうとするなど珍しいことだとは知っている。それも騎士団からの誘いを断ってとなると、珍しいだけの話ではない。

王女様は苦笑しているだけだったけど、従者の二人は羨ましそうにしながらも、ライバル心を滾らせたような表情で私を睨んでいた。

それから武術の実技試験が全部終わるまで、私は副団長も含め騎士達に囲まれて説得され続けるのであった。


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