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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?
第15話 やらかしちゃった?
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女性隊長は当然のように試験エリアに上がってくる。試験官は驚いた表情をしていたけど、反対することもなく普通に受け入れていた。
どうしてこうなったのよぉ~!
先ほどの女性騎士が油断していたとはいえ、私が勝ったはずだ。武術の実技試験でそれほど成績を残したいわけではないので、試験結果に少しだけ加点して終わりにしてくれたほうが嬉しい。
だけど私の淡い期待は無理なようだ……。
女性隊長は試験エリアの中央に来ると、真剣な表情で剣を構えてしまう。その姿はやはり女性騎士より強いと思わせる雰囲気があり、剣を構える姿も美しいと思えるほどであった。
ダ、ダメよ!
女性隊長の雰囲気を見て研修脳が刺激される。
強い相手と戦えば、テンマ式研修の訓練になる。そしていつの間にか強い相手を見ると訓練したくなるのだ。
私は誘惑に負けてロッドを構えると、女性隊長は嬉しそうに微笑むのに気付いた。
女性隊長も訓練好きみたい!
試験官の開始の合図が聞こえる。先程とは違い慎重に間合いを詰める。女性隊長も私の動きを注視しながら間合いを詰めてくる。
緊迫した雰囲気の中、お互いが徐々に近づいていく。
そして私が女性隊長の間合いだと思っていた位置より随分手前で、女性隊長は大きく前に踏み出すと突きを放ってきた。
ガンッ!
ムリよぉーーー!
何とかロッドで突きの軌道をずらすことはできたが、あまりの速さにギリギリでしか対処できなかった。そのうえ突きは見た目以上に力強く、思わず体制を崩しそうになり、その衝撃を利用して斜め後方に弾かれるように下がって距離をとることしかできなかった。
せめて身体強化スキルを使えれば、もう少し余裕で躱せるし力負けしないと思った。でもよく考えてみると相手も身体強化スキル使えば一緒だと気付いた。
力も素早さも相手のほうが上である。どう考えても勝てそうにない。
勝てそうにないけど……。
不思議と自分が楽しくなっているのか顔がほころぶのに分かる。
ピピちゃんとの研修も勝てなくなってけど、テンマ先生やミーシャさんとは最初から勝てなかった。勝てない相手に挑むのは、勉強になるし自分を成長させてくれた。
負けたとしても得るものも多いことは分かっているのよ!
女性隊長がまた間合いを詰めようと前に出てきたので、私は咄嗟に腰のベルトにある訓練用のクナイを投擲する。女性隊長は予想外の攻撃だったはずなのに、余裕でクナイを剣で弾いた。
私は全力で女性隊長に近づきながら、今度は二本のクナイを同時に投擲する。今度も余裕で弾いていたが、私はその隙に間合いを詰める。
あと一歩で自分の間合いになりそうだったけど、女性隊長が剣を振り下ろしてきた。私は振り下ろされた剣をロッドで体の横に軌道をずらす。体が横に弾かれるような衝撃を耐えながら、がら空きの顔面に向かってロッドを突き出した。
ギャンッ、ゴキッ!
残念なことにロッドが届く前に女性隊長の剣が咄嗟に出した左腕に当たっていた。
まさかそんな手を使うなんて!
女性隊長は振り下ろした剣を地面に当て、その反動を利用して剣の軌道を変え、私の脇腹を切りつけたのが視線の奥で見えていた。
私は咄嗟に体を庇おうと左腕だけ身体強化を無意識で使って体を守ってしまった。それでも地面で弾かれたことで勢いの増した剣は、容赦なく私の左腕を折ってしまった。
痛覚耐性で痛みを無視して戦闘を続けられなくもなかったが、反則である身体強化スキルを使ってしまったので戦闘をやめる。
「参りました!」
軽く頭を下げて負けを宣言して顔を上げると、女性隊長は驚きの表情で固まっていた。試験を見ていた試験官や生徒たちも沈黙しているのか静かになっていた。
私はその雰囲気に戸惑って、とりあえず謝罪する。
「すみません。禁止されている身体強化スキルを使ってしまい、申し訳ありませんでした!」
「「「身体強化!」」」
女性隊長や周りの人達も声を揃えて言ったので、責められている気になる。
「あっ、やっぱり反則だから試験は失格ですかねぇ~」
苦笑いしながら頭を掻こうとして左手を上げる。でも左手は骨折していて、不自然な方向に曲がっていて頭を掻くことができなかった。
「ポ、ポーションを持ってこい!」
女性隊長が大きな声で他の女性騎士に命令した。
「あっ、大丈夫です。自前でポーションは持ってます!」
私はそう話すと自分で治療を始める。
グキィ!
ポーションを飲む前に、折れた左腕を正常な位置に右手で引っ張って戻す。
痛覚耐性で痛みは抑えられているけど、戻すほうが痛いのよねぇ~。
痛みで少し顔を顰めてしまったけど、何度も経験したことなので慣れた感じで治療する。左手が正常な位置に戻ったのを確認してポーションを収納から出す。
「「「収納!」」」
ああ、色々とやっちゃったかなぁ~。
もう今さらという感じなので、気にせずポーションを飲み、ポーションで骨が繋がったと分かると、手を開いたり閉じたりして動作に違和感がないか確認する。
そして問題ないと分かり、念のためにステータスを確認すると物理攻撃耐性スキルがレベルアップしていた。
久しぶりのレベルアップよぉ~!
ロンダを出てから初めてのスキルレベルアップに満面の笑みを浮かべる。
試験は失格になったけど、結果的には良かったわ!
「この通り怪我は大丈夫です。試験は終わりでよろしいですか?」
試験官の女性に尋ねると、彼女は首をコクコクと頷いて答えてくれた。
誰もが驚いた表情をしていてけど、他の試験会場からも視線が注がれているのにも気づいていたので、逃げるように試験エリアから下りことにする。
私が他の生徒がいるほうへ歩いていくと、まるで私を避けるように離れていく。
も、もしかしてやらかしちゃったのかなぁ~?
よく見ると怯えるように私を見つめる生徒も多い。王女様は微笑んでいるような気がしたけど、従者の二人は驚きの表情で私を見つめていた。
早く帰りたいよぉ~!
完全にやらかしたとようやく自覚して、早く逃げ帰りたくなるのであった。
どうしてこうなったのよぉ~!
先ほどの女性騎士が油断していたとはいえ、私が勝ったはずだ。武術の実技試験でそれほど成績を残したいわけではないので、試験結果に少しだけ加点して終わりにしてくれたほうが嬉しい。
だけど私の淡い期待は無理なようだ……。
女性隊長は試験エリアの中央に来ると、真剣な表情で剣を構えてしまう。その姿はやはり女性騎士より強いと思わせる雰囲気があり、剣を構える姿も美しいと思えるほどであった。
ダ、ダメよ!
女性隊長の雰囲気を見て研修脳が刺激される。
強い相手と戦えば、テンマ式研修の訓練になる。そしていつの間にか強い相手を見ると訓練したくなるのだ。
私は誘惑に負けてロッドを構えると、女性隊長は嬉しそうに微笑むのに気付いた。
女性隊長も訓練好きみたい!
試験官の開始の合図が聞こえる。先程とは違い慎重に間合いを詰める。女性隊長も私の動きを注視しながら間合いを詰めてくる。
緊迫した雰囲気の中、お互いが徐々に近づいていく。
そして私が女性隊長の間合いだと思っていた位置より随分手前で、女性隊長は大きく前に踏み出すと突きを放ってきた。
ガンッ!
ムリよぉーーー!
何とかロッドで突きの軌道をずらすことはできたが、あまりの速さにギリギリでしか対処できなかった。そのうえ突きは見た目以上に力強く、思わず体制を崩しそうになり、その衝撃を利用して斜め後方に弾かれるように下がって距離をとることしかできなかった。
せめて身体強化スキルを使えれば、もう少し余裕で躱せるし力負けしないと思った。でもよく考えてみると相手も身体強化スキル使えば一緒だと気付いた。
力も素早さも相手のほうが上である。どう考えても勝てそうにない。
勝てそうにないけど……。
不思議と自分が楽しくなっているのか顔がほころぶのに分かる。
ピピちゃんとの研修も勝てなくなってけど、テンマ先生やミーシャさんとは最初から勝てなかった。勝てない相手に挑むのは、勉強になるし自分を成長させてくれた。
負けたとしても得るものも多いことは分かっているのよ!
女性隊長がまた間合いを詰めようと前に出てきたので、私は咄嗟に腰のベルトにある訓練用のクナイを投擲する。女性隊長は予想外の攻撃だったはずなのに、余裕でクナイを剣で弾いた。
私は全力で女性隊長に近づきながら、今度は二本のクナイを同時に投擲する。今度も余裕で弾いていたが、私はその隙に間合いを詰める。
あと一歩で自分の間合いになりそうだったけど、女性隊長が剣を振り下ろしてきた。私は振り下ろされた剣をロッドで体の横に軌道をずらす。体が横に弾かれるような衝撃を耐えながら、がら空きの顔面に向かってロッドを突き出した。
ギャンッ、ゴキッ!
残念なことにロッドが届く前に女性隊長の剣が咄嗟に出した左腕に当たっていた。
まさかそんな手を使うなんて!
女性隊長は振り下ろした剣を地面に当て、その反動を利用して剣の軌道を変え、私の脇腹を切りつけたのが視線の奥で見えていた。
私は咄嗟に体を庇おうと左腕だけ身体強化を無意識で使って体を守ってしまった。それでも地面で弾かれたことで勢いの増した剣は、容赦なく私の左腕を折ってしまった。
痛覚耐性で痛みを無視して戦闘を続けられなくもなかったが、反則である身体強化スキルを使ってしまったので戦闘をやめる。
「参りました!」
軽く頭を下げて負けを宣言して顔を上げると、女性隊長は驚きの表情で固まっていた。試験を見ていた試験官や生徒たちも沈黙しているのか静かになっていた。
私はその雰囲気に戸惑って、とりあえず謝罪する。
「すみません。禁止されている身体強化スキルを使ってしまい、申し訳ありませんでした!」
「「「身体強化!」」」
女性隊長や周りの人達も声を揃えて言ったので、責められている気になる。
「あっ、やっぱり反則だから試験は失格ですかねぇ~」
苦笑いしながら頭を掻こうとして左手を上げる。でも左手は骨折していて、不自然な方向に曲がっていて頭を掻くことができなかった。
「ポ、ポーションを持ってこい!」
女性隊長が大きな声で他の女性騎士に命令した。
「あっ、大丈夫です。自前でポーションは持ってます!」
私はそう話すと自分で治療を始める。
グキィ!
ポーションを飲む前に、折れた左腕を正常な位置に右手で引っ張って戻す。
痛覚耐性で痛みは抑えられているけど、戻すほうが痛いのよねぇ~。
痛みで少し顔を顰めてしまったけど、何度も経験したことなので慣れた感じで治療する。左手が正常な位置に戻ったのを確認してポーションを収納から出す。
「「「収納!」」」
ああ、色々とやっちゃったかなぁ~。
もう今さらという感じなので、気にせずポーションを飲み、ポーションで骨が繋がったと分かると、手を開いたり閉じたりして動作に違和感がないか確認する。
そして問題ないと分かり、念のためにステータスを確認すると物理攻撃耐性スキルがレベルアップしていた。
久しぶりのレベルアップよぉ~!
ロンダを出てから初めてのスキルレベルアップに満面の笑みを浮かべる。
試験は失格になったけど、結果的には良かったわ!
「この通り怪我は大丈夫です。試験は終わりでよろしいですか?」
試験官の女性に尋ねると、彼女は首をコクコクと頷いて答えてくれた。
誰もが驚いた表情をしていてけど、他の試験会場からも視線が注がれているのにも気づいていたので、逃げるように試験エリアから下りことにする。
私が他の生徒がいるほうへ歩いていくと、まるで私を避けるように離れていく。
も、もしかしてやらかしちゃったのかなぁ~?
よく見ると怯えるように私を見つめる生徒も多い。王女様は微笑んでいるような気がしたけど、従者の二人は驚きの表情で私を見つめていた。
早く帰りたいよぉ~!
完全にやらかしたとようやく自覚して、早く逃げ帰りたくなるのであった。
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