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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?
第10話 男同士の会話②(第三者視点)
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アルベルトは中途半端な情報だけで、レオンが暴走するのではないかと心配になり、しっかりと説明することにした。
「テックス殿が『知識の部屋』に登録した『育成方法について』を読んだかね?」
『知識の部屋』は前世の著作権管理システムのようなものである。契約魔術と同じように登録者と利用者の約束事を管理してくれるのである。
登録者は実名ではなく匿名での公開も可能で、テンマもテックス名義で登録した知識を公開している。だからテンマはテックスとして名前が知られているのである。
「はい……、ですが王宮では信じられないという人がほとんどです」
この世界では能力を能力値として数値で確認できるのである。一般的には能力値を上げるにはレベルアップするというのが常識で、実際にレベルアップにより能力値が上がるのは間違いなかった。
しかし、テックスの『育成方法について』では能力値を上昇させてからレベルアップするべきだと書かれている。レベルアップ以外で能力値を上げる方法が確立していないので、信じる人が少ないのだ。
「アーリンがレベルアップしていないと分かれれば、お前も信じるのではないか?」
レオンはアーリンの身体能力を訓練で見ていた。だからレベルが一桁だと言われて驚いたのである。レベルを上げないで能力値が上がるなら、『育成方法について』はこれまでの常識を全く変えることになるのだ。
まだアーリンのレベルを確認していないので、レオンは信じられない気持ちのほうが強かった。
そのことをアルベルトは感じながらも説明を続ける。
「テックス殿の理論ではレベルアップによる能力の上昇は割合だということだ。100の能力値の1割なら10能力が上がる。1000の能力値の1割なら100能力が上がる。レベルが低い段階で能力値の上昇ができれば、能力値の差は大きくなるのは誰でも理解できることだ。そしてそれを可能にしたのがテンマ式研修なんだよ」
レオンもアルベルトの説明は何となくだが理解できる。だが簡単にこれまでの常識を切り替えることができないだけであった。
そして納得したくないもう一つの理由があった。
「でもアーリンのあの姿は……」
レオンは何より、アーリンが怪我しながらも笑顔を見せていたことに恐怖すら覚えていたのだ。可愛いい妹にそんなことをさせる相手の知識など受け入れたくなかった。
「はははは、あれを最初に見たときは恐ろしかったなぁ。だがテンマ式研修を始めると、みんな同じような顔になるんだよ!」
「…………」
アルベルトの話を聞いても理解できず、レオンは沈黙しただけだった。その様子を見てアルベルトはさらに説明する。
「大変な思いをしても、レベルアップすると報われたような気分になり、自然に笑みが浮かぶんじゃないかな。テンマ式研修ではレベルアップしなくても自分の能力値が上がったり、スキルを取得したりする。それが分かると、辛ければ辛いほど自分の成長につながると感じて、自然に笑みが零れるのさ」
「そう言われると何となくですが理解できる気がします……」
レオンもようやく少しだけ納得できたようだがまだ懐疑的な感じだった。
「実際にテンマ式研修を自分で初めてみないと理解はできないだろう。だが完全に理解ができないからといって、妹によそよそしくなるのは良くないと私は思うぞ?」
アルベルトは王宮から帰ってくると、レオンがアーリンに対してよそよそしくなっていたことに気付いていた。
「も、申し訳ありません……」
レオンは素直に謝罪した。
「それと間違ってもテンマ君に突っかかるんじゃないぞ。ゴドウィン侯爵家の令嬢がテンマ君と揉めて、侯爵と嫡男のエーメイ殿が謝罪に向かったそうだ。お前が軽率な行動をすれば、我が家はどうなるか考えてくれ!」
「!!!」
アルベルトは先ほどまでの父親の顔ではなく、ロンダ家の当主として真剣な表情でレオンに話した。
レオンは何となくテンマに嫉妬のような感情が湧き上がっていた。しかし、寄り親であるゴドウィン侯爵家の当主と嫡男が一緒に謝罪に向かったと聞いて、ようやくテンマがそれほどの相手だと認識したのだった。
アルベルトはレオンの顔色を見て、軽率な行動をしなくなるだろうと感じて安心した。すぐに父親の顔に戻り全然関係ない話をする。
「そういえば去年はレオンと勝負しなかったなぁ」
突然、話が変わったことでレオンは驚いた。だがレオンとしてもそのことは気になっていた。二年前にはあと少しで父親に勝てそうだったのだ。それから父親を追い越そうと努力を続けていた。
「そろそろ父上に勝てると思っています!」
「そうかぁ、まだまだ無理じゃないかなぁ」
それを聞いたレオンは、アルベルトが去年は理由を付けて勝負から逃げていたことに文句を言うとした。
だがアルベルトが妙に自信ありげにしているのを見て、文句を言うのをやめて考え込む。そしてあることに気が付いた。
「も、もしかして父上もテンマ式研修を!」
アルベルトは意味ありげにレオンを見る。そして風呂を上がりながら言った。
「父親である私に、簡単に勝てると思うなよ。はははは」
「そ、そんなのズルいではありませんかぁーーー!」
レオンは叫びながらアルベルトの後を追って風呂を出ていくのであった。
「テックス殿が『知識の部屋』に登録した『育成方法について』を読んだかね?」
『知識の部屋』は前世の著作権管理システムのようなものである。契約魔術と同じように登録者と利用者の約束事を管理してくれるのである。
登録者は実名ではなく匿名での公開も可能で、テンマもテックス名義で登録した知識を公開している。だからテンマはテックスとして名前が知られているのである。
「はい……、ですが王宮では信じられないという人がほとんどです」
この世界では能力を能力値として数値で確認できるのである。一般的には能力値を上げるにはレベルアップするというのが常識で、実際にレベルアップにより能力値が上がるのは間違いなかった。
しかし、テックスの『育成方法について』では能力値を上昇させてからレベルアップするべきだと書かれている。レベルアップ以外で能力値を上げる方法が確立していないので、信じる人が少ないのだ。
「アーリンがレベルアップしていないと分かれれば、お前も信じるのではないか?」
レオンはアーリンの身体能力を訓練で見ていた。だからレベルが一桁だと言われて驚いたのである。レベルを上げないで能力値が上がるなら、『育成方法について』はこれまでの常識を全く変えることになるのだ。
まだアーリンのレベルを確認していないので、レオンは信じられない気持ちのほうが強かった。
そのことをアルベルトは感じながらも説明を続ける。
「テックス殿の理論ではレベルアップによる能力の上昇は割合だということだ。100の能力値の1割なら10能力が上がる。1000の能力値の1割なら100能力が上がる。レベルが低い段階で能力値の上昇ができれば、能力値の差は大きくなるのは誰でも理解できることだ。そしてそれを可能にしたのがテンマ式研修なんだよ」
レオンもアルベルトの説明は何となくだが理解できる。だが簡単にこれまでの常識を切り替えることができないだけであった。
そして納得したくないもう一つの理由があった。
「でもアーリンのあの姿は……」
レオンは何より、アーリンが怪我しながらも笑顔を見せていたことに恐怖すら覚えていたのだ。可愛いい妹にそんなことをさせる相手の知識など受け入れたくなかった。
「はははは、あれを最初に見たときは恐ろしかったなぁ。だがテンマ式研修を始めると、みんな同じような顔になるんだよ!」
「…………」
アルベルトの話を聞いても理解できず、レオンは沈黙しただけだった。その様子を見てアルベルトはさらに説明する。
「大変な思いをしても、レベルアップすると報われたような気分になり、自然に笑みが浮かぶんじゃないかな。テンマ式研修ではレベルアップしなくても自分の能力値が上がったり、スキルを取得したりする。それが分かると、辛ければ辛いほど自分の成長につながると感じて、自然に笑みが零れるのさ」
「そう言われると何となくですが理解できる気がします……」
レオンもようやく少しだけ納得できたようだがまだ懐疑的な感じだった。
「実際にテンマ式研修を自分で初めてみないと理解はできないだろう。だが完全に理解ができないからといって、妹によそよそしくなるのは良くないと私は思うぞ?」
アルベルトは王宮から帰ってくると、レオンがアーリンに対してよそよそしくなっていたことに気付いていた。
「も、申し訳ありません……」
レオンは素直に謝罪した。
「それと間違ってもテンマ君に突っかかるんじゃないぞ。ゴドウィン侯爵家の令嬢がテンマ君と揉めて、侯爵と嫡男のエーメイ殿が謝罪に向かったそうだ。お前が軽率な行動をすれば、我が家はどうなるか考えてくれ!」
「!!!」
アルベルトは先ほどまでの父親の顔ではなく、ロンダ家の当主として真剣な表情でレオンに話した。
レオンは何となくテンマに嫉妬のような感情が湧き上がっていた。しかし、寄り親であるゴドウィン侯爵家の当主と嫡男が一緒に謝罪に向かったと聞いて、ようやくテンマがそれほどの相手だと認識したのだった。
アルベルトはレオンの顔色を見て、軽率な行動をしなくなるだろうと感じて安心した。すぐに父親の顔に戻り全然関係ない話をする。
「そういえば去年はレオンと勝負しなかったなぁ」
突然、話が変わったことでレオンは驚いた。だがレオンとしてもそのことは気になっていた。二年前にはあと少しで父親に勝てそうだったのだ。それから父親を追い越そうと努力を続けていた。
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アルベルトは意味ありげにレオンを見る。そして風呂を上がりながら言った。
「父親である私に、簡単に勝てると思うなよ。はははは」
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レオンは叫びながらアルベルトの後を追って風呂を出ていくのであった。
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