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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?
第9話 男同士の会話①(第三者視点)
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ロンダ准男爵家の当主であるアルベルトは迎賓館のお風呂に息子であるレオンと入っていた。シャワーをかけ湯代わりにしてからゆっくりと湯船に体を沈める。
「ふぅ~」
肩まで湯船に入ると大きく息を吐き出した。昼食を国王や宰相と一緒に食べ、夕方までロンダの現状とテンマのことを報告した。
アルベルトは国王や宰相に信じてもらえないのではと心配していた。しかし、バルドーからも話を聞いていた彼らは難しそうな表情をしていたが、疑うような感じではなかった。
そして内々ではあるが男爵位への陞爵と、元老院との調整ができれば子爵位への陞爵もありうると話があった。前々から男爵位へ陞爵の話は出ていたが、何年も元老院やその影響を受ける領地持ち貴族から妨害工作にあって実現していなかった。
しかし、ロンダではダンジョンの発見や岩塩を大量に手に入れた。塩は国外からの輸入に頼っているヴィンチザート王国にとっては、外交的にも優位に立てるようになる。
子爵位へ陞爵させても問題ない功績だが、妬みや利権を狙って元老院や一部貴族が妨害工作をしてくる可能性があるのだ。
アルベルトとしてはそれほど陞爵に固執していないが、今年の王都滞在は大変なことになると感じていた。
湯船に体を沈め、息を吐き出したことで、不安や精神的な疲れも吐き出したような気になる。
アルベルトの隣にレオンもアルベルトの風呂の入り方を真似て入ってきた。
「おっ、うっ、ふはぁ~」
レオンは初めてのお風呂に戸惑いながらも、肩までお湯に入ると大きく息を吐き出した。
「風呂は気持ち良いだろう? すぐに風呂の虜になるぞ」
「うはぁ~、今日一日で次々と驚くことがありました。まるでそれらが溶け出してくような不思議な感じです」
アルベルトは苦笑する。
「私はこの半年の間、それがずっと続いてきたのだ。どれほど大変だったことか……」
レオンは今日のようなことが半年も続くことを想像して恐ろしくなる。
(絶対に無理だな!)
半年も驚きの連続では心が折れてしまいそうだとレオンは思った。そして父アルベルトのことを尊敬できるとしみじみと感じていた。
「父上、テンマという少年はそれほどなのですか?」
アルベルトは息子の問いかけに少し考えてから答えた。
「そうだな。テンマ君は古の勇者と賢者を一人にしたような人物だと考えなさい」
レオンは父親であるアルベルトの話を大袈裟だと思って聞いていた。確かに王宮でもテックスのことは賢者だと噂になり、テックスがテンマだと聞いて驚いた。だが、世界を滅ぼそうとした魔王を倒した勇者や賢者とテンマを同列にして語れないと感じたのだ。
「父上、彼が凄いことはこの建物で理解はできます。ですが……」
レオンはテンマのことをすでに別格の存在であることは気付いていた。だがどうしても納得できないことがあった。
「何なんだ?」
アルベルトが不思議そうに尋ねた。
「彼はアーリンに何を教えたのですか? あの可愛らしかったアーリンが─」
レオンは吐き出すようにアルベルトに今日あったことを話した。
アーリンと訓練をしようとしたこと。騎士に止められて仕方なくアーリンと騎士の訓練を先に見たこと。そこで驚くほど強いアーリンを見てしまったこと。
そして、何より口から血を垂れ流しながら不気味な笑顔を見せたアーリンのことを……。
「アーリンが狂ったのかと心配になりました!」
レオンは必死にアルベルトに訴えたが、アルベルトは苦笑いを浮かべるだけであった。
「まあ、ロンダではそのような研修が普通に行われるようになっているなぁ」
普通に答えるアルベルトにレオンは興奮して言った。
「アーリンは女の子ですよ。あれは異常としか思えません!」
「まあ、そう言うな。アーリンは叔母上に憧れていて、冒険者になりたがっていたことはお前も知っているだろう?」
「それは魔術師としてです! あんな戦闘訓練など必要ありません!」
アルベルトはレオンの剣幕に困ったような表情を見せていた。
「お前は魔法契約をしたけど、まだテンマ君のことを少し聞いただけだ。彼が本当に凄いのは研修という育成方法なのだ。それを知ればお前も納得するはずだよ」
「どんな育成をすればあんなことになるのですか。あれでは魔術師ではなく騎士として育成しているのではありませんか!」
「アーリンは騎士としての素質がないからこそ、テンマ君は先にそちらの訓練をさせると聞いているよ」
「あ、あれで素質が無い……、信じられません!」
レオンはすでにアーリンに勝てないとではと感じていた。そんなことを信じたくもなかった。
「アーリンのレベルはまだ一桁だよ。テンマ君は素質のないアーリンをレベル上げしないであそこまで育成したんだよ。それがどれほど凄いことかお前でも分かるだろ?」
アルベルトはさらに驚愕の事実をレオンに話した。レオンはアルベルトの顔を見つめて固まってしまった。
「ふぅ~」
肩まで湯船に入ると大きく息を吐き出した。昼食を国王や宰相と一緒に食べ、夕方までロンダの現状とテンマのことを報告した。
アルベルトは国王や宰相に信じてもらえないのではと心配していた。しかし、バルドーからも話を聞いていた彼らは難しそうな表情をしていたが、疑うような感じではなかった。
そして内々ではあるが男爵位への陞爵と、元老院との調整ができれば子爵位への陞爵もありうると話があった。前々から男爵位へ陞爵の話は出ていたが、何年も元老院やその影響を受ける領地持ち貴族から妨害工作にあって実現していなかった。
しかし、ロンダではダンジョンの発見や岩塩を大量に手に入れた。塩は国外からの輸入に頼っているヴィンチザート王国にとっては、外交的にも優位に立てるようになる。
子爵位へ陞爵させても問題ない功績だが、妬みや利権を狙って元老院や一部貴族が妨害工作をしてくる可能性があるのだ。
アルベルトとしてはそれほど陞爵に固執していないが、今年の王都滞在は大変なことになると感じていた。
湯船に体を沈め、息を吐き出したことで、不安や精神的な疲れも吐き出したような気になる。
アルベルトの隣にレオンもアルベルトの風呂の入り方を真似て入ってきた。
「おっ、うっ、ふはぁ~」
レオンは初めてのお風呂に戸惑いながらも、肩までお湯に入ると大きく息を吐き出した。
「風呂は気持ち良いだろう? すぐに風呂の虜になるぞ」
「うはぁ~、今日一日で次々と驚くことがありました。まるでそれらが溶け出してくような不思議な感じです」
アルベルトは苦笑する。
「私はこの半年の間、それがずっと続いてきたのだ。どれほど大変だったことか……」
レオンは今日のようなことが半年も続くことを想像して恐ろしくなる。
(絶対に無理だな!)
半年も驚きの連続では心が折れてしまいそうだとレオンは思った。そして父アルベルトのことを尊敬できるとしみじみと感じていた。
「父上、テンマという少年はそれほどなのですか?」
アルベルトは息子の問いかけに少し考えてから答えた。
「そうだな。テンマ君は古の勇者と賢者を一人にしたような人物だと考えなさい」
レオンは父親であるアルベルトの話を大袈裟だと思って聞いていた。確かに王宮でもテックスのことは賢者だと噂になり、テックスがテンマだと聞いて驚いた。だが、世界を滅ぼそうとした魔王を倒した勇者や賢者とテンマを同列にして語れないと感じたのだ。
「父上、彼が凄いことはこの建物で理解はできます。ですが……」
レオンはテンマのことをすでに別格の存在であることは気付いていた。だがどうしても納得できないことがあった。
「何なんだ?」
アルベルトが不思議そうに尋ねた。
「彼はアーリンに何を教えたのですか? あの可愛らしかったアーリンが─」
レオンは吐き出すようにアルベルトに今日あったことを話した。
アーリンと訓練をしようとしたこと。騎士に止められて仕方なくアーリンと騎士の訓練を先に見たこと。そこで驚くほど強いアーリンを見てしまったこと。
そして、何より口から血を垂れ流しながら不気味な笑顔を見せたアーリンのことを……。
「アーリンが狂ったのかと心配になりました!」
レオンは必死にアルベルトに訴えたが、アルベルトは苦笑いを浮かべるだけであった。
「まあ、ロンダではそのような研修が普通に行われるようになっているなぁ」
普通に答えるアルベルトにレオンは興奮して言った。
「アーリンは女の子ですよ。あれは異常としか思えません!」
「まあ、そう言うな。アーリンは叔母上に憧れていて、冒険者になりたがっていたことはお前も知っているだろう?」
「それは魔術師としてです! あんな戦闘訓練など必要ありません!」
アルベルトはレオンの剣幕に困ったような表情を見せていた。
「お前は魔法契約をしたけど、まだテンマ君のことを少し聞いただけだ。彼が本当に凄いのは研修という育成方法なのだ。それを知ればお前も納得するはずだよ」
「どんな育成をすればあんなことになるのですか。あれでは魔術師ではなく騎士として育成しているのではありませんか!」
「アーリンは騎士としての素質がないからこそ、テンマ君は先にそちらの訓練をさせると聞いているよ」
「あ、あれで素質が無い……、信じられません!」
レオンはすでにアーリンに勝てないとではと感じていた。そんなことを信じたくもなかった。
「アーリンのレベルはまだ一桁だよ。テンマ君は素質のないアーリンをレベル上げしないであそこまで育成したんだよ。それがどれほど凄いことかお前でも分かるだろ?」
アルベルトはさらに驚愕の事実をレオンに話した。レオンはアルベルトの顔を見つめて固まってしまった。
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