転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです！

番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学？

第8話 久しぶりよぉ！

「おい、やり過ぎだ！」

お兄様が騎士に怒鳴っているのが聞こえた。

私は痛みを我慢して必死に起き上がるとする。

「ゴヒュッ！」

あっ、ろっ骨が折れたみたい！

口の中に血の味を感じる。

ひ、久しぶりよぉ～！

ロンダでテンマ式研修訓練をしている頃は毎日のようにこれを味わっていた。

「お前は妹を殺そうとしたのか！」

あぁ、お兄様はテンマ式研修を初めて見るのね。

できればこの状態で生命力HPが減るのを待って、生命力HPの底上げがしたかった。
生命力HPも死ぬ寸前まで減らしてから回復させると底上げができるのだ。

しかし、勘違いしているお兄様が騎士に詰め寄っている。仕方ないので収納から回復ポーションを出して飲むことにする。

震える手にポーションを出して騎士の様子を見る。彼はお兄様に詰め寄られているのに、気にせず不気味な笑顔を見せていた。

くふふふ、彼もテンマ式研修に魅せられているのねぇ。

「絶対に許さないぞ！　主家の家族に手をかけたのだ。極刑を免れると思うな！」

もう、お兄様ったらぁ～。

急いで回復ポーションを飲むと全身の痛みが無くなる。急いで立ち上がるとお兄様に話しかける。

「お兄様、私は大丈夫ですよ！」

「なっ、本当に大丈夫なのか。く、口から血が出ているじゃないか！」

オロオロと心配してくれる優しいお兄様は大好きだけど……。

お兄様に歩いて近寄りながら、クリアの魔法で血や汚れをきれいにする。

「お兄様、最近のロンダではこれが普通の訓練なのですわ！」

お兄様は何を言っているんだというような表情で固まってしまった。詳しく説明するのは面倒なので先に騎士に声をかける。

「あそこから蹴りで反撃してくるとは思いませんでしたわ。私もまだまだ修行が足りないようですね」

「いえ、私も油断していました。まさか剣を持つ手に攻撃をしてくるとは思いませんでした」

「ふふふっ、ピピちゃんの戦闘を参考にさせていただきましたわ」

「ああ、なるほどぉ。小柄なピピ殿の戦法ですか。それなら納得できます」

「ホホホホ」「ハハハハ」

七歳のピピちゃんの戦闘を参考にするというのも変だが、彼もピピちゃんの実力を知っているので思わず笑い合ってしまった。

そんな私と騎士のやり取りをお兄様は驚愕の表情で交互に見ている。

「これを飲みなさい」

私は収納から回復ポーションを出して彼に差し出す。

「そうですね。この程度の怪我だと生命力HPもこれ以上減らないから、生命力HPの底上げは難しいでしょう」

テンマ式研修を知っている彼は残念そうに回復ポーションを受け取ると、口で蓋を開けて飲み干した。

彼は回復したのを確認するように潰れていた手を何度も開いたり閉じたりして確認していた。そして特に問題がなかったのだろう笑顔で話した。

「いやぁ、久しぶりに痛覚耐性スキルがレベルアップしましたよ。ハハハハ」

「あら、それはおめでとう。やっぱり訓練はテンマ式じゃないと楽しくありませんわ。ホホホホ」

久しぶりのテンマ式研修で心が浮き立つように感じる。

さあ、次の訓練よ！

私と騎士との会話を呆然と聞いていたお兄様に声をかける。

「お兄様、これで一緒に訓練できますわね。お相手をお願いします！」

「えっ、く、訓練。いや、でも……」

お兄様はお父様の言ったことをまだ気にしているのかしら？

戸惑ったお兄様の表情を可愛いと思ってしまった。だからこそ成長した私をお兄様に見てほしい。なぜか騎士が苦笑を浮かべていた。

「訓練中に申し訳ありません。お昼の準備が整いました。ソロテア様がお待ちになっています」

もう、せっかく楽しくなってきたのにぃ～！

いつの間にかお昼になっていたようで、訓練場にメイドが下りてきて声をかけてきた。

せめてお兄様との訓練を終わってからにしたいけど、祖母様が待っているなら……。

「アーリン様、訓練はいつでもできます。ソロテア様を待たせるわけにはいきません。今日の訓練は終了にしましょう」

なぜかお兄様は同意するように首をコクコクと縦に振っていた。

「わかりました。祖母様をあまり待たせるのは失礼ですわ。お兄様、訓練はまた今度お願いしますね？」

なぜかお兄様は首を縦に振ってくれない。でも祖母様を待たせるのも失礼なので、気にせずに急いで昼食に向かうことにした。


　　　◇　　　◇　　　◇　　　◇


なぜか昼食中もお兄様はどこかよそよそしかった。私を見ているかと思って目を合わせると、露骨に目をそらしてしまう。

昼食を終えると逃げるように仕事に行くといって王宮へ行ってしまった。

ちょっと寂しかったけど、我が儘を言ってはダメだと自分に言い聞かせる。

昼食が終わり暫くするとお母様は上機嫌でゴドウィン侯爵家から戻ってきた。
商談が上手くいったのだろう。

でもそれからすぐにゴドウィン侯爵家から緊急の使者が来ていた。後で聞いた話だけど、テンマ先生とゴドウィン侯爵家のお嬢様が揉めたようだ。

夕方にはお父様とお兄様が一緒に王宮から戻ってきた。お父様は疲れた様子で、夕食を食べるとお兄様と二人でお風呂に入りに行ったのである。