転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?

第6話 執事バルドー

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見知らぬ老齢の執事が突然しかけてきて、お兄様はキョロキョロと家族の顔とバルドー様を交互に見ている。当然といえば当然といえる反応だね。

「王宮の仕事を辞めてロンダに行っていると聞いていましたが、戻ってきたのですか?」

祖母様は落ち着いた様子でバルドー様に尋ねた。

「私はテンマ様の執事でございます。テンマ様が王都に来られたので一緒に王都に参りました」

バルドー様は大叔母様ドロテアと冒険者パーティーを組んでいた人物で、大叔母様ドロテアが冒険者を辞めて王宮魔術師になると、彼も王宮の諜報機関で働いていた。
半年前に大叔母様ドロテアの紹介でテンマ様の執事としてロンダで働き始めていた。

「私達が王都に到着したことに気付いて、顔を見せてくれたのかしら?」

お母様が尋ねた。

「はい、王都には色々と教えてくれる人達が私にもまだ多く残っています。昨日王都に到着したと聞いたのでご挨拶に伺いました。ちょうどお役になれるようなお話をしていましたので、声をかけてしまいました」

「そういえば、テンマさんから何か預かっていると言っていたわね。どんなものを預かってきてくれたのかしら?」

「ソフィア夫人とアーリン様、それにソロテア様のためにテンマ様に前々から頼んでいたものです。ロンダの迎賓館と同じような建物を、こちらの敷地内に設置できるようにお持ちしました」

嘘、うそ、ウソォーーー!

嬉しさのあまりお母様と笑顔で見つめ合ってしまう。

ロンダの迎賓館はテンマ先生が作ってくださった建物だ。大浴場やエステ用の部屋、ゆっくりと休憩できる応接室もあり、宿泊できるような部屋まである。

あまりにも快適すぎる環境だったので、ロンダを旅立つ前は迎賓館を自宅のような感じで生活していた。

「あまり期待されては困りますねぇ。こちらの敷地に合わせ、ロンダの迎賓館より小さくなっております。ただアーリン様が訓練できるようにと、テンマ様が地下に研修施設まで用意してくれています」

テンマ先生は何て素晴らしいのぉーーー!

あれで偏った女性の趣味や、性格がまともなら最高なのだけどぉ~。

「どういうことかしら。話を聞くとお土産で持ってくるような感じで、建物を持ってきたように聞こえたのだけど……」

祖母様は呟くように話した。

その通りよぉーーー!

テンマ先生のことを知らなければ、そんな非常識な話を信じられないのは当然のことだと思う。でも先生なら迎賓館と言われるような建物でも簡単に作ることは可能で、先生の作った魔道具なら建物ごと収納して運ぶことも可能なのである。

そのことをお母様が説明してくれるのかと思ったけど、なぜかお母様はどう答えようか迷っている感じだ。

バルドーさんはそれを見て何か気付いたような表情をすると笑顔で話した。

「その通りなのですが、テンマ様の詳細については魔法契約してもらわないと細かく説明もできません。僭越せんえつながら、午前中に契約魔術スキルを持つものがこちらに来るように手配させてもらいました。問題が無いようであれば魔法契約をお願いします。詳細はその後に説明しましょう」

完璧よぉーーー!

バルドーさんは相変わらず執事として素晴らしいと思った。必要なことを事前に準備する手際も、用意された迎賓館も……。

相手の望むものをさらりと用意してくれる!

祖母様はテンマ先生のことを聞けずにストレスが溜まっていたのか、満面の笑みでバルドーさんに頷いて了承していた。

唯一お兄様だけが話についていけないようで、困惑したような表情をしていた。

「あっ、それとロンダ准男爵様には昼食を一緒にしたいと宰相殿から伝言をお預かりしております。国王陛下も同席なされるはずです!」

お父様はそれまで自分には関係ない話だと思っていたのか、黙々と朝食を食べていた。でも予想外の伝言を聞いて、持っていたフォークを落としてバルドーさんを見つめていた。

「陛下はロンダの状況を聞きたいのだと思いますねぇ。塩の確保やダンジョンの発見、研修施設やテックス様のこと。そういったことを直接お聞きになりたいのでしょう」

今年のロンダ准男爵家の王都滞在は波乱の予感がするわ。


   ◇   ◇   ◇   ◇


朝食が終わるころに商業ギルドから契約魔術スキルを持つ人が訪ねてきて、祖母様とお兄様、それに使用人たちも改めて魔法契約をやり直した。
そしてテンマ先生(テックスを含む)のことを聞いた祖母様は予想以上の内容に呟いた。

「魔術馬鹿の姉上ドロテアなら、それほどの人物なら恋に落ちそうですわね……」

祖母様ったら、わかっているわぁ~!

祖母様はようやく疑問が解けたことでスッキリとしたような表情をしていた。お兄様は顔を白黒させていたが、最後には反応もできなくなり固まっていた。

バルドー様は魔法契約が終わると、昼までに大伯母様ドロテア用の家を丸ごと収納して、代わりに迎賓館の建物を収納から取り出した。

たしかにバルドー様の言われたとおり、ロンダの迎賓館よりこぢんまりとしていた。でも地上三階地下1階の建物になっているので、それほど中は狭い感じがしなかった。

「三階は家族専用になっているようね。私達はこちらで生活することにしましょう!」

祖母様の一言で私とお母様、祖母様の三人は迎賓館の三階で生活することになる。

お父様とお兄様はたくさん部屋の空いている屋敷に二人だけで住めるのだから、不満はないだろう。

昼前にはお父様は王宮に向かい。お母様は寄り親でもあるゴドウィン侯爵家へ挨拶に向かった。

私は地下の訓練場にお兄様と確認をしに移動する。

地下の訓練場は空間拡張の効果を付与してあるのか、建物の大きさとは不釣り合いな広い訓練場が広がっていた。
戦闘訓練だけではなく、魔術の訓練や投擲とうてきの訓練もできるように的も用意されていた。

「お兄様、少し体を動かしたいので私の訓練にお付き合いをお願いしますわ」

訓練場の入口にあった訓練用の剣をお兄様に手渡しながらお願いする。

「そうだな……、私もあまりにも色々なことがあり過ぎて混乱しているみたいだ。体を動かしてスッキリしたい気分だよ。ちょっと激しい訓練になる覚悟はあるかな?」

「望むところですわ!」

私は久しぶりに思いっきり訓練ができると思い、笑顔で答えたのである。


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