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第13章 懐かしい旅路

第31話 研修は任せます!

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ロンダの町にある研修施設の訓練場にみんな集まっていた。

訓練場の地面に例の四人が正座していた。後ろには残りの特別研修生と研修の教官を務める人達が並んでいる。

訓練場の客席側には領主であるアルベルトさんや各研修部門の責任者、それにドロテアさんもいる。彼らはグストから何があったのか説明を聞いていた。

俺やジジ達も客席側にいたが、グストから話を聞いて苦笑いを浮かべるアルベルトさんに、少し腹を立てていた。

もっと深刻に考えてくれよぉ~。
アルベルトさんだけでなくドロテアさんや各部門の責任者も、それほど深刻に受け止めていないように見えた。俺はそれが納得できなかったのだ。

ようやく事情を呑み込めた様子でアルベルトさんが俺に話しかけてきた。

「テンマ君、迷惑を掛けてすまなかったね」

おいおい、それで終わらせるわけじゃないだろうな!

俺が不満そうな顔をしているのに気付いたアルベルトさんは、さらに説明を続ける。

「彼らは昨日こちらに到着したばかりで、今日はゆっくりと研修施設やダンジョン村を視察させただけでねぇ。本格的な研修は明日から始める予定だったんだよ」

そうだとしても納得できる話じゃない!

そんな風に甘やかすから、こんな連中が出てくるんじゃないかと思った。先ほどより不満そうな表情で反論しようとしたら、ドロテアさんがアルベルトさんに言った。

「アルベルト、テンマは人に研修施設を任せていたのじゃ。現状の研修をどうやっているかも分かっていないはずじゃ」

くっ、痛いところをついてくるなぁ~。

ドロテアさんの指摘したとおり、研修施設を任せてから、ほとんど気にしていなかったのだ。

でも……、こんなの状況は受け入れられない!

アルベルトさんは戸惑った表情を見せたが、すぐに説明を続けてくれた。

「王都の研修施設では生活魔術の訓練や魔力量増加の訓練が基本になっているんだよ。そこを乗り越えて人だけが、本格的な研修をロンダで受けられる」

だからといってこんな特別研修生を送り込むんじゃねぇよ!

「国の騎士や兵士、魔術師もこの約三年間でたくさん送り込まれてきてねぇ。最近は貴族や嫡男を特別研修生として受け入れるようになったんだよ。国王陛下は毎回ロンダに研修に向かう者に、『身分を忘れ、真剣に研修に取り組め!』とかならず自らお話になっている」

だからどうした! 国王が話しても、それに従わなかったら意味がないだろ!

「それでも彼らのような愚か者が必ずいるんだよ」

だ、だよね、分かっていて放置なの……。

アルベルトさんは少し楽しそうに話を続けた。

「まあ、初日は視察だけだから、大目に見ているんだよ。明日から本格的な研修が始まれば、彼らの考えも変わるはずだ。そこで変わらない連中はすぐに王都に帰すことになっている。送り返された者は貴族としても、嫡男としても不適格であると判断されることになる」

……そ、それだけで本当に大丈夫なのか?

たしかに貴族として不適格と判断されるのなら、彼らも真剣に取り組むかもしれないが……。上位の貴族なら立場を利用してくるんじゃないかなぁ。

そこにドロテアさんが楽しそうに話に入ってきた。

「アルベルトには国王から、どんな貴族でも追い返しても良いという許可状が出ているのじゃ。それに反発した貴族は反逆罪として廃爵。嫡男やその家族は廃爵して国から追放される。なんとも愉快な話なのじゃ!」

おうふ、思ったより厳しいかもしれない……。

正座する四人の顔色は益々悪くなっている。

そして今度はバロールさんが笑いを堪えるようにしながら話に入ってきた。

「クククッ、視察の引率にゴランを付けるのは、わざと種族差別する奴を見つけるためでもあるんだよ。明日からの最初の訓練は耐性スキルを取得する訓練だよ。全身の骨を折られ、泣き叫んでも逃がさない。特に種族差別する愚か者は、ゴランが念入りに他の奴の倍は骨を折ってくれるのさ。わはははは!」

獣人を差別するような発言をしていた一人は、涙目でゴランを見つめたが、ゴランは残虐そうな笑みを返した。

……ちょっと気の毒かも。

「いやぁ、初日に丁寧に対応すると、勘違いする坊ちゃんたちが多くて、翌日から泣き叫んで許しを請う姿が癖になるんだ。わはははは!」

グスト君、その発言はどっちが悪党なのか分からなくなるよ……。

正座する四人はうな垂れて顔が見えない。後ろに並ぶ特別研修生と教官たちの表情が正反対であった。特別研修生は顔色が青から白くなって表情が無くなり、教官たちは満面の笑みで見せている。

俺の心配は見当違いだった気がするぅ~。

アルベルトさんは真剣な表情になり俺に話しかけてきた。

「テンマ君、国王陛下は三年前に起きた元老院を中心とした例の件で、大変心を痛めてね。特に貴族には厳しくして、性根を叩き直すのに研修を利用しているんだよ。だからこその特別研修生であり、貴族なら平民以上に厳しく鍛えるように国王陛下が言い出したんだよ」

特別というのは、特別に厳しくするという意味だったんだぁ……。

何となく今では特別研修生が子羊に見える。彼らが虎の穴に放り込まれた生贄に見えてきた。

研修に参加すると契約で研修内容について人に話せなくなるはずだ。特別研修生の彼らは研修の内容を聞いていなかったのだろう。

「お前達、それほど心配しなくてもいいぞ!」

バロールさんが優しい笑顔で特別研修生に声をかけた。俺は彼らの心配を和らげるようなことを言うと思った。

「最初は痛くて辛いが、すぐにその辛さが自分への成長に繋がることに気付く。それに気付くと骨折や痛みを感じる度に楽しくなってくるんだ!」

おうふ、その領域に踏み込んでいるのぉ~!

特別研修生は信じられないという顔をしているが、横の教官たちは笑顔で頷いている。

俺は特別研修生たちの手足が折れても不気味な笑顔を見せている彼らの姿を思い浮かべ、研修について口を出すのはやめようと思った。

四人の処罰もアルベルトさん達に任せ、俺は関わらないようにしようと考えるのであった。


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