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第13章 懐かしい旅路
第25話 シルの人化スキル
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ジジ膝枕をしてもらって落ち着いて考えを整理できた。前のソファでミーシャにモフられているシルを見つめる。
まずは人化スキルを検証してみよう!
俺はソファにジジ膝枕をやめ、ソファに座り直すとシルに話しかける。
「シル、ちょっといいか?」
『え~、なに、なにぃ~?』
くぅ~、俺のフェンリルに対する夢を返せぇー!
フェンリルといえばウルフ系の魔物の最上位種である。前世のゲームなどでは神獣や、ドラゴンに匹敵する設定もあった。
それなのに……。
ソファで後ろからミーシャに抱き着かれてモフられているシルは、だらしない顔で腹を見せて返事したのだ。
種族が変わってもシルはシルだなぁ~。
「シルはもうシルバーウルフじゃなく、フェンリルになったんだよ」
『ふ~ん……』
シルは俺の話を聞いても、シルは興味を示さなかった。シルだけじゃなくミーシャも不思議そうに俺の顔を見ているだけだ。ジジはお茶を入れていて、興味なさそうにしている。
凄いことだと思っているのは俺だけみたいだ。
フェンリルの物語とかないのかな?
魔物の種族を確認するのは簡単じゃない。これまでにフェンリルは発見されていないのかもしれない。
あれっ、そういえばピョン吉も種族が変わっていたなぁ?
ピョン吉はいつの間にか種族進化してクイーンホーンラビットになっていた。強引にドロテアさんの従魔にさせられ、今はアンナの従魔だ。ピョン子も確か亜種になっていたはずだ。
この世界で魔物の種族進化はよくあることなのか?
一人でフェンリルへの進化に盛り上がっていたが、なんか恥ずかしい……。
改めて気持ちを落ち着かせ、本来の目的を話す。
「フェンリルに進化したことでシルのスキルが増えたみたいだ。その中に人化スキルがあったから、リディアみたいにシルも人の姿になれると思ったんだ」
あれっ、反応が無い?
よく見るとシルは驚いたように口を開けて固まっていた。ミーシャもモフモフをやめて俺を見つめている。
「あっ」
ジジも固まっていたのか、注いでいたお茶がカップから溢れ、それに気付いて声を出した。
シル『ぼ、ぼく、みんなと同じ姿になれるの!?』
ミーシャ「ダメよ! シルはモフモフじゃないとダメ!」
ジジ「私もシルちゃんは今のままがいいです!」
一斉にみんなが騒ぎ始めた。前から何となく気付いていたが、ミーシャやジジも俺と同じようにシルモフに癒されていたようだ。
「別にシルのモフモフが無くなるわけでもないよ。リディアも必要に合わせてドラゴンの姿に戻っているっだろ。どんな姿になるか確認して、たまには一緒に行動するのも楽しいかもしれないだろ。ほら、二人の弟みたいになるかもしれないじゃないか?」
「「……弟」」
ミーシャもジジも弟という言葉に反応したようだ。
ミーシャは末っ子だったから、メイやピピにお姉ちゃんと呼ばれることを喜んでいた。シルもミーシャをお姉ちゃんと呼んでいた。でも、人の姿になったシルのリアル弟を想像したのか、ニヤついて呟いていた。ジジも同じような反応を見せている。
「シル、とりあえず試してみようか?」
『うん、試してみるぅ~!』
シルは起き上がり、尻尾をブンブン振りながら俺に近寄ってくる。
あれっ、どうやって人化スキルを使うんだ?
よく考えてみると人化スキルの使い方など俺にはわからない。姿を変えるスキルなど持っていないからわからないのは当然である。人化スキルを持っているリディアしか分からないだろう。
でも、……早く見てみたい!
俺は近寄ってきたシルの顔を両手で持ち、適当に試してみようとシルに話しかける。
「いいか想像するんだ。俺と同じような姿をして、髪は銀髪で耳は今みたいに頭にある。お尻にはモフモフの尻尾がある。そのイメージができたらその姿になりたいと思うんだ!」
露骨に俺の希望でシルに想像させようとした。人は人でも人族ではなく獣人族、それも狼系の獣人である。ケモナーの俺としては獣人の姿になってほしいのだ。
くぅ~、ケモナーの弟が欲しよぉ~!
シルは一所懸命想像しているのか、首を何度も傾げている。
や、やはりそんな簡単のことで人化けはできないかぁ!
そう思った瞬間にシルの体が光った。そして光が収まると、そこには俺の想像したような獣人姿の男の子がいた。
顔は不思議なことに俺に似ている。年齢は七、八歳ぐらいの狼系の獣人で、銀髪でモフモフの尻尾がある。ピクピク動くケモミミもあり、驚くほど俺のイメージ通りの姿だった。
そうなるようにイメージさせたからなのか、もしかしたら従魔だから俺のイメージが反映されたのかもしれない。
だがそんなことは関係ない!
想像した通りの姿でシルは人化けしたのだ。まるで年の離れた理想のケモナー弟が目の前にいることが重要だ。
シルは不思議そうに自分の手を見ている。その仕草も可愛い。
「テンマと一緒になったぁ~!」
シルは嬉しそうに念話ではなく、声でそう話して俺に抱きついてきた。声は子供らしく中性的である。
シルは興奮して俺の顔をペロペロ舐めてきた。
「こらこら、人の姿で顔を舐めたらダメだぞぉ~」
そう言いながらもしっかりとシルを抱きしめてケモミミを撫で、ケモシッポの感触を味わう。ウルフ姿ほどモフモフではないが、これはこれでありだ。
「あっ、そんな風に尻尾をギュッとしたらダメだよ!」
俺は興奮して尻尾の根元をギュッと握っていたようだ。
「ごめんごめん、シルが可愛くて思わずな」
涙目で訴えてくるシルがまた可愛い。
ミーシャやジジの反応がないので不思議に思う。ミーシャを見ると目を逸らし、シルを見ようとしない。ジジも反対の方向を向いていた。
二人はシルの人化に反対なのだろうか?
俺はシルの両脇に手を入れて持ち上げ、二人に見せるようとしながら話しかける。
「二人はシルのこの姿が嫌いなのか。これはこれで可愛くて、俺は弟みたいで大好きだけど?」
ジジは後ろを向いたまま見ようともせず、ミーシャは少しだけ顔を上げようとしたが、まともに見ることなく、また顔を伏せてしまった。
見るのが嫌なほどなのぉ~。
そんな風に考えていたら、ジジが言ってきた。
「テ、テンマ様、シルちゃんに服を着せてください!」
ジジに言われて改めてシルの全身を見る。
うん、フリチ○だね!
俺の視線がチ○チ○にあることに気付いたシルは、それを手で引っ張りながら嬉しそうに話した。
「これもテンマと一緒だよ!」
そういうことかぁ~。
幼いとはいえシルは男の子だ。素っ裸のシルを見ないようにしているのだろう。
「ちょっと服を作ってくる!」
俺はシルを抱えて生産工房に向かったのである。
◇ ◇ ◇ ◇
生産工房でシルの服を作り、首輪の魔道具に変身の効果を付与して、シルに練習をさせてからリビングに戻ってきた。
服を作っている間にシルは人化スキルを完全に使いこなしていた。何度も獣人とウルフ姿を繰り返し、最初は時間がかかっていたが最後には飛び上がって一回転する間に姿を変えていた。
変身も使いこなし、獣人になると同時に服も着られるようになっていた。
今はミーシャとジジに挟まれて、二人にケモミミを撫でられている。
「私のことはミーシャお姉ちゃんと呼ぶのよ」
「うん、ミーシャお姉ちゃん!」
「私はジジお姉ちゃんよ」
「わかったよ、ジジお姉ちゃん!」
二人はシルの獣人姿を気に入ったようだ。これでモフモフも可愛いケモナー弟も奪われてしまった。
「なあ、ダンジョンは最下層まで攻略したから、これからランガ達と合流するために戻ろうとか」
「わかった。魔物も復活していないから、ここで待っている」
おうふ、ミーシャらしからぬ返事だ。
「じゃあ僕はテンマと─」
「ダメよ。その姿だと危ないから、ジジお姉ちゃんとここで待っていましょうね」
「だったら─」
「その姿にも慣れないとダメ。ミーシャお姉ちゃんと、おやつを食べて待つ!」
「わかった!」
食いしん坊シルは健在のようだ。
心なしかジジとミーシャは俺に冷たくなった気もするぅ~。
俺はランガ達と合流するため、一人でルームを出るのであった。
まずは人化スキルを検証してみよう!
俺はソファにジジ膝枕をやめ、ソファに座り直すとシルに話しかける。
「シル、ちょっといいか?」
『え~、なに、なにぃ~?』
くぅ~、俺のフェンリルに対する夢を返せぇー!
フェンリルといえばウルフ系の魔物の最上位種である。前世のゲームなどでは神獣や、ドラゴンに匹敵する設定もあった。
それなのに……。
ソファで後ろからミーシャに抱き着かれてモフられているシルは、だらしない顔で腹を見せて返事したのだ。
種族が変わってもシルはシルだなぁ~。
「シルはもうシルバーウルフじゃなく、フェンリルになったんだよ」
『ふ~ん……』
シルは俺の話を聞いても、シルは興味を示さなかった。シルだけじゃなくミーシャも不思議そうに俺の顔を見ているだけだ。ジジはお茶を入れていて、興味なさそうにしている。
凄いことだと思っているのは俺だけみたいだ。
フェンリルの物語とかないのかな?
魔物の種族を確認するのは簡単じゃない。これまでにフェンリルは発見されていないのかもしれない。
あれっ、そういえばピョン吉も種族が変わっていたなぁ?
ピョン吉はいつの間にか種族進化してクイーンホーンラビットになっていた。強引にドロテアさんの従魔にさせられ、今はアンナの従魔だ。ピョン子も確か亜種になっていたはずだ。
この世界で魔物の種族進化はよくあることなのか?
一人でフェンリルへの進化に盛り上がっていたが、なんか恥ずかしい……。
改めて気持ちを落ち着かせ、本来の目的を話す。
「フェンリルに進化したことでシルのスキルが増えたみたいだ。その中に人化スキルがあったから、リディアみたいにシルも人の姿になれると思ったんだ」
あれっ、反応が無い?
よく見るとシルは驚いたように口を開けて固まっていた。ミーシャもモフモフをやめて俺を見つめている。
「あっ」
ジジも固まっていたのか、注いでいたお茶がカップから溢れ、それに気付いて声を出した。
シル『ぼ、ぼく、みんなと同じ姿になれるの!?』
ミーシャ「ダメよ! シルはモフモフじゃないとダメ!」
ジジ「私もシルちゃんは今のままがいいです!」
一斉にみんなが騒ぎ始めた。前から何となく気付いていたが、ミーシャやジジも俺と同じようにシルモフに癒されていたようだ。
「別にシルのモフモフが無くなるわけでもないよ。リディアも必要に合わせてドラゴンの姿に戻っているっだろ。どんな姿になるか確認して、たまには一緒に行動するのも楽しいかもしれないだろ。ほら、二人の弟みたいになるかもしれないじゃないか?」
「「……弟」」
ミーシャもジジも弟という言葉に反応したようだ。
ミーシャは末っ子だったから、メイやピピにお姉ちゃんと呼ばれることを喜んでいた。シルもミーシャをお姉ちゃんと呼んでいた。でも、人の姿になったシルのリアル弟を想像したのか、ニヤついて呟いていた。ジジも同じような反応を見せている。
「シル、とりあえず試してみようか?」
『うん、試してみるぅ~!』
シルは起き上がり、尻尾をブンブン振りながら俺に近寄ってくる。
あれっ、どうやって人化スキルを使うんだ?
よく考えてみると人化スキルの使い方など俺にはわからない。姿を変えるスキルなど持っていないからわからないのは当然である。人化スキルを持っているリディアしか分からないだろう。
でも、……早く見てみたい!
俺は近寄ってきたシルの顔を両手で持ち、適当に試してみようとシルに話しかける。
「いいか想像するんだ。俺と同じような姿をして、髪は銀髪で耳は今みたいに頭にある。お尻にはモフモフの尻尾がある。そのイメージができたらその姿になりたいと思うんだ!」
露骨に俺の希望でシルに想像させようとした。人は人でも人族ではなく獣人族、それも狼系の獣人である。ケモナーの俺としては獣人の姿になってほしいのだ。
くぅ~、ケモナーの弟が欲しよぉ~!
シルは一所懸命想像しているのか、首を何度も傾げている。
や、やはりそんな簡単のことで人化けはできないかぁ!
そう思った瞬間にシルの体が光った。そして光が収まると、そこには俺の想像したような獣人姿の男の子がいた。
顔は不思議なことに俺に似ている。年齢は七、八歳ぐらいの狼系の獣人で、銀髪でモフモフの尻尾がある。ピクピク動くケモミミもあり、驚くほど俺のイメージ通りの姿だった。
そうなるようにイメージさせたからなのか、もしかしたら従魔だから俺のイメージが反映されたのかもしれない。
だがそんなことは関係ない!
想像した通りの姿でシルは人化けしたのだ。まるで年の離れた理想のケモナー弟が目の前にいることが重要だ。
シルは不思議そうに自分の手を見ている。その仕草も可愛い。
「テンマと一緒になったぁ~!」
シルは嬉しそうに念話ではなく、声でそう話して俺に抱きついてきた。声は子供らしく中性的である。
シルは興奮して俺の顔をペロペロ舐めてきた。
「こらこら、人の姿で顔を舐めたらダメだぞぉ~」
そう言いながらもしっかりとシルを抱きしめてケモミミを撫で、ケモシッポの感触を味わう。ウルフ姿ほどモフモフではないが、これはこれでありだ。
「あっ、そんな風に尻尾をギュッとしたらダメだよ!」
俺は興奮して尻尾の根元をギュッと握っていたようだ。
「ごめんごめん、シルが可愛くて思わずな」
涙目で訴えてくるシルがまた可愛い。
ミーシャやジジの反応がないので不思議に思う。ミーシャを見ると目を逸らし、シルを見ようとしない。ジジも反対の方向を向いていた。
二人はシルの人化に反対なのだろうか?
俺はシルの両脇に手を入れて持ち上げ、二人に見せるようとしながら話しかける。
「二人はシルのこの姿が嫌いなのか。これはこれで可愛くて、俺は弟みたいで大好きだけど?」
ジジは後ろを向いたまま見ようともせず、ミーシャは少しだけ顔を上げようとしたが、まともに見ることなく、また顔を伏せてしまった。
見るのが嫌なほどなのぉ~。
そんな風に考えていたら、ジジが言ってきた。
「テ、テンマ様、シルちゃんに服を着せてください!」
ジジに言われて改めてシルの全身を見る。
うん、フリチ○だね!
俺の視線がチ○チ○にあることに気付いたシルは、それを手で引っ張りながら嬉しそうに話した。
「これもテンマと一緒だよ!」
そういうことかぁ~。
幼いとはいえシルは男の子だ。素っ裸のシルを見ないようにしているのだろう。
「ちょっと服を作ってくる!」
俺はシルを抱えて生産工房に向かったのである。
◇ ◇ ◇ ◇
生産工房でシルの服を作り、首輪の魔道具に変身の効果を付与して、シルに練習をさせてからリビングに戻ってきた。
服を作っている間にシルは人化スキルを完全に使いこなしていた。何度も獣人とウルフ姿を繰り返し、最初は時間がかかっていたが最後には飛び上がって一回転する間に姿を変えていた。
変身も使いこなし、獣人になると同時に服も着られるようになっていた。
今はミーシャとジジに挟まれて、二人にケモミミを撫でられている。
「私のことはミーシャお姉ちゃんと呼ぶのよ」
「うん、ミーシャお姉ちゃん!」
「私はジジお姉ちゃんよ」
「わかったよ、ジジお姉ちゃん!」
二人はシルの獣人姿を気に入ったようだ。これでモフモフも可愛いケモナー弟も奪われてしまった。
「なあ、ダンジョンは最下層まで攻略したから、これからランガ達と合流するために戻ろうとか」
「わかった。魔物も復活していないから、ここで待っている」
おうふ、ミーシャらしからぬ返事だ。
「じゃあ僕はテンマと─」
「ダメよ。その姿だと危ないから、ジジお姉ちゃんとここで待っていましょうね」
「だったら─」
「その姿にも慣れないとダメ。ミーシャお姉ちゃんと、おやつを食べて待つ!」
「わかった!」
食いしん坊シルは健在のようだ。
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