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第13章 懐かしい旅路

第23話 ダンジョン攻略

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ルーム内でいつもと変わらない日常を過ごし、ランガ達と合流するためにルームの出口に移動する。

「テンマ様、こちらが昼食用のお弁当です。気を付けてくださいね」

「ああ、今日はお土産にフルーツをたくさん持って帰るから、楽しみにしてくれ」

「はい!」

くぅ~、ここで朝チュンしたいなぁ。

ミーシャは早く探索に行きたいのだろう。俺とジジのやり取りに興味はなさそうだ。それでもここで朝チュンする勇気は俺にはない。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ルームを出るとランガ達はすでに探索に出発する準備を終えていた。

みんなさっぱりとした表情をして汚れていないし汗臭くもない。気持ちよく寝れたのか昨日の出発のときより元気だと思ったくらいだ。

クリアをするとシャワーを浴びたようにスッキリする。やはりクリアで汚れを落とすだけで、気持ちよく寝れたのかもしれない。

ミーシャもランガ達の様子に驚いた顔を見せていた。

ランガは俺達に気付くと走り寄ってきた。

「おう、二人ともおはよう!」

「「おはよう」」

ランガは元気に俺達に挨拶してきた。俺達も挨拶を返すとランガは笑顔で予想外なことを言いだした。

「今日から俺達は別行動をするよ。お前達の探索は俺達の参考にならねえし、お前達が先行すると俺達はやることが無くなるしな。帰りは一緒に帰ろうな!」

こいつランガは笑顔で俺達を邪魔者だと言っているのか?

「ああ、できれば六層の蜂系の魔物は倒してくれると助かる。あいつらは厄介だからな。はははは」

そのうえ自分達の都合の良いお願いだけは平気で頼んでくるのかぁ!

「うん、わかった!」

ミーシャちゃ~ん、勝手に返事しないでぇ~!

ミーシャとしてはランガ達に気を使っているわけでもない。それどころか別行動したほうが自由に探索できると思っているのだろう。

ミーシャは嬉しそうにランガ達に手を振り走り出してしまった。シルもミーシャを追いかけていってしまった。

俺は諦めてランガ達に手を振り、ミーシャ達を追いかけるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


俺達はすぐに六層に降りた。六層は亜熱帯のような気候なのはなのは変わらなかった。蒸し暑く植物もジャングルのように生い茂っていた。

この暑さが果物を育てるんだよなぁ~。

六層から先は果物などの宝庫だ。

ハニービーを殲滅して、蜂蜜はランガ達に残しておく。しかし、マンゴーだけは我慢できずに採取する。

『う~マンゴー!』

シルは昔教えたマンゴー発見時の合図を覚えていた。
『う~』はお尻をフリフリさせて、『マンゴー!』でお尻をクイっと左上にあげ、右手を真っ直ぐに上げたのだ。

ミーシャはシルの合図に驚いたようだが、すぐに気に入ったのかシルの動きに合わせてマネを始めた。

おうふ、ケモミミ少女の『う~マンゴー!』は素晴らしすぎる!

俺は思わずミーシャの尻尾の動きに集中してしまう。俺の視線に気付いたミーシャが驚きの話をしてきた。

「んっ、尻尾に触ってもいいよ。テンマはもう家族!」

えっ、いいの! いやいや、トラップでしょ!

俺が警戒しているとミーシャは不思議そうな表情で話した。

「お姉ちゃんは、側室は家族だと言ったよ?」

これもサーシャさんの囲い込み作戦の一つだろうか?

それに……、ミーシャは側室の意味を知っているのだろうか?

俺はミーシャが側室とか結婚について本当に理解しているとは思えなくなった。

側室を弟子入りと勘違いしているんじゃね?

深く考えるのはやめる。ミーシャにそれを確認するが恐いのだ。

「それより次は七層だ。七層は遠慮せずに全部採取するぞ!」

ミーシャは目を輝かして、すでに頭の中は七層の探索に切り替わったようだ。

「「『バナァーナァ!』」」「「『パイナッポー!』」」「「『パッ……ションフルーーーツ』」」

その日七層から十層までフルーツ絶叫が響き渡った。

前はフルーツ絶叫に引いていたシルも、ミーシャがノリノリなのを見て楽しくなったようだ。


   ◇   ◇   ◇   ◇


その晩ルームに戻り、ジジに戦利品の果物を渡すと大喜びしてくれた。

「あっ、この果物はここでしか採れないのですね。ずいぶん前に在庫が無くなって、欲しかったんです」

果物は他のダンジョンでも採取していた。同じ果物もあったが、ダンジョン固有の果物もある。このダンジョンでしか取れない果物もあるのだ。

ジジが笑顔で果物を取り出しては、独り言を呟きながら料理やデザートを考えていた。俺はそんなジジを見て嬉しくなった。

「明日も果物がたくさん採れそうですか?」

期待するようにジジが尋ねてきた。

「いや、明日は海の幸になるんじゃないかなぁ」

十一層は海だったはずだ。ハル衛門を危うく殺してしまいそうになったのも、今は懐かしい思い出だ。

「う~ん、海の幸は在庫が大量にあるから……」

ジジは少し残念そうに話した。

エクス群島で数年も過ごしたのだ。海の幸は食べきれないほど在庫にある。

ジジだけではなく俺も海の魔物を討伐しても楽しくない。
それにミーシャも海の探索は向いてない。地上でこそ動きは速いが海では素早さ役に立たない。ミーシャの使える火魔術や闇魔術の魔法は水中ではあまり役に立たないのだ。

だからといって戻ることにしても、帰りはまだ魔物も果物も復活していないはずだ。

「まあ、海の幸より次層への階段を探すかぁ」

フライで探索を進めようかと考える。朝一で戻り始めればランガ達との合流が早くなりすぎる。半日だけ探索を進めてから戻ろうと思った。

「テンマ様が無事に戻ってきてくれれば、私はそれだけで十分です!」

心配そうにジジは俺を見つめて話してきた。俺も見つめ返してジジの手を掴み優しく引き要せようとする。

「テンマ、お風呂空いたよ!」

ミーシャとシルが突然リビングに入ってきた。

くっ、絶妙なタイミングで戻ってくるんじゃねぇーーー!

ジジと婚約したのに、ミーシャも一緒だからこの数日は二人っきりになれない。

俺は不満そうにミーシャを見たが、ミーシャは不思議そうに首を傾げているのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


翌日は俺一人で空から探索を進めることにした。ミーシャとシルはルーム内で待機させようとしたが、砂浜で海の魔物を倒しながら待っていることになった。

砂浜なら二人でも問題ないと思って、俺は一人で空からの探索を始める。予想に反してすぐに次層への階段を見つけたのだった。

海をフライで飛び始めると、五分ほどで島を見つけたのだ。島といっても次層への階段があるだけの小さな島だった。島に降り立つとすぐにクラーケンの群が襲ってきた。面倒なので無視して階段を下りていく。

階段を降りるとそこは小さな出口のない部屋で、一つだけ宝箱が置かれていた。

鑑定でトラップがないことを確認したので宝箱を開ける。中には虹色に輝くポーション瓶があった。手に取り鑑定する。

『アムリタ:寿命が百倍に伸びる。レベルアップやスキルの取得はしなくなる』

……ゲームでは不老不死のアイテムだった気がするぅ~!

不老不死ではないようだが、寿命が百倍になるようだ。人族の寿命が百年だとすると、一万年生きられるようになる。その代償ではないがレベルアップしなくなるようだ。

び、微妙だぁ~!

長生きしたい人は欲しがる気もする。しかし、飲む前にそれなりの能力が身についていないと、不死ではないので病気や怪我で死ぬ可能性もある。
ビクビクと病気や怪我に怯えながら、成長もしないでダラダラ生きたいとは思わない。

それに俺の寿命は現状でどれくらいあるのだろう。それなりにステータスも高いから病気や怪我に怯える必要はないと思う。それでも数万年、下手すると十万年ダラダラと生きることになったら……。

うん、罰ゲームだな!

俺はアムリタをアイテムボックスに収納して永久に封印することにした。

気持ちを切り替えて部屋の中を見回してた。ここがダンジョンの最後の階層だと何となくわかった。

もしかして、先ほどのクラーケンが実質的なダンジョンの守護者だったのではないだろうか……。

海を普通に渡ってくれば、クラーケンとの戦闘は避けられないはずだ。

う~ん、ズルしてダンジョンを攻略したみたいだ……。

俺は後味の悪い気持ちを感じながら、ミーシャ達に合流しようと戻り始めたのである。


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