転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

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第13章 懐かしい旅路

第22話 ランガは凄い?

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昨晩はラソーエさんの代官屋敷に泊めてもらった。ダンジョン村の宿は男臭くてミーシャが拒絶したからだ。

ラソーエさんの奥さんは落ち着いた感じで、さすがは元男爵夫人だと思った。しかし、いつもの女性向けお土産を渡すと目の色が変わり、ロンダの町で起きていることを話すと、朝から町に向かってしまった。

う~ん、ラソーエさんも金欠にならないといいけど……。

そんなことを考えていると、ダンジョン前に全員が揃ったようでランガが話し始めた。

「今回はテンマ達と騎士団のグストが一緒に探索する。みんな気合を入れていくぞぉ!」

「「「おおぅ!」」」

ランガの仲間たちは開拓村で一緒に訓練をしていたので知った顔ばかりだ。これから二日かけて五層まで進み、六層もしくは七層で二日ほど探索や採取をして、また二日かけて戻ってくる予定だ。

このダンジョンは食材になる魔物や果物が豊富にあるのだ。六層以降は果物が豊富にあり、七層には砂糖を精製できるアマミツの木もある。果物の在庫も減ってきたので補充したいところだ。

ランガとミーシャが先頭でダンジョンに入っていく。俺は最後尾から懐かしいダンジョンに入った。

一層と二層は他の冒険者パーティーも下層へ移動している連中が多かった。その辺は大して稼ぎにならないから、体力を温存して移動しているようだ。
ランガも仲間に無駄に体力を使わないように指示していたが、それは気にする必要はなかった。ミーシャとシルが先行して魔物を全て倒していたのだ。

三層はこの階層で活動する冒険者も増え、ミーシャ達に狩り過ぎないように注意した。初日はほぼ移動だけだったが、予定と違い五層まで進んでしまった。

ランガが仲間に指示する。

「今日はここで野営をする。準備を始めろ!」

「「「お、おう……」」」

みんな疲れた表情で元気なく返事すると野営の準備を始めた。
彼らは一度も戦闘することなくここまで移動してきたが、疲れ切った表情で元気に走り回るミーシャとシルをジト目で睨んでいた。

ランガ達の進行速度より早く、ミーシャとシルが魔物を倒して進んだのだ。ランガの仲間の半分はミーシャ達について行くのが精一杯で、今にも倒れそうなほど疲れ切っている連中もいた。

「なあ、これが普通なのか……? まるで自分が弱くなった気がするなぁ……」

グストは疲れた表情で俺に尋ねてきた。彼は体力的には問題ないが、黙々とミーシャ達を追いかける探索に精神的に疲れたみたいだ。

「う~ん、俺もよく知らないなぁ。ダンジョンを一緒に探索するのは初めてかも……?」

ミーシャと一緒にダンジョンに入ったことはあったと思う。それなりにミーシャが強くなってから、一緒に探索をするのは初めてかもしれない。

「お前達は一緒に冒険者活動していたんだろ?」

よく考えるとミーシャと一緒に冒険者活動をした記憶はない。ミーシャとは訓練ぐらいしか一緒にした記憶がないのだ。

「う~ん、そういえば俺は冒険者活動をしていなかったな。余った素材を冒険者ギルドに納品していただけだ。それにミーシャは別の冒険者パーティーで活動していたしなぁ」

グストと横で話を聞いていたランガも驚いたように俺の顔を見つめてきた。そこにミーシャが声をかけてきた。

「テンマ、シルとお風呂に入る!」

「「お風呂!」」

ランガとグストが声を揃えて驚いていた。他の冒険者達も驚いた表情で俺達を見ている。

「な、なんだ、お前達はダンジョンで風呂に入るのか!?」

俺は言ってない! でも入るけど……。

「んっ、汚れた」

ミーシャは不思議そうに首を傾げてランガに答えた。

確かにミーシャとシルは魔物との戦闘をしてきたので、二人とも魔物の血で汚れている。それでもダンジョンで風呂に入るなど、ランガ達からすれば信じられないような行為なのだろう。

俺も不思議に思いミーシャに尋ねる。

「ミーシャ、バルガス達とダンジョン探索や冒険者活動したときは風呂には入れないよな。そんなときはどうしているんだ?」

「クリア。今日はテンマがいる!」

ミーシャとシルは同じように尻尾を振りながら答えた。俺は率直すぎる答えに呆れたが、俺以上にランガ達が呆れて、疲れたように肩を落としている。

うん、気持ちは分かるよ。

俺は黙ってルームを開き、二人を順番に入れる。ミーシャはルームに入りながら、笑顔で俺に言った。

「今日は頑張った。ジジのデザートが楽しみ!」

余計なことを言うんじゃねぇー!

ミーシャがルームに消えるとランガ達が俺をジト目で睨んできた。

俺は気を使ってランガ達と野営しようかと考えた。しかし、野営を準備する彼らを見て思った。

彼らと一緒に野営はしたくないなぁ……。

男臭い連中ばかりなのは何とか我慢できる。だが使い古された野営用のテントは汚れていて、あのテントでは絶対に寝れない。

なんでクリアを使わないんだよぉ!

今日の移動で汗臭くなっているはずなのに、誰もクリアを使わない。

せめてテントくらいクリアしとけよ!

「ランガ、なんでお前達はクリアで汗を落とさないんだ?」

「お前は馬鹿じゃねえか! ダンジョン内で無駄な魔力を使えるはずないだろ」

う~ん、それも一理あるが……。

「でも、クリアぐらいの魔力ならすぐに回復するだろ。それにテントとかの野営道具は前回の探索から使っていなかったはずだろ。なんで綺麗にしとかないんだ?」

冒険者活動中に魔力の消耗を避けるのは理解できる。でもランガ達は魔力量を増やす訓練を続けていたはずだ。鑑定してもクリアの魔力消費は問題ないのは確認してある。

「そ、それは……」

ランガは言葉に詰まった。俺は他にも気になったことをさらに尋ねる。

「魔力量を増やす訓練を続けていたのは、魔力量が増えているから分かるよ。でもなんで生活魔術のレベルがそれほど上がっていないんだ?」

彼らの中でクリアまで使えるのは三割ほどだ。魔力量を増やす訓練をしていれば、全員がクリアまで使えるようになっていても不思議ではない魔力量のはずだ。

「戦闘用スキルの練習を優先したから……」

ランガは呟くように答えた。それを聞いて何となく理解できた。彼らはそれほど汗臭さや汚れを気にしてこなかったのだろう。クリアを使うぐらいなら強くなるために戦闘用のスキル、たぶん身体強化の訓練に魔力を使っていたのだろう。

「なあ、冒険者ならクリアは使えるようにしろよ。汚れていたら女性に嫌われるぞ。それに仲間内でルームを使える奴を育てたら、野営も安全にできるようになるぞ」

俺の話にグストは頷いていた。彼も冒険者活動をしなくなったが、騎士団として野営することもあるのだろう。

ランガは目が泳ぎ、他の仲間から視線が集まっている。ジートも渋い表情をしている。

たぶんランガは強さ優先だと仲間に言ってきたのだろう。聞きかじりか思い込みで冒険者活動中は魔力消費をしないようにしていたのだろう。
ランガは動揺した表情をしていたが、すぐに切り替えたように笑顔で仲間に言った。

「俺の言ったとおりだろ。テンマと一緒に冒険者活動をすれば勉強になる。今の話を参考にパーティーの編成と訓練方法を見直すぞ!」

「「「お、おう!」」」

おうふ、開き直ったぁ~!

ランガのこの性格は、ある意味凄いとも思った。

ランガは堂々とクリアの使える冒険者に命令して、全員にクリアをかけさせた。テントなどの野営道具にもクリアをかけさせて、何人かは魔力欠乏の症状が出ている。

おいおい、最初の無駄な魔力を使わないという話はどうなった!?

俺は大きく息を吐くと、ルームを開いて入ったのであった。


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