転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

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第13章 懐かしい旅路

第18話 故郷の風習計画

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「テンマ君、あなた女の子のことは全然ダメね!」

な、なんですとぉ~!

サーシャさんが腕を組んで、呆れたように俺に言ってきた。

俺としては女の子ジジと関係が進んで、上手くやられたと思っていたんだが……。

何がダメなの?

「これでは私の悲願もいつになるのか心配になるのじゃ」

くっ、六十歳超え乙女のドロテアさんにまで言われた……。

「やめてください。私はキスだけで十分です!」

ジジが俺を庇ってくれている。

も、もしかして、キ、キスだけではヘタレだったのか!

好きな女の子とキスできたことに舞い上がっていたが、どうやら周りからはヘタレだと思われたようだ。

で、でも、そういうことは徐々に……。

「ジジが納得しているなら仕方ない。だが、今後は色々と考えないとダメじゃな……」

な、何を考えるのぉ!?

ドロテアさんの不穏な言葉に今後のことが心配になる。

「もう、それより昼食の前にメイちゃん達をお風呂に入れてください!」

ジジの発言にサーシャさんは大きく息を吐いてから従った。庭で遊んでいたメイやエアル、シルなんかも泥だらけだったのだ。

ドロテアさんも諦めたように一緒に風呂に行くようでホッとする。

これ以上女性陣の精神攻撃を受けたら、俺は撃沈していただろう。


   ◇   ◇   ◇   ◇


前世では女の子と仲良くなることなどなかった。ましてや恋愛など夢物語の話だった。

それでもエッチの情報はネットに氾濫していたので、エッチの知識は凄く、ゲフン……常識的な範囲で知っている……と思う。

ただエッチに至る過程の知識はすっ飛ばして、予習していた気がする……。

それにそんな話をできる友人など前世では皆無だった。この世界の身近な男といえば……、バルガスは微妙だ。ジュビロ達は……、色々すっ飛ばして黒耳長族の女性に捕食された。バルドーさんは……論外だな。

リビングで呆然としてソファに座り込む。

「テンマは凄いと思っていたが、こっち方面は俺のほうが先輩だなぁ」

おわっ、ランガかよぉ!

俺の肩を叩きながらランガが隣に座って話しかけてきた。さっきまで存在すら忘れていた。

驚いてランガのほうに振り向くと、ランガはニヤニヤと俺を見ていた。

何か腹が立つ!

「女の子のことに関しては、ホーンラビットを初めて倒した新人冒険者並みだな。初めて倒した獲物に舞い上がって、浮かれる新人と同じだ」

くぅ~、的確過ぎる例えだ!

だが先輩面するランガに言われたことが悔しい。俺はジト目でランガを睨んだ。

「おお、懐かしい。初めてお前と会ったときと同じ顔だ!」

自分の姿は見えないが、下唇を噛みしめていることに気付いた。

く、悔しいがそのとおりかも……。

転生して開拓村に到着してランガに初めて会ったときの自分を思い出した。

「惚れた女と一晩一緒にいたら、あれこれ考えるんじゃねぇ。突っ走るんだ!」

おおっ、経験者は語るということか!

ランガはサーシャさんという素敵な女性と結婚して、メイという子供までいるのだ。その方面については明らかに先輩だ。

男同士でこういった話をするのは初めてかもしれない。ちょっと嬉しくなり、それなら助言をもらおうと思って尋ねる。

「ランガも突っ走ったのか?」

「お、おう、突っ走ろうとしたら、サーシャに引っ掻かれたがな」

おいおい、それは失敗談じゃねえか!

俺が呆れたてランガの顔を見つめると、ランガは焦ったように話を続けた。

「そ、それで俺の気持ちがサーシャに伝わって、正式な交際が始まったんだよ。……あれっ、それからはサーシャが主導権を握って……」

うん、ランガは先輩じゃねぇ~!

サーシャさんに主導権を握られ、単純なランガはいいように操られたのだろう。そんな光景が目に浮かぶようだ。

この世界に来て知り合った身近な男達を改めて思い返す。

グストやバルガスもランガと同じような気がする。ジュビロとタクトは捕食されただけだ。

参考にならねぇ~!

こうなれば俺もジジに後は任せるしかないのかも……。

その判断が俺の手に余る状況を作り出すのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


女性陣が戻ってくる前に俺は逃げ、ゲフン……今後の対策を練るために『どこでも自宅』に移動した。

アンナが生産工房にいたが強引に追い出した。

俺は移動しながら名案を思い付いた。
俺の故郷では十八歳まで大人の階段を駆け上るのは許されない。だから今回のヘタレな行動はそれが理由だとしようと考えたのである。

ただ、それだけでは女性陣を誤魔化せない可能性が高い。目先を変えさせるため、俺の故郷では婚約や結婚では色々と風習があると説明して、みんなの意識を逸らすのだ。

まずは婚約指輪を作り始める。前世の知識を掘り起こし、ミスリルやダイヤなど使って煌びやかな指輪を作る。指輪を入れる箱も豪勢な飾りのついた小箱を作った。

さらにウエディングドレスやティアラ、装飾品も合わせて作る。この世界でもドレスはあるが、ウエディングドレスのようなものは見たことがない。

できあがったウェディング衣装や装飾品を、人型のマネキンに着せて見せられるようにする。

何とかこれで誤魔化したい!

俺は祈るような気持で、そう考えたのである。


   ◇   ◇   ◇   ◇


一通り作り終えて収納すると、アンナが呼びにきた。アンナの顔は無表情だったが、それはそれで寒気を感じた。

「テンマ様、領主様との晩餐会に向かう時刻です」

アルベルトさんとの約束があったことを思い出す。そういえば俺が今日にしてくれと頼んでいたのだ。

「わかった。すぐに行くよ」

それならアルベルトさん達との晩餐会で、俺の故郷の風習を説明しよう。

新ドロテア屋敷に移動すると、ジジ以外はすでに迎賓館に向かったようで他のみんなはいなかった。

俺はジジと二人で馬車に乗り、迎賓館に向かうのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


馬車から懐かしい迎賓館が見える。迎賓館も俺が数年前に建てたのである。

玄関に到着すると、すぐに大きなテーブルのある部屋に案内された。そこには懐かしい人達が俺達を待っていた。

俺とジジはお誕生日席に案内された。反対のお誕生日席には領主であるアルベルトさんと夫人のソフィアさんがいた。

おうふ、なんか勢ぞろいしているぅ~。

一緒に行動していたドロテアさんやサーシャさん達も揃っていたが、グストやルカさんもいた。ザンベルト夫妻やバロール夫妻も揃っていて、知らない人も何人かいた。

「テンマ様、お久しぶりでございます」

ちょっと、その呼び方はやめてぇ~!

アルベルトさんが丁寧に挨拶してきた。ロンダの改革に協力したからか、国王とも知り合いになったからなのか、領主であるアルベルトさんに様付で呼ばれてしまった。

「ロンダ子爵、お久しぶりです。ですが、前のようにテンマとお呼びください!」

相手が丁寧に挨拶してきたので、俺もアルベルトさんの家名で挨拶を返した。
アルベルトさんは少し戸惑ったようだが、すぐに笑顔で答えてくれた。

「わかりました。前と同じようにテンマ君と呼ばせてもらいます。その代わり私のこともアルベルトでお願いします」

まだ言葉遣いが丁寧で気持ち悪いが、前と同じように呼び合えば、前のように話ができるだろう。

俺は笑顔で頷くと、アルベルトさんが声をかけて全員が席に座った。そして使用人たちが料理の配膳を始めた。

言い訳と波乱の晩餐会が始まったのである。


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