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第13章 懐かしい旅路
第9話 メイとエアル
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俺は朝食を食べ終わるとミーシャ家の改修を始めた。
今も光の魔道具を設置して回っている。
「テンマ君がなんでこんなことをしているのよ?」
肩に乗る土地神様が尋ねてきた。
「快適に暮らせるように少しだけ手を加えているだけだよ」
サーシャさんに頼まれたわけではなかった。
朝食が終わると次々とサーシャさんのお仲間のような女性陣が集まり出したのである。たぶんお土産をサーシャさんが配るのだろう。女性ばかりで居心地が悪かったのだ。
ランガ達がいないと、村を見て回る気も起きなかった。
ジジのいない所でまったりすることもできず、メイはエアルとシルと一緒にどこかに遊びに行ってしまった。やることがないので落ち着かなかったのである。
時間を潰そうとして、作業を始めたのである。
「つまらないわ。私はメイちゃん達と遊んでくるわ!」
「ああ、気を付けてね。あまり騒ぎを起こさないでね」
俺は深く考えず答えた。すぐに土地神が村を動き回ると騒ぎになると気付いて止めようとしたが、すでに土地神様の姿はなかった。
「細かいことを気にしても仕方ないかぁ。早くランガ達が戻ってこないかなぁ~」
独り言を呟いて、作業を続けるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
メイはエアルと手を繋いで村の中を案内していた。
「ここが村で買い物ができるお店なの。前は村でお買い物ができなかったの」
「ふむ、私の村には買い物などできる場所はないのじゃ。うらやましいのぉ~」
メイはエアルの返事を聞いて嬉しくなる。村で買い物ができるようになったのは一年ぐらい前からだ。村のことが褒められたような気持だった。
「やあ、メイちゃん。何か買っていくかい?」
声をかけてきたのは村で商売をするコランさんだ。
「ううん、今日はエアルちゃんに村を案内しているの。エアルちゃんは英雄エクス様の娘なの」
「え、英雄エクス様の娘? そ、そうかい、それなら英雄エクス様のお嬢さんに、ホーラビットの香草焼きをご馳走させてもらおうかなぁ」
コランはメイが英雄ごっこをしていると勘違いしていた。それでも初めてみるエアルに店を覚えてもらおうと話を合わせたのである。すぐに準備してあった串を焼き始める。
「香草焼きとは聞いたことがないのじゃ」
エアルは朝食を食べてそれほど時間が経っていないのに、焼き始めた肉串から漂ってくる香草の良い香りに唾を飲み込んだ。後ろではシルが涎を垂らしている。
「これはテンマ様という人が考えた肉串だよ。今では開拓村の名物でもあるんだ」
コランはエアルの親に伝えてもらい、客になってもらおうと自慢げに話した。
「エアルちゃんはテンマお兄ちゃんと一緒に来たの」
メイはテンマが褒められたようで、また嬉しくなった。
「えっ、テンマ様の……」
コランも昨日の夕方ごろから、店に来る客達にテンマが村に来たことは聞いていた。
「テンマはどこへ行っても新しい料理を作っているようじゃのぉ」
コランは焼き上がった肉串をエアルに差し出しながら話す。
「こちらをどうぞ。テンマ様には母がお世話になったと言っておりました。よろしくお伝えください!」
コランは開拓村に行商に来ていたソランの息子だった。母のラーナからロンダで有名なテンマに世話になったと聞いていたのだ。
「はむぅ、私の一族もテンマには世話になったのじゃ!」
「テンマお兄ちゃんは、メイのお兄ちゃんなのぉ」
「そ、そうかい、メイちゃんにも紹介してくれたお礼にどうぞ」
コランはエアルやメイの話が断片的過ぎて理解できなかった。
「ありがとうなのぉ」
「わふん!『ぼくのは!』」
メイが嬉しそうに肉串を受け取ってお礼を言うと、シルが催促するように吠えた。
コランはシルを見て怯えたような表情を見せた。
「はむぅ、シルはテンマお兄ちゃんの従魔なの」
メイは肉串に齧り付きながらシルを紹介した。
「テンマ様の従魔……、さすがテンマ様の従魔様です。輝くような毛並みが素晴らしい。こちらをお食べください!」
コランの理解力はすでに崩壊していた。呆然としながらも商売人の本能で話をして、シルに肉串を差し出していた。
「わふん!『ありがとう!』」
シルは串のまま口で受け取ると、串ごとバリバリと食べ始めた。
「美味かったのじゃ。お礼にこれをお主にやろう!」
エアルは肉串を食べ終わってコランに礼を言うと、収納から貝やカニの身を串に刺して焼いたものを出してコランに渡した。
コランはエアルから串を受け取ったが、初めて見る食材に食べられるのか不安を感じていた。幼女姿のエアルを見て、もしかしておままごとの食べ物かと思ったのだ。
「それ美味しかったのぉ~」
メイは昨晩の夕食で同じような料理を食べていた。特にカニの身は気に入ったようで、何度もおかわりしていたのである。
コランは冷や汗を流していた。確かに美味しそうな匂いと言われればそうなのだが、初めての匂いでもある。食べ物の匂いとは思えなかった。
それでも迷った末に覚悟を決めて一口食べる。口の中に初めてだが驚くほどの美味しさが口の中に広がった。そして驚いた顔をして一気に食べたのである。
「どうじゃ美味しいじゃろう?」
エアルが胸を張って自慢げに尋ねた。
「は、はい、これは私でも手に入りますか?」
コランは何度も首を縦に振りながら聞き返した。
「それは無理じゃのう。海まで行かねば手に入らないのじゃ」
エアルの返事を聞くとコランは残念そうな表情になった。彼は商売に絶対に商売になると思った。しかし、海など開拓村では噂程度に聞くような場所だったからだ。
メイはそんなコランを気にせず、エアルとまた手を繋いで次の場所に案内するのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
メイが次に案内したのは投擲の練習場だった。そこではたくさんの子供だけでなく、大人も真剣に練習していた。
「モンタちゃ~ん!」
メイは大きな声で名前を呼んだ。その声を聞いて猿獣人の青年が、手を振りながら返事をする。
「やあメイちゃん、テンマさんが戻ってきたんだって?」
「メイに会いに来てくれたのぉ」
メイは嬉しそうに答えた。
モンタはテンマが投擲を教えた村の少年であった。
彼が村で最初に投擲スキルを獲得して、今ではロンダでも有名なホロホロ鳥を狩人である。二年前に成人したころにはホロホロ鳥でそれなりに稼ぎ、一年前には村に移住した冒険者の娘と結婚もしていた。だから彼にとってテンマは大恩人であり、尊敬する人物でもあった。
「メイちゃん、その魔物は大丈夫?」
「そっちの子は初めて見るぅ~」
モンタの後ろから、彼が投擲を教えていた子供たちが群がってきた。
「このエアルちゃんは、新しいお友達なの。伝説の英雄エクス様の子供なのぉ~」
メイはエアルを紹介する。
「伝説の英雄の子供!」
「エクス様って勇者と一緒に戦った?」
「す、凄いよぉ~」
子供達は素直に信じて、尊敬するような眼差しでエアルのことを見つめる。
「そうじゃ、私は伝説の英雄エクスの娘であるエアルじゃ。よろしく頼むのじゃ!」
エアルが挨拶すると、子供達はまた騒ぎ始めた。モンタは信じていないのか苦笑いを浮かべていた。
「メイちゃ~ん、テンマ君はつまんな~い!」
そこに土地神様が突然姿を現した。
「あっ、土地神様!」
「「「土地神様!」」」
メイが土地神様に声をかけると、子供達が驚きの声を上げる。驚いたのは子供達だけでなかった。モンタや近くから微笑ましそうにメイたちを見ていた大人たちも驚いたのである。
「あらあら、ここには私の信者がたくさんいるみたいねぇ~」
土地神様は嬉しそうに話した。
投擲の練習場は大騒ぎになる。
子供達は土地神様をキラキラした目で見つめて騒ぎ出し、大人は跪いて拝み始める人や涙まで流す人まで現れたのである。
モンタも土地神様が現れたことで、エアルのことも子供の冗談ではないと気付いた。
そして、次々と村人たちが集まってくると、モンタがエアルや土地神様のことを説明したのであった。
今も光の魔道具を設置して回っている。
「テンマ君がなんでこんなことをしているのよ?」
肩に乗る土地神様が尋ねてきた。
「快適に暮らせるように少しだけ手を加えているだけだよ」
サーシャさんに頼まれたわけではなかった。
朝食が終わると次々とサーシャさんのお仲間のような女性陣が集まり出したのである。たぶんお土産をサーシャさんが配るのだろう。女性ばかりで居心地が悪かったのだ。
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俺は深く考えず答えた。すぐに土地神が村を動き回ると騒ぎになると気付いて止めようとしたが、すでに土地神様の姿はなかった。
「細かいことを気にしても仕方ないかぁ。早くランガ達が戻ってこないかなぁ~」
独り言を呟いて、作業を続けるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
メイはエアルと手を繋いで村の中を案内していた。
「ここが村で買い物ができるお店なの。前は村でお買い物ができなかったの」
「ふむ、私の村には買い物などできる場所はないのじゃ。うらやましいのぉ~」
メイはエアルの返事を聞いて嬉しくなる。村で買い物ができるようになったのは一年ぐらい前からだ。村のことが褒められたような気持だった。
「やあ、メイちゃん。何か買っていくかい?」
声をかけてきたのは村で商売をするコランさんだ。
「ううん、今日はエアルちゃんに村を案内しているの。エアルちゃんは英雄エクス様の娘なの」
「え、英雄エクス様の娘? そ、そうかい、それなら英雄エクス様のお嬢さんに、ホーラビットの香草焼きをご馳走させてもらおうかなぁ」
コランはメイが英雄ごっこをしていると勘違いしていた。それでも初めてみるエアルに店を覚えてもらおうと話を合わせたのである。すぐに準備してあった串を焼き始める。
「香草焼きとは聞いたことがないのじゃ」
エアルは朝食を食べてそれほど時間が経っていないのに、焼き始めた肉串から漂ってくる香草の良い香りに唾を飲み込んだ。後ろではシルが涎を垂らしている。
「これはテンマ様という人が考えた肉串だよ。今では開拓村の名物でもあるんだ」
コランはエアルの親に伝えてもらい、客になってもらおうと自慢げに話した。
「エアルちゃんはテンマお兄ちゃんと一緒に来たの」
メイはテンマが褒められたようで、また嬉しくなった。
「えっ、テンマ様の……」
コランも昨日の夕方ごろから、店に来る客達にテンマが村に来たことは聞いていた。
「テンマはどこへ行っても新しい料理を作っているようじゃのぉ」
コランは焼き上がった肉串をエアルに差し出しながら話す。
「こちらをどうぞ。テンマ様には母がお世話になったと言っておりました。よろしくお伝えください!」
コランは開拓村に行商に来ていたソランの息子だった。母のラーナからロンダで有名なテンマに世話になったと聞いていたのだ。
「はむぅ、私の一族もテンマには世話になったのじゃ!」
「テンマお兄ちゃんは、メイのお兄ちゃんなのぉ」
「そ、そうかい、メイちゃんにも紹介してくれたお礼にどうぞ」
コランはエアルやメイの話が断片的過ぎて理解できなかった。
「ありがとうなのぉ」
「わふん!『ぼくのは!』」
メイが嬉しそうに肉串を受け取ってお礼を言うと、シルが催促するように吠えた。
コランはシルを見て怯えたような表情を見せた。
「はむぅ、シルはテンマお兄ちゃんの従魔なの」
メイは肉串に齧り付きながらシルを紹介した。
「テンマ様の従魔……、さすがテンマ様の従魔様です。輝くような毛並みが素晴らしい。こちらをお食べください!」
コランの理解力はすでに崩壊していた。呆然としながらも商売人の本能で話をして、シルに肉串を差し出していた。
「わふん!『ありがとう!』」
シルは串のまま口で受け取ると、串ごとバリバリと食べ始めた。
「美味かったのじゃ。お礼にこれをお主にやろう!」
エアルは肉串を食べ終わってコランに礼を言うと、収納から貝やカニの身を串に刺して焼いたものを出してコランに渡した。
コランはエアルから串を受け取ったが、初めて見る食材に食べられるのか不安を感じていた。幼女姿のエアルを見て、もしかしておままごとの食べ物かと思ったのだ。
「それ美味しかったのぉ~」
メイは昨晩の夕食で同じような料理を食べていた。特にカニの身は気に入ったようで、何度もおかわりしていたのである。
コランは冷や汗を流していた。確かに美味しそうな匂いと言われればそうなのだが、初めての匂いでもある。食べ物の匂いとは思えなかった。
それでも迷った末に覚悟を決めて一口食べる。口の中に初めてだが驚くほどの美味しさが口の中に広がった。そして驚いた顔をして一気に食べたのである。
「どうじゃ美味しいじゃろう?」
エアルが胸を張って自慢げに尋ねた。
「は、はい、これは私でも手に入りますか?」
コランは何度も首を縦に振りながら聞き返した。
「それは無理じゃのう。海まで行かねば手に入らないのじゃ」
エアルの返事を聞くとコランは残念そうな表情になった。彼は商売に絶対に商売になると思った。しかし、海など開拓村では噂程度に聞くような場所だったからだ。
メイはそんなコランを気にせず、エアルとまた手を繋いで次の場所に案内するのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
メイが次に案内したのは投擲の練習場だった。そこではたくさんの子供だけでなく、大人も真剣に練習していた。
「モンタちゃ~ん!」
メイは大きな声で名前を呼んだ。その声を聞いて猿獣人の青年が、手を振りながら返事をする。
「やあメイちゃん、テンマさんが戻ってきたんだって?」
「メイに会いに来てくれたのぉ」
メイは嬉しそうに答えた。
モンタはテンマが投擲を教えた村の少年であった。
彼が村で最初に投擲スキルを獲得して、今ではロンダでも有名なホロホロ鳥を狩人である。二年前に成人したころにはホロホロ鳥でそれなりに稼ぎ、一年前には村に移住した冒険者の娘と結婚もしていた。だから彼にとってテンマは大恩人であり、尊敬する人物でもあった。
「メイちゃん、その魔物は大丈夫?」
「そっちの子は初めて見るぅ~」
モンタの後ろから、彼が投擲を教えていた子供たちが群がってきた。
「このエアルちゃんは、新しいお友達なの。伝説の英雄エクス様の子供なのぉ~」
メイはエアルを紹介する。
「伝説の英雄の子供!」
「エクス様って勇者と一緒に戦った?」
「す、凄いよぉ~」
子供達は素直に信じて、尊敬するような眼差しでエアルのことを見つめる。
「そうじゃ、私は伝説の英雄エクスの娘であるエアルじゃ。よろしく頼むのじゃ!」
エアルが挨拶すると、子供達はまた騒ぎ始めた。モンタは信じていないのか苦笑いを浮かべていた。
「メイちゃ~ん、テンマ君はつまんな~い!」
そこに土地神様が突然姿を現した。
「あっ、土地神様!」
「「「土地神様!」」」
メイが土地神様に声をかけると、子供達が驚きの声を上げる。驚いたのは子供達だけでなかった。モンタや近くから微笑ましそうにメイたちを見ていた大人たちも驚いたのである。
「あらあら、ここには私の信者がたくさんいるみたいねぇ~」
土地神様は嬉しそうに話した。
投擲の練習場は大騒ぎになる。
子供達は土地神様をキラキラした目で見つめて騒ぎ出し、大人は跪いて拝み始める人や涙まで流す人まで現れたのである。
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