上 下
234 / 315
第13章 懐かしい旅路

第5話 合流するよねぇ

しおりを挟む
サーシャさんとミーシャは一度応接間から出ていったが、しばらくして戻ってきた。ミーシャさんの色気が一段と増して美しくなった気がする。たぶんお土産の下着に着替えたのだろう。

俺はメイと一緒にシルモフを堪能していたのだが、気にした様子もなくサーシャさんは笑顔のままだった。お土産の効果が出ているようで安心する。
以前もサーシャ家で快適に過ごすためにサーシャさんの機嫌を取っていた。今度は開拓村で快適に過ごすために、村長であるサーシャさんの機嫌は以前より大切だ。

遅れてミーシャの家族もサーシャ家にやって来たが、サーシャさんが誤解のないようにミーシャとの関係も説明してくれた。すぐにミーシャの母親を応接室から連れていったが、すぐにご機嫌な母親と戻ってきた。

母親にも下着を渡して着替えさせたのだろう。

やはりミーシャやサーシャさんの母親である。見た目も若返り、色気も増したようだ。3人の子持ちとは思えない。父親や兄も驚いた表情で見ていた。

今晩の夕食はミーシャの家族も一緒に食べることになった。サーシャさんが家族にミーシャの状況を説明してくれた。話の中で驚いたような声が聞こえてきたが、俺は気にせずメイと遊んでいるだけだった。

ようやく一通り説明が終わったのか、家族がミーシャに色々と質問していた。ミーシャの簡潔な答えに父親と兄はは困った顔をして、サーシャさんと母親は笑顔で話を聞いていたのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


そろそろ夕食かなと思っていると、さらなる混乱が姿を現した。

「今度は本当にすぐに来てくれたのねぇ~!」

約束だったから来るとは思っていたけど……。

土地神様フリージアさんが合流してきた。半透明で妖精サイズだ。

「あっ、あっ、ああぁ~、土地神様だぁ~!」

メイが嬉しそうに土地神様フリージアさんを見て叫び声を上げた。

ヴィンチザード王国ではこんな辺境でも、土地神様フリージアさんのことは知られているようだ。

「あら、可愛らしいお嬢ちゃんねぇ。私のことを知っているようで嬉しいわ」

「メイはもちろん知ってるのぉ。だって、あっ、ちょっと待っててぇ!」

メイは土地神様フリージアさんに会えて舞い上がっているようだ。興奮していたが何かを思い出したように応接間から走り出していった。

土地神様フリージアさんはメイの行動に驚いたようだが、すぐに左右を見回すと俺に尋ねてきた。

「いつものあれHPをお願いできるかしら?」

たぶんそうくると思っていた。だが固まっているミーシャの家族の前で言われるとまた誤解されそうで怖い。

「構わないけど半分にしてください……」

アンナに助けを求めたかったが、土地神様フリージアさんさんが先ほど左右を見たのは、アンナがいないことを確認して、俺に頼んできたのだろう。

「こ、これを見てぇ~!」

メイが手に何かを持って戻ってきた。内心でホッとしながらメイの手に持つものを見る。

えっ、土地神様フリージアさん

「あら、それは限定グッズの等身大フィギュアじゃない! 価格も金貨百枚もするし数も少ないからレアものよ。よく手に入れたわねぇ~」

何をしているんだぁーーー!

等身大フィギュアの限定グッズとか驚きである。

「パパがプレゼントしてくれたのぉ~!」

メイは嬉しそうに答えていた。ランガがそれほど気の利いたプレゼントをするとは驚きだ。でも価格を聞いてサーシャさんは目を細めている。

ランガはサーシャさんに金額は話していないか、嘘の金額を伝えたのだろう。戻ってきたときのランガの運命を考えると気の毒になる。

「ふふふっ、大切にしてね」

「大切にしているのぉ。メイの一番の宝物なのぉ~!」

メイはブンブンと首を縦に振って土地神様フリージアさんに答えた。

「そうなのね。……テンマ君、メイちゃんの祝福をしたいから、あれHPをお願い」

祝福?

土地神様フリージアさんの話に戸惑ったが、祝福なら悪いことではないだろうと思った。了承の返事をしようとしたが、その前にいつもの虚脱感に襲われる。

くぅ~、不意打ちで吸うのはやめてくれ~!

半分と言ったのにそれ以上に吸われた気がするぅ!

虚脱感が無くなると自分のステータスを確認する。八割ほどHPを吸われたようだ。アンナがいないと俺には土地神様フリージアさんの制御ができない。

土地神様フリージアさんは半透明の状態から実体化したような姿になり、メイのほうに向かうと神々しい光をだし始める。

「敬虔な信者であるメイリンに祝福を!」

土地神様フリージアさんがそう言うと、光がメイに降り注いだ。

なんだとぉーーー!

メイに変なことが起きていないか心配で鑑定する。称号に『土地神の祝福』があり運が5も上がっていた。運は訓練では増やせない。祝福イベントが必要だったのだと初めて知った。

「土地神様ぁ、ありがとうなのぉ~!」

メイは具体的に自分に何が起きたのか知らないようだ。光が自分に降り注いだことが嬉しかったのか土地神様フリージアさんにお礼を言った。

ミーシャ「これでメイも私と一緒」
エアル「私とも同じなのじゃ!」

なんですとぉーーー! ミーシャやエアルにも祝福イベントを!

なんか俺は吸われるだけで、祝福イベントがない気がするぅ~。

あとで聞いたが土地神様フリージアさんでは俺に祝福を与えることはできないらしい。理由は分からないがテラス様でも無理だと言われては諦めるしかなかった。

まあ、俺も驚いたがサーシャさんを筆頭にミーシャの家族はもっと驚いた様子だ。

土地神様フリージアさんとメイ、ミーシャとエアルは気にした様子もなく楽しそうに話をしている。

俺は大きく息を吐くと、もう隠しても仕方ないと開き直る。問題が起きなければそれほど気にすることでもない。

暴走する仲間に囲まれてきたことで、最近はそう思うようになったのだ。


   ◇   ◇   ◇   ◇


夕食にはオークカツを始め、醤油ダレの串焼きや生姜焼き、カニなどの海産物も遠慮なくふるまった。

ミーシャの父親と兄は緊張して食欲がないみたいだ。サーシャさんや母親はすぐに土地神様フリージアさんに馴染んだようで、楽しそうに初めて食べる料理を堪能している。

メイはエアルや土地神様フリージアさんと仲良く食事していた。

もう完全に友達だよ……。

色々な意味で混沌カオスともいえる三人だが、仲良くしているのだからいいのだろう……。

俺はタコ焼き魔道具を使ってタコ焼きを焼きながら、そんなことを考える。

「お兄ちゃんは料理もできるのぉ~。すごいのぉ~!」

メイが喜ぶ姿を見られるならそれで充分である。

「ほら、焼きたてだよ。火傷しないように注意して食べて」

メイたちに焼きたてのタコ焼きを差し出す。

エアル「マヨを多めに頼むのじゃ!」
メイ「マヨ?」
エアル「この白いのがマヨじゃ。濃厚でありながら酸っぱさもあるのじゃ!」
メイ「へぇ~、エアルちゃんは物知りなんだね?」
エアル「そうじゃ。私は物知りなのじゃ!」

エアルとメイは同レベルの会話をしているぅ~。

どう見ても同じ八歳の子供にしか見えない!

「タコ焼きは顔が火傷しちゃうわ。テンマ君、私にあった大きさのタコ焼きを作ってぇ~」

う~ん、混沌カオスだ!

土地神様フリージアさんからの難題に苦笑いで答えることしかできなかった。


しおりを挟む
感想 437

あなたにおすすめの小説

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。