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第12章 マムーチョ辺境侯爵領
第22話 バルドーの焦り
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妖精に抱き着かれ体の力が抜けていく。しかし、なんか懐かしいと感じていた。最初は命の危険があると不安に感じたが、すぐに妖精と繋がったような不思議な感じがした。
「あなたは何をしているのですか!?」
アンナが目の前にいつの間にかいて、妖精と話していたのだが、少し遠くでアンナの声が聞こえた気がした。
「あ~ん、テンマ君から大事なあれを吸わないと、こんな小さな体でも存在が維持できないのよぉ~」
あと少しで膝をつきそうなっていたが、アンナが妖精を引きはがしてくれたので、体のだるさも治まり、意識も明確になった。
アンナが羽の部分を掴んで妖精を捕まえているのが見える。半透明だと思った妖精の姿は普通に実体化したように見えた。
あれっ、土地神様!?
妖精だと思ったが、姿が明確に見えると、妖精サイズだが間違いなくフリージアさんの姿であった。
でもなんで妖精になっちゃったの?
次々と湧き上がる疑問に混乱する。それがアンナに伝わった訳ではないが、二人の会話で少しずつ疑問は解消されるのであった。
アンナ「無駄に羽など付けるから燃費が悪いのよ」
フリージア「でも、羽があるほうが神秘的でしょ?」
アンナ「まあ、何となく気持ちは分かるわ!」
フリージア「でしょぉ、王都ではこの姿で有名になっているのよ!」
アンナ「はぁ、あなたは何をやっているのよぉ……」
フリージア「だって、すぐに帰ってくると言ったのに……、私だけ王都に……」
ジト目で土地神様は俺を睨んでいる。
くっ、土地神様を騙すように王都を出てきた。でも、それはバルドーさんが……。
土地神様から視線を逸らし、助けを求めるようにバルドーさんを見る。バルドーさんは能面のように無表情していたが、額には汗が滲んでいた。
「土地神様、お久しぶりでございます。様々なことが起きてテンマ様がこの地から離れられなくなり、王都に戻れませんでした。すべてテンマ様の都合による結果です!」
あっ、あっ、ずるい!
バルドーさん、俺のせいにしているぅーーー!
数年前にバルドーさんが、元母親であるフリージアさんから逃げ出そうとしたじゃないかぁ!
フリージアさんに嫁をもらって子供を作るように要求されたバルドーさんは、率先して王都を逃げ出したのである。俺もトラブルメーカーであるドロテアさんから逃げ出そうとしたが、二年前に合流されてしまったのである。
よく考えればバルドーさんだけ望みが叶ったといえる。それなのに俺に責任を擦り付けるバルドーさんの対応に驚きしかない。
ふふふっ、バルドーメンズ隊をフリージアさんに紹介するしかないかなぁ!
悪魔のような考えが過った。バルドーさんは俺の悪魔の笑みに気付いたのか、必死に目で俺に許してもらおうとしていた。
しかし、バルドーさんの救世主が現れる。
「あなた数年でずいぶんと力を付けたみたいね」
アンナが土地神様に尋ねた。土地神様はアンナの質問で俺やバルドーさんへの追及を忘れたように、自慢気に説明を始めた。
「へっへぇ~ん、この姿で王都では人気者になって、たくさんの信者を獲得したのよぉ。王都で人気が出れば他の街や領でも人気になって、さらに信者が増えたの! 人々に分かりやすいように土地神グッズも作らせたら一気に人気に火がついて、ヴィンチザード王国で私のことを知らない人はいないと思うわ!」
おいおい、グッズ販売とかで荒稼ぎはしていないよね?
「へぇ~、だから国内なら多少は移動できるようになったのね」
「そうよぉ~、この姿なら燃費も良いから何とかね。でもこの地はヴィンチザード王国になったといっても住民の理解が無かったから昨日までは来れなかったのよぉ。
でも今日の夕方に突然移動できるようになったの。式典をすると聞いていたけど、それでこの地の住民の多くが納得したのかしらねぇ」
話を聞いてなるほどと感心してしまう。土地神は信者の存在で力を増すのだろう。それに人が勝手に国として組み込んでも、その地に住む人が理解したり、納得したりしないとダメなんだろう。
「でも、これは燃費が悪いんじゃない?」
「あっ、いやん!」
アンナが羽を掴んだまま左右に土地神様振ると鱗粉のように光の粒が舞い落ちて消える。
光の粒はファンタジーぽくて綺麗だと思ったが、意識的な演出だと分かると微妙だと思ってしまう。
「こ、これは土地神として早く信者を付けるために、テラス様の勧めてくれた演出よ。他にもグッズ販売や勧誘方法など、テラス様は本当に素晴らしい知恵を授けてくれたのよ!」
おいおい、テラス様は何をしているんだ!
まさか悪徳商法や悪徳勧誘なんかも教えていないよね……?
「それなら仕方ないわね……。でも勝手にテンマ様から吸っちゃダメでしょ?」
「だってぇ~、この地がヴィンチザード王国になっても、まだ私の信者は少ないから長時間維持できないのよぉ」
「それでもダメよ!」
「で、でも、私だけ置いてきぼりで、グスッ、寂しいんだもん!」
うん、さすがに申し訳ない気持ちになる……。
「それで、先ほど吸った分でどれくらいこの地にいられるの?」
「ふふふっ、テンマ君のHPはすごいから、この姿なら実体化で三日、実体化しなければ三ヶ月ぐらいよ」
土地神様は俺の問いかけに舌をペロリとしてから答えてくれた。サイズが小さいから問題ないが、普通のサイズなら色っぽかっただろう。しかし、鑑定で自分のHPを確認すると五分の一しか残っていない。
小さくなって燃費は良くなったけど、それでも燃費は悪いなぁ~。
「久しぶりに土地神様にお会いできたのです。私としては実体化した状態の土地神様を見ていたいです!」
「まあバルディ、嬉しいことを言ってくれるのね!」
おうふ、それは早く土地神様を追い出す作戦だよね!
バルドーさんは間違いなく早くこの地から土地神様を追い返すために、実体化を続けさせようとしているのだ。
バルドーさん、そんなに必死な目で俺に同意を促すように訴えてこないでぇ!
幸いなことにピピをはじめ、久しぶりに土地神様に会えたみんなが話を始めてくれた。
ピピ「土地神様、可愛いよぉ~!」
土地神「あら、ピピちゃんも相変わらず可愛いわよぉ」
ドロテア「土地神様、久しぶりなのじゃ。私のHPも提供するのじゃ!」
土地神「ふふふっ、ありがとう。でも、バルディの話を聞かせてほしいわ!」
ドロテア「喜んで教えるのじゃ!」
エアル「黒耳長族の族長であるエアルなのじゃ。初めましてなのじゃ!」
土地神「初めまして、よろしくね!」
エリス「エリスです。エクス群島にもお越しください!」
土地神「う~ん、エクス群島はヴィンチザード王国に入ってないのよぉ」
エリカ「エリカです。だったらエクス群島もヴィンチザード王国に入れば問題ないわ!」
エアル「そうじゃ! 早速戻って──」
「みなさん、お話は後でゆっくりとしてください! まだこちらの問題が片付いていません!」
バルドーさんが焦ったように皇帝とノーマン達を指差してエアルの話に割って入った。
うん、忘れていた!
土地神様の乱入で彼らのことを忘れていたのは間違いない。
しかし、バルドーさんはエクス群島をヴィンチザード王国に併合させないように話に割ってはいったと俺は確信していたのだった
「あなたは何をしているのですか!?」
アンナが目の前にいつの間にかいて、妖精と話していたのだが、少し遠くでアンナの声が聞こえた気がした。
「あ~ん、テンマ君から大事なあれを吸わないと、こんな小さな体でも存在が維持できないのよぉ~」
あと少しで膝をつきそうなっていたが、アンナが妖精を引きはがしてくれたので、体のだるさも治まり、意識も明確になった。
アンナが羽の部分を掴んで妖精を捕まえているのが見える。半透明だと思った妖精の姿は普通に実体化したように見えた。
あれっ、土地神様!?
妖精だと思ったが、姿が明確に見えると、妖精サイズだが間違いなくフリージアさんの姿であった。
でもなんで妖精になっちゃったの?
次々と湧き上がる疑問に混乱する。それがアンナに伝わった訳ではないが、二人の会話で少しずつ疑問は解消されるのであった。
アンナ「無駄に羽など付けるから燃費が悪いのよ」
フリージア「でも、羽があるほうが神秘的でしょ?」
アンナ「まあ、何となく気持ちは分かるわ!」
フリージア「でしょぉ、王都ではこの姿で有名になっているのよ!」
アンナ「はぁ、あなたは何をやっているのよぉ……」
フリージア「だって、すぐに帰ってくると言ったのに……、私だけ王都に……」
ジト目で土地神様は俺を睨んでいる。
くっ、土地神様を騙すように王都を出てきた。でも、それはバルドーさんが……。
土地神様から視線を逸らし、助けを求めるようにバルドーさんを見る。バルドーさんは能面のように無表情していたが、額には汗が滲んでいた。
「土地神様、お久しぶりでございます。様々なことが起きてテンマ様がこの地から離れられなくなり、王都に戻れませんでした。すべてテンマ様の都合による結果です!」
あっ、あっ、ずるい!
バルドーさん、俺のせいにしているぅーーー!
数年前にバルドーさんが、元母親であるフリージアさんから逃げ出そうとしたじゃないかぁ!
フリージアさんに嫁をもらって子供を作るように要求されたバルドーさんは、率先して王都を逃げ出したのである。俺もトラブルメーカーであるドロテアさんから逃げ出そうとしたが、二年前に合流されてしまったのである。
よく考えればバルドーさんだけ望みが叶ったといえる。それなのに俺に責任を擦り付けるバルドーさんの対応に驚きしかない。
ふふふっ、バルドーメンズ隊をフリージアさんに紹介するしかないかなぁ!
悪魔のような考えが過った。バルドーさんは俺の悪魔の笑みに気付いたのか、必死に目で俺に許してもらおうとしていた。
しかし、バルドーさんの救世主が現れる。
「あなた数年でずいぶんと力を付けたみたいね」
アンナが土地神様に尋ねた。土地神様はアンナの質問で俺やバルドーさんへの追及を忘れたように、自慢気に説明を始めた。
「へっへぇ~ん、この姿で王都では人気者になって、たくさんの信者を獲得したのよぉ。王都で人気が出れば他の街や領でも人気になって、さらに信者が増えたの! 人々に分かりやすいように土地神グッズも作らせたら一気に人気に火がついて、ヴィンチザード王国で私のことを知らない人はいないと思うわ!」
おいおい、グッズ販売とかで荒稼ぎはしていないよね?
「へぇ~、だから国内なら多少は移動できるようになったのね」
「そうよぉ~、この姿なら燃費も良いから何とかね。でもこの地はヴィンチザード王国になったといっても住民の理解が無かったから昨日までは来れなかったのよぉ。
でも今日の夕方に突然移動できるようになったの。式典をすると聞いていたけど、それでこの地の住民の多くが納得したのかしらねぇ」
話を聞いてなるほどと感心してしまう。土地神は信者の存在で力を増すのだろう。それに人が勝手に国として組み込んでも、その地に住む人が理解したり、納得したりしないとダメなんだろう。
「でも、これは燃費が悪いんじゃない?」
「あっ、いやん!」
アンナが羽を掴んだまま左右に土地神様振ると鱗粉のように光の粒が舞い落ちて消える。
光の粒はファンタジーぽくて綺麗だと思ったが、意識的な演出だと分かると微妙だと思ってしまう。
「こ、これは土地神として早く信者を付けるために、テラス様の勧めてくれた演出よ。他にもグッズ販売や勧誘方法など、テラス様は本当に素晴らしい知恵を授けてくれたのよ!」
おいおい、テラス様は何をしているんだ!
まさか悪徳商法や悪徳勧誘なんかも教えていないよね……?
「それなら仕方ないわね……。でも勝手にテンマ様から吸っちゃダメでしょ?」
「だってぇ~、この地がヴィンチザード王国になっても、まだ私の信者は少ないから長時間維持できないのよぉ」
「それでもダメよ!」
「で、でも、私だけ置いてきぼりで、グスッ、寂しいんだもん!」
うん、さすがに申し訳ない気持ちになる……。
「それで、先ほど吸った分でどれくらいこの地にいられるの?」
「ふふふっ、テンマ君のHPはすごいから、この姿なら実体化で三日、実体化しなければ三ヶ月ぐらいよ」
土地神様は俺の問いかけに舌をペロリとしてから答えてくれた。サイズが小さいから問題ないが、普通のサイズなら色っぽかっただろう。しかし、鑑定で自分のHPを確認すると五分の一しか残っていない。
小さくなって燃費は良くなったけど、それでも燃費は悪いなぁ~。
「久しぶりに土地神様にお会いできたのです。私としては実体化した状態の土地神様を見ていたいです!」
「まあバルディ、嬉しいことを言ってくれるのね!」
おうふ、それは早く土地神様を追い出す作戦だよね!
バルドーさんは間違いなく早くこの地から土地神様を追い返すために、実体化を続けさせようとしているのだ。
バルドーさん、そんなに必死な目で俺に同意を促すように訴えてこないでぇ!
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土地神「あら、ピピちゃんも相変わらず可愛いわよぉ」
ドロテア「土地神様、久しぶりなのじゃ。私のHPも提供するのじゃ!」
土地神「ふふふっ、ありがとう。でも、バルディの話を聞かせてほしいわ!」
ドロテア「喜んで教えるのじゃ!」
エアル「黒耳長族の族長であるエアルなのじゃ。初めましてなのじゃ!」
土地神「初めまして、よろしくね!」
エリス「エリスです。エクス群島にもお越しください!」
土地神「う~ん、エクス群島はヴィンチザード王国に入ってないのよぉ」
エリカ「エリカです。だったらエクス群島もヴィンチザード王国に入れば問題ないわ!」
エアル「そうじゃ! 早速戻って──」
「みなさん、お話は後でゆっくりとしてください! まだこちらの問題が片付いていません!」
バルドーさんが焦ったように皇帝とノーマン達を指差してエアルの話に割って入った。
うん、忘れていた!
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しかし、バルドーさんはエクス群島をヴィンチザード王国に併合させないように話に割ってはいったと俺は確信していたのだった
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