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第11章 エクス自治連合
第11話 バルドー株
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宰相はレイモンドに言い返そうとしたが、差し歯が抜けたことに気付いて慌てて差し歯を拾うと差し直した。そして顔を真っ赤にして叫んだ。
「お前はホレック公国がどうなっても構わないのか!」
おいおい、「お前」と言っちゃたよ!
宰相はレイモンドのことを王子として敬ってはいなかったのだろう。「お前」呼びがそれを表していると思った。
「いえいえ、私も元王族です。公国の住民が辛い思いをしていると思うと心が痛みます」
「だったら!」
「ですが、真っ先に辛い思いを強いられた住民は、すでに公国を逃げ出しようで安心しております!」
バ、バルドー株は恐ろしぃ~。
相手の話に対する切り返し方は、相手が押してくる力を利用して反撃する合気道に通じるものがあるなぁ。
「なんだとぉ……!」
宰相はレイモンドの返事に、怒りのあまり話を続けることができないようだ。こめかみに血管が浮き出して切れそうだ。
「殿下、住民は他にも残っているのですよ! 残っている者は見捨てるのですか!?」
宰相の代わりに横にいた貴族がレイモンドに縋りつくように訴えてきた。
「すでに公国から放り出された私に頼む前に、自分達がまずは住民を助けるべきではありませんか? これまでに蓄えた財貨を吐き出して国民の負担を減らす。そうして時間を稼いでる間にエクス自治連合と交渉する。間違っても増税など絶対に選択しません。その理由は説明しなくてもすでに分かっていらっしゃいますよね。メイソン財務大臣?」
おうふ、なんと自滅的な増税をした張本人がいたぁーーー!
「わ、私ではない! 陛下や宰相殿が増税するように決めたのだ。わ、私は悪くない!」
おいおい、ここで言い訳をしてどうするぅ~。
宰相もまさかここで身内から責められると思ってなかったのか、メイソン財務大臣を睨みつけている。睨まれたメイソン財務大臣は慌てて顔を伏せた。
宰相はそんなメイソン財務大臣に唾でも吐きそうな軽蔑の眼差しで見て、他の貴族や役人にも威圧の籠った視線を巡らせた。視線を向けられた貴族や役人は俯くだけで、宰相に反論する者はいなかった。
「それがホレック公国の元王子としての返事で良いのだな?」
宰相は睨みつけるようにレイモンドに尋ねているのだが、声には威圧を込めた脅すような感じで話していた。裏の顔である闇ギルドの顔を出しているのだろう。
しかし、レイモンドはそれを軽く受け流して答えた。
「返事ですか? 私としては元王子として助言をしただけです。重税はやめて住民が戻ってこられるようにしなければホレック公国は成り立たなくなると教えてあげたのです」
この会議に参加して正解だぁーーー!
宰相は酷く顔を歪めている。それは怒りだけでなく屈辱で溢れているようも見える。バルドーさんも満面の笑みでそれを見つめている。
レイモンドがバルドー株に侵食されているのは不安だが、まだあっち系じゃないから大丈夫だろう。
「……そうか、だが今の関税は幾らなんでもやり過ぎではないのか?」
何とか宰相は立て直してレイモンドを追求してきた。
「そうですねぇ~、私が執政官を引き継いだときにはすでに関税は始まっていましたからねぇ」
「だったらホレック公国の為に、元王子の執政官なら変えるべきではないのか!?」
おお、宰相さん中々頑張って関税を引き下げようとしている!
「それは変ですねぇ。執政官になった時点で私の優先度はエクス自治連合側が高くなります。そうなれば地の利を有効に使うのは当然のことです。関税で利益を上げれば、エクス自治連合としては良いことばかりではありませんか?」
うん、そうなるよね!
「それでも地の利があるといってもやり過ぎだとは思わないのか!」
え~と、恥ずかしげもなくよく言うよねぇ~。
「クククッ、それはあまりにも滑稽な話ですねぇ」
「何がだ!」
「これまで地の利を使ってヴィンチザード王国から莫大な利益を上げていたのはホレック公国ではありませんか。自分達がするのは当然で、相手がするのは許さない。そんな都合の良い話が通じるとでも?」
強烈なカウンターだ!
自分達がしていたことを逆にされたからといって、文句を言うのは俺も滑稽な話だと思う。彼らはこれにどう反論するのだろう。
宰相は呆気にとられたような表情をしているが、少し考えればそんな自分達だけ都合の良い話が通るはずないと分かると思う。それともこれを覆すだけの反論があるのだろうか?
貴族や役人たちは理解したのか顔色が悪い。メイソン財務大臣は理解したのか諦めたような顔をしている。
どうするのかと興味津々で見ていると宰相が突然立ち上がり頭を下げてきた。
「頼む! 関税を下げてほしい。せめて小麦だけはお願いしたい!」
なんとぉ、白旗を掲げての懇願に切り替えたぁ!
宰相の行動に他の連中も驚いた様子だ。それでもすぐに宰相と同じように頭を下げ始めた。
俺はレイモンドがどう対応するのか気になった。彼らに同情して関税を引き下げる選択肢もある。個人的な恨みで彼らを追い詰めるのもある。もしくは純粋にエクス自治連合の執政官として対応する選択肢もあるのだ。
レイモンドは考え込むような顔をしたが、少しだけ微笑んだのを俺は見逃していなかった。
ワクワクする気持ちでレイモンドの発言に注目する。
「お気持ちは分かりますが……、実はホレック公国側では住民が逃げ出して、食料の必要量が激減しましたよね。それなら関税を2倍から3倍に増やそうと各自治領主が計画している最中でして……」
これには相手側も驚きの表情で固まっている。俺も驚いてバルドーさんを見ると念話で教えてくれた。
バルドー『ブラフですね。クククッ』
それを聞いて、最初にレイモンドに会ったときより、彼が成長しているのが分かる。
「そ、それだけは勘弁してください! どうか、どうかお助け下さい!」
メイソン財務大臣はついに涙を流し、机に額を擦り付けて懇願を始めた。後ろの役人達も何人か絶望的な表情をして、涙を流している。
「私も何とかしたいのですが……、執政官といっても各自治領主の意向を無視するわけにはいきません。言葉だけで説得したとしても関税を2倍に抑えることぐらいしか……」
くぅ~、恐ろしい!
ホレック側の気持ちは理解できると答えながら、関税2倍だと追い詰める。これでは彼らはレイモンドに文句を言いたくても言えないだろう。
「そんなことをされたらホレック公国はお終いだ……」
宰相は呆然として呟いた。
「元王子としての立場として助言するとしたら、帝国から食料を輸入するしかないのではありませんか?」
おっ、親切な提案だ。
しかし、バルドーさんが念話で説明してくれた。
帝国から輸入することは可能だが途中で腐ったり、船が難破したりリスクを考えると、食料だけを輸入することは難しいということだ。
単価の安い食料では採算が取れないから結局は高くなる。交易のついでに食料を運ぶ程度なら可能だが、それもダンジョン島が寂れた現状では僅かな食糧しか運べないという話だ。
「そんなのは無理だ。帝国からも見捨てられそうなのに……」
おうふ、自分で弱みを見せてどうするぅ~!
宰相は自分が何を言っているのか分かっていないようだ。
その呟きを聞いてレイモンドとバルドーさんの目が光った気がするぅ
「私も各自治領主を説得はしますが、交渉材料が無いと難しいですね……」
それを聞いた宰相は目に光が戻ったように話した。
「そ、それなら財貨を持ってきている。それで何とか関税の撤廃を説得してくれ!」
人に頼む話し方ではないと俺は思ったが、レイモンドは気にせず、宰相から渡された財貨の一覧を読み始めた。
「これなら現状維持として説得はできますねぇ。ですが関税の撤廃となると難しい……」
「そ、そんな、王家の備蓄の半分になるのだぞ!」
おおっ、まさかそれほどの財貨を持ってきたのか!?
でも、それでも現状維持かぁ……。
「各自治領主がこれまでに王家に吸い上げられた財貨を考えると……。彼らは何十年、何百年も税を納め続けたのに、あなた達に簡単に切り捨てられた彼らが、簡単に納得すると思いますか?」
宰相は絶望した表情を見せていた。だが、その財貨は王家のもので、アンタには影響などないのじゃないか?
誰も返事をしないのでレイモンドが提案する。
「私が関税を2割から3割に抑えるように説得するとしても、この財貨では難しいでしょう。これの5割増しを出してもらえるなら、3割以下は確約できると思いますよ。3割以下といっても3割が絶対ではありません。できれば2割ぐらいで説得して、追々に撤廃の方向に説得できるかもしれません」
最初は恨み言に近い発言をして、彼らに警戒されたレイモンドだが、今では救い主を見るような目で彼らは見ている。
「しかし、そんな約束は簡単には……。戻って陛下と相談してからで、お、お願いしたい」
宰相もさすがに簡単に結論は出せないのだろう。
「では、今日お持ちの財貨で現状維持の条約を結びますか? 私はそれでもかまいませんが、時間を掛けると、もっとホレック公国が出せるのではと自治領主が考えるかもしれません。そうなると同じ財貨を出しても今の5割ほどの関税になる可能性も……」
レイモンドは自治領主に時間を与えないほうが良いと話しながら、ホレック公国側に考える時間を与えないようにしているのだろう。
「しかし……」
それでも宰相は決断を迷っているようだ。
「何を言っているのですか。最悪3割程度なら住民は納得する可能性も高い。現状維持でも国民の流出は抑えられませんが、その程度なら戻ってくる国民も多いはずです!」
メイソン財務大臣はそう話したが、住民が戻ってくるのは難しいと思うけどなぁ。
最初からエクス自治連合と交渉して、重税をしなければ何とかなったと思うけど……。
これほど住民が逃げた後で、それも景気の良い自治領を見て戻るような住民が居るのだろうか?
「わかった。それで条約を結んでくれ! もう我が公国には時間的な余裕はないのだ!」
うん、ぶっちゃけ過ぎ!
それよりレイモンドはホレック公国を潰すつもりなのだろうか?
「お前はホレック公国がどうなっても構わないのか!」
おいおい、「お前」と言っちゃたよ!
宰相はレイモンドのことを王子として敬ってはいなかったのだろう。「お前」呼びがそれを表していると思った。
「いえいえ、私も元王族です。公国の住民が辛い思いをしていると思うと心が痛みます」
「だったら!」
「ですが、真っ先に辛い思いを強いられた住民は、すでに公国を逃げ出しようで安心しております!」
バ、バルドー株は恐ろしぃ~。
相手の話に対する切り返し方は、相手が押してくる力を利用して反撃する合気道に通じるものがあるなぁ。
「なんだとぉ……!」
宰相はレイモンドの返事に、怒りのあまり話を続けることができないようだ。こめかみに血管が浮き出して切れそうだ。
「殿下、住民は他にも残っているのですよ! 残っている者は見捨てるのですか!?」
宰相の代わりに横にいた貴族がレイモンドに縋りつくように訴えてきた。
「すでに公国から放り出された私に頼む前に、自分達がまずは住民を助けるべきではありませんか? これまでに蓄えた財貨を吐き出して国民の負担を減らす。そうして時間を稼いでる間にエクス自治連合と交渉する。間違っても増税など絶対に選択しません。その理由は説明しなくてもすでに分かっていらっしゃいますよね。メイソン財務大臣?」
おうふ、なんと自滅的な増税をした張本人がいたぁーーー!
「わ、私ではない! 陛下や宰相殿が増税するように決めたのだ。わ、私は悪くない!」
おいおい、ここで言い訳をしてどうするぅ~。
宰相もまさかここで身内から責められると思ってなかったのか、メイソン財務大臣を睨みつけている。睨まれたメイソン財務大臣は慌てて顔を伏せた。
宰相はそんなメイソン財務大臣に唾でも吐きそうな軽蔑の眼差しで見て、他の貴族や役人にも威圧の籠った視線を巡らせた。視線を向けられた貴族や役人は俯くだけで、宰相に反論する者はいなかった。
「それがホレック公国の元王子としての返事で良いのだな?」
宰相は睨みつけるようにレイモンドに尋ねているのだが、声には威圧を込めた脅すような感じで話していた。裏の顔である闇ギルドの顔を出しているのだろう。
しかし、レイモンドはそれを軽く受け流して答えた。
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この会議に参加して正解だぁーーー!
宰相は酷く顔を歪めている。それは怒りだけでなく屈辱で溢れているようも見える。バルドーさんも満面の笑みでそれを見つめている。
レイモンドがバルドー株に侵食されているのは不安だが、まだあっち系じゃないから大丈夫だろう。
「……そうか、だが今の関税は幾らなんでもやり過ぎではないのか?」
何とか宰相は立て直してレイモンドを追求してきた。
「そうですねぇ~、私が執政官を引き継いだときにはすでに関税は始まっていましたからねぇ」
「だったらホレック公国の為に、元王子の執政官なら変えるべきではないのか!?」
おお、宰相さん中々頑張って関税を引き下げようとしている!
「それは変ですねぇ。執政官になった時点で私の優先度はエクス自治連合側が高くなります。そうなれば地の利を有効に使うのは当然のことです。関税で利益を上げれば、エクス自治連合としては良いことばかりではありませんか?」
うん、そうなるよね!
「それでも地の利があるといってもやり過ぎだとは思わないのか!」
え~と、恥ずかしげもなくよく言うよねぇ~。
「クククッ、それはあまりにも滑稽な話ですねぇ」
「何がだ!」
「これまで地の利を使ってヴィンチザード王国から莫大な利益を上げていたのはホレック公国ではありませんか。自分達がするのは当然で、相手がするのは許さない。そんな都合の良い話が通じるとでも?」
強烈なカウンターだ!
自分達がしていたことを逆にされたからといって、文句を言うのは俺も滑稽な話だと思う。彼らはこれにどう反論するのだろう。
宰相は呆気にとられたような表情をしているが、少し考えればそんな自分達だけ都合の良い話が通るはずないと分かると思う。それともこれを覆すだけの反論があるのだろうか?
貴族や役人たちは理解したのか顔色が悪い。メイソン財務大臣は理解したのか諦めたような顔をしている。
どうするのかと興味津々で見ていると宰相が突然立ち上がり頭を下げてきた。
「頼む! 関税を下げてほしい。せめて小麦だけはお願いしたい!」
なんとぉ、白旗を掲げての懇願に切り替えたぁ!
宰相の行動に他の連中も驚いた様子だ。それでもすぐに宰相と同じように頭を下げ始めた。
俺はレイモンドがどう対応するのか気になった。彼らに同情して関税を引き下げる選択肢もある。個人的な恨みで彼らを追い詰めるのもある。もしくは純粋にエクス自治連合の執政官として対応する選択肢もあるのだ。
レイモンドは考え込むような顔をしたが、少しだけ微笑んだのを俺は見逃していなかった。
ワクワクする気持ちでレイモンドの発言に注目する。
「お気持ちは分かりますが……、実はホレック公国側では住民が逃げ出して、食料の必要量が激減しましたよね。それなら関税を2倍から3倍に増やそうと各自治領主が計画している最中でして……」
これには相手側も驚きの表情で固まっている。俺も驚いてバルドーさんを見ると念話で教えてくれた。
バルドー『ブラフですね。クククッ』
それを聞いて、最初にレイモンドに会ったときより、彼が成長しているのが分かる。
「そ、それだけは勘弁してください! どうか、どうかお助け下さい!」
メイソン財務大臣はついに涙を流し、机に額を擦り付けて懇願を始めた。後ろの役人達も何人か絶望的な表情をして、涙を流している。
「私も何とかしたいのですが……、執政官といっても各自治領主の意向を無視するわけにはいきません。言葉だけで説得したとしても関税を2倍に抑えることぐらいしか……」
くぅ~、恐ろしい!
ホレック側の気持ちは理解できると答えながら、関税2倍だと追い詰める。これでは彼らはレイモンドに文句を言いたくても言えないだろう。
「そんなことをされたらホレック公国はお終いだ……」
宰相は呆然として呟いた。
「元王子としての立場として助言するとしたら、帝国から食料を輸入するしかないのではありませんか?」
おっ、親切な提案だ。
しかし、バルドーさんが念話で説明してくれた。
帝国から輸入することは可能だが途中で腐ったり、船が難破したりリスクを考えると、食料だけを輸入することは難しいということだ。
単価の安い食料では採算が取れないから結局は高くなる。交易のついでに食料を運ぶ程度なら可能だが、それもダンジョン島が寂れた現状では僅かな食糧しか運べないという話だ。
「そんなのは無理だ。帝国からも見捨てられそうなのに……」
おうふ、自分で弱みを見せてどうするぅ~!
宰相は自分が何を言っているのか分かっていないようだ。
その呟きを聞いてレイモンドとバルドーさんの目が光った気がするぅ
「私も各自治領主を説得はしますが、交渉材料が無いと難しいですね……」
それを聞いた宰相は目に光が戻ったように話した。
「そ、それなら財貨を持ってきている。それで何とか関税の撤廃を説得してくれ!」
人に頼む話し方ではないと俺は思ったが、レイモンドは気にせず、宰相から渡された財貨の一覧を読み始めた。
「これなら現状維持として説得はできますねぇ。ですが関税の撤廃となると難しい……」
「そ、そんな、王家の備蓄の半分になるのだぞ!」
おおっ、まさかそれほどの財貨を持ってきたのか!?
でも、それでも現状維持かぁ……。
「各自治領主がこれまでに王家に吸い上げられた財貨を考えると……。彼らは何十年、何百年も税を納め続けたのに、あなた達に簡単に切り捨てられた彼らが、簡単に納得すると思いますか?」
宰相は絶望した表情を見せていた。だが、その財貨は王家のもので、アンタには影響などないのじゃないか?
誰も返事をしないのでレイモンドが提案する。
「私が関税を2割から3割に抑えるように説得するとしても、この財貨では難しいでしょう。これの5割増しを出してもらえるなら、3割以下は確約できると思いますよ。3割以下といっても3割が絶対ではありません。できれば2割ぐらいで説得して、追々に撤廃の方向に説得できるかもしれません」
最初は恨み言に近い発言をして、彼らに警戒されたレイモンドだが、今では救い主を見るような目で彼らは見ている。
「しかし、そんな約束は簡単には……。戻って陛下と相談してからで、お、お願いしたい」
宰相もさすがに簡単に結論は出せないのだろう。
「では、今日お持ちの財貨で現状維持の条約を結びますか? 私はそれでもかまいませんが、時間を掛けると、もっとホレック公国が出せるのではと自治領主が考えるかもしれません。そうなると同じ財貨を出しても今の5割ほどの関税になる可能性も……」
レイモンドは自治領主に時間を与えないほうが良いと話しながら、ホレック公国側に考える時間を与えないようにしているのだろう。
「しかし……」
それでも宰相は決断を迷っているようだ。
「何を言っているのですか。最悪3割程度なら住民は納得する可能性も高い。現状維持でも国民の流出は抑えられませんが、その程度なら戻ってくる国民も多いはずです!」
メイソン財務大臣はそう話したが、住民が戻ってくるのは難しいと思うけどなぁ。
最初からエクス自治連合と交渉して、重税をしなければ何とかなったと思うけど……。
これほど住民が逃げた後で、それも景気の良い自治領を見て戻るような住民が居るのだろうか?
「わかった。それで条約を結んでくれ! もう我が公国には時間的な余裕はないのだ!」
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