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第10章 ホレック公国
第23話 アンナァァァァァ!
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海岸沿いをドラ美ちゃんに乗って飛んで行く。少し大きめの港町を見つけるたびに、ドラ美ちゃんが港町の上空を旋回して、その姿を見せつけながら飛んで行く。
昼頃に人気の少ない地上に降りて『どこでも自宅』で昼食を食べることにした。場所的には公都のすぐそばまで来ていた。
「公都に着いてから昼食を食べても良かったんじゃありませんか。その方がホレック公国の王族や貴族も、昼食を食べられなくなるでしょう」
ムーチョさんは悪そうな笑みを浮かべてそう話した。
「それだと俺達も落ち着いて昼食を食べられませんよ。特にリディアはドラ美ちゃんから姿を変えられなくなり、昼食も食べられません。可哀想じゃないですかぁ」
「ご主人様……」
リディアは嬉しそうにしている。
まあ、リディアも仲間なんだから、一緒に昼食を食べないとね。
「焦っても仕方ありませんね。それよりも昨日のマッスル様は素晴らしかった。あれを見て逆らうような人は、誰も居ないでしょうなぁ」
くっ、昨日の事は早く忘れたいのにぃ!
「マッスル! マッスル! マッスル!」
エアルが楽しそうに右手を突き上げながらコールする。今は仮面を着けていないせいか、逆に落ち込む……。
「昨日のご主人様を見て、俺もマッスル弾を撃てそうな気がするぞ!」
うん、ドラゴンがマッスル弾を撃つのは止めてくれ。
リディアはドラゴンだから魔力量は非常に多い。人間などくらべものにならないほど魔力量は膨大だ。
そのドラゴンより圧倒的に魔力量の多い俺は、やはり異常なのだろうか……。
それはともかくとして、リディアがドラゴンの魔力量を使ってマッスル弾を撃てるなら、あの海底噴火のようなマッスル弾が使えると思う。
リディアはスキルを使えるが、魔法は使えない。だから炎《ファイア》ブレスはリディアの姿では使えないのだ。人化けしたリディアが大剣持ちの冒険者として活動していたのは、それが理由でもある。
「リディアは勝手にマッスル弾を撃たないようにしろ。今度俺がどの程度か確認する!」
「わかった。ご主人様が手取り足取り教えてくれるのだな。それは楽しみだ!」
いや、そこまでは絶対にしない!
また、灼熱のリディアを触りたくはない……。
「マッスル! マッスル! マッスル!」
エアルはごっこ遊びしているみたいで可愛いと思う。だが、俺が仮面を着けている時は止めて欲しい……。
◇ ◇ ◇ ◇
昼食を食べ終わると、リビングでお茶を飲みながら、昨日の事をムーチョさんが報告してくれる。
「いやぁ、自治連合に参加予定だった領主たちは、喜んで自治連合に加盟すると言ってきました。それどころか、ホレック公国との話し合いが上手くいかなくても、加盟すると言い出す始末でしたからなぁ」
彼らも追い詰められて、黒耳長族との作戦に参加したぐらいだ。ホレック公国の傘下にいても未来は無いと言えるだろう。
自治連合なら、ホレック公国の重税が無くなる。塩が売れなくなったというのに塩に掛けられた税は変わっていない。税が無くなれば塩の値段が安くなり、ヴィンチザード王国でも十分商売になる金額で売れるはずだ。
「それだけでないのじゃ。乾物も売れそうだと気合が入っていた。カニも魔物なら生きたまま輸送することも可能じゃ!」
「クククッ、カニを食べさせた時の彼らの表情は最高でしたなぁ」
「失礼な奴らじゃ。最初は私の罰だと勘違いしておった。しかし、食べ始めたら奪い合いが始まるくらい大変だったのじゃ」
いやいや、エアルも同じような反応していたじゃないか!?
カニの魔物だと塩水を与えれば、問題なく地上で生きているのは島で確認できていたのは良かった。最初は生簀でも作って養殖を考えたのだが、魔物のカニは普通に地上に上がってくる。餌に解体した魔物の廃棄物を食べさせたら普通に食べていた。塩水を1日1回与えるだけで、半月ほど確認したが死ぬ気配が全くないのだ。
カニの魔物は普通のカニの3倍ほどの大きさがある。多少危険だが可食部は10倍近くあり、味は更に美味しいのだ。あれなら高級食材として手間暇かけて運ぶ価値はあるだろう。
「ダガード子爵は塩の採取量を半分にして品質を上げる計画を立て始めていました。そして乾物やカニ、干物のような加工品に人材を回すと。今日にも船でエクス群島に職人技術の習得に向かわせると言っておりましたなぁ」
おいおい、もう自治連合が動き始めてないか?
「そ、それと、奴らはとんでもないこと言い出しおって……」
エアルがまた耳まで真っ赤にして、言い難そうに話した。
「とんでもないこと?」
ムーチョさんは心当たりがないらしい。エアルはそんなムーチョさんをもどかしそうに睨みつけ、さらに話をする。
「ほ、ほれっ、ダガードが言ったではないか、そ、その、王と王妃の話を!」
王と王妃? 物語かなんか?
「ああ、そういえば、そんな話も出ましたなぁ。自治連合ではなく王国にしてはどうかとダガード子爵が言い出して、他の領主もそれが良いと騒ぎ始めて、いやぁ、大変でした!」
「ち、違うのじゃ! いや、違わないが……、そこで王と王妃の話があったではないかぁ!」
おいおい、黒耳長族は国を造るつもりか!?
「……おおっ、そんな話もありましたなぁ。マッスル様とエアル殿が結婚してマッスル王国にしてはどうかと提案がありましたなぁ」
なんですとぉーーー!
「黒耳長族は結婚の風習はないのじゃが、マッスル殿なら」
「却下!」
いやいや、なんで、「が~ん!」としているのぉ!?
「何故じゃ、なんなら娘と孫も一緒にどうじゃ!」
「却下!」
なんでそっちに話がいくぅ!?
「村で美人3世代と言われる我らでは不満なのか!? グスッ」
グスッ、じゃねぇーーー!
「根本的に王国を造るのはありえない!」
「だったら、嫁に、いや、子種だけでも!」
おうふ、なんでそうなるのかなぁ?
やっとのじゃ婆ぁ、ゲフン……あの次々と問題を起こすドロテアさんから距離を置いたのに、今度は同じようなのじゃロリが目の前にいる。
見た目が違うだけじゃねぇかぁーーー!
あっ、もしかしてドロテアさんが三つに分裂しただけ!?
トラブルとか夜這いとか子種とか……。
「どうなさいました?」
俺が俯いて考え込んでいるのを見て、ムーチョさんが心配そうに尋ねてきた。
「い、いや、エアルがドロテアさんの分身なのか考えていて……」
「それは……、確かに似ていますなぁ……」
「な、なんじゃ、すでにドロテアという嫁が居るのか!? わ、私はそれでもかまわんのじゃ!」
おうふ、積極的になってるぅ~!
「それは違うぞ。俺はアンナから正妻はジジになると聞いている」
待て待て待ってぇ~!
ジジが会話に入らず給仕と食事をしていたのに、真っ赤になって固まっている。
「アンナさんがそんなこと……」
「おう、俺はそう聞いている。だから俺とアンナは子種だけで我慢すると聞いているぞ?」
アンナァァァァァ!
「そ、そうなの、リディアちゃん、今日はおまけでもう少しオークカツを……」
ジジちゃ~ん、それはおまけじゃないからぁ!
ジジは真っ赤な顔で、リディアの前にオークカツ丼とオークカツサンドを収納から10人前ずつ出した。
「サ、サンキュウ! やっぱり正妻はジジだな!」
追加で出すなぁ!
「正妻はジジで構わないのじゃ! いや、それのほうが都合は良い。我らは子種だけで十分じゃ!」
また収拾がつかなくなってるぅ!!!
こんな状態で、これからホレック公国と交渉などできるのか!?
横ではムーチョさんが微笑ましそうに俺達を見ているのだった
昼頃に人気の少ない地上に降りて『どこでも自宅』で昼食を食べることにした。場所的には公都のすぐそばまで来ていた。
「公都に着いてから昼食を食べても良かったんじゃありませんか。その方がホレック公国の王族や貴族も、昼食を食べられなくなるでしょう」
ムーチョさんは悪そうな笑みを浮かべてそう話した。
「それだと俺達も落ち着いて昼食を食べられませんよ。特にリディアはドラ美ちゃんから姿を変えられなくなり、昼食も食べられません。可哀想じゃないですかぁ」
「ご主人様……」
リディアは嬉しそうにしている。
まあ、リディアも仲間なんだから、一緒に昼食を食べないとね。
「焦っても仕方ありませんね。それよりも昨日のマッスル様は素晴らしかった。あれを見て逆らうような人は、誰も居ないでしょうなぁ」
くっ、昨日の事は早く忘れたいのにぃ!
「マッスル! マッスル! マッスル!」
エアルが楽しそうに右手を突き上げながらコールする。今は仮面を着けていないせいか、逆に落ち込む……。
「昨日のご主人様を見て、俺もマッスル弾を撃てそうな気がするぞ!」
うん、ドラゴンがマッスル弾を撃つのは止めてくれ。
リディアはドラゴンだから魔力量は非常に多い。人間などくらべものにならないほど魔力量は膨大だ。
そのドラゴンより圧倒的に魔力量の多い俺は、やはり異常なのだろうか……。
それはともかくとして、リディアがドラゴンの魔力量を使ってマッスル弾を撃てるなら、あの海底噴火のようなマッスル弾が使えると思う。
リディアはスキルを使えるが、魔法は使えない。だから炎《ファイア》ブレスはリディアの姿では使えないのだ。人化けしたリディアが大剣持ちの冒険者として活動していたのは、それが理由でもある。
「リディアは勝手にマッスル弾を撃たないようにしろ。今度俺がどの程度か確認する!」
「わかった。ご主人様が手取り足取り教えてくれるのだな。それは楽しみだ!」
いや、そこまでは絶対にしない!
また、灼熱のリディアを触りたくはない……。
「マッスル! マッスル! マッスル!」
エアルはごっこ遊びしているみたいで可愛いと思う。だが、俺が仮面を着けている時は止めて欲しい……。
◇ ◇ ◇ ◇
昼食を食べ終わると、リビングでお茶を飲みながら、昨日の事をムーチョさんが報告してくれる。
「いやぁ、自治連合に参加予定だった領主たちは、喜んで自治連合に加盟すると言ってきました。それどころか、ホレック公国との話し合いが上手くいかなくても、加盟すると言い出す始末でしたからなぁ」
彼らも追い詰められて、黒耳長族との作戦に参加したぐらいだ。ホレック公国の傘下にいても未来は無いと言えるだろう。
自治連合なら、ホレック公国の重税が無くなる。塩が売れなくなったというのに塩に掛けられた税は変わっていない。税が無くなれば塩の値段が安くなり、ヴィンチザード王国でも十分商売になる金額で売れるはずだ。
「それだけでないのじゃ。乾物も売れそうだと気合が入っていた。カニも魔物なら生きたまま輸送することも可能じゃ!」
「クククッ、カニを食べさせた時の彼らの表情は最高でしたなぁ」
「失礼な奴らじゃ。最初は私の罰だと勘違いしておった。しかし、食べ始めたら奪い合いが始まるくらい大変だったのじゃ」
いやいや、エアルも同じような反応していたじゃないか!?
カニの魔物だと塩水を与えれば、問題なく地上で生きているのは島で確認できていたのは良かった。最初は生簀でも作って養殖を考えたのだが、魔物のカニは普通に地上に上がってくる。餌に解体した魔物の廃棄物を食べさせたら普通に食べていた。塩水を1日1回与えるだけで、半月ほど確認したが死ぬ気配が全くないのだ。
カニの魔物は普通のカニの3倍ほどの大きさがある。多少危険だが可食部は10倍近くあり、味は更に美味しいのだ。あれなら高級食材として手間暇かけて運ぶ価値はあるだろう。
「ダガード子爵は塩の採取量を半分にして品質を上げる計画を立て始めていました。そして乾物やカニ、干物のような加工品に人材を回すと。今日にも船でエクス群島に職人技術の習得に向かわせると言っておりましたなぁ」
おいおい、もう自治連合が動き始めてないか?
「そ、それと、奴らはとんでもないこと言い出しおって……」
エアルがまた耳まで真っ赤にして、言い難そうに話した。
「とんでもないこと?」
ムーチョさんは心当たりがないらしい。エアルはそんなムーチョさんをもどかしそうに睨みつけ、さらに話をする。
「ほ、ほれっ、ダガードが言ったではないか、そ、その、王と王妃の話を!」
王と王妃? 物語かなんか?
「ああ、そういえば、そんな話も出ましたなぁ。自治連合ではなく王国にしてはどうかとダガード子爵が言い出して、他の領主もそれが良いと騒ぎ始めて、いやぁ、大変でした!」
「ち、違うのじゃ! いや、違わないが……、そこで王と王妃の話があったではないかぁ!」
おいおい、黒耳長族は国を造るつもりか!?
「……おおっ、そんな話もありましたなぁ。マッスル様とエアル殿が結婚してマッスル王国にしてはどうかと提案がありましたなぁ」
なんですとぉーーー!
「黒耳長族は結婚の風習はないのじゃが、マッスル殿なら」
「却下!」
いやいや、なんで、「が~ん!」としているのぉ!?
「何故じゃ、なんなら娘と孫も一緒にどうじゃ!」
「却下!」
なんでそっちに話がいくぅ!?
「村で美人3世代と言われる我らでは不満なのか!? グスッ」
グスッ、じゃねぇーーー!
「根本的に王国を造るのはありえない!」
「だったら、嫁に、いや、子種だけでも!」
おうふ、なんでそうなるのかなぁ?
やっとのじゃ婆ぁ、ゲフン……あの次々と問題を起こすドロテアさんから距離を置いたのに、今度は同じようなのじゃロリが目の前にいる。
見た目が違うだけじゃねぇかぁーーー!
あっ、もしかしてドロテアさんが三つに分裂しただけ!?
トラブルとか夜這いとか子種とか……。
「どうなさいました?」
俺が俯いて考え込んでいるのを見て、ムーチョさんが心配そうに尋ねてきた。
「い、いや、エアルがドロテアさんの分身なのか考えていて……」
「それは……、確かに似ていますなぁ……」
「な、なんじゃ、すでにドロテアという嫁が居るのか!? わ、私はそれでもかまわんのじゃ!」
おうふ、積極的になってるぅ~!
「それは違うぞ。俺はアンナから正妻はジジになると聞いている」
待て待て待ってぇ~!
ジジが会話に入らず給仕と食事をしていたのに、真っ赤になって固まっている。
「アンナさんがそんなこと……」
「おう、俺はそう聞いている。だから俺とアンナは子種だけで我慢すると聞いているぞ?」
アンナァァァァァ!
「そ、そうなの、リディアちゃん、今日はおまけでもう少しオークカツを……」
ジジちゃ~ん、それはおまけじゃないからぁ!
ジジは真っ赤な顔で、リディアの前にオークカツ丼とオークカツサンドを収納から10人前ずつ出した。
「サ、サンキュウ! やっぱり正妻はジジだな!」
追加で出すなぁ!
「正妻はジジで構わないのじゃ! いや、それのほうが都合は良い。我らは子種だけで十分じゃ!」
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