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第10章 ホレック公国
第8話 マッスルゥ、ハッ!
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バルドーさんが聞いた話をまとめて、ホレックについて説明してくれた。
数年前に人族がこの地に流れ着いたらしい。ボロボロの船で生きていたのは10人ぐらいしかいなかった。この群島の周辺は岩礁や海流の影響で難破せずに、船で近付くことは難しい。黒耳長族だけが船で出入りするルートを知っているのだ。
黒耳長族は特に警戒することなく彼らを助け、船の修理を手伝い、無事に群島の外まで彼らを送り出したのである。
助けられて連中は、船を修理する間の1ヶ月以上村で過ごした。そしてダンジョンの存在を知ったのである。
ホレック公国に戻った彼らは、黒耳長族に助けられた事と、ダンジョンがあったことを色々な場所で話した。そして、その噂を聞いたホレック公国は興味を示したのだ。
この群島の周辺はそれほどホレック公国と離れている訳ではない。船で半月ぐらいの場所にあった。
半年ほど過ぎて、助けた連中の何人かが国に雇われて、彼らの案内でホレック公国の兵士が群島にやってきた。お礼を兼ねてと言いながら、ダンジョンの調査にやってきたのだ。黒耳長族は警戒することなくダンジョンや島を案内した。
ホレック公国はすぐに黒耳長族を脅威ではなく、奴隷資産としてみなした。イケメンマッチョの男はいくらでも需要がある。そして子供のような女は魔術に秀でていることはすぐに分かった。ちょうど農作業で土魔術を使っているのを何度も見たのである。
ホレック公国の代表は公王の第3公子であった。新たなダンジョン確保を第3公子の手柄にするためだけに同行していたのである。
第3公子はすでに36歳で妻は12人いた。贅沢で肥え太った彼は幼い少女しか興味がなかった。12歳の少女、それも見た目は10歳以下に見える少女を妻にして、成長すると興味を無くし、新たな妻を迎えていた。
彼にとって成長しない黒耳長族の女は理想の女だったのだ。
第3公子の命令で黒耳長族を捕らえ、奴隷とダンジョンを手に入れようとした。筋肉だけの男は脅威と考えず、土魔術など戦闘には向かないと思っていたのだ。
しかし、男たちは魔術を使えないが身体強化で驚くほど強かった。そして女は土魔術だけでなくあらゆる魔術を使うものが揃っていて、魔力量も人族とは比較にならないほど多かった。
彼らは半数以上が倒されると逃げるように去って行った。そして定期的に冒険者と思われる連中が女を攫いに来るらしい。
「第3公子は子供好きな性癖は有名です。彼が冒険者ギルドに依頼でもしているのでしょう」
バルドーさんは王宮で働いていた時の情報をあてはめて、説明してくれた。
「ロリコンかぁ……」
この世界は極振りした性癖の人間が多いと思った。しかし、前世でも居なかったわけでもない。文化レベルを考えると逆に許される範囲も広く、それが権力者ならさらに暴走するのだろう。
「ロリコンとは何でしょうか?」
バルドーさんが不思議そうに尋ねてきた。
「まあ、幼女が好きな男の事ですかねぇ~」
「なるほど……」
「幼女とは失礼なのじゃ。私は立派な大人じゃ。年齢的にも子供なのは相手の方じゃ!」
うん、確かにその通りなんだが……。
エアル達の見た目は悪くない。いや、非常に可愛いのだ。俺から見ると、このまま成長してくれたら将来は非常に美人になるのは間違いないと思う。
しかし、成長しないから、俺には圏外の存在と言えるだろう。
「どちらにしても、現状ではあまり脅威ではありません。黒耳長族は数が少ないですが、ほとんどが冒険者で言うところのA級かB級の実力は確実にあります。
それほどの実力者を揃えるのはホレック公国も難しいでしょうし、ダンジョンと言ってもそれほど価値が高いとは思えません」
まあ、大丈夫なら気にする必要はないなぁ。
少しだけ性癖が極振りしている人は危険だと考えたけど……。
◇ ◇ ◇ ◇
その日から俺は生産活動に奔走した。
共同炊事場を何箇所も造り、念のため男女で作業できるよう工夫する。魔道具を設置して薪ではなく魔石を燃料にした。これまでダンジョンで魔石は回収していなかったが、これからは活用できるようにしたのだ。
状態保存を付与したマジックボックスも設置して、食材や料理まで保存できるようにした。
干物や燻製の加工場や、醤油や味噌の調味料の製造所も作った。昆布を乾燥させて出汁を取る方法やわかめや海苔などの作り方も教える。
納豆や豆腐も作り方を教えたが、最初は嫌がっていた彼らもジジに料理法を教えられると、予想以上に工夫を始めた。
意外に料理好きのイケメンマッチョが多くいて、ジジを師匠と呼びいつも楽しそうにしている。
お姉に囲まれるジジかぁ……。
全員に馬車1台分ぐらいの収納とステータスを付与した腕輪を渡した。
正確には族長であるエアルから村人に渡してもらい、今後はそれらの管理も任せた。
毎日のように新たな食材や加工品が食事に出るようになり、黒耳長族の生活は劇的に向上したのである。
◇ ◇ ◇ ◇
ホレック公国や冒険者からの襲撃に備えるため、ステータスを使った訓練方法を女性陣に教えた。訓練はアンナが指導してくれた。
アンナはエリカの動向を監視してくれている。過剰にエリカが俺に近づかないようにしてくれて助かっている。
そして最近はマッチョーズの訓練を俺が見ている。
マッチョーズは身体強化で素早さも力も申し分ないのだが、技術や魔力の使い方をあまり理解していなかったのだ。
「いいかぁ、魔力は体に纏わせるだけではダメだ! 銛や武器に纏わせることで威力は更に高くなる!」
うん、全く分かっていない……。
俺の話を聞いても全く理解できていないようだ。
試しに彼らから借りた銛に魔力を纏わせる。
「「「フンッ!」」」
黒耳長族はやはり魔力には敏感なようだ。銛に纏った魔力を感知したのか、ほとんどの者がポージングをしている。
その銛を岩に向かって投げると、岩を粉々にした。
「「「フンッ、フンッ!」」」
お、驚きもポージングかよぉ!
「エクス様と同じことを! フンッ!」
「伝説が再び! フンッ!」
「見た目は貧弱なのに! フンッ!」
貧弱言うなぁーーー!
「お前達は魔力の使い方を分かっていない!」
そう言うと、少し離れた岩を指差すとそちらを向く。そして身体強化を使い、さらに過剰に魔力を体内に充満させる。そしてポージングしながら気合を入れ、声を出しながら魔力を腕に移動して行く。
「マッスルゥーーー、ハッ!」
最後に腕に移動した魔力を、突き出した拳の先から突き出した。魔力の塊が岩に飛んでいきぶつかる。
ドゴォーーーン!
岩は爆発するように吹き飛んだ。
「「「フンッ! フンッ! フンッ!」」」
暑苦しぃーーーーー! 普通に驚いてくれぇ!
「伝説が! フンッ!」
「エクス様の再来だ! フンッ!」
「貧弱でもできるのだ! フンッ!」
最後の奴、お前にぶち込むよ!
「これは伝説じゃない! 正しい訓練をすればお前達なら習得できるはずだ!」
「「「フンッ!」」」
え~と、お願いだから普通に返事して。
「よく魔力の流れを見ろ。マッスル、ハッ!」
海に向かって軽くやってみせる。
「「「フフンッ!?」」」
おっ、さすが黒耳長族。見えていたようだ。
「お前達も海に向かってやってみろ!」
彼らは一列に並んで海の方に向いた。
俺が合図すると彼らも真似て拳を突き出す。
「「「フンッ!」」」
「ダメだ! 全然わかっていない。マッスルで魔力を腕に移動させて、ハッで放出するんだ!」
「「「フウン?」」」
普通に喋れぇーーー!
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
おっ、何人か魔力を放出できたようだ。
「「「フンッ! フンッ! フンッ! フンッ! フンッ!」」」
感動するのは良いが、普通に喜んでくれぇ~!
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
回数を重ねるごとにコツを掴む数が増えていく。
涙を出して喜ぶ者もいるが、やはり喜びや驚きの表現は変わらなかった。
数年前に人族がこの地に流れ着いたらしい。ボロボロの船で生きていたのは10人ぐらいしかいなかった。この群島の周辺は岩礁や海流の影響で難破せずに、船で近付くことは難しい。黒耳長族だけが船で出入りするルートを知っているのだ。
黒耳長族は特に警戒することなく彼らを助け、船の修理を手伝い、無事に群島の外まで彼らを送り出したのである。
助けられて連中は、船を修理する間の1ヶ月以上村で過ごした。そしてダンジョンの存在を知ったのである。
ホレック公国に戻った彼らは、黒耳長族に助けられた事と、ダンジョンがあったことを色々な場所で話した。そして、その噂を聞いたホレック公国は興味を示したのだ。
この群島の周辺はそれほどホレック公国と離れている訳ではない。船で半月ぐらいの場所にあった。
半年ほど過ぎて、助けた連中の何人かが国に雇われて、彼らの案内でホレック公国の兵士が群島にやってきた。お礼を兼ねてと言いながら、ダンジョンの調査にやってきたのだ。黒耳長族は警戒することなくダンジョンや島を案内した。
ホレック公国はすぐに黒耳長族を脅威ではなく、奴隷資産としてみなした。イケメンマッチョの男はいくらでも需要がある。そして子供のような女は魔術に秀でていることはすぐに分かった。ちょうど農作業で土魔術を使っているのを何度も見たのである。
ホレック公国の代表は公王の第3公子であった。新たなダンジョン確保を第3公子の手柄にするためだけに同行していたのである。
第3公子はすでに36歳で妻は12人いた。贅沢で肥え太った彼は幼い少女しか興味がなかった。12歳の少女、それも見た目は10歳以下に見える少女を妻にして、成長すると興味を無くし、新たな妻を迎えていた。
彼にとって成長しない黒耳長族の女は理想の女だったのだ。
第3公子の命令で黒耳長族を捕らえ、奴隷とダンジョンを手に入れようとした。筋肉だけの男は脅威と考えず、土魔術など戦闘には向かないと思っていたのだ。
しかし、男たちは魔術を使えないが身体強化で驚くほど強かった。そして女は土魔術だけでなくあらゆる魔術を使うものが揃っていて、魔力量も人族とは比較にならないほど多かった。
彼らは半数以上が倒されると逃げるように去って行った。そして定期的に冒険者と思われる連中が女を攫いに来るらしい。
「第3公子は子供好きな性癖は有名です。彼が冒険者ギルドに依頼でもしているのでしょう」
バルドーさんは王宮で働いていた時の情報をあてはめて、説明してくれた。
「ロリコンかぁ……」
この世界は極振りした性癖の人間が多いと思った。しかし、前世でも居なかったわけでもない。文化レベルを考えると逆に許される範囲も広く、それが権力者ならさらに暴走するのだろう。
「ロリコンとは何でしょうか?」
バルドーさんが不思議そうに尋ねてきた。
「まあ、幼女が好きな男の事ですかねぇ~」
「なるほど……」
「幼女とは失礼なのじゃ。私は立派な大人じゃ。年齢的にも子供なのは相手の方じゃ!」
うん、確かにその通りなんだが……。
エアル達の見た目は悪くない。いや、非常に可愛いのだ。俺から見ると、このまま成長してくれたら将来は非常に美人になるのは間違いないと思う。
しかし、成長しないから、俺には圏外の存在と言えるだろう。
「どちらにしても、現状ではあまり脅威ではありません。黒耳長族は数が少ないですが、ほとんどが冒険者で言うところのA級かB級の実力は確実にあります。
それほどの実力者を揃えるのはホレック公国も難しいでしょうし、ダンジョンと言ってもそれほど価値が高いとは思えません」
まあ、大丈夫なら気にする必要はないなぁ。
少しだけ性癖が極振りしている人は危険だと考えたけど……。
◇ ◇ ◇ ◇
その日から俺は生産活動に奔走した。
共同炊事場を何箇所も造り、念のため男女で作業できるよう工夫する。魔道具を設置して薪ではなく魔石を燃料にした。これまでダンジョンで魔石は回収していなかったが、これからは活用できるようにしたのだ。
状態保存を付与したマジックボックスも設置して、食材や料理まで保存できるようにした。
干物や燻製の加工場や、醤油や味噌の調味料の製造所も作った。昆布を乾燥させて出汁を取る方法やわかめや海苔などの作り方も教える。
納豆や豆腐も作り方を教えたが、最初は嫌がっていた彼らもジジに料理法を教えられると、予想以上に工夫を始めた。
意外に料理好きのイケメンマッチョが多くいて、ジジを師匠と呼びいつも楽しそうにしている。
お姉に囲まれるジジかぁ……。
全員に馬車1台分ぐらいの収納とステータスを付与した腕輪を渡した。
正確には族長であるエアルから村人に渡してもらい、今後はそれらの管理も任せた。
毎日のように新たな食材や加工品が食事に出るようになり、黒耳長族の生活は劇的に向上したのである。
◇ ◇ ◇ ◇
ホレック公国や冒険者からの襲撃に備えるため、ステータスを使った訓練方法を女性陣に教えた。訓練はアンナが指導してくれた。
アンナはエリカの動向を監視してくれている。過剰にエリカが俺に近づかないようにしてくれて助かっている。
そして最近はマッチョーズの訓練を俺が見ている。
マッチョーズは身体強化で素早さも力も申し分ないのだが、技術や魔力の使い方をあまり理解していなかったのだ。
「いいかぁ、魔力は体に纏わせるだけではダメだ! 銛や武器に纏わせることで威力は更に高くなる!」
うん、全く分かっていない……。
俺の話を聞いても全く理解できていないようだ。
試しに彼らから借りた銛に魔力を纏わせる。
「「「フンッ!」」」
黒耳長族はやはり魔力には敏感なようだ。銛に纏った魔力を感知したのか、ほとんどの者がポージングをしている。
その銛を岩に向かって投げると、岩を粉々にした。
「「「フンッ、フンッ!」」」
お、驚きもポージングかよぉ!
「エクス様と同じことを! フンッ!」
「伝説が再び! フンッ!」
「見た目は貧弱なのに! フンッ!」
貧弱言うなぁーーー!
「お前達は魔力の使い方を分かっていない!」
そう言うと、少し離れた岩を指差すとそちらを向く。そして身体強化を使い、さらに過剰に魔力を体内に充満させる。そしてポージングしながら気合を入れ、声を出しながら魔力を腕に移動して行く。
「マッスルゥーーー、ハッ!」
最後に腕に移動した魔力を、突き出した拳の先から突き出した。魔力の塊が岩に飛んでいきぶつかる。
ドゴォーーーン!
岩は爆発するように吹き飛んだ。
「「「フンッ! フンッ! フンッ!」」」
暑苦しぃーーーーー! 普通に驚いてくれぇ!
「伝説が! フンッ!」
「エクス様の再来だ! フンッ!」
「貧弱でもできるのだ! フンッ!」
最後の奴、お前にぶち込むよ!
「これは伝説じゃない! 正しい訓練をすればお前達なら習得できるはずだ!」
「「「フンッ!」」」
え~と、お願いだから普通に返事して。
「よく魔力の流れを見ろ。マッスル、ハッ!」
海に向かって軽くやってみせる。
「「「フフンッ!?」」」
おっ、さすが黒耳長族。見えていたようだ。
「お前達も海に向かってやってみろ!」
彼らは一列に並んで海の方に向いた。
俺が合図すると彼らも真似て拳を突き出す。
「「「フンッ!」」」
「ダメだ! 全然わかっていない。マッスルで魔力を腕に移動させて、ハッで放出するんだ!」
「「「フウン?」」」
普通に喋れぇーーー!
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
おっ、何人か魔力を放出できたようだ。
「「「フンッ! フンッ! フンッ! フンッ! フンッ!」」」
感動するのは良いが、普通に喜んでくれぇ~!
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
「マッスル、ハッ!」
「「「マッスル、ハッ!」」」
回数を重ねるごとにコツを掴む数が増えていく。
涙を出して喜ぶ者もいるが、やはり喜びや驚きの表現は変わらなかった。
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