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第9章 ホレック公国へ
第9話 ハル兵衛復活!
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町から出ようとすると兵士に止められた。
「あ、あのぉ、どちらに行かれるのですか?」
兵士は戸惑った様子で質問してきた。別に気にすることでもないが、あの代官の件があったので、警戒した目で相手を睨む。
兵士は俺の様子を見て理由を話してくれた。
「最近は町の周辺にも魔物が多く出没しています。メ、メイドさんも一緒に外に行かれるのですか?」
兵士は親切で声を掛けてくれたようだ。疑い過ぎて申し訳なく思う。
「2人はそれなりに戦えますから大丈夫です」
「そ、その子もですか?」
兵士はピピを指差して訪ねてきた。
確かにピピはまだ子供である。しかし、戦闘能力で言えば話している兵士より強い気もする。
「シル行くよぉ~!」
我慢できなくなったのか、ピピがシルと一緒に走り出してしまった。兵士も驚いて止めようとしたが、シルと同じ勢いで走るピピを見て固まってしまった。
「あの通りそこそこ動けるし、従魔も一緒だから大丈夫ですよ」
兵士に話したが、兵士はすぐ近くを走り回るシルとピピを見ながらコクコクと頷くだけであった。
大丈夫そうなので兵士をそのままにして、町の外に向かうのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
町の外に出ると一気に森に向かう。門の兵士から見えない所に着くとD研を開くとジジとアンナにお願いする。
「ハル兵衛とピョン吉たちも呼んできてくれるかい?」
「「はい」」
2人が中に入ってすぐに嫌そうな顔でハル兵衛が出てきた。
『あのオークラビットは行きたくないと言っていたわ!』
おうふ、ミニオークがピョン吉をオークラビット呼びかい!
そしてすぐにピョン子も出てきた。ピョン子は俺達を無視してピピの居る方に走って行く。
「まあ、この辺はオークもいるらしいからな。同士討ちは気の毒かぁ」
ハル兵衛の話に乗っかる。
『うそぉ、オークが居るの!? ねえ、オークを狩ってきたオークカツが食べたいわ!』
ミニオークがオークカツを食べる……。そしてミニオークからオークに……。
頭の中で想像して吹き出しそうになる。
『ちょっとぉ、何を笑っているのよぉ。それより、いいでしょ?』
「まあ、構わないかぁ」
『やったわ! オーク1頭から、どれほどのオークカツが作れるかしら!? じゅるるぅ』
今から涎を垂らさないでよぉ。
「ただしオーク1匹につき、オークカツは3枚だ! それに1度に出せるのはオークカツ2枚だ! 残りはオークカツ貯金として、次回以降の食事で配給する」
本当にオークにクラスチェンジされたらダイエットの意味がない。
『そんなぁ~、それじゃあ悪徳業者と一緒じゃない!』
「そうかぁ。ジジの料理の腕を考えたら、損ではないと俺は思うぞ。サクサクの衣に分厚いオーク肉、噛むとジュワ~と肉汁が口の中に溢れてくる。サクサクジュワ~とうまく料理するのは難しいんだよなぁ」
ハル兵衛を見ると涎が垂れている。
ハル兵衛よ、それはジュワ~ではなくダラ~だと俺は思う。
『そ、そうね、たくさん狩れば、それが毎回食べられるのね。オークカツ貯金。なんて素敵な響きなのかしら! ちょっと行ってくるわね!』
ハル兵衛はそう言うと軽快に飛んでいった。ダイエット効果もあるだろうが、それ以上にオークカツ詐欺に騙されているようだ。
まあ、ハル兵衛がやる気になって良かった。
しかし、地図スキルで見るとオークは近くに居ないようだ。近くにはゴブリンが多くいて、フォレストウルフも少しいる。
大丈夫と思うが俺はピピの様子を窺いながら森に入っていくのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
ハル兵衛がオークを求めて森をさまよい始めた頃、代官屋敷では執務をしていたキースの所に報告が入った。
「なんだと! メイドと子供を連れて町の外に出ていった! アルフレッド、彼女たちはこの周辺のことを理解していないようだ。危険だから代官として救助に向かうぞ!」
アルフレッドは大きく溜息を付くとキースを諌める。
「キース様、報告を聞いていなかったのですか? 彼らに兵士は忠告したのに、平気な顔で外へ行ったとありましたし、白いウルフ系の従魔も一緒で、それと同じような速さで子供が走り去ったということです。
それに宿でこの町一番の冒険者と一緒だったということは、情報を仕入れてそれでも町から出たのでしょう。冒険者の行動に代官がでしゃばる必要はありません!」
「し、しかし……」
「執務をお続けください!」
キースは不満そうにアルフレッドを睨むが、アルフレッドは気にせず次の書類をキースに差し出すのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
昼頃になると昼食のために念話でみんなを呼んで、一緒に『どこでも自宅』に入る。
『最悪よ! 全然オークがいないじゃない。何とか見つけてやっと3匹だけよ!』
「ほほう、オークカツ貯金が9枚じゃないか。それなら午後は町に戻ろうか?」
『ダ、ダメよ! たった9枚じゃない。100枚単位で貯金がないと不安よ!』
こらこら、どれだけやる気になっているんだよぉ。
「ハルさん、特別にオークカツサンドをご用意しましたぁ!」
『ほ、ほんとに……!?』
ジジは前に俺が獲ったオークを使ってオークカツサンドを作ってくれたようだ。
や、やめてくれぇ~。涎と涙を同時に流すのを見ると食欲がなくなるぅ!
『これよぉ! モグッ、このソースが、モグモグッ、最高なのよぉーーー!』
ハル兵衛はすぐにカツサンドを平らげてしまい。また寂しそうな表情に戻る。
『りょ、量は足りないけど、この味は捨てがたいわ!』
何故かハル兵衛の背中に炎が燃え上がって見えるぅ!
『今日の目標はオークカツ貯金100枚! それを達成するまで私は旅に出るわ!』
そのまま帰って来なくても良いよぉーーー!
その日暗くなるまでハル兵衛は帰って来なかった。
◇ ◇ ◇ ◇
暗くなり始めた頃に門の兵士から報告が上がってきた。
報告によると彼女たちが、まだ町に戻ってきていない事と、冒険者から今日は魔物が少ないと話を聞いたようだ。
キースは彼女に何かあったのではと気が気じゃなかった。今すぐにでも彼女の救出に向かいたかったが、アルフレッドに話さないとまずいと思い急いで執事の執務室に向かった。
執務室に着くとノックをせずに扉を開ける。
アルフレッドは領都から届いた書類を確認していた。今日届いたものばかりの書類や通達で、まずは執事が確認してから代官に見せることになる。
「キース様、せめてノックぐらいはしてください!」
アルフレッドは苦言を述べたが、キースは気にすることなく門からの報告を伝える。
「そうですか……。しかし、彼らの予定も分かりませんし、冒険者は自己責任です。代官が騒ぎすぎるのも問題があるのではないですか?」
町の外で冒険者が何をしていようが、代官は犯罪でないと関与しない。彼らが気になるからと騒いでは、公平であるべき代官としてはまずいとアルフレッドは判断した。
「アルフレッド! 彼女は貴族か王族の可能性があると俺は話したじゃないか。この地で何かあったらまずい!」
(あなたは彼らを犯罪者扱いしていたじゃありませんか……)
アルフレッドは話す度に、キースが自分の都合の良い設定だけ持ち出すので呆れていた。
「これは代官としての職務だ。すぐに兵士と救助に向かうぞ!」
ハッキリ言って暴走である。冷静に話をできる雰囲気ではない。
アルフレッドは仕方ないと思い、妥協案を提案する。
「わかりました。しかし、まずは門に行ってもう少し情報を確認しましょう。なにかあればすぐに対処もできます。よろしいですね?」
「うん、それで構わない!」
キースは拍子抜けするぐらい簡単に納得した。
彼は執務が終わってからも、現状で何とか彼女と接点を持つ方法をずっと考えていたのだ。しかし、どう考えてもアルフレッドがいる状況では何もできない。無理をすれば代官もベルタ伯爵家からも追放されてしまう。彼女が貴族か王族であるならその肩書が無くなるのはまずいと考えて、何もできないと諦めかけていた。
しかし、彼女のことを考えるだけで胸が高鳴り、抑えられない衝動がキースを何度も襲ってきた。そんなことは今までになかったので、キースも混乱していた。
キースは人生で初めて恋をしていたのである。
兵士から報告を受けたキースは、ただ混乱して彼女の近くに行きたいと思ったのである。
アルフレッドが馬車を用意させる間も、走り出したい衝動を何とか抑え、アルフレッドと一緒に馬車で門へ向かうのであった。
アルフレッドはキースのあまりにも焦った様子に驚きながらも、自分が何とかしなければならないと思っていた。
領都から緊急の通達を早めに確認しようと持って出た。しかし、キースを宥めるのに通達を開いたのは門に着く手前であった。
「あ、あのぉ、どちらに行かれるのですか?」
兵士は戸惑った様子で質問してきた。別に気にすることでもないが、あの代官の件があったので、警戒した目で相手を睨む。
兵士は俺の様子を見て理由を話してくれた。
「最近は町の周辺にも魔物が多く出没しています。メ、メイドさんも一緒に外に行かれるのですか?」
兵士は親切で声を掛けてくれたようだ。疑い過ぎて申し訳なく思う。
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「ハル兵衛とピョン吉たちも呼んできてくれるかい?」
「「はい」」
2人が中に入ってすぐに嫌そうな顔でハル兵衛が出てきた。
『あのオークラビットは行きたくないと言っていたわ!』
おうふ、ミニオークがピョン吉をオークラビット呼びかい!
そしてすぐにピョン子も出てきた。ピョン子は俺達を無視してピピの居る方に走って行く。
「まあ、この辺はオークもいるらしいからな。同士討ちは気の毒かぁ」
ハル兵衛の話に乗っかる。
『うそぉ、オークが居るの!? ねえ、オークを狩ってきたオークカツが食べたいわ!』
ミニオークがオークカツを食べる……。そしてミニオークからオークに……。
頭の中で想像して吹き出しそうになる。
『ちょっとぉ、何を笑っているのよぉ。それより、いいでしょ?』
「まあ、構わないかぁ」
『やったわ! オーク1頭から、どれほどのオークカツが作れるかしら!? じゅるるぅ』
今から涎を垂らさないでよぉ。
「ただしオーク1匹につき、オークカツは3枚だ! それに1度に出せるのはオークカツ2枚だ! 残りはオークカツ貯金として、次回以降の食事で配給する」
本当にオークにクラスチェンジされたらダイエットの意味がない。
『そんなぁ~、それじゃあ悪徳業者と一緒じゃない!』
「そうかぁ。ジジの料理の腕を考えたら、損ではないと俺は思うぞ。サクサクの衣に分厚いオーク肉、噛むとジュワ~と肉汁が口の中に溢れてくる。サクサクジュワ~とうまく料理するのは難しいんだよなぁ」
ハル兵衛を見ると涎が垂れている。
ハル兵衛よ、それはジュワ~ではなくダラ~だと俺は思う。
『そ、そうね、たくさん狩れば、それが毎回食べられるのね。オークカツ貯金。なんて素敵な響きなのかしら! ちょっと行ってくるわね!』
ハル兵衛はそう言うと軽快に飛んでいった。ダイエット効果もあるだろうが、それ以上にオークカツ詐欺に騙されているようだ。
まあ、ハル兵衛がやる気になって良かった。
しかし、地図スキルで見るとオークは近くに居ないようだ。近くにはゴブリンが多くいて、フォレストウルフも少しいる。
大丈夫と思うが俺はピピの様子を窺いながら森に入っていくのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
ハル兵衛がオークを求めて森をさまよい始めた頃、代官屋敷では執務をしていたキースの所に報告が入った。
「なんだと! メイドと子供を連れて町の外に出ていった! アルフレッド、彼女たちはこの周辺のことを理解していないようだ。危険だから代官として救助に向かうぞ!」
アルフレッドは大きく溜息を付くとキースを諌める。
「キース様、報告を聞いていなかったのですか? 彼らに兵士は忠告したのに、平気な顔で外へ行ったとありましたし、白いウルフ系の従魔も一緒で、それと同じような速さで子供が走り去ったということです。
それに宿でこの町一番の冒険者と一緒だったということは、情報を仕入れてそれでも町から出たのでしょう。冒険者の行動に代官がでしゃばる必要はありません!」
「し、しかし……」
「執務をお続けください!」
キースは不満そうにアルフレッドを睨むが、アルフレッドは気にせず次の書類をキースに差し出すのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
昼頃になると昼食のために念話でみんなを呼んで、一緒に『どこでも自宅』に入る。
『最悪よ! 全然オークがいないじゃない。何とか見つけてやっと3匹だけよ!』
「ほほう、オークカツ貯金が9枚じゃないか。それなら午後は町に戻ろうか?」
『ダ、ダメよ! たった9枚じゃない。100枚単位で貯金がないと不安よ!』
こらこら、どれだけやる気になっているんだよぉ。
「ハルさん、特別にオークカツサンドをご用意しましたぁ!」
『ほ、ほんとに……!?』
ジジは前に俺が獲ったオークを使ってオークカツサンドを作ってくれたようだ。
や、やめてくれぇ~。涎と涙を同時に流すのを見ると食欲がなくなるぅ!
『これよぉ! モグッ、このソースが、モグモグッ、最高なのよぉーーー!』
ハル兵衛はすぐにカツサンドを平らげてしまい。また寂しそうな表情に戻る。
『りょ、量は足りないけど、この味は捨てがたいわ!』
何故かハル兵衛の背中に炎が燃え上がって見えるぅ!
『今日の目標はオークカツ貯金100枚! それを達成するまで私は旅に出るわ!』
そのまま帰って来なくても良いよぉーーー!
その日暗くなるまでハル兵衛は帰って来なかった。
◇ ◇ ◇ ◇
暗くなり始めた頃に門の兵士から報告が上がってきた。
報告によると彼女たちが、まだ町に戻ってきていない事と、冒険者から今日は魔物が少ないと話を聞いたようだ。
キースは彼女に何かあったのではと気が気じゃなかった。今すぐにでも彼女の救出に向かいたかったが、アルフレッドに話さないとまずいと思い急いで執事の執務室に向かった。
執務室に着くとノックをせずに扉を開ける。
アルフレッドは領都から届いた書類を確認していた。今日届いたものばかりの書類や通達で、まずは執事が確認してから代官に見せることになる。
「キース様、せめてノックぐらいはしてください!」
アルフレッドは苦言を述べたが、キースは気にすることなく門からの報告を伝える。
「そうですか……。しかし、彼らの予定も分かりませんし、冒険者は自己責任です。代官が騒ぎすぎるのも問題があるのではないですか?」
町の外で冒険者が何をしていようが、代官は犯罪でないと関与しない。彼らが気になるからと騒いでは、公平であるべき代官としてはまずいとアルフレッドは判断した。
「アルフレッド! 彼女は貴族か王族の可能性があると俺は話したじゃないか。この地で何かあったらまずい!」
(あなたは彼らを犯罪者扱いしていたじゃありませんか……)
アルフレッドは話す度に、キースが自分の都合の良い設定だけ持ち出すので呆れていた。
「これは代官としての職務だ。すぐに兵士と救助に向かうぞ!」
ハッキリ言って暴走である。冷静に話をできる雰囲気ではない。
アルフレッドは仕方ないと思い、妥協案を提案する。
「わかりました。しかし、まずは門に行ってもう少し情報を確認しましょう。なにかあればすぐに対処もできます。よろしいですね?」
「うん、それで構わない!」
キースは拍子抜けするぐらい簡単に納得した。
彼は執務が終わってからも、現状で何とか彼女と接点を持つ方法をずっと考えていたのだ。しかし、どう考えてもアルフレッドがいる状況では何もできない。無理をすれば代官もベルタ伯爵家からも追放されてしまう。彼女が貴族か王族であるならその肩書が無くなるのはまずいと考えて、何もできないと諦めかけていた。
しかし、彼女のことを考えるだけで胸が高鳴り、抑えられない衝動がキースを何度も襲ってきた。そんなことは今までになかったので、キースも混乱していた。
キースは人生で初めて恋をしていたのである。
兵士から報告を受けたキースは、ただ混乱して彼女の近くに行きたいと思ったのである。
アルフレッドが馬車を用意させる間も、走り出したい衝動を何とか抑え、アルフレッドと一緒に馬車で門へ向かうのであった。
アルフレッドはキースのあまりにも焦った様子に驚きながらも、自分が何とかしなければならないと思っていた。
領都から緊急の通達を早めに確認しようと持って出た。しかし、キースを宥めるのに通達を開いたのは門に着く手前であった。
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