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第8章 旅立ちへ
第10話 旅立ち
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「聞いてなーーーい!」
土地神フリージアちゃんが絶叫して床を転げまわり駄々をこねる。
な、なんで、子供の姿なのぉ!
バルドーさんの顔色から旅立ちの延期は無理と判断して、昨日夜に計画通り作業を終わらせた。そしてバルドーさんが昨日最後の報告を王宮にして、追加区画は王宮とエクレアさんが活用法を話し合うことになった。
礼拝堂も大司教に任せたことで、大司教や教会の人間が土地神だと大騒ぎして大変だったらしい。
反対にバルドーさんの顔色が良くなった気がする。
明日出発するのでみんなで一緒に夕飯をすませて、今後の予定をみんなで最終確認していた。
そこに大司教から逃げ出してきたフリージアさんが合流してきたのである。最初は大司教のことの文句を言い始めたのだが、アンナに叱られて大人しくなった。
すでに土地神のことはみんなに伝えてあるのでみんな普通にフリージアさんをバルドーさんの母親と扱っていた。
みんなの順応力に驚いていたのだが、明日旅に出るとフリージアさんに伝えたら今の状況になったのである。
「母上、テンマ様がどうしても魚を食べたいというので私も仕方ないのです!」
おうふ、完全に俺に責任を押し付けてるぅ!
それにフリージアさんの姿をみんな気にしないのぉ!
見た目が5歳くらいに幼児化したフリージアさんを誰も気にしていない。
「だってぇ~、仕事が落ち着いたらテンマちゃんと遊べると思ってたのにぃ~!」
口をとがらせバルドーさんに文句を言うフリージアさんも可愛い。しかし、見た目はおじいちゃんに文句を言う孫の構図になっている。
それより今度はテンマちゃんかよ!
「いいですか母上、それほど長く旅をするわけではありません。また、すぐに会えるのですよ」
「イヤっ!」
頬を膨らませ文句を言うと、何故か俺に近づいて膝の上に乗る。
なんか繋がりがきたぁ~!
幼児モードで実体化したフリージアさんが膝の上に乗って抱きついてくる。
くっ、なぜか父性が溢れるぅ~!
フリージアさんに生命力を吸われると繋がった感覚がして、その時の感情が増幅されるようだ。大人のフリージアさんだと危険な魅了だった。しかし、この幼児フリージアには父性が溢れるようだ。
ど、どうせ吸われるのなら大人のフリージアさんが……。
「いい加減にしなさい!」
アンナ、助かったぁ~!
「わ、わかったわよぉ~。だけどすぐに帰ってきてよね!」
くっ、半透明でなければ、思わず抱きしめて「うん」と言いそうになる。
「ど、努力するよ」
暫くは帰ってくる気はありません!
「なら、3日で帰れるわね! 飛べば片道1日も掛からないでしょ。翌日はお魚食べて、その次の日は帰れるわね」
「なに、本当か!?」
おいおい、ドロテアさんまで参戦するんじゃねぇ!
「それは無理です! 今回はゆっくりと旅を楽しみながら行くのです。飛んでしまったらつまらないじゃないですか」
アンナ、ナイスフォロー!
「テンマお兄ちゃん、そんなことないよね?」
おうふ、今度はそうきたかぁ~!
上目づかいで俺を見つめるとは、俺の妹属性を狙い撃ちしてくるぅ~。
パコッ!
「だから勝手に実体化するんじゃありません!」
ア、 アンナ、素晴らしい突っ込みだ!
危うく陥落しそうになってしまった。
「母上、聞いてください!
今回の旅の途中で、私のために犠牲になった者達を弔って来ようと思っております。だから、間違いなくその分の時間が掛かるはずです。できれば何か遺品でも見つかれば……」
「そ、そうなの? ……お父様やお兄様も探してくれるの?」
「はい、大変だと思いますが、テンマ様のお許しは頂いております。ズズッ」
詳しくは分からないし、そんな話は初めて聞く。それでも誤魔化せそうな雰囲気になった。
バルドーさんの嘘泣きに、フリージアさんは涙を溜めている。
「わかった……。帰ってくるまで待っている。グスッ、だから最後にテンマちゃんにギュッとしてもらいたいな?」
それぐらいなら喜んで!
アンナも頷いている。
「おいで!」
「うん」
幼児フリージアさんに声を掛けると、実体化して涙を堪えた表情で抱きついてくる。
ギュッと抱きしめると父性と兄性がせめぎ合うような不思議な感覚になる……。
なんでぇーーー!
フリージアさんをギュッと抱きしめると、腕の中で大人フリージアに変身した。
ポヨンがポヨンでポヨンしたぁーーー!
バゴッ!
アンナが手に持っていたトレーで、フリージアさんの頭を叩いたのであった。
も、もう少し時間《ポヨン》を……。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝早くから馬車で拠点から出発する。
同行するのはジジとピピ、バルドーさんとアンナ、そしてシルとハルも一緒である。
ハルは甘味が俺と一緒じゃないと数に制限があると判断したようだ。それに王都では目立ちすぎて疲れるらしい。どうせ『どこでも自宅』かルームでダラダラと過ごすのだろう。
見送りにみんなが揃っている。
ドロテアさんは目に涙を溜め、今にも着いてきそうだ。その横には幼児フリージアが浮かんでいる。この2人はテラスウイルスの重症患者だ。暴走しまくりそうで怖い。
マリアさんとミイ、メアリ夫妻も一緒に来ている。何より辛いのが優勝杯《オッパイ》と会えなくなることだ。優勝杯《オッパイ》の揺れを見ているだけで、何かに満たされた気持ちになる。それを拝めなくなるのは本当に辛い!
そしてミーシャが何と泣いている!?
「ミーシャ、今度会う時は立派な冒険者になってろよ!」
「うん、昨日D級冒険者になった!」
なんですとぉ! アッという間に抜かれたぁ!
まあ、俺は冒険者活動していないし、当然かぁ。
それでも驚くスピードである。しかし、まだ火魔術は全く訓練していないみたいだ。
「今度戻ってきたら、開拓村に戻っても良いかもね!」
「うん!」
ミーシャとは一緒に冒険者をしてきた……。
んっ、一緒に冒険者活動したことあるかな?
まったく記憶にない。
「そ、それじゃあ、こんど戻ってきたら一緒にダンジョンを回ろうな?」
「わかった! グスッ」
よく考えるとミーシャは妹みたいだった。歳は上だけど……。
バルガス達も見送りに来てくれたが、特に話すこともない。
エクレアさんとネフェルさんも来てくれたようだ。
2人は少し若返っている。若返りポーションをそれぞれに渡したのだ。2人は満面の笑みで見送ってくれるが、仕事を押し付けて謝りたいぐらいである。
「できるだけ早く帰ってくるねぇ~」
それが年単位になる可能性もあるけどぉ~。
「テンミャァ~!」
ドロテアさんが悲しそうに見送ってくれる。鼻水まで垂らすのはやめて欲しい……。
抱きつかれたくないので慌てて出発する。
研修区画を出て、門に向かう。
門に近づくと、何やら門の辺りが騒がしい。
目立たないように兵士が人払いしているが、俺の地図スキルには大量の兵士が隠れているのが分かる。
門では兵士が緊張しまくって通してくれる。何故か他の人達の出入りが全くない。
門を出てすぐにシャルロッテ王女がアーリンと一緒に待っていた。
「アーリンにシャルロッテ、見送りに来てくれたのだな」
「「はい!」」
2人が元気に答えてくれるが、少し離れた所に怪しい人影が……。
アルベルト夫妻と国王夫妻、宰相も一緒にいる。目立たないようにしたつもりなのか、少しだけ地味な服装をしている。しかし、冒険者の振りしているはずの兵士は、マントで装備を隠しても近衛騎士だと露骨に分かる。
「後ろの連中は俺を襲撃するつもりかな?」
「「ち、違います!」」
向こうにも聞こえたのか顔色が一気に悪くなっているのがわかる。必死に顔を左右に振っているので大丈夫だろう。
「冗談だよぉ。アルベルトさんも居るのに、そんなことしないのは分かるよ」
露骨に国王夫妻も宰相もホッとしている。
そして近衛騎士の連中が一番ホッとしているようだ。
うん、バレバレやね!
「見送りに来てくれてありがとうな。シャルロッテのこともマリアさんに頼んだから、今度訓練に参加しに行けよ」
「えっ、あ、ありがとうございます!」
シャルロッテは王女だよね。なんか偉そうに話してしまった。
まあ、涙ぐんでアーリンと一緒に喜んでいるから大丈夫でしょう!
「それじゃあ、また今度な!」
そう言うと馬車を出発させる。何故か国王夫妻まで手を振って見送ってくれている。
うん、今度はここにいつ戻ってくるのだろう?
自分でもこの先はよく分からない……。
土地神フリージアちゃんが絶叫して床を転げまわり駄々をこねる。
な、なんで、子供の姿なのぉ!
バルドーさんの顔色から旅立ちの延期は無理と判断して、昨日夜に計画通り作業を終わらせた。そしてバルドーさんが昨日最後の報告を王宮にして、追加区画は王宮とエクレアさんが活用法を話し合うことになった。
礼拝堂も大司教に任せたことで、大司教や教会の人間が土地神だと大騒ぎして大変だったらしい。
反対にバルドーさんの顔色が良くなった気がする。
明日出発するのでみんなで一緒に夕飯をすませて、今後の予定をみんなで最終確認していた。
そこに大司教から逃げ出してきたフリージアさんが合流してきたのである。最初は大司教のことの文句を言い始めたのだが、アンナに叱られて大人しくなった。
すでに土地神のことはみんなに伝えてあるのでみんな普通にフリージアさんをバルドーさんの母親と扱っていた。
みんなの順応力に驚いていたのだが、明日旅に出るとフリージアさんに伝えたら今の状況になったのである。
「母上、テンマ様がどうしても魚を食べたいというので私も仕方ないのです!」
おうふ、完全に俺に責任を押し付けてるぅ!
それにフリージアさんの姿をみんな気にしないのぉ!
見た目が5歳くらいに幼児化したフリージアさんを誰も気にしていない。
「だってぇ~、仕事が落ち着いたらテンマちゃんと遊べると思ってたのにぃ~!」
口をとがらせバルドーさんに文句を言うフリージアさんも可愛い。しかし、見た目はおじいちゃんに文句を言う孫の構図になっている。
それより今度はテンマちゃんかよ!
「いいですか母上、それほど長く旅をするわけではありません。また、すぐに会えるのですよ」
「イヤっ!」
頬を膨らませ文句を言うと、何故か俺に近づいて膝の上に乗る。
なんか繋がりがきたぁ~!
幼児モードで実体化したフリージアさんが膝の上に乗って抱きついてくる。
くっ、なぜか父性が溢れるぅ~!
フリージアさんに生命力を吸われると繋がった感覚がして、その時の感情が増幅されるようだ。大人のフリージアさんだと危険な魅了だった。しかし、この幼児フリージアには父性が溢れるようだ。
ど、どうせ吸われるのなら大人のフリージアさんが……。
「いい加減にしなさい!」
アンナ、助かったぁ~!
「わ、わかったわよぉ~。だけどすぐに帰ってきてよね!」
くっ、半透明でなければ、思わず抱きしめて「うん」と言いそうになる。
「ど、努力するよ」
暫くは帰ってくる気はありません!
「なら、3日で帰れるわね! 飛べば片道1日も掛からないでしょ。翌日はお魚食べて、その次の日は帰れるわね」
「なに、本当か!?」
おいおい、ドロテアさんまで参戦するんじゃねぇ!
「それは無理です! 今回はゆっくりと旅を楽しみながら行くのです。飛んでしまったらつまらないじゃないですか」
アンナ、ナイスフォロー!
「テンマお兄ちゃん、そんなことないよね?」
おうふ、今度はそうきたかぁ~!
上目づかいで俺を見つめるとは、俺の妹属性を狙い撃ちしてくるぅ~。
パコッ!
「だから勝手に実体化するんじゃありません!」
ア、 アンナ、素晴らしい突っ込みだ!
危うく陥落しそうになってしまった。
「母上、聞いてください!
今回の旅の途中で、私のために犠牲になった者達を弔って来ようと思っております。だから、間違いなくその分の時間が掛かるはずです。できれば何か遺品でも見つかれば……」
「そ、そうなの? ……お父様やお兄様も探してくれるの?」
「はい、大変だと思いますが、テンマ様のお許しは頂いております。ズズッ」
詳しくは分からないし、そんな話は初めて聞く。それでも誤魔化せそうな雰囲気になった。
バルドーさんの嘘泣きに、フリージアさんは涙を溜めている。
「わかった……。帰ってくるまで待っている。グスッ、だから最後にテンマちゃんにギュッとしてもらいたいな?」
それぐらいなら喜んで!
アンナも頷いている。
「おいで!」
「うん」
幼児フリージアさんに声を掛けると、実体化して涙を堪えた表情で抱きついてくる。
ギュッと抱きしめると父性と兄性がせめぎ合うような不思議な感覚になる……。
なんでぇーーー!
フリージアさんをギュッと抱きしめると、腕の中で大人フリージアに変身した。
ポヨンがポヨンでポヨンしたぁーーー!
バゴッ!
アンナが手に持っていたトレーで、フリージアさんの頭を叩いたのであった。
も、もう少し時間《ポヨン》を……。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝早くから馬車で拠点から出発する。
同行するのはジジとピピ、バルドーさんとアンナ、そしてシルとハルも一緒である。
ハルは甘味が俺と一緒じゃないと数に制限があると判断したようだ。それに王都では目立ちすぎて疲れるらしい。どうせ『どこでも自宅』かルームでダラダラと過ごすのだろう。
見送りにみんなが揃っている。
ドロテアさんは目に涙を溜め、今にも着いてきそうだ。その横には幼児フリージアが浮かんでいる。この2人はテラスウイルスの重症患者だ。暴走しまくりそうで怖い。
マリアさんとミイ、メアリ夫妻も一緒に来ている。何より辛いのが優勝杯《オッパイ》と会えなくなることだ。優勝杯《オッパイ》の揺れを見ているだけで、何かに満たされた気持ちになる。それを拝めなくなるのは本当に辛い!
そしてミーシャが何と泣いている!?
「ミーシャ、今度会う時は立派な冒険者になってろよ!」
「うん、昨日D級冒険者になった!」
なんですとぉ! アッという間に抜かれたぁ!
まあ、俺は冒険者活動していないし、当然かぁ。
それでも驚くスピードである。しかし、まだ火魔術は全く訓練していないみたいだ。
「今度戻ってきたら、開拓村に戻っても良いかもね!」
「うん!」
ミーシャとは一緒に冒険者をしてきた……。
んっ、一緒に冒険者活動したことあるかな?
まったく記憶にない。
「そ、それじゃあ、こんど戻ってきたら一緒にダンジョンを回ろうな?」
「わかった! グスッ」
よく考えるとミーシャは妹みたいだった。歳は上だけど……。
バルガス達も見送りに来てくれたが、特に話すこともない。
エクレアさんとネフェルさんも来てくれたようだ。
2人は少し若返っている。若返りポーションをそれぞれに渡したのだ。2人は満面の笑みで見送ってくれるが、仕事を押し付けて謝りたいぐらいである。
「できるだけ早く帰ってくるねぇ~」
それが年単位になる可能性もあるけどぉ~。
「テンミャァ~!」
ドロテアさんが悲しそうに見送ってくれる。鼻水まで垂らすのはやめて欲しい……。
抱きつかれたくないので慌てて出発する。
研修区画を出て、門に向かう。
門に近づくと、何やら門の辺りが騒がしい。
目立たないように兵士が人払いしているが、俺の地図スキルには大量の兵士が隠れているのが分かる。
門では兵士が緊張しまくって通してくれる。何故か他の人達の出入りが全くない。
門を出てすぐにシャルロッテ王女がアーリンと一緒に待っていた。
「アーリンにシャルロッテ、見送りに来てくれたのだな」
「「はい!」」
2人が元気に答えてくれるが、少し離れた所に怪しい人影が……。
アルベルト夫妻と国王夫妻、宰相も一緒にいる。目立たないようにしたつもりなのか、少しだけ地味な服装をしている。しかし、冒険者の振りしているはずの兵士は、マントで装備を隠しても近衛騎士だと露骨に分かる。
「後ろの連中は俺を襲撃するつもりかな?」
「「ち、違います!」」
向こうにも聞こえたのか顔色が一気に悪くなっているのがわかる。必死に顔を左右に振っているので大丈夫だろう。
「冗談だよぉ。アルベルトさんも居るのに、そんなことしないのは分かるよ」
露骨に国王夫妻も宰相もホッとしている。
そして近衛騎士の連中が一番ホッとしているようだ。
うん、バレバレやね!
「見送りに来てくれてありがとうな。シャルロッテのこともマリアさんに頼んだから、今度訓練に参加しに行けよ」
「えっ、あ、ありがとうございます!」
シャルロッテは王女だよね。なんか偉そうに話してしまった。
まあ、涙ぐんでアーリンと一緒に喜んでいるから大丈夫でしょう!
「それじゃあ、また今度な!」
そう言うと馬車を出発させる。何故か国王夫妻まで手を振って見送ってくれている。
うん、今度はここにいつ戻ってくるのだろう?
自分でもこの先はよく分からない……。
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作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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