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第8章 旅立ちへ
第9話 アンナ様?
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目を覚まして1階のリビングに行くと、バルドーさんが待ち構えていた。
「バルドーさん、おはようございます」
「おはようございます」
バルドーさんは落ち着いた雰囲気に戻っているが、頬がやつれ目の下には隈ができていた。
「何か用事ですか?」
「はい、ですがテンマ様の大切なお時間を邪魔しては申し訳ありません。存分とシルとイチャついてください」
え~と、目に殺気が籠っている気がするぅ~。
それにシルとはイチャついているのではない。心の癒しを求めているだけだ。
「大丈夫ですよ。少し落ち着いたので、シルモフしながら話しても大丈夫ですよ」
先の見える仕事と旅立つ楽しみ、そして普段見ることのできないバルドーさんの困った顔で、十分癒されている気がするのだ。
「そうですか……。それなら確認をさせてください。本当に予定通り作業は進んでいるのでしょうか? 隣の区画は何も手を付けられていません!」
「え~、それは説明したじゃないですかぁ。建物を先に全部作って、最後に設置すると」
あれから2日ほど経っている。すでに昨晩建物は完成して今晩に設置しても問題ないのだが、設置は明日の夜で調整してもらっていた。
「ですが本当に大丈夫でしょうか? さすがにあの広さを1日で終わらせるのは……」
俺としては全然余裕である。今ある建物は魔法で簡単に回収できるし整地も問題ない。建物は配置して土魔術で地面と繋げれば完成である。
問題があるとしたら、日程を引き延ばした時のバルドーさんの顔を見てみたい欲求に、俺が負けることだ。
なんか気持ちが落ち着いてきて、慌てる必要が無いと思い始めているのが原因だ。
「まあ、予定通り終わると思いますよ。何か予想外のことがあれば仕方ありませんがね」
「ダメです! それだけは絶対にダメです! テンマ様なら予想外のことがあっても何とかできるはずです!」
おうふ、ヤバイ雰囲気だなぁ。引き延ばしたらまずい気がするぅ~!
「だ、大丈夫ですよぉ。ある程度は対処できますから。でも、私も神でないので絶対は無理です……」
「神? 神などいません! なんで土地神が……」
絶対にヤバイ! 追い詰められた表情をしている。
しかし、そこにフリージアさんが姿を見せた。
「バルディ、ここに居たのね。またいい娘《こ》を見つけたわ。今度こそあなたに合いそうな娘《こ》よ。まさかバルディがこんなに好みに煩いとは思わなかったわ!」
バルドーさんは驚くことなく、フリージアさんに話しかける。
「母上、テンマ様と大事な仕事の話をしているのです。お願いだから邪魔しないでください!」
あれほど母親に会えたことを喜んでいたバルドーさんが、露骨に冷たく話していた。
「でもぉ、忙しいと言いながらあの騎士団長には会っていたじゃない!」
え~と、これはどんな会話?
「あれはテンマ様の作業で必要な、隣の区画の人払いをお願いしていたのです!」
「えぇ~、彼は特別な目であなたを見ていたわよぉ。私は別にそういうことには寛容なつもりよ。でもぉ、孫の顔だけ見たいのよぉ」
「くっ、今はその話はお止めください! あと数日は本当に忙しいのです」
バルドーさんは気の毒だと思う。しかし、……笑いが込み上げるのはなぜだろう?
「いい加減にしなさい! テンマ様の大切な時間を邪魔するなら、あなたを許しませんよ!」
おっ、アンナが参戦したぁ!
「私はバルディに用事が……」
「それは別の時にやりなさい。テンマ様と一緒にいる時はダメです!」
「はぁ~い」
おおっ、フリージアさんが退散していったぁ!
なんか土地神のフリージアさんが悪霊で、アンナが除霊したみたいだ。
「アンナ様、ありがとうございます!」
バルドーさんがアンナを様付で呼んでいる!?
驚くほど感謝の気持ちを込めたお礼をバルドーさんはアンナにしていた。そしてバルドーさんは俺に顔を向けて話す。
「あれが定期的にやってくるのです。1人になるとすぐに来ます! そして土地神の力を使って女性を次々と紹介するのです!」
バルドーさんの必死な訴えに頷くしかできない。
「わかりましたね? もし万が一王都を離れるのが遅れたら……」
「わ、わかりました!」
バルドーさんの目は本気だった。何が本気か分からないが、本気だった!
冗談でもバルドーさんをこれ以上追い詰めたらダメだと思うのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
バルドーさんはどこかへ行ってしまった。俺は少しだけシルモフすると食事して、今はリビングでお茶を飲んでいた。
明るい時間にやれることもなくなり、夜の作業もすることがない。何気にやることがなくなり困っていた。
「テンマ様、王都を発つ前に国王と会わなくてもよろしいのですか?」
アンナから尋ねられたが、会うつもりは全くなかった。
テックスとしては悪魔王衣装の時だけしか国王と会っていない。王女のシャルロッテの件で謝罪に来たいと連絡はあったが、それはテックスと関係ないし、テンマが国王に会うつもりはない。
まあ、絶対にバレているだろうなぁ。
「会わないよ。どうせ暫くは戻ってくるつもりはないから、問題はないよね?」
「はい、問題ないと思います。あの土地神が騒ぐ可能性はありますがね」
うん、それが心配……。
「それと、本日は大司教が知識の部屋を設置に訪問されているようです。そこで、テンマ様に挨拶をしたいと連絡が来ていますが、どうされますか?」
俺? テックスじゃなく?
こちらも正体がバレている気がするぅ! でもバレていない前提で断ろう!
それより大司教はどのくらい偉いのかなぁ?
「挨拶は断ってよ。それより大司教はどれくらい偉いの?」
「大司教は偉くはありませんね。教会の者は神に使える存在です。決して階級のようなものがあってはなりません!」
へぇ~、そういうもんなのかぁ。
「ただ、神に使える者として、役割的な名称が御座います。役割によって取りまとめる人数や仕事が多くなります。彼はこの国の教会のすべてをまとめる役割になっております」
……それって頂点じゃん!
大丈夫なのか? 俺はテラス様にこの世界に呼ばれた存在だ。たまに会ったりするし、その関係者なら気を遣う必要があるのか?
「え~と、テラス様の関係者になるなら、きちんと挨拶しておく?」
「フッ、そんな必要はありません。彼はテラス様を信じて慕っているような存在です。関係者というほどではありません」
アンナ、笑ったよね。それも鼻で笑ったよね!?
よく考えるとアンナは元女神なんだよなぁ。
最初に会った時はムカついたけど、俺とは次元の違う存在のはずだ。
「ねぇ、アンナは元女神なんだよね。神の役割としてはどれぐらいになるの?」
「そうですねぇ。前にも話しましたが私は別世界の創造神(管理者)の眷属でした。そこからステップアップして転生のお手伝いをしておりました。あと数千年か数万年ほど努力すればテラス様のような創造神(管理者)になれたでしょう」
なんか遠い目で話している。たしか俺の件で左遷されたんだよね……。
しかし、アンナの話からすると、テラス様より下でその眷属よりも上の存在!
土地神はテラス様の眷属としては下位とか言っていたなぁ。
ああ、だからフリージアさんに強気で話せるのかぁ。
「テンマ様、大司教を礼拝堂に案内して、ある程度管理させてはどうでしょうか?」
えっ、大丈夫なの!
「も、問題は起きないよね?」
「はい、それが普通だと思います。大司教や教会の関係者が出入りすれば、あの娘も今みたいな行動はできなくなるでしょう」
正直、判断のしようがない。そういったことの知識は全くない。
「うん、アンナの判断に任せるよ!」
そう話すと、アンナは嬉しそうにリビングを出ていった。
俺は出ていくアンナを見送りながら、アンナが予想より凄いのかもと思い始めるのだった。
「バルドーさん、おはようございます」
「おはようございます」
バルドーさんは落ち着いた雰囲気に戻っているが、頬がやつれ目の下には隈ができていた。
「何か用事ですか?」
「はい、ですがテンマ様の大切なお時間を邪魔しては申し訳ありません。存分とシルとイチャついてください」
え~と、目に殺気が籠っている気がするぅ~。
それにシルとはイチャついているのではない。心の癒しを求めているだけだ。
「大丈夫ですよ。少し落ち着いたので、シルモフしながら話しても大丈夫ですよ」
先の見える仕事と旅立つ楽しみ、そして普段見ることのできないバルドーさんの困った顔で、十分癒されている気がするのだ。
「そうですか……。それなら確認をさせてください。本当に予定通り作業は進んでいるのでしょうか? 隣の区画は何も手を付けられていません!」
「え~、それは説明したじゃないですかぁ。建物を先に全部作って、最後に設置すると」
あれから2日ほど経っている。すでに昨晩建物は完成して今晩に設置しても問題ないのだが、設置は明日の夜で調整してもらっていた。
「ですが本当に大丈夫でしょうか? さすがにあの広さを1日で終わらせるのは……」
俺としては全然余裕である。今ある建物は魔法で簡単に回収できるし整地も問題ない。建物は配置して土魔術で地面と繋げれば完成である。
問題があるとしたら、日程を引き延ばした時のバルドーさんの顔を見てみたい欲求に、俺が負けることだ。
なんか気持ちが落ち着いてきて、慌てる必要が無いと思い始めているのが原因だ。
「まあ、予定通り終わると思いますよ。何か予想外のことがあれば仕方ありませんがね」
「ダメです! それだけは絶対にダメです! テンマ様なら予想外のことがあっても何とかできるはずです!」
おうふ、ヤバイ雰囲気だなぁ。引き延ばしたらまずい気がするぅ~!
「だ、大丈夫ですよぉ。ある程度は対処できますから。でも、私も神でないので絶対は無理です……」
「神? 神などいません! なんで土地神が……」
絶対にヤバイ! 追い詰められた表情をしている。
しかし、そこにフリージアさんが姿を見せた。
「バルディ、ここに居たのね。またいい娘《こ》を見つけたわ。今度こそあなたに合いそうな娘《こ》よ。まさかバルディがこんなに好みに煩いとは思わなかったわ!」
バルドーさんは驚くことなく、フリージアさんに話しかける。
「母上、テンマ様と大事な仕事の話をしているのです。お願いだから邪魔しないでください!」
あれほど母親に会えたことを喜んでいたバルドーさんが、露骨に冷たく話していた。
「でもぉ、忙しいと言いながらあの騎士団長には会っていたじゃない!」
え~と、これはどんな会話?
「あれはテンマ様の作業で必要な、隣の区画の人払いをお願いしていたのです!」
「えぇ~、彼は特別な目であなたを見ていたわよぉ。私は別にそういうことには寛容なつもりよ。でもぉ、孫の顔だけ見たいのよぉ」
「くっ、今はその話はお止めください! あと数日は本当に忙しいのです」
バルドーさんは気の毒だと思う。しかし、……笑いが込み上げるのはなぜだろう?
「いい加減にしなさい! テンマ様の大切な時間を邪魔するなら、あなたを許しませんよ!」
おっ、アンナが参戦したぁ!
「私はバルディに用事が……」
「それは別の時にやりなさい。テンマ様と一緒にいる時はダメです!」
「はぁ~い」
おおっ、フリージアさんが退散していったぁ!
なんか土地神のフリージアさんが悪霊で、アンナが除霊したみたいだ。
「アンナ様、ありがとうございます!」
バルドーさんがアンナを様付で呼んでいる!?
驚くほど感謝の気持ちを込めたお礼をバルドーさんはアンナにしていた。そしてバルドーさんは俺に顔を向けて話す。
「あれが定期的にやってくるのです。1人になるとすぐに来ます! そして土地神の力を使って女性を次々と紹介するのです!」
バルドーさんの必死な訴えに頷くしかできない。
「わかりましたね? もし万が一王都を離れるのが遅れたら……」
「わ、わかりました!」
バルドーさんの目は本気だった。何が本気か分からないが、本気だった!
冗談でもバルドーさんをこれ以上追い詰めたらダメだと思うのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
バルドーさんはどこかへ行ってしまった。俺は少しだけシルモフすると食事して、今はリビングでお茶を飲んでいた。
明るい時間にやれることもなくなり、夜の作業もすることがない。何気にやることがなくなり困っていた。
「テンマ様、王都を発つ前に国王と会わなくてもよろしいのですか?」
アンナから尋ねられたが、会うつもりは全くなかった。
テックスとしては悪魔王衣装の時だけしか国王と会っていない。王女のシャルロッテの件で謝罪に来たいと連絡はあったが、それはテックスと関係ないし、テンマが国王に会うつもりはない。
まあ、絶対にバレているだろうなぁ。
「会わないよ。どうせ暫くは戻ってくるつもりはないから、問題はないよね?」
「はい、問題ないと思います。あの土地神が騒ぐ可能性はありますがね」
うん、それが心配……。
「それと、本日は大司教が知識の部屋を設置に訪問されているようです。そこで、テンマ様に挨拶をしたいと連絡が来ていますが、どうされますか?」
俺? テックスじゃなく?
こちらも正体がバレている気がするぅ! でもバレていない前提で断ろう!
それより大司教はどのくらい偉いのかなぁ?
「挨拶は断ってよ。それより大司教はどれくらい偉いの?」
「大司教は偉くはありませんね。教会の者は神に使える存在です。決して階級のようなものがあってはなりません!」
へぇ~、そういうもんなのかぁ。
「ただ、神に使える者として、役割的な名称が御座います。役割によって取りまとめる人数や仕事が多くなります。彼はこの国の教会のすべてをまとめる役割になっております」
……それって頂点じゃん!
大丈夫なのか? 俺はテラス様にこの世界に呼ばれた存在だ。たまに会ったりするし、その関係者なら気を遣う必要があるのか?
「え~と、テラス様の関係者になるなら、きちんと挨拶しておく?」
「フッ、そんな必要はありません。彼はテラス様を信じて慕っているような存在です。関係者というほどではありません」
アンナ、笑ったよね。それも鼻で笑ったよね!?
よく考えるとアンナは元女神なんだよなぁ。
最初に会った時はムカついたけど、俺とは次元の違う存在のはずだ。
「ねぇ、アンナは元女神なんだよね。神の役割としてはどれぐらいになるの?」
「そうですねぇ。前にも話しましたが私は別世界の創造神(管理者)の眷属でした。そこからステップアップして転生のお手伝いをしておりました。あと数千年か数万年ほど努力すればテラス様のような創造神(管理者)になれたでしょう」
なんか遠い目で話している。たしか俺の件で左遷されたんだよね……。
しかし、アンナの話からすると、テラス様より下でその眷属よりも上の存在!
土地神はテラス様の眷属としては下位とか言っていたなぁ。
ああ、だからフリージアさんに強気で話せるのかぁ。
「テンマ様、大司教を礼拝堂に案内して、ある程度管理させてはどうでしょうか?」
えっ、大丈夫なの!
「も、問題は起きないよね?」
「はい、それが普通だと思います。大司教や教会の関係者が出入りすれば、あの娘も今みたいな行動はできなくなるでしょう」
正直、判断のしようがない。そういったことの知識は全くない。
「うん、アンナの判断に任せるよ!」
そう話すと、アンナは嬉しそうにリビングを出ていった。
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