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第8章 旅立ちへ
第1話 ネグリジェ膝枕未遂事件
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あの元老院の一件はバルドーさんが王宮と話し合い、取り敢えず解決してくれた。
王宮は『悪魔王=テックス』とはせずに、悪魔王は元老院がしていた不正を正しに現れたと正式に発表したのだ。
元老院議長のベルント侯爵が不正の元凶であり、闇ギルドを利用していたと同時に発表した。
王都では闇ギルドの拠点が悪魔王に潰されたと噂が広まっていたので、王都の住民は納得してくれたのである。
そして悪魔王は悪事を働くと、その相手に苛烈な制裁をするとの噂を意図的に流すことにより、王都の治安は劇的に良くなった。
「いやぁ~、悪魔王が王都では、何故か正義の味方みたいになっているなぁ。なんか照れくさいよぉ~」
まるで褒められていると思ってしまう。
これなら『悪魔王=テックス』でも行けるんじゃね?
「テンマ様、それは良かったではありませんか。ですが、王都の残りの問題を解決しないと、悪い噂になってしまいますよ」
いやいや、それは俺の仕事じゃないから。
「まずは闇ギルドの呪いの浄化をお願いします」
くっ、それはやらないとダメなやつだ。
「わ、わかった……」
「それと、拠点になるお屋敷を造っていただかないと」
「そ、それは、後回しでいいんじゃないかなぁ……?」
のんびりした生活がしたいよぉ~!
今回のことで少しのんびりと過ごしたいと思っている。
あれから時間はあったのだが、面倒なので家というより小屋を建てた。そこにD研の入口を設置しただけの手抜き状態になっている。
「そうですか……。わかりましたそれで構いません!」
おお、なんかバルドーさんが優しくなったぁ!
「……ですが、ますますD研の利用者が増えますね。宮廷魔術師の受け入れもあります。エクレアさんのところに王宮関係者が出入りしますねぇ。あっ、そろそろネフェルさんも来るのではありませんか?」
ち、ちくしょうめぇ! 未来の安寧のために、働けと言うのかぁ!
「わ、わかった。それは早急に対応しよう。だからそれまでは、他の出入りは待たせて欲しい!」
バルドーさんは悪魔の笑みを浮かべて答えた。
「わかりました。しかし、それも数日が限度ですよ」
また社畜生活の始まりである……。
◇ ◇ ◇ ◇
明日から頑張ると話し、今日だけは見逃してもらった。今日は穏やかに過ごせる最後になるだろう。俺は暫くバルドーさんに使役されることになるのだろう。
前世で常に誰かに嫌われていた記憶のせいで、都合よく利用されても前世よりましだと思えるのが自分でも情けない。
面倒なドロテアさんですら、好かれているという事実だけで我慢できる自分がいる。
今も『どこでも自宅』で、みんな揃って食事している。前世では最後に一緒に食事したのは誰だったのか、今では思い出せない……。
食事が終わるとアンナが真剣な表情で話しかけてくる。
「テンマ様、少しお話があるのですが、お時間をいただけないでしょうか?」
おうふ、なんか危険な香りがするぅ。
今日だけはゆっくり過ごしたいのに、アンナは俺が拒絶することを許さない雰囲気だ。
「そ、そうか、なにかな?」
「ここで話すのはちょっと……」
「わかったよ。俺の部屋で話そうか?」
「はい!」
その嬉しそうな表情が逆に恐ろしい……。
◇ ◇ ◇ ◇
部屋にアンナを案内して向かい合わせでソファに座る。
アンナは深刻な表情をしている。なにか面倒事でもあるのかと不安になりながらも、アンナに尋ねる。
「話とは何かな?」
アンナは言い辛そうに話し始めた。
「先日の悪魔王事件の日のことを覚えていますか?」
え~と、悪魔王事件の日ってなに!?
関係ないところが気になりながらもアンナに答える。
「もちろん覚えているよ。大変な1日だったからね」
「じ、事件が始まる前のことを覚えていますか?」
んっ、始まる前? 何かあったかな?
「え~と、事件の最初はなんだっけ?」
「ジジちゃんが助けを求めた時です」
そうそう、ジジが念話で助けを求めたんだ。
「うん、覚えているよ。ジジの助けを求めて念話してきたよね。あの時は正直焦ったよねぇ」
あの時は驚いて速攻でジジの所に行ったんだ。
うん、自分でも少しカッコ良かったと思うなぁ。
「テンマ様はあの時何をしていました? いえ、何をしようとしてました?」
えっ、あの時……。何かあったような……。
あっ、ああぁぁ! ネグリジェ膝枕未遂事件! 迷宮入りしてないんかい!
「お、覚えているよ……。でも、緊急時だから仕方ないよね……?」
「はい、仕方ありません!」
う、うん、納得しているようで良かったよ……。
な、納得しているよね……?
な、なぜジト目で睨むのかな……?
「あれから毎日、ジジちゃんは膝枕しています……」
そ、それは、色々あって癒されたいから……。
「そ、そうだねぇ~。そ、そんな気もするなぁ~」
「間違いありません! それも1日に複数回する時もありました!」
うん、そんな気がするぅ。
「グスッ、それはあんまりじゃないですか!」
いやいや、その考え方は間違っているよ!
言えないけどね……。
「ゴ、ゴメンねぇ~、膝枕といえばジジだから、ついジジに頼んじゃったぁ~。今度アンナにもお願いしようかなぁ~」
そう話すとアンナは何やら3枚の木の板を取り出して渡してきた。板には何やら文字が書いてあり読んでみる。
『膝枕券 好きな時に膝枕を提供できる』
肩たたき券かよ! お前は小学生か!?
「な、なんで3枚も?」
「利息です!」
そんな利息あるわけないだろぉがぁ!
涙目で訴えてこないでぇーーー!
「そ、そうだよね。でも、利息はそこで停止してくれるかな?」
「初回の支払いがないと停止できません。初回の支払いが終われば、10日間は利息を停止します!」
どこの悪徳業者やねん!
いやいや、そのジト目で睨むのは止めてください!
「じゃ、じゃあ、初回の支払いを、今からしようかなぁ」
「本当ですか!? じゃあ準備しますね!」
待て待て待てぇーーーーー!
なんでメイド服を脱ぎ始めるぅ!
「ア、アンナさん、なんで脱ぎ始めるのかな?」
「えっ、メイド服の下に準備してますから?」
なんで準備しているんじゃーーー!
「アンナさん、膝枕はメイド服で大丈夫だよ?」
「いえ、私が前にいた世界では、膝枕は下着でするのがしきたりなんです!」
「本当に?」
「ほ、本当です。信じてくれないんですか!? グスッ」
おうふ、目が泳いだ後に嘘泣きですかぁ。
アンナさんや、完全にドロテア株に侵食されたよね?
最初は貞操を守るために、やたらと反抗的な目をしていたよね?
少しずつ良い感じになったと思ったけど……。
下着に続いて呪いの館の浄化事件もあったよね?
できればそういうことは数年後にお願いしたい!
「アンナ、アンナ式膝枕は膝枕券が10枚必要です!」
「そんなぁ~!」
「ダメです。この世界というか、俺のやり方と違うのだから10枚必要です!」
いやいや、ジト目で睨んでも妥協できません!
そんな膝枕、……マリアさんにお願いしたい!
優勝杯《オッパイ》の下でする膝枕は最高だと思う!
「では、10枚貯まるまで、蓄えておきます!」
「いやいや、いまから膝枕するのをアンナが断るなら、利息の加算は認めません!」
「チッ」
あっ、ああぁ~、舌打ちしたよね! 絶対にしたよね!
なんかアンナが変わり過ぎて恐ろしい。ドロテア株に有効なワクチンが必要だぁ!
抗体があるのはジジだけなのか?
元女神も感染するとなると、この感染力は油断できない!
それから何とかアンナを説得して膝枕をさせてもらった。早めにこの不良債権を償却しないと、人生が終わってしまうだろう。
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元老院議長のベルント侯爵が不正の元凶であり、闇ギルドを利用していたと同時に発表した。
王都では闇ギルドの拠点が悪魔王に潰されたと噂が広まっていたので、王都の住民は納得してくれたのである。
そして悪魔王は悪事を働くと、その相手に苛烈な制裁をするとの噂を意図的に流すことにより、王都の治安は劇的に良くなった。
「いやぁ~、悪魔王が王都では、何故か正義の味方みたいになっているなぁ。なんか照れくさいよぉ~」
まるで褒められていると思ってしまう。
これなら『悪魔王=テックス』でも行けるんじゃね?
「テンマ様、それは良かったではありませんか。ですが、王都の残りの問題を解決しないと、悪い噂になってしまいますよ」
いやいや、それは俺の仕事じゃないから。
「まずは闇ギルドの呪いの浄化をお願いします」
くっ、それはやらないとダメなやつだ。
「わ、わかった……」
「それと、拠点になるお屋敷を造っていただかないと」
「そ、それは、後回しでいいんじゃないかなぁ……?」
のんびりした生活がしたいよぉ~!
今回のことで少しのんびりと過ごしたいと思っている。
あれから時間はあったのだが、面倒なので家というより小屋を建てた。そこにD研の入口を設置しただけの手抜き状態になっている。
「そうですか……。わかりましたそれで構いません!」
おお、なんかバルドーさんが優しくなったぁ!
「……ですが、ますますD研の利用者が増えますね。宮廷魔術師の受け入れもあります。エクレアさんのところに王宮関係者が出入りしますねぇ。あっ、そろそろネフェルさんも来るのではありませんか?」
ち、ちくしょうめぇ! 未来の安寧のために、働けと言うのかぁ!
「わ、わかった。それは早急に対応しよう。だからそれまでは、他の出入りは待たせて欲しい!」
バルドーさんは悪魔の笑みを浮かべて答えた。
「わかりました。しかし、それも数日が限度ですよ」
また社畜生活の始まりである……。
◇ ◇ ◇ ◇
明日から頑張ると話し、今日だけは見逃してもらった。今日は穏やかに過ごせる最後になるだろう。俺は暫くバルドーさんに使役されることになるのだろう。
前世で常に誰かに嫌われていた記憶のせいで、都合よく利用されても前世よりましだと思えるのが自分でも情けない。
面倒なドロテアさんですら、好かれているという事実だけで我慢できる自分がいる。
今も『どこでも自宅』で、みんな揃って食事している。前世では最後に一緒に食事したのは誰だったのか、今では思い出せない……。
食事が終わるとアンナが真剣な表情で話しかけてくる。
「テンマ様、少しお話があるのですが、お時間をいただけないでしょうか?」
おうふ、なんか危険な香りがするぅ。
今日だけはゆっくり過ごしたいのに、アンナは俺が拒絶することを許さない雰囲気だ。
「そ、そうか、なにかな?」
「ここで話すのはちょっと……」
「わかったよ。俺の部屋で話そうか?」
「はい!」
その嬉しそうな表情が逆に恐ろしい……。
◇ ◇ ◇ ◇
部屋にアンナを案内して向かい合わせでソファに座る。
アンナは深刻な表情をしている。なにか面倒事でもあるのかと不安になりながらも、アンナに尋ねる。
「話とは何かな?」
アンナは言い辛そうに話し始めた。
「先日の悪魔王事件の日のことを覚えていますか?」
え~と、悪魔王事件の日ってなに!?
関係ないところが気になりながらもアンナに答える。
「もちろん覚えているよ。大変な1日だったからね」
「じ、事件が始まる前のことを覚えていますか?」
んっ、始まる前? 何かあったかな?
「え~と、事件の最初はなんだっけ?」
「ジジちゃんが助けを求めた時です」
そうそう、ジジが念話で助けを求めたんだ。
「うん、覚えているよ。ジジの助けを求めて念話してきたよね。あの時は正直焦ったよねぇ」
あの時は驚いて速攻でジジの所に行ったんだ。
うん、自分でも少しカッコ良かったと思うなぁ。
「テンマ様はあの時何をしていました? いえ、何をしようとしてました?」
えっ、あの時……。何かあったような……。
あっ、ああぁぁ! ネグリジェ膝枕未遂事件! 迷宮入りしてないんかい!
「お、覚えているよ……。でも、緊急時だから仕方ないよね……?」
「はい、仕方ありません!」
う、うん、納得しているようで良かったよ……。
な、納得しているよね……?
な、なぜジト目で睨むのかな……?
「あれから毎日、ジジちゃんは膝枕しています……」
そ、それは、色々あって癒されたいから……。
「そ、そうだねぇ~。そ、そんな気もするなぁ~」
「間違いありません! それも1日に複数回する時もありました!」
うん、そんな気がするぅ。
「グスッ、それはあんまりじゃないですか!」
いやいや、その考え方は間違っているよ!
言えないけどね……。
「ゴ、ゴメンねぇ~、膝枕といえばジジだから、ついジジに頼んじゃったぁ~。今度アンナにもお願いしようかなぁ~」
そう話すとアンナは何やら3枚の木の板を取り出して渡してきた。板には何やら文字が書いてあり読んでみる。
『膝枕券 好きな時に膝枕を提供できる』
肩たたき券かよ! お前は小学生か!?
「な、なんで3枚も?」
「利息です!」
そんな利息あるわけないだろぉがぁ!
涙目で訴えてこないでぇーーー!
「そ、そうだよね。でも、利息はそこで停止してくれるかな?」
「初回の支払いがないと停止できません。初回の支払いが終われば、10日間は利息を停止します!」
どこの悪徳業者やねん!
いやいや、そのジト目で睨むのは止めてください!
「じゃ、じゃあ、初回の支払いを、今からしようかなぁ」
「本当ですか!? じゃあ準備しますね!」
待て待て待てぇーーーーー!
なんでメイド服を脱ぎ始めるぅ!
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「えっ、メイド服の下に準備してますから?」
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アンナさんや、完全にドロテア株に侵食されたよね?
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いやいや、ジト目で睨んでも妥協できません!
そんな膝枕、……マリアさんにお願いしたい!
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「では、10枚貯まるまで、蓄えておきます!」
「いやいや、いまから膝枕するのをアンナが断るなら、利息の加算は認めません!」
「チッ」
あっ、ああぁ~、舌打ちしたよね! 絶対にしたよね!
なんかアンナが変わり過ぎて恐ろしい。ドロテア株に有効なワクチンが必要だぁ!
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