森のアクセサリー屋さん

港龍香

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第3話

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アクセサリー店 Animaは神獣の森奥深くにあるアクセサリー店だ。
店のドアを開けば、店員であるうさぎの女の子のぬいぐるみであるクゥが迎えてくれる。
そして店長はは店の奥で一人アクセサリーを作っている無表情な兎耳の女性だ。
ただこのお店…どうやらアクセサリーを売る以外のこともしているようだ。

とある日の午後、クゥは店長が作ったベットで寝ながらお客を待っていた。
ぬいぐるみなので、パッと見ると目を開けて寝ているように見えるが、スリープモードで休んでいるようだ。
そうすると店のドアが勢いよく開かれる。

「チーフーただいま参上しましたー!」

緑目に狐耳の女の子が現れ、一目散にクゥを抱き上げた。
抱き上げた直後、クゥはスリープモードを解除し、狐耳の女の子を見て両手をパタパタと動かす。

「……あっ、看板ないと喋れませんね!すみません…はいどうぞ!」

狐耳の女の子はクゥをレジカウンターへと置く。
クゥはレジの近くにあった看板を手に取り。

≪チーフーさんいらっしゃい!定期健診ですか?≫

「はい!そうです!もう大丈夫とは言っているんですけどねー…この目ただの人形の目ですし」

チーフーと呼ばれた狐耳の女の子は左目を指さして言う。
どちらも緑色の目をしているが、左目と右目をよく見ると左目だけ色素が薄くなっていた。
チーフーの左目は義眼となっており、義眼の調子を整えるためにこのアクセサリー店へ定期健診にきている。

「…まぁ義眼に取り換えた日、私ボロボロでしたから…心配してくれてるんだと思うんですが…」

≪確かにすごい怪我でお店に来ましたね、あの時のご主人様すごい驚いていました≫

「あははー、あの時こんなことで頼るなーって言ってたのに、こうやって定期健診しろって言われますからねぇ、優しいお方ですよー」

≪めんどくさがりですけどね、ご主人様はいつも通り奥にいますよ≫

「はーい!ラクリマさーん!検診にきましたよー!」

チーフーは『STUFF ONLY』と書かれたドアを開き、奥へと進む。
この店は店員であるクゥと店長の2人しかいない。
ラクリマというのは店長の名前なのだろう。

数年前、チーフーは神獣の森に住む名前のない神獣の子狐だった。
ラクリマとクゥはその頃からの知り合いであり、ラクリマは子狐に人間のこと、神獣のことを教えていた。
特に事件もなく平和に暮らしていた時、突然店に大怪我の狐耳の女の子が現れた。
神獣の森で獣耳をつけている人物は少ないし、狐耳の神獣は女の子ではないことラクリマは知っていた。
そのため、目の前にいる女の子は誰だと考えていると自分は子狐だと言った。
半信半疑であったが、質問していくうちに子狐本人だと分かった。
子狐はなぜ怪我をしているのか話さなかったが、自分は早く怪我を治して戦わないといけないと言った。

1日で治る傷ではないし、片目は潰れて使い物になっていない。
なぜ戦おうとするのか、ラクリマは子狐に質問すると、
子狐は自分は所有者になったと胸にある紋章を見せた。

所有者とは強者の証であり、所有者となると体のどこかに紋章が浮かびあがる。
所有者同士で殺し合いを行い、一定数の紋章を集めると願いが叶うと言われている。
しかし願いが叶った所有者の話を聞かないため、一般的には『死にゆくものの証』として恐れられている。
子狐はその所有者となったようだ。

事情を知ったラクリマは女の子の治療を行い、潰れた片目に義眼を付けた。
そして自分が知る限りの人間の知識を女の子に授けたのだ。

そうして女の子ことチーフーは義眼の調子を伝えるべく月に数度、この店に来ている。

チーフーが作業部屋へ入ってから時間がたち、クゥがスリープモードに入ろうとしたところ。

「それじゃあ、またアクセサリー買いますね!」

「新作もいくつかあるから見ていくといい」

『STUFF ONLY』のドアからチーフーが現れた。
どうやら検診が終わったようだ。
チーフーは毎回アクセサリーを買うことで、それを検診料としている。

≪今日は自分用に買うんですか?≫

「いえ!今日はレイ様用に買いたいんです!」

≪そういえば、前よく会うって言ってましたね≫

「えぇ!レイ様の所有者なので、本当なら殺しあわないといけないんですけどね…でもレイ様を守るのが私の使命ですので!」

チーフーは商品棚にあるアクセサリーを手に取り、遠い目をしている。
恐らくレイと呼ばれる人物のことに思いはせてるのだろう。

「…これに決めました!お会計お願いします!」

≪分かりました≫

手に取ったアクセサリーの代金を支払い、大事に懐にしまうとチーフーは店を後にした。
次にくるのは数週間後、その時にレイと呼ばれた人物にアクセサリーを渡せたのか、渡せたらどんな反応をしたのか。
そのことについて聞こうと思い、クゥはスリープモードになった。
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