323 / 401
03 ー slowly ー
26-3
しおりを挟むナイトランプにぼんやりと輪郭を照らされて、毛布を被ってソファの上に座っている。
やっぱり、人のいる所では、相変わらず眠れないのかな。リビングよりも、寝室に行って、ドアを閉めて寝てもらった方が良かったか。
「ソファだと眠れないだろ。やっぱり君がベッド使いなよ。僕がこっちで……」
「あ、違う、いいんだ。多分、コーヒーの飲み過ぎなんだ」
「そうか」
無理に勧めるのはやめておく。寝室に行かせた所で、自分のベッドじゃないとゆっくり眠れないのかも知れない。倒れた時とは事情が違う。
「僕は喉乾いちゃってさ。ちょっと、ごめんな」
班長はソファを横切りキッチンに移動する。
「君も何か飲むかい」
「そうだな、水、貰う」
海も空調で乾燥していたのか、立ち上がろうとする。班長はいいよと言って、冷蔵庫から出した水のボトルと、コップを二つ持って来て、ソファの隣に腰掛ける。
「あ、どうも……」
そう言って、毛布を被ったまますぐに端っこに移動する。
「そんな、遠くに離れないでよ」
班長は笑いながらボトルの水を注ぐ。海は、スミマセン、と言って、2~3センチだけ戻って来て、コップを手に取った。
やっぱり距離を置かれてしまう。
まぁいいさ……と苦笑してコップを傾け、隣にいる人を見つめる。
僕の家に君が来てくれて、夜を過ごす。
ソファに並んで座る距離も大して近くなってる訳でもなく、以前とそれほど大きな変化も無い。
……ように見えて、何となく、君がここにいる事に馴染んで来ているようにも思える。
ソファにちんまりと収まって飲み物を手にしているその姿も、見慣れたな、と思えるのが嬉しい。
近頃はもう、家の中に飾ってある観葉植物ぐらいには、落ち着いてきてると思うんだ。
「調子はどう。この天気。物凄い低気圧」
「あー、うん……ちょっとぐらぐらするけど、平気だ。最近は、そんなに弱くない」
「ちゃんと食べてるからだよ。もっと運動もしようぜ」
「うーん。まあな」
海は曖昧に返事を濁す。
窓の外はまだ雨が強く打ち付けて、びゅうびゅうと風の音がしている。
「停電しないといいなあ」
ぽつりと呟くと、黙っていた海もこくりと頷く。
「停電しても、この辺は駅の近くだから、何かあっても復旧は早いだろうな」
「そうかもね。君の家の方はちょっと区画が違うから、どうだろうな……あ、何かあったら、キャンプセット貸すよ。ヘッドランプとか、調理用品とか」
「いいよ。そうなったら、寝るから」
「色々出来なくて不便じゃない?」
「うん。むしろ、何も出来ないんだから、堂々と寝る」
「君らしいな」
「調理用品借りても俺、料理しないし」
「何でさ。今日、出来たじゃん」
「混ぜただけだ」
「混ぜて冷やすだけで出来るのもあるよ。ゼリーとか。好きだろ」
「そうなのか……」
「今日のも、混ぜて漬けて焼いただけ。そんなのから少しずつやってけばいいよ。またやろうよ」
「うん」
ナイトランプのほの灯りの中、少し離れて毛布を被って座っている、ほっそりとした横顔が微笑んでいた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
俺と父さんの話
五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」
父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。
「はあっ……はー……は……」
手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。
■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。
■2022.04.16
全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。
攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。
Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。
購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!
身体検査が恥ずかしすぎる
Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。
しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。
※注意:エロです
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる