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03 ー slowly ー
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しおりを挟む「海はお酒大丈夫なの」
前に、酒は飲めないって言ってなかったっけ。
一緒に呑みたいなと思ったのに、サイダーを頼まれてしまった事があったよな。
「酒?」
「このケーキ、酒が入ってると思う」
「え、本当」
メニューを持って来てもらって、海が注文したデザートを確認すると「サヴァラン風ケーキ・アイスクリームフルーツソース添え」とあって、その下に小さな文字で、オレンジ風味のラム酒のシロップ云々と書いてある。
言われたままに注文したので、きちんと読んでいなかった。
ラム入りのシロップか。じゃあスポンジにびっしょり沁み込んでたのも、酒か。
「シロップにラム酒使ってる。もし酒が合わない体質だったら、やめた方がいいぞ」
「酒は飲まないからわかんない……けど、これは美味しいし、平気」
「そっか。ならいいけど、水も飲んどいた方がいいな。薄めときな」
「わかった」
海は素直にグラスの水を全部飲んで、フーと息をつく。
「ご馳走様でした」
「お腹いっぱいになった?」
「うん。もう。全部美味しかった」
「だな。腹減ってる時に食うのが一番美味いよな。またいつでも腹減ったら、今日みたいに、お腹すいたよ!って連絡してな」
「あ……ウン……」
そうしてまた何故か恥ずかしそうにして、窓の外に顔を向ける。
恥ずかしそうにはしてるけれど、窓ガラスに映った顔はやっぱり満足そうで、嬉しそうだった。
「隣の駅のホテルなんて使う事無いと思ってたけど、美味しかったし、窓際すぐ取れたし、そんなに高くないし、意外な穴場だったなぁ」
「うん。この席も、周りの建物が邪魔しなくて、夜空がちゃんと見える。いい景色だ」
「じゃあ、また来ようか」
「うん」
コーヒーを飲み終えて、会計を済ませて立ち上がる。
「そしたら俺も、次来た時は払う。今日はご馳走様」
「ああ。また次にね」
エレベーターに乗って、降下ボタンを押す。海は少しふらついた。
「大丈夫か」
「胃袋重くてバランスおかしい」
恥ずかしそうに笑う。
「そっか。良かったじゃん」
班長もつられて笑う。
海が機嫌がいいので、自分も嬉しくなる。
へへへ、と二人で笑い、エレベーターが入口フロアに到着する。
ドアが開いて駅の方に向かおうとする海を班長は呼び止める。
「ねえ、隣の駅だし、歩いて帰ろうか」
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