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03 ー slowly ー
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しおりを挟む「え?」
「腹ごなしの運動しようぜ。疲れてたら、無理しないでいいけど」
「遠い?」
「たまにランニングで来るんだ。歩いたら、そうだな、ゆっくりで40分くらいかな。でも、君の家はこっちの駅寄りだから、もう少し近いと思うけど」
「ふーん。わかった、大丈夫。歩く」
「へばったら僕がオンブしてやるよ。前に一度担いだ時も凄く軽かったし、君しょって、走って帰る位は出来そう」
「いいよ。いまたくさん食べたから重くなってる。山ぐらい」
手をひらひら振って笑う。
「山?」
班長は一瞬キョトンとする。
何だそれ。
こいつ、冗談を言っているのか。
僕も少しワイン入ってるけど、こいつもさっきからやけに機嫌がいいな……
「山は、嘘。象くらい」
「象……」
「やっぱり嘘。牛。さっき食べたから腹の中に牛いる。ちゃんと合成じゃないやつ。重たいのが、ここに」
そんな事を言って、身が入って無いような服の上から、この辺が牛で、この辺がマリネとか言ってぱんぱん叩いている。何だコイツ。
「海もしかして酔ってるの?」
オレンジ風味のラム酒に浸ったケーキ。
あれっぽっちじゃ呑んだと言える状態でもないのだろうけど、普段のぶっすりした感じとは違って、何だか明るくて変だ。酔ってると思うとそれはそれでにわかに心配になる。
「俺酔ってない」
「頭痛とか、気持ち悪いとか、めまいは無いかい。大丈夫?」
「え。別に、普通。水も飲んだし、薄まったんじゃない?元気元気」
そう言って、手をぶんぶん振る。それが「元気」の証明なのかはよくわからない。
というか、「元気」なんてフレーズが君の口から出る事自体おかしい。
やっぱり、ちょっと普段と違うな。
「本当に大丈夫か」
「酔ってないよ、あれっぽっちで」
「それ酔っ払いの常套句なんだけど」
見た感じ、具合が悪いという訳でも、体質が駄目というわけでも無さそうそうなので安心する。
「酔ってないって。俺呑まないんだから、酔ったことない」
「酔った事無いのに、どうして酔ってないって分かるの」
「そんなの知らない」
そう言って、またへらへらしてる。
へー。
飲むと、こういう感じなんだ。
喋って、笑って。こんな所見た事無い。
ケーキで酔うなよな。
班長も楽しくなってしまう。
飲めないじゃなく、飲まないから分からないって事は、単に飲みつけていないだけか。
言われてみれば、彼がいたような難民の寮で酒なんか出さないか。誰かに誘われる事も無いだろうし……。
だったら、慣れれば、ビールなんか一緒に飲めるようになるのかな?
それ、楽しそうだな。今度家で、缶でも分けて、少し飲んでみてもらおうかな。
「何でもいいけど、具合悪くなったり、足に来たりしたら言えよ。片手で持って帰ってやるから」
「ヤダよ。何だと思ってるんだ」
「軽い手荷物」
「俺牛だってば」
「まだ言うかい」
そうして、中途半端な酔っ払い同士、へらへら笑いながら夜道を歩く。
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