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02 ー he ー
35-1
しおりを挟む朝。
良く憶えてないけど……久し振りに、彼女の夢を見たかなぁ……と思いながら目覚める。
身体がしょうもない反応を見せていて、バスルームでガンガンシャワーを浴びた。
休みだし、ぬるま湯でダラダラしてもいいな、と入浴剤を探したら切れていて、ああ昨日は海を泊めたんだったっけな…と思い出す。
そうだった、とシャワーを浴びながらついでに歯を磨く。
昨日は、彼とまる一日中一緒にいたことになる。
いたけど、静かだったなぁ……
寝てても起きててもずっと大人しくして、言うことを聞いて、ほとんどあそこのソファに座ってじっと黙っていた。
あれこれ世話を焼いて……酷く疲れていたようだけれど、帰る頃にはだいぶ良くなってたみたいで安心した。
食事させて、暖かくして、ゆっくり眠らせる。
ただそれだけの事にずいぶん飢渇していたみたいで、効果の出やすい身体は世話の焼き甲斐があった。
急な行動を取って雨の中を帰らせ、具合悪くさせてしまった事を償いたかった。
あの日、彼が落として行った折り畳みの黒い傘。
そのまま借りて、家まで歩きながら、去り際に見た、泣いているみたいな黒い目の事をずっと考えていた。
玄関口で傘を閉じると、雨の雫が涙みたいに、ぽろぽろとこぼれ落ちる。
僕は彼にとっては、まだずっと、怖いままなのか……
その水滴で出来た、ささやかな水溜りを見つめてじっと考え込む。
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