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02 ー he ー
33-2
しおりを挟む急に冷たくなっていく細い手をしっかり握って、その手の甲の薄い被膜シールの端を、少しずつ剥がしていく。
「痛い?」
「……別に……」
海はじっと身をすくめ、息を詰めてそれを見つめる。押さえられた手が微かに震える。
絆創膏の下から、白い手の甲よりももっと生々しく白い肌が、じわじわと現れてくる。
注意深く見つめると、この前よりも傷はきれいにくっ付いて、透けるような表皮の奥に、少しだけ紅い色を残して隠れている。
もう少したてば、その色も落ち着くだろう。
「うん、もう綺麗になってる」
班長はそう言って丁寧に剥がし終える。
「治ってるよ。深く切らなくて良かったな」
「……あ……どう……も……」
海は酷く緊張して、握った手からその速い脈が伝わって来る。
班長は黙って、けれどその手を離さない。
物凄い緊張。
……やっぱり、まだ、怖いのかな……。
「海」
手を握ったまま静かに呼びかける。
ぴくり、と細い指先が震える。
下を向いて、表情が見えない。
「手、冷たい」
「……」
「駄目だったら、言って」
テーブルの上の右手と左手。
両方の手を取って、自分の両手で包んでみる。ぎゅ、と握る。
海がいっそう身体を固くする。
「だっ……」
一度そう言って、辛うじて飲み込む。
ぴたりと身体を固くして、脈がさっきよりもめちゃくちゃに速くなってる。
「……」
耐えてくれている。我慢させている。
僕のことは大丈夫だと言ってくれて、そこから始まった、あの時の言葉を信じてはいるけれど……
やっぱり、まだ全然、厳しいか……
重ねた手で、鼓動で確かめる、体温。
入浴させて、食事させても、こんな風にこの手はすぐ冷たくなる。
だからいつも、こうして温めてあげたいのに。
ふ、と笑って、名残惜しく手を離す。
海は解放されて、初めて呼吸をするように、は————っ……と息をついた。
「大丈夫?」
「……うん……」
まだどきどきしているような息遣いで頷く。
「……大………丈夫……、と……友達……だし……」
喘ぎながら、何とか、そう言った。
友達。
絞り出すように、やっと告げられた言葉。
「うん、そうだな」
言い返されて、班長は笑う。
やっぱり分かってない。
あのね。海。
友達ったって、普通、男同士でこんな風に手なんか握ったりはしないんだよ。
本当に、何も分かってないんだ、君は。
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