141 / 401
02 ー he ー
14-3
しおりを挟む友人の友人、くらいの距離感で、あまり話した事はなかったが、繊細というか、優し気な雰囲気の2人だった。
一度だけ、講堂で隣り合った時、コッソリと、全く無邪気に「何で男がいいの?」と聞いてしまった事がある。
今考えるととんでもなく失礼だったかも知れないが、当時の僕には単純で普通の問いだった。
優しい人だったから、笑いながら静かに答えてくれた。
「僕も男だし、彼も男だろう」
一言、ただそれだけだった。
けれど、何となくガーンと殴られたような気がしたっけ…。
近い存在の方が、何だって親和性は高い。言われてみれば、単純な真理だ。
磁極のように、違うから引かれ合う事もあるが、同じだから、の方がむしろ自然とも思える。
その考え方にひどく驚いて、そして驚きながら、あっさり納得した事を覚えている。
灰皿を片手に、立ち上る煙をぼうっと眺めながら考える。
彼らは、どうしてるだろう。
今でも付き合っているのかな…
そしてふと気付く。
その頃も、その後も、それ以上聞くこともなく、それを全く考えた事もなかったが…
彼らは、男性同士で付き合っていて、…それで…
……どう、付き合ってたんだろう……
カチャン、と食器の音がして、水道の水音が止まる。
手を拭き、袖まくりを下ろして海がこちらに振り返る。
「これ、拭く?拭いて仕舞う?」
食器籠を指差して聞いてくる。
「いいよ。置いといて。ありがとう」
ハッと気を取り直し、慌てて煙草を捻り潰す。
立ち上がって、窓を閉め、キッチンへ移動する。
「でも、水滴の跡が付くから、洗ったら拭いとけってよく言われてたよ」
海は、キラキラした繊細なデザートグラスを手に取ってうっとりと眺めていた。
器の縁の方はごく薄く、下の厚手の部分には、流線で描かれた星と草花の模様が細かく彫刻されている。脚の部分は少し重めに作られていて、宝石のような立体的なカットが光を反射してとても美しい。
(綺麗だな…)
他人の持ってる、綺麗なもの。
こういうのは自分ではきっと選ばない。班長みたいな人が持ってるから、綺麗に見えるのだろうか。
角度によって変わるガラスの中の景色は、とても美しく、遠く見え、光だけがここにある。
まるで手の届かない星みたいだ。
他人はいつでも、美しく、楽しそうで、キラキラしている。
今日は自分も、ここに来て、友人としてもてなして貰って、少しだけその光を分けてもらえた気がした。
昨夜はぐるぐると悩んで、躊躇もしたけれど、あの人はずっと笑ってこっちを見てたから、…来て良かった…のかも、知れない…。
「…これ、本当に綺麗だから、やっぱり拭いた方が…」ともう一度降り向いて尋ねると、その人が真隣に来ていて、驚いて身体が硬直してしまう。
「ひゃ…」
小さく悲鳴を上げて手足が引き攣り、シンクの中に器を取り落としてしまった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
俺と父さんの話
五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」
父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。
「はあっ……はー……は……」
手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。
■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。
■2022.04.16
全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。
攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。
Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。
購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!
身体検査が恥ずかしすぎる
Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。
しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。
※注意:エロです
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる