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02 ー he ー
13-1
しおりを挟む玄関に入って、辺りを見回す。
何度か来た部屋。来て、逃げ出した部屋。今日も、呼ばれてここに来ている。
ドアの前で迷っていたあの時とは関係が変わって、今日は、友人…の部屋。
あの時は公園で会って、寒いからおいでと連れて来られた。
今日は友人として招待を受けて、自分で足を運んだ。
友人の家に。
その客として。
寝起きの頭で行動して、ここまで来てそれをやっと自覚する。
急に緊張が芽生えてくる。
「お邪魔、します…」
リビングに入ると、キッチンから料理をしている匂い。
昼にこの部屋に来るのは初めてだ。
明るい窓の外にはベランダが見え、柵の向こうにはあの公園の森が、建物の後ろから新緑の頭を覗かせている。
「さっき、起きぬけだったな。まだ何も食ってないだろ?」
「あ、うん。まだ」
「もう午後だけど、君には朝飯か。でも歩いて来たから少しは腹減っただろ」
そう言いながら、早速買ってきて貰ったジュースを開けて何かしている。
「君が来るっていうのに、デザート作るの忘れてた」
器に入れて、冷蔵庫に仕舞う。
「何か手伝うか」
「いいよ。手洗ってきな。洗面所あっち」
言われた通りにして、手を洗って戻ってくると、ローテーブルにサーモンのサラダと、温めたロールパンが入った大皿が置かれていた。
「座ってて」
言いながら、深皿に入ったビーフシチューを運んで来て、海の目の前に置いた。
「サラダとパンは買ってきたやつだけど、こっちは昨夜から煮たやつ。食って」
「ほんとに料理、するんだな…」
「色々ちゃんとしてないし、普段もそんなにしないけどね。どうぞ。量、このくらい行ける?」
湯気の立つ皿。一筋白いクリームの帯の乗ったデミグラスソースの中に、肉と色々な野菜がごろごろ入っている。
海の分の皿は少し小さめのもので出してくれる。
「はい、熱伝導対策」
カトラリーケースをテーブルに置いて、陶器のスプーンを手渡す。
「あ…」
アイスクリームのスプーンに愚痴った。
思い出したように見上げて来る顔に、班長はうん、とニコニコ笑う。
「どうぞ」
「頂きます…」
「うん。食べて」
班長はローテーブルの向かいに腰を下ろして食べ始める。
「やっぱりさ、肉と野菜、温めて一緒に簡単に食えるのって、バーベキューとか、こういうの位しか思いつかないんだよな。もう少し色々考えてみるよ」
「うん…」
「こういう煮込みも、シチューと、ポトフみたいのとあるだろ。コンソメとか、デミグラスとかホワイトクリームとか、どういうのがいい?」
「あ…何でも…」
「そう。こういうのは食える?ああ、熱いかな?」
言いながら慌てて水の入ったグラスを渡した。
「パンもあるよ。でも今日はとにかく肉食えよ、肉」
「ハイ…」
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