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02 ー he ー
-
しおりを挟む家に着いて、水を一口。
どさりと音を立てて、ベッドに埋まる。
…疲れた…
よろよろと手を伸ばし、電話をサイドテーブルに置いた。
メールは、気にしていなければいけない。
気にしてないと、今日みたいに急に来られて、本当にビックリする。
待ち合わせの件のメールに「帰ってもいい」とあったので、その方が良いのかと思い、了解の返事を書いて送ろうとした。
「面倒なら」とも書いてあって、少し引っかかり、手を止める。
面倒だけど…
今日、屋上で話している途中、そうだ、週末だ、今日だ、と気がついて、落ち着かなかった。
面倒は面倒だけど、「落ち着かなさ」は、どうしてだ。
仕事終わりに一緒に食事をして帰るだけだと、この前そう言ってた。
それだけだ。なんでもない。
俺だって、誰かと食事をした経験が無い訳じゃない。
寮では食堂だったし、ここの職場を紹介された時に、担当とも、一度ある。
その前のことは、知らないけれど。
だから平気だ。
だから、ちゃんと返事を書き直して送ったのに、「帰ってると思った」と疑われたのは何故だろう。
やっぱり、帰った方が良かったのだろうか。その方が良かったのか?
どこかに入っていればよかったのにとも言われても…、ベンチにいるって書いたのに。
何かのやり方が不味いのだろうか。
ああいうのも、もっと何とかしなくてはいけないのか…
業務なら、きちんとした手順とルールに則って進めて行けばいい。それだけなのに。
こういうのとか、会話とか、
毎回、変な事になる。
仕事して生きてるだけじゃ、どうして駄目なのだろう…
地元のレストランなんて入った事は無い。
家はすぐそこなのに、そんな所で居心地の悪い思いをしながら食事するなら、適当に食べやすそうなものを買って、家で食べる方がいい。
でもそれを、やたらとがみがみ怒られた。
友人としてと言ったけど、あの人は、友人と言うより、うるさい尞の係官みたいだ。
食事は一人でも出来る。内容はどうでもいい。
保護局の病院で、貧血の薬も貰ってる。
飲み忘れる事も多いから、これが実際効いてるのかどうかは分からないけれど。
ギリギリ病気ではない程度に生きられればいいんだし、そういうのもどうでもいい。生きていたいのかどうかも分からない。
元気になってよ、と言われたが、ああいう風にはなれないし、
…ああいう人と、俺が、一緒にいていいのかも、分からない…
友人だと言った。
だから食事に行った。それだけなのに。
あの人に任せたら、慣れない量が目の前に並べられて、
それを必死に片付けていると、
急に、
ああいう感じで、
告げてくる…
…翻弄される。
大事な人、と言われて、胸が詰まるような感じがした。
ああいうのは、苦しい。
大事、は、わかる。
たぶん、俺にとっての、あのよく分からない写真とか、そういうもの。
人、っていうのが、分からない…
自分がそうなる事の、重さ。いたたまれなさ。
それは他に、誰かと替えのきかないものなんだろうか。
それはどうしても、自分でなければならないものなのか。
みんなに親切な人は、みんなが大事なんじゃないだろうか。
俺ひとりなどに関わっても、無駄な時間なのじゃないだろうか。
あんなに、あっちに行きたいとか、あそこはどうだとか、
あの人はどうして、そんなに、する事が沢山ある?
何をしようとしているのか。俺なんかと。
俺なんかよりも、大事にするものや、人や、時間があるだろう。あんたの人生…
俺は、いらない。
全部全部、無理だ。
たくさん、たくさん、そんなにいらない。
あの人にたくさん、詰め込まれたもので、身体がいっぱいで、動けない。
疲れた……目覚ましのアラームが鳴ってる…もう…朝…
もう、次の日が、来る…
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