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02 ー he ー
6-1
しおりを挟むまた自分はしつこくお節介を焼いているのだろうか。
だって仕方ないじゃないか。
そんなにまでいい加減な食生活だと思ってなかった。
少し戻って、駅ビルのエントランスに近い軽食レストランに入る。
この辺は、バーガーショップや、コーヒーショップ、イートインのあるベーカリーなど軽食店が多い。
彼の言うパンはそういう惣菜系のパンかと思ったのに、突っ込んで聞いてみるとまるきりお菓子だった。お菓子で良いわけがない。
店内の、彼の居やすそうな奥のテーブルを確保して座らせ、メニューを見てもらう。
何でも良いと言うので、サラダバーとコーヒーのセット付きで、パテが二枚挟まったものと、パテと卵とチーズを挟んだものを注文した。
チェーン店だが結構しっかりした材料を使う店で、以前に買ってあげた薄いパンの野菜サンドより、内容も量もいい感じだ。
注文して、サラダバーに誘うと、珍しそうにして、でもフルーツばかりを皿に乗せていた。
オイオイ…と思ったけれど、たとえ果物でも、好んでビタミンを摂ってくれるならそれでもいいか、と口出しを控える。苺、キウイ、マスカット、オレンジ…。
自分のは緑の野菜中心にツナやコーンや豆類を足した。
向かいの席の彼は、黒い服着て、色とりどりの果物を目の前に置いていて、「フルーツコウモリ」というフレーズが何となく浮かぶ。
目が大きくて、結構可愛いのよ、と年上の人が飼っているのを見せてもらった事がある。
なんとなく似た感じで、皿の上のカットフルーツをつついて、静かに口に運んでいる。
しばらくしてハンバーガーのセットの乗ったトレーが2つ運ばれて来た。班長が受け取って、テーブルに並べる。
「はい。どっちが良い?どっちもタンパク質多めだ。血や肉を作るには良いよ」
海は、苺をフォークに刺したまま、動きを止める。
「でかいな…」
「うん。ここのはでかくていいんだよ」
「どっちでも…ああ…」
「ん?」
ハンバーガーの付け合わせに、くし切りのポテトフライがガッサリ乗ってるのを悲しそうに見つめる。
「多い…」
「大して多くない。少ないくらいだ」
「じゃあ、あんたは両方食べていい。俺はこっちだけで」
フルーツの皿を手にして、もう弱音を吐いた。
「何言ってんの、駄目だ、食って。卵とダブル、どっち」
「え、じゃあ…卵の方…」
「うん。良いね。食べなよ」
「はい。…いただきます…」
困ったように、厚みのあるハンバーガーにかじりつく。
一口食べては、ため息をついてコーヒーを飲んだ。そのコーヒーも、熱いと言ってミルクと砂糖を散々入れて、かき回してから少しずつ飲む。
登山家が高い山に挑む時のような顔をしていて、こんなに大変そうにハンバーガーセットを食べる大人を初めて見た。苦行を強いているような気になってしまう。
「あの、こういうのはあまり好きじゃなかった?」
心配になって問い掛ける。
「いえ」
首を振って、黙々と食べ続ける。頑張っている、という感じだ。
ボリュームがあるといっても、ハンバーガーセットがそんなに大変な食べ物だとは思った事もなかった。
彼は、自分みたいな元運動部の乗り、どころか、女の子相手の乗りも通用しないような人だった。
「無理だったら残していいよ」
「無理じゃない。食べる」
チラと上目でこちらを見てハンバーガーにかぶりつく。向きになったのだろうか。
「うん。頑張れ」
何でもいい。そうだ。食え、頑張れ。
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