海のこと

02 ー he ー

4-3

　
どうしたらいいんだろう。
　
今まで、彼女と出掛けるのなんて、買い物に付き合うだけでもお互い楽しかったけどなぁ…

一緒に出掛けて、歩いて、話をして、同じものを見て、一緒の時間を過ごす。それだけで。

そうだったな。
会う事そのものが目的だったんだから、何をしようが、何処へ行こうが、何でも良かったんだ。

彼とは、仕事中も休憩時間も意識して話さず、たまに昼休みにこうして屋上で会ってる。
会うのも、こうして前より少しは話が出来るようになったのも嬉しいけど…

こないだも、屋上で、他に行けばとか言うし、電話も嫌みたいだし、今だって、いいよと言ってくれたのに、駄目ばっかりだ。

無理な所は無理で仕方ないけど、でも、慣れようって気も、もしかしてないのかなあ…。

たしかに友達でいいとは言った。
遊び友達になって欲しいって訳ではもちろんないけれど、何だかもう、友達のレベルですら無いような気がして来る。

…どうなのかなあ…これ…


色々通じなさすぎて、あらゆる自信を失くしていくような気にもなる…
悩んでしまって、ボーッと空を見上げ考えていると、彼も黙りこくって俯いている。
何か言ってくれればいいのに…と思って横目で見た。

すると、向こうも、俯きつつ、こちらをちらりと見ていて、目が合う。

少し眩しそうに目を細めていて、目が合った事に気がつくとすぐ、目を伏せられてしまった。

そうしてまたしばらくして、口を開く。


「…あんた、俺といても仕方ないだろ」

「え、どうして？そんな事はないよ」

即答する。
一緒にいる時間が持てて嬉しいのは本当だし、今みたいに目が合うと、少しドキリとする。

けれど、友達になったというのに、何でもなかった以前よりもむしろ距離を置かれているような気がして、正直寂しい。
近付いて来てくれていると思っていたから、尚更。


いつも、躊躇ためらい迷ったように返事をする。嫌なんだろうか。面倒なのだろうか。
誘う方も、冷や冷やしながら誘っている。
何度かメールを送っても、いつも素っ気ない一言。
せっかくもらった連絡先なのに、すぐに切れそうな糸電話みたいで不安になる。

どうしてだろう。僕達はいつまでも緊張感が消えない。