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02 ー he ー
2-3
しおりを挟む昼休憩。
寒いけれど、天気のいい日。
「今日お昼、屋上にいますか?」とメールを送った。
「たぶん」と短い返事。
多分、とは。
曖昧なんだか適当なんだか、どうしたいんだか。
気がつくともう彼はいなくなっている。
「班長お昼行く?」
「あ、ちょっと今日は寄る所あるので、みんなで行ってください」
「りょーかい」
いつもの連中が昼休憩でガヤガヤと移動する途中、この間喫茶店で話をした赤毛の子が「あの」とそそくさ駆け寄ってきて、こっそりと小さな包みをくれた。
「?何です?」
「チョコレート」
「え」
あの時、ちゃんと返事はしたはず…と、少し戸惑う。
「あ、変な意味じゃなく、前にお話、聞いてもらったので…、何て言うか、これは単なるお詫びと、お礼です。紛らわしくてごめんなさい」
こちらの反応に慌てて説明を加える。こっちも慌てる。
「…お詫びなんてそんな。こちらこそ、お気遣い戴いてしまって…」
「いいのいいの。ただの、その辺で売ってるやつだから、貰ってください」
「ありがとう」
恐縮しつつ素直に受け取ると、安心したように笑った。
「他にも貰ってたでしょう。朝、席の所に何人か行ってたの見ました」
「ああ、はい。ここの人、結構こういう事するんですね。ちょっとびっくりしました」
「言ったじゃないですか、みんな、いいって言ってるって」
「やー、でもそれは…」
返答に困っていると、彼女が声を潜める。
「でも、居るんですもんね。…どうですか。上手くいってます?」
「ああ…ええと…」
何だか申し訳なくて、頭をかいた。
自分の気持ちを確認出来たのは、あの日の、この人との事がきっかけでもあったと思う。
この人には、あれからの心境の変化を正直に話してあげたいけど、海はそういう事を誰かに話されるのは嫌だろうな。
「うん、まあ、…色々あってさ…」
「はい」
「…上手く…行ってるかって言うと…色々と…、上手く行って欲しいんだけど、なかなか上手くはいかなくて…」
漠然とした事しか言えず、むしろおかしな事になる。
自分達にもよくわからないあの状況を、誰かに伝えるのはとても難しい。
「結局なにがどうなってるんですか、それ」
彼女は今日も明るく笑ってる。
…うん、笑い飛ばしてくれ。変なんだ。僕らは。
「じゃあそれ、その人に持って行って、ご機嫌取ってあげてください」
「え、でもこれ、せっかく…」
「甘いものが嫌いなかたじゃなければ、どうぞ。美味しいんですよ、ここの」
甘いものが嫌いなかたどころか、砂糖漬けみたいな奴ですよ…と、手元の包みを見ると、古くからある専門のメーカーのロゴが入っていた。
その辺で売ってはいるけど、この辺にはない。
「いいのかい」
「どうぞ。きっと、上手くいきますよ」
…あー本当に、いい子だ。
僕などにはやっぱり過ぎた人だ。
ハーっとため息をついた。
「誰がこんないい人を泣かせるのかなぁ…」
「またそんな」
キツめに肩を殴られた。元気のいい彼女のパンチは結構痛い。
「え?え」
「本当、ずるい」
「え。分かんない。けどごめん」
「いーですよ。お昼行って来まーす」
「はい。行ってらっしゃい…」
急につんとして、友人達と外へ行ってしまった。
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