海のこと

01 ー nothing ー

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歩き去る後ろ姿をしばらく見送ってドアを閉めた。
灯りを点け、ドサリとベッドに倒れる。


今日。

さっき。

何が起きたのか。


何故いま彼が部屋の前まで来て、その背中を見送っていたのか。

考え過ぎて頭が痛くなって、そのまま起き上がれない。


おかしな言葉を聞いた。

好きだ、と。

好きだと言う。


分からない。

そんな話、知らない。


好きってどういう事だろう。

誰が、誰を？


分からなかった。

ただ、緊張して、時間が止まっていて、何も聞こえなかった。

何が何だか、何が起きたのか、良く分からなかった。


ただ、あの時、あの手を離すことが出来なかった。

離すのが怖くて、どうしようもなくて、ただ掴まっていた。


そして、頷いた。
友人としてと言った。
友人なんてものがどんなものかも覚えてないのに。


混乱している。

強くても弱くても、感情をぶつけられると、どうしていいか分からない。
受け止めきれずに、溢れさせて潰されそうになる。

覚えていた頃の自分なら、どう対処していたのだろう。
何もかもが分からなくて、ただ混乱する。


明日から何が変わるのだろう。
分からなくて怖い。

あの人は悪い人じゃない。
それは充分知ってる。


けど、好きだって、誰が。
一体何が。

なんで俺みたいなのに、そんな事言うんだ。
これをどうしたらいいのか、誰かに教えて貰いたかった。



俺はこんな事も分からない。
好きが分からない。


握った手を、恐ろしいと、嫌だと。

…温かいと

離してはいけないと

離さないで欲しい、と、思う事、なのだろうか。


あの背中を、
隠れさせてくれた背中を見ながら歩き、
ずっと迷い、考えていた。
分からなかった。


分からない。
他人の感情も、自分の感情も、
好きと言う言葉の意味も、その後ろにある気持ちも。理由も。


好きって？

何？


ぐるぐると眩暈を起こしながら、頭を抱え、
混乱の中眠りに落ちていった。
　
　
　








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kotoshi ichinen otsukiai itadaki 
arigato gozaimashita.
rainen mo yoroshiku onegai itashimasu.