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01 ー nothing ー
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しおりを挟む写真を持っている。
カバンの中の手帳に挟んだ、何枚かの写真を取り出し、ベッドに寝転がってかざす。
数少ない、自分の持ち物。
それがいつの、誰の、
何の時の写真かは、分からない。
けれど
知り合いも家族も記憶もない自分にとっては、それは何よりも高価な、唯一の財産だった。
濡れないように専用の袋に入れて、大事に大事に仕舞って、たまにこうして取り出して見つめる。
自分が写ってすらいないそれを。
どうして、紙焼きなんだろう。
データだったら、撮影日や位置情報が分かったかも知れないのに。
わざわざ紙にして。
いつか色褪せてしまうのに。
思い出みたいに。
写っている人達の事は思い出せない。
ただ、そこに写っている空の色に、唯一、淡く覚えがあった。
晴れているような、曇っているような、明るいような、鈍いような、空の色。
確かにその世界の中に、自分は居たのだという確信。
頼りないけれど、その空の色だけを、拠り所にして生きていた。
夏の真っ青な、抜けるような青空じゃない。
雨を密かにたたえているような、優しい、仄暗い空。
夕方のような、夜明けのような、まだ光射さない、穏やかな色。
そこでゆっくり呼吸をして、眠れるような色。
そこに行きたい。
そこで眠りたい。
ここは悲しくて、寂しくて、苦しい。
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