アーヴァインの亜人奴隷

上総十河

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奴隷のオークとヘタレな相棒

第十三話 結合

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「お前から誘ってくれるなんざ、めずらしいとは思っていたんだが。俺に何か、相談してぇことがあんだろ?」
 住み慣れた家のリビングにて、『赤牛あかぎゅう』のシャリアピンステーキとビーンズサラダをフォークで刺しながらガツガツ食べているオルバーが、不意にそう聞いてきた。すでにビールをジョッキで三杯以上飲んでいるせいか、ほおあかく染まっている。
「あぁ、察しが早くて助かる。実は……いや、まずは食べてからだ。食事中にする話題ではないからな」
 俺はオルバーの向かいの席で同じものを食べてはいるが、一向にしょくが進まない。相談する内容自体はオルバーが適任なのだが、果たして彼に相談していいのだろうかーー
 昨日、冒険者ギルドで依頼達成の報告をした帰り道、俺はオルバーを昼食に誘った。名目上の理由として「家族以外に手料理を食べてもらって感想を聞きたい」と彼に伝えているのだが、本当のところは彼にしかできない相談があるため、食べ物とビールで釣ったのだ。ちなみに、ティクロはリリアのレンタルを延長するため、彼女を連れて北東の奴隷どれい商館しょうかんへ手続きに行っている。また、親父とデュビックはルイスとともに、ポーターとして仕事をする上での備品びひん消耗品しょうもうひんを買いに、市場へ出掛けている。つまり今、この家にいるのは、俺とオルバーの二人だけだ。
 三ヶ月ほど前、オルバーとともに市場の祭りで食べ歩きしつつ、好みの女の話題で盛り上がった、あの時。あれから俺とオルバーは、下世話な話もできるほどの間柄あいだがらにはなったのだが、今回の件は内容が内容なだけに、流石さすがに切り出しづらい。酒でも入れば多少は話しやすくなるのだろうかと林檎酒りんごしゅを飲んでいるのだが、今日に限って酔いが回らない。
 そう悩んでいるうちに、オルバーの皿の上にあった料理は全て、彼の胃袋の中に収まった。肉だけでも一キロはあったと思うが、ものの十分で食べ切れるものなのだろうか。
「ふぅ、食った食った。テッセンの手料理は初めてだが、美味うまかったぜ。シャリアピンソースなんて洒落しゃれたもんは俺の口にどうかと思ったが、意外とイケるな。リリアに相当仕込まれたんだろ。どんな食材も炭に変える錬金れんきん術師じゅつしティクロ様とは、大違いだぜ!」
「いや、簡単なものしか作っていない。まぁ、確かにティクロには作れないとは思うが」
 ティクロに対してひどい言い様だが、事実なのでフォローの仕様がない。俺は取りつくろうことを早々そうそうあきらめ、素直に肯定した。
 俺はオルバーの皿を下げてキッチンに運び、代わりに『くろ烏賊いか』の素干すぼしを彼に差し出す。「ビールとスルメはよく合う」とオルバーが言っていたので、事前にスルメなるものの特徴とくちょうを彼に確認し、似た様なものを買っておいたのだ。オルバーは嬉しそうに素干すぼしにむしゃぶりつきながら、ビールをゴクゴクと一気に流し込んだ。
 俺はもう食欲がないので、そろそろ本題に入るとしよう。一呼吸置いたあと、意を決して口を開いた。
「オルバー。お前、アナルセックスの経験はあるか?」
 突然の下品な話題に、オルバーは飲んでいたビールをブーッと勢いよく吹き出した。俺の食べかけの料理にまで、ビールが降りかかる。 
「ゲホッ、ゴホッ……お、おめぇ、いきなり何を言ってやがる!?」
 オルバーがせきをしながら、涙目で俺に怒鳴どなり散らした。いくらオルバーが相手とはいえ、話があまりにも唐突とうとつ過ぎた様だ。俺はテーブルの上を片付けてビールを雑巾ぞうきんで拭きながら、頭の中で話を整理する。全ての片付けが終わり、席に着いた頃には話の内容がまとまったため、俺は改めて話し始めた。
「オルバー、お前は夜の店で女性店員を宿にお持ち帰りしては、夜な夜な大人の遊びをしていると聞いている。それに、親父の話によると、オルバーは性行為に関しては好奇心こうきしん旺盛おうせいで、様々なプレイを楽しんでいると豪語ごうごしているそうではないか。そこで、オルバーは女性の肛門こうもんに肉棒を突っ込んだり、逆に女性にぜんりつせんマッサージをしてもらったりなどといったプレイをしたことはあるのかと聞いているのだ」
 経験豊富なオルバーなら、もしかしたら肛門を使った性行為もたしなんでいるかもしれない。それに、性生活や性的嗜好せいてきしこうといった下品を通り越して失礼な話題にも、オルバーなら嫌な顔せず答えてくれるかもしれない。そう思ったのだが、彼の反応はあまりかんばしくなかった。
 オルバーは腕を組み、考え込む様に目を伏せてうなっている。流石さすがのオルバーでも、ここまでプライベートな質問には答えにくいのかもしれない。そう思い、話題を切り上げようとしたが、彼はふと何かに気付いたのかの様にハッと目を開くと、俺の顔をまじまじと見つめてきた。
「お、お前まさか……ティクロとまだ最後・・までやってねぇのか!?」
 オルバーに何を言われるのかと一瞬身構えたが、彼の言葉にあやうく椅子いすからずり落ちそうになった。どうやらオルバーは答えにくいのではなく、俺が何故なぜその様な質問をしたのか分からず、混乱していただけの様だ。おそらく、俺とティクロはすでにアナルセックスをするまでに至っているものだと思っていたのだろう。
 ちなみに、俺とティクロが付き合い始めた次の日にはもう、パーティー全員に交際の報告を済ませたため、俺達の仲はパーティー内で公認となっている。ルイスは、あらかじめティクロの気持ちを知っていたため、然程さほど驚いてはいなかった様だったが、俺がティクロに告白したことについては意外だったらしい。対してオルバーは、手をつなぎながら交際宣言した俺達に、目が飛び出さんばかりに目を見開いていた。「わざわざテッセンの好みのタイプを調べた意味は何だったんだ……」と愚痴ぐちこぼしていたが、とりあえず俺達の仲は認めてくれている様だ。
「あぁ、キスとペッティング、あとかぶとわせなるものはしたが、アナルセックスまでには至っていない。もしオルバーが経験あるなら、参考までに話を聞きたいと思ったのだが……」
 俺だけではなく、ティクロの性生活にも関わる情報のため、彼の性事情も暴露してしまう様で申し訳ないと心の中で謝りながらも、話を進めるために肯定する。幼馴染の性事情に、オルバーは何を思っているのか想像できないが、とりあえず真面目に相談している俺に対しては親身になってくれている様で、ホッとした。
「『かぶとわせ』という言葉は初めて聞いたが、語感から何となく想像できるのが嫌だな……いやまぁ、残念ながら、俺はする方もされる方も、アナルの経験はねぇな。俺はむしろ、チ……」
 オルバーは言いかけて、しまったと言わんばかりに目をらす。オルバーが酒の飲み過ぎで顔が赤いのは見慣れているが、その顔をさらに赤く染めているのは、アルコール以外の要因が含まれているせいだろうか。
「チ? チンポと言いたいのか?」
「えっ!? あ、あぁ、そうだな。やっぱ男はチンポを使ってナンボだろ!」
 俺の問いかけに、オルバーはわたわたと取りつくろうかの様に、語気を強めて主張する。彼の反応には少し違和感があったが、とりあえず彼には肛門を使った性行為の経験がないことが分かれば、それで充分だ。
「だが、意外だな。真面目で堅物かたぶつのお前の口から『チンポ』という言葉が出てくるとはな」
「そうか? 俺からしてみれば、『チンポ』という言葉を口にするのを躊躇ためらうオルバーに違和感があるのだがな。お前の性格的に、衆人しゅうじん環視かんしさらされている只中ただなかでもおくすることなく、尾籠びろうな話を堂々とり広げるものとばかり思っていたのだが」
流石さすがの俺も、そこまでじゃねぇよ! お前は俺にどんなイメージをいだいてんだよ、まったく……」
 あきれた調子で、ぼやくオルバー。そんな彼を観察しながら、彼の印象について、しばし考え込む。
 オルバーと初めて出会った頃は、初対面の俺に対しても馴れ馴れしく、いけ好かない男という印象だった。だが今は、亜人に対しても分けへだてなく接し、豪放ごうほう磊落らいらく人情にんじょうあふれる人柄であると思っている。
 それでも、三大欲求に忠実な男であるというイメージは、第一印象からずっと変わっていない。特に性欲に関しては、食欲や睡眠欲とは異なり、満たさないと死ぬわけでもないのに、彼は人一倍その欲望が強く、それを隠そうともしない。だからこそオルバーに相談したのだが、意外にも彼には羞恥しゅうちしん欠片かけらというものが、わずかながらも存在している様だ。
「そうか。以前、市場のど真ん中で人混みを気にせず、猥談わいだんしていた男の台詞せりふとは到底思えないがーー」
「う、うるせぇ! そんな細かいこたぁ、どうでもいいだろうが!」
 顔を真っ赤にしながら、怒鳴るオルバー。決して細かくはないと思うのだが、必死になっている彼の姿に、俺は口をつぐむ。おそらく彼は、何か隠し事をしているのだろう。だが、これ以上の追求は避けた方が良さそうだ。
「というか、そもそもセックスのことだったら、リリアに聞きゃあいいじゃねぇか。あいつは本職なんだからよ」
 オルバーが露骨ろこつに話題をらしてきたものの、彼の指摘はもっともである。だが俺は、即座に首を横に振った。
「いや、いくらせい奴隷どれいと言えど、女性に話を聞くのははばかられる。特に、俺は過去にリリアの告白を振っているから、尚更なおさらだ。それに、その……リリアにそんな話を振ったら、デュビックににらまれそうだしな……」
 そう言いながら、弟の姿を思い浮かべる。三ヶ月ほど前に再会した頃は、純粋じゅんすい無垢むくで可愛い弟だと思っていたのに、この家に住み始めてからはどうも彼から黒いオーラが見え隠れしていて、正直怖い。力では圧倒的に俺が上のはずだが、俺より背の高いデュビックに見下ろされながら、鋭い眼光を向けられたらと思うだけで、背筋が震える。そんな俺の様子に、オルバーはやれやれと肩をすくめた。
「そうかい、お前はほんとクソ真面目だなぁ。だがまぁ、それだったらこの俺が、相談できるヤツとやらを奴隷どれい商館しょうかんからレンタルしてきてもいいぜ? レンタル料金さえ渡してくれれば、アナル経験のある男のせい奴隷どれいを一緒に選んでやるからよ」
「なるほど、いい案だ。だが、それは流石さすがに悪い気が……」
 奴隷どれい奴隷どれいを直接購入したり、レンタルしたりすることはできないが、オルバーに金を渡して払ってもらい、彼がレンタルしたことにすれば問題ない。しかし、ここまで彼を巻き込むつもりはなかったので、遠慮しようとする。条件に合うせい奴隷どれいを探すだけでも一苦労だし、できればティクロに勘付かれたくはない。だがーー
「ーーいや、それもあり・・か?」
 俺はふと、あること・・・・を思い付いた。それは、あまりにも突拍子もない思考であり、もしかしたら俺とティクロの関係性が大きく崩れる可能性もある。だが、それでも俺は、試してみる価値は充分にあると思った。
「オルバー。すまないが、奴隷どれいのレンタルを頼む。ただしーー」
 俺は、そのある条件・・・・を、オルバーに説明しながら伝える。その説明を聞いたオルバーは、目をぱちくりさせたあと、ひたいに手を当てて天をあおぎながら、深い深い溜め息を吐いた。だが、その条件は無事に承諾しょうだくされ、奴隷どれいのレンタルに協力してもらえることになったのだった。
 
 俺の依頼により、オルバーはしばらく別行動となった。彼がいる時よりも仕事のペースは遅くなるが、俺達は元々「安全第一」で仕事をしているため、他の冒険者と比べても普段から特別に仕事が速いわけではない。それに、そもそもティクロやオルバー個人に対する指名依頼や、私用などにより、パーティーメンバーが一時的に抜けるのも初中後しょっちゅうであるため、今回の件についてもティクロは特に気にしていない様子であった。本当は俺も一緒に行きたかったのだが、俺がオルバーに付いていくのは流石さすがに不自然であるため、仕方なくティクロ達のパーティーに残り、仕事をこなしながら、オルバーの帰りを待っていた。
 そして、三日後。ようやく、オルバーが例の・・奴隷どれいを連れて戻ってきた。ティクロに気付かれない様に、オルバーの泊まっている宿屋を訪れ、アナルセックスのレクチャーをしてもらう。その間、オルバーは部屋から出て、飲みに行くものだとばかり思っていたのだが、「姉ちゃんの肛門を使う機会が、今後あるかもしれない」という理由で、授業を見学していた。「気持ち悪くないのか」と彼に聞いたら「男同士でオナニー大会やイカせ合いをしたこともあるし、その延長線上に過ぎねぇだろ!」と豪語していたが、いざ脚をぴろげて、自らの肛門を俺達に見せつけながら指でいじくる男の姿を前にすると、彼は顔を真っ青にして、激しく後悔した様だった。
 二時間ほどかけてレクチャーしてもらい、アナルセックスの極意を頭の中に全て叩き込んだ。そして家に帰り、夕食と風呂を済ませたあと、俺はティクロの手を取って自分の部屋に連れ込む。部屋に入るまでの間、親父とデュビック、そしてリリアに温かい目で見守られながら、ティクロは顔を真っ赤にしていた。俺も期待と緊張で、心臓がバクバクと高鳴っている。
 俺はティクロをベッドに座らせ、その左隣に腰掛ける。そして、右腕を彼の背中に回し、右肩を掴んで引き寄せた。お互い顔を合わせ、愛を確かめる様に熱い眼差しで見つめ合う。
「ティクロ、今日もたくさん愛し合おう。そして、お前の可愛い顔をたっぷりと俺に見せてくれ」
「な、何だよ急に……ま、まぁ、よろしく頼む」
 ティクロは強面こわもてで男臭い見た目に反して割と乙女思考であるため、突然の甘い言葉に吃驚びっくりしながらも、幸せに満ちた目をうるませながら、顔を上気じょうきさせていた。俺は彼に顔を近付け、くちびるついばむ様なキスをする。彼は目を伏せ、待ち望んでいたかの様に、俺のくちびるを受け止めた。彼のふわふわとしたくちびるの感触に、安心感と多幸感があふれ出す。お互いの舌を絡ませる情熱的なキスも好きだが、くちびる同士でソフトに触れる穏やかなキスも好きだ。
 じっくりと愛を確かめ合ったあと、俺はティクロからくちびるを離し、彼の最近のお気に入りである部屋着の赤いワイシャツに手をかける。そして、前を閉じている白いボタンを、上からゆっくりと外していく。その間、彼は恥ずかしそうに赤面しながら、身体からだを硬直させていた。全てのボタンを外し終わり、固く閉じたつぼみを開花させるかの様に、肩から肘へとワイシャツをいていくと、彫刻の様なたくましく美しい筋肉と、ワイルドな胸毛や腹毛があらわとなった。その男らしくも妖艶ようえんな色気に、俺は思わずごくりとのどを鳴らす。彼の裸は何度も見ているはずだが、中途ちゅうと半端はんぱに脱がせたワイシャツがあるだけでも、また違ったおもむきがあるものだと実感した。
 このまま行為に及びたいところだが、それではティクロが動きづらいだろうと思い、断腸の思いで全て脱がせることにした。脱がしやすい様に彼の両腕を持ち上げ、手首周りのボタンを外して袖を引っ張り、ワイシャツを完全にぎ取る。ワイシャツは邪魔にならない様にベッドの端に置き、俺が無造作に脱いだ黒いティーシャツを上に重ねた。
 ティクロをベッドに寝かせて上から抱き付き、上半身裸同士の肌を重ね合わせる。そして、舌を絡ませる濃厚なキスで、お互いの熱をたかぶらせた。ペチャペチャと水気みずけを帯びた淫靡いんびな音が室内に響き、鼓膜こまくを刺激する。その刺激は逸物いちもつに伝わり、じんじんとした鈍い痛みとともに熱を帯びていき、だんだんと大きく、そして硬くなっていく。完全に勃起ぼっきした頃には、ティクロのズボンもテントを張っていた。
 俺達はズボンとパンツを脱ぎ捨てて全裸になると、いつも通りティクロにフェラチオしてもらったり、ティクロの身体からだを隅々まで愛撫あいぶしたり、かぶとわせしたりと、ペッティングを楽しむ。以前は彼に少しフェラチオされた程度で、すぐに射精してしまったのだが、最近は慣れたのか、少しはコントロールできる様になってきた。それに、今回は彼に気付かれない程度に手加減をしているため、俺も彼もまだ一回も射精していない。
 お互い興奮が最高潮に達し、そろそろ頃合いかと判断した。目をとろんとさせ、ほうけているティクロを押し倒しながら、俺は真剣な眼差しで、彼のあおい瞳をじっと見つめる。
「ティクロ。今日は最後・・までしてもいいか? 俺はお前と一つになりたい」
「……えっ、さ、最後・・って、アナルセックスのことだよな。そんな、まだ早いんじゃねぇか?」
 ティクロは興奮に息を荒くしながらも、俺から目をらした。彼がこうして拒否する理由については、漠然ばくぜんとだが想像できる。要するにティクロは、俺が男とのアナルセックスにドン引きするのではないかと心配しているのだ。キスやペッティングであれば、お遊びの範疇はんちゅうでできてしまう者も少なからず存在するだろうが、アナルセックスとなると話は別である。先ほどのオルバーの反応からも分かる通り、肛門での性交というだけでもハードルが高いのに、それが男のものとなると尚更なおさらである。普段は便べんが出るその場所に、指や陰茎いんけいなどを抜き差しするのだ。想像するだけでも生理的に無理だという者は、少なくないだろう。
 特に俺の場合、初めての性行為でティクロとキスをした時でさえも、緊張で身体からだが固まってしまったのだ。彼が不安に思うのも、無理はない。だが、今の俺は違うーー
「大丈夫だ、事前に勉強してきた」
「べ、勉強って、何処どこでだよーーって、おい!」
 ティクロの困惑する様な声を無視し、俺は脱いだズボンのポケットから小瓶こびんを取り出す。この小瓶には、〈浄化〉の魔法が付与されたねばり気の強い透明な液体が入っており、奴隷どれい商館しょうかんや宿屋でも販売されているポピュラーな道具である。これを肛門に入れて、指などでほぐすことにより、尻の中を洗浄して清潔にしつつ、陰茎いんけいを挿入した時の痛みをやわらげてくれるという優れものだ。生活魔法が使える者にとっては不要なものだが、生活魔法が苦手な者が多い亜人からの需要は高く、特にせい奴隷どれいがレンタルされた時に奴隷どれい商人しょうにんから持たされることが多いそうだ。
「テ、テッセンお前、そんな物、いつの間に……!?」
「準備はできている。安心して俺に身を任せるがいい」
 俺はティクロの両脚に手を掛け、肛門が俺に見える様に両脚を持ち上げる。毛一本無い俺とは異なり、彼の肛門は胸毛や陰毛いんもうと同じ色の尻毛しりげに覆われている。少し黒ずんだ陰嚢いんのう会陰えいんも丸見えとなり、その奥にのぞくペニスもち上がっている。俺は小瓶のふたを開け、右手の人差し指と中指を液体でらし、彼の肛門にてがう。すると、彼の口から、短い悲鳴が上がった。
「ひっ、冷たっ……テッセン、やめっ……!」
 そう言いながら、ティクロは足をジタバタさせているが、全くもって力が入っていない。彼が本気になれば、俺なんざ簡単に撃退げきたいできるだろうし、そもそも隷属れいぞくの首輪に命令すれば、強制的にめさせることもできるはずだ。だが、彼はえてそれをしないため、少なからず期待しているのだろうと推測できる。
 俺はティクロの反応を見ながら、尻の穴の開発を進めていく。尻穴の周りを指先でらす様にわせてみると、彼はくすぐったそうに身体からだを震わせながら、息をらした。そして、かたく閉じたつぼみを中指で浅く抜き差しし、徐々に深くもぐり込ませる様に押し広げていく度に、彼の吐息がだんだんと熱を帯びていく。透明の液体は潤滑剤じゅんかつざいとなり、肛門を傷付けることなく、指先をスムーズにすべらせる。順調にほぐしながら中指の第二関節まで侵入し、指を腹の方に曲げてみると、指先がコリッとした様な硬い感触の何かにぶつかった。その瞬間ーー
「ーーーーあぁっ!!」
 ティクロが突然、甘い声を上げながら、身体からだわずかにけ反らせた。彼のペニスもビクンと震え、わずかにふくれ上がる。どうやらここが、男が刺激されると気持ち良くなれることで有名な『ぜんりつせん』で間違いない様だ。さらにトントンとしこりを押してあげると、ティクロは砂糖の様な甘い声をらし続けた。
「あぁっ、テ、テッセン、そこ駄目……ああぁっっ!!」
 俺は中指でぜんりつせんを刺激しながら、人差し指の侵入も開始させ、徐々に尻の穴を広げていく。そして、人差し指もぜんりつせんに到達し、二本の指で交互に刺激を与えてみる。すると、ティクロは与えられ続ける刺激におぼれるかの様に、部屋中に響き渡るほどの嬌声きょうせいを上げ続けた。
「あああぁっ、あっ、あっ、はっ、あっ、あああぁぁっっ!!」
 最早もはや、抵抗するどころか、俺の名前を呼ぶことさえも叶わなくなったティクロのとろけ切った顔に、俺の逸物いちもつは興奮のあまりに怒張し、鈴口からよだれを垂らしまくりだ。指だけで彼がここまで乱れるのに、俺の逸物いちもつを入れると一体どうなってしまうのだろうかーー俺ははやる気持ちを抑えられず、薬指も尻穴の開発に参画さんかくさせ、突貫とっかん工事こうじの如く彼の尻穴をさらに広げていく。そして、三本の指が全て根元まで収まり、充分にほぐれたところで、全ての指を引き抜いた。
 いよいよ、俺の逸物いちもつを挿入する時が来たーー俺は逸物いちもつに〈対病〉の結界を付与し、さらに小瓶に入っている残りの液体を全て逸物いちもつに掛ける。肛門での性交は性病にかかる可能性が高いと言われており、それは浄化の魔法によりリスクを抑えることができるのだが、念には念を入れて逸物いちもつにも病魔を弾く結界を張っておくことで、より安全にアナルセックスをおこなうことができるのだ。俺は結界魔法が得意であるため、〈対病〉の結界魔法も難なく覚えられた。ちなみに、せい奴隷どれいは〈対病〉の結界魔法の習得は必須であり、男女が性交する場合はさらに避妊用の特殊な結界魔法も必要である。
「テ、テッセン……」
 俺はティクロの両脚の間に割り込み、彼に覆い被さる。そして、棍棒の様に硬くなった俺の逸物いちもつを、彼の肛門にした。彼は赤面しつつも、びる様な目で俺の顔をうかがっている。
「ティクロ、今からお前を抱く。覚悟はいいな?」
 有無を言わせぬ口調で、ティクロに問いかける。俺が一方的に彼の肛門をほぐし、男根を受け入れるための生殖器へと開発していたにも関わらず、彼は文句を言わず、こくりと頷いた。それを確認した俺は、逸物いちもつをゆっくりと彼の肛門に挿入する。
「くっ……はっ、テッセンのチンポ、大きい……っ!」
 指三本では少なかったのか、ナイフのさやに大剣を納刀のうとうするかの様に狭苦しい。それでも浅く抜き差しを繰り返しながら、奥へ奥へと侵入し、ようやく逸物いちもつの半分がティクロの尻穴に収まった。彼は苦しそうに顔をゆがめながら、荒く息を吐いている。俺は一旦侵入を止め、彼のくちびるにキスを落としたり、両手で乳首をいじったりと愛撫あいぶし、彼の中にり固まっていた緊張をゆっくりと溶かしていく。そして次第に落ち着き、呼吸も整ったところで、再び侵入を進めた。ゆっくりと、ゆっくりと彼が苦しまない様に、慎重に。たっぷりと時間をかけて、そして遂にーー
「……ふぅ。ティクロ、全部入ったぞ。どうだ、苦しくないか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。俺、テッセンに抱かれてるんだよな? なんだか夢みてぇだ……」
 俺の逸物いちもつが全て、ティクロの尻の中へと収まった。彼の肛門が俺の逸物いちもつをきゅうきゅうと締め付け、動いていないのに絶え間ない刺激が逸物いちもつを襲う。肛門の中は、穴をほぐす時に使ったドロドロの液体が彼の体温により温められ、俺の逸物いちもつを優しく包み込む。その熱に、少しでも気を抜くと、すぐにおぼれてしまいそうだ。
 それに対して、ティクロはほおを真っ赤に染めながらほうけた様に天をあおぎ、夢見ゆめみ心地ごこちの様子である。「オークに犯される」という一般的には地獄の様なシチュエーションも、彼にとってはまるで天国にいるかの様に幸せなひと時なのだ。
「夢ではない。これが現実であるということを、今から教えてやる」
 そう言い、俺はゆっくりと腰を動かし始めた。逸物いちもつを半分ほど外に抜き、再び根元まで差す。俺の逸物いちもつが奥に入る度に、ティクロがあえぐ様に吐息をらす。俺はその声にますます興奮し、彼の穴の中を満たす潤滑じゅんかつざい相俟あいまって、腰を動くスピードがだんだんと速くなっていく。彼のあえぎ声も次第に大きくなっていき、やがて部屋全体へと響き渡るほどの声量となった。
「あっ、ああっ! テッセン、気持ち良……いっ、あっ、はっ!」
 俺はティクロの両手に指をからめ、所謂いわゆる『恋人つなぎ』をする。そして、身体からだを前に倒し、彼と見つめ合う。すると、ただでさえ赤い彼の顔がさらに紅潮こうちょうし、目に涙が溜まっていった。
「や、やべぇ、ま、まるで、テッセンに、愛されてる、みてぇだ、くっ、はっ……!」
「愛されているみたい・・・ではない。お前はもっと、俺に愛されている自覚をしろ」
「なっーーんむ、うううううぅぅぅっっ!!」
 驚愕きょうがくに目を見開くティクロに少し腹が立ったため、半開きとなっている彼の口腔こうくうに舌を入れ、抗議する様に歯や舌を激しくねぶった。俺の精いっぱいの愛情表現に、彼は遂に認めたかの様に、目から涙をぽろぽろとこぼしている。
 ティクロの肛門に抜き差ししている俺の逸物いちもつに、だんだんと熱が込み上げてくる。俺は彼から顔と両手を離し、彼の腰を両手でガッシリと挟む様に掴んだ。そして、あらかじめ位置を確認していたぜんりつせんに向かって、俺の逸物いちもつを勢いよく打ち付ける。
「ぐっ、ああああああああぁぁぁっっ!!」
 ティクロの目と口が、これでもかというほど大きく開き、絶叫にも似た嬌声きょうせいを上げた。俺は一旦腰を引き、再びぜんりつせん目掛けて逸物いちもつを突きつける。彼は再び嬌声きょうせいを上げ、身体からだを大きく震わせた。俺が何度も何度もぜんりつせんを刺激する度に、あえぎ声が部屋全体へと響き渡り、身体からだがビクビクと跳ねる。彼は快楽を外に発散せんとばかりに両手でベッドのシーツを必死に掴んでいるが、それを上回るほどの強烈な快感にあらがい切れない様で、快楽に顔をゆるませたまま、口元からだらしなくよだれらしていた。
 俺がぜんりつせんを突く度に、ティクロのペニスが肥大化し、俺の腰の動きに合わせてブルンブルンとお辞儀をする様に揺れている。そんな彼の卑猥ひわいな姿を前に、俺の逸物いちもつはもう耐えられない。俺は彼のペニスを右手で掴み、荒々しくしごいた。そして、ラストスパートとばかりに、俺の腰も勢いよく振り続ける。
「ぐああああああぁぁっっ、あああっ、がああああああああああああぁぁぁぁっっっ!!」
 ティクロはただひたすら、絶叫し続ける。そして、彼のペニスが膨張し、鈴口から大量の精子が噴出された。シャンパンを振ってコルクを外したかの如く精液が上空に打ち上げられ、彼の全身に降りそそぎ、白濁はくだくしょくに染め上げる。彼が射精する毎に、彼の肛門が締まっていき、抽送ちゅうそうしている逸物いちもつがさらに刺激されていく。そして程なくして、限界は訪れた。
「ティクロ、俺も出すぞ。俺の愛を、しっかり受け取れ……っ!!」
「ああぁっっ……ぁっ…………!」
 俺はティクロに腰を思い切り打ち付け、逸物いちもつをできる限り奥へと突っ込む。そして、愛と欲望をはらんだ熱を、彼の最奥に流し込んだのだった。
 
「はぁ、はぁ……どうだ、ティクロ。俺の愛、伝わったか……?」
 たっぷり数十秒かけて俺の愛をそそいだティクロの肛門から、ゆっくりと逸物いちもつを引き抜く。尻の穴から垂れる白い精液が、ひどく淫靡いんびだ。彼の穴の中に満ちた精液は、〈浄化〉の魔法が付与された粘液ねんえきで自然に洗浄されるため、外に垂れた分の精液だけ軽くぬぐい取る。
「あ、あぁ、伝わった……す、すまねぇ、お前のこと、別に疑っていたわけじゃねぇんだが、その……」
 ティクロは目をらしながら、しどろもどろに答えた。快楽で頭の中が正常に働かない状態で咄嗟とっさに出てしまった言葉とはいえ、致命的とも言える失言をしてしまったのだ、流石さすがに気まずいのだろう。だがーー
「いや、分かっている。きっと、普段の俺の愛情表現が足りなかったのだろう」
「……は? いや、そうじゃねぇだろ。お前は本当に良くやってくれている。これは俺の心の問題……俺の心が弱いせいなんだよ。俺が、自分に自信がないから、だから……」
「もちろん、それもあるだろう。だが、そもそも俺とお前は男同士だ。俺がお前のことを本当に愛せるのかどうか、お前が疑うのは当然だ。だからーー」
 俺は部屋の隅に置いてあるズボンに手を伸ばし、ポケットから再び液体の入った小瓶を取り出す。そして、瓶のふたを開け、中に入っている粘液ねんえきらした右手の中指を、俺は迷わず自分の・・・肛門に突っ込んだ。
「お、おい、テッセン! お前、一体何を……!?」
 俺の突然の行動に、ティクロが吃驚びっくりして飛び上がる様に上体を起こした。そんなティクロに対して見せ付ける様に、足を大きく開脚し、肛門を彼の方へと向け、まずは中指を根元まで一気に突き入れる。オルバーの部屋で事前にレクチャーしてもらった時、「実践じっせんに勝る学習はなし」と言わんばかりに俺の尻穴を使って実際にほぐす練習をしていたため、すんなりと入った。そして、粘液ねんえきぎ足しながら、さらに人差し指、薬指と順に増やし、俺の穴を順調に拡張していく。ティクロはそんな俺の様子に困惑しながらも、だんだんと広がっていく俺の尻の穴に、視線が釘付けである。先ほど射精したばかりの彼のペニスも、すでにギンギンにち上がっていた。
「よし、これくらいで充分だな。ではティクロ、今度はお前が、俺を抱く番だ」
 俺は指を引き抜き、性器と化した肛門をさらけ出す。ティクロはギョッとした表情で、俺の顔を見た。
「な、何言ってんだ、テッセン! どうしてお前が、そんなーー」
「いや、俺はずっと、お前と愛し合いたいと思っていた。お前の事を抱きたいし、逆にお前に抱かれたいともな」
「なっーー!?」
 激しく狼狽ろうばいしながら声を荒げるティクロの言葉をさえぎり、自分の気持ちを素直に伝えると、彼は驚愕きょうがくした表情で絶句した。彼のこの反応は予想していたため、固まる彼に向けて言葉を続ける。
「俺達は元々『主人と奴隷どれい』という関係だが、『相棒』であり、そして『恋人同士』でもある。俺はお前を『恋人』として愛していると同時に、『相棒』としても愛しているのだ。恋人には様々な関係があるが、相棒は対等な関係でなければならないと、俺は思う。つまり、俺はお前を抱くと同時に、お前に抱かれることで、恋人として、そして相棒として、お前に愛情を示すことができると思うのだ」
「そ、そんな無茶苦茶な……」
 俺の説明にティクロは呆れた声を出すが、俺は至って本気である。俺は熱を込めた声で、彼の心に強く訴えた。
「俺はお前を愛したいし、お前に愛されたい。だから、お前のたける肉棒を、俺の肛門に突っ込んでくれ。そしてーー」
 俺は上体を少し寝かせて左肘をベッドに突き、両脚をさらに広げて肛門を見せ付ける。ティクロは食い入る様に俺の肛門に視線を向け、ゴクリとのどを鳴らした。
「『相棒』として、そして『恋人』として、たっぷり愛し合おうーー!」
 俺はわざと口調を変えて挑発し、情欲を込めた視線を送りながら、下唇したくちびるをペロリとめる様に舌を出してみせる。聞いた話によると、オークという種族は相手に求愛する際、舌を出して相手を挑発するという習性があるそうだ。俺は自分の種族のことなのに、先ほどレクチャーを受けた時まで全然知らなかったのだが、教えてもらったその習性とやらを最大限に利用し、ティクロに求愛行動を示すことにしたのだ。
 案の定、ティクロは食いついてきた。血走った目で俺の両脚の間に割って入り、両脚を鷲掴わしづかみにして、俺の頭の方へと押し込む。俺はその勢いに押されて上体が肩までベッドに倒れ、そのはずみで俺の尻が天を向いた。所謂いわゆる『ちんぐり返し』の状態となり、俺の毛一本すら生えていない肛門がティクロにさらされる。俺はトドメとばかりに、肛門をヒクヒクと動かしてみせた。すると、花に吸い寄せられる蜜蜂みつばちの様に、彼のペニスの亀頭きとうが俺の肛門に充てがわれる。はぁはぁと飢えた獣の様に吐息をらしながら、彼は何度も何度も俺の名前を呼んだ。
「テッセン、テッセン……テッセン……!」
「あぁ、来い……ティクロ!!」
 俺の言葉と痴態ちたいに、見事なまでに扇動せんどうされたティクロのペニスが、噴火寸前の火山の如くたぎる。そして、俺の潤滑じゅんかつざいまみれた肛門を、一気につらぬいたのだった。
 
 ーーそして。
「ティ、ティクロ、そう気を落とすな。それに、それだけ俺の身体からだに興奮してくれたということで、俺は嬉しいぞ?」
「な、なぐさめはらねぇよ! 余計にみじめになんだろうが……!!」
 俺のみだらな挑発に興奮状態が極限まで高まっていたティクロのペニスと、力の加減が分からず彼のペニスを容赦ようしゃなく締め付けた俺の処女穴により、彼のペニスはすでに一回射精したばかりであるにも関わらず、三擦みこすり半で呆気あっけなく暴発してしまったのは言うまでもないーー
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