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1C-1(Amane)
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『7月21日(日)11:50』
俺が二人のことを話し始めてからもう
二十分も経っていたみたいだ。大正ロマ
ン的な内装にサックスの音が鳴り響く、
ノスタルジックな気持ちになりながら俺
は眼の前にある黒い頭頂部をぼーっと眺
めていた。髪が短くなってもこういう姿
は変わらない。
光也と雛森のことを知りたいと言われ
こうして喫茶店に来て話をしていたのだ
が、当事者の彼女はいつの間にか眠って
しまったらしい。
まあ、朝俺より先に集合場所に到着して
いたのが彼女なりの背伸びだったんだと
わかってなんだかホッとした。昨日の夜
は何時に寝たんだろう、もしかすると一
晩中寝ずに朝が来るのを待っていたのか
もしれないとか想像してみると少し微笑
ましくもあった。
グレーのタンクトップに七分丈のタイ
トジーンズ、グリーンのカーディガンを
肩に掛けたボーイッシュなコーデ。三四
年前に俺が教えたのはもっとガーリーな
やつだった気もするが、この三年間で彼
女なりに勉強したということだろうから
かなりの成長だろう。デートの日に時間
に遅れた彼女が寝間着として着ていたで
あろうペラペラのキャミソールとショー
トパンツで堂々と歩いてきたのを思い出
す。あの時は本当に周囲の目線が痛かっ
た。出会って早々に服屋に駆け込んだの
を覚えている。
自然と手が伸び、天音の髪に触れてい
た。前より少し毛質が固くなった感じが
する。髪と服装だけ見たら本当に男みた
いだな。
指で髪を梳いているとスマホに着信が
入る音がした。慌てて腕を引っ込めると
一瞬髪が引っかかったみたいで天音が寝
ぼけた顔を上げた。幸い俺が彼女の髪を
触っていたことには気付いていないみた
いで「えっ、あたし寝てた?」という間
抜けな質問をしてきただけだった。
「ああ、爆睡してた。」
「あー、マジか。最悪や・・・」
「何が最悪なんや?」
「んー、まあ・・・それより電話出やん
の?」
そうだ、忘れてた。まさか天音から指
摘される日が来ようとは・・・
天音が何を躊躇ったのかも気にはなる
が今はコール音が消える前に出ないとい
けない。未だになってるってことは結構
緊急なのだろう。スマホを取り出すと赤
と緑の洗濯しが目に入ったのですかさず
緑を押した。
「もしもし日比谷です。」
スマホを耳に当てると何やら向こうでざ
わざわ声がしていた。
『この時間に来てないっておかしいよ
ね・・・そうだよ、あいついつも無駄に
早く来るから・・・まさか寝坊と
か・・・事故ったとか・・・ええ、そん
なこと・・・って、ああっ繋がってるじ
ゃない・・・ああ、ほんまや。』
気付くの遅えよ。
『もしもし賢一、今どこにおる?』
元軽音楽部で大学入学直後に髪の毛を
金色に染めただけある軽い口調の男だっ
た。そういえばもう十二時だ。
「今は喫茶店におる。今日も無駄に早く
着いたからな・・・いや、今日は無駄に
ならずに済んだわ。」
さり気なく天音を見る。彼女は飲みき
ったグラスに入った氷をなんとも言えな
い表情で睨みつけていた。なんか・・・
よう分からんわ。
『なんか分からんけどとりあえず喫茶店
におるんやな。・・・で、喫茶店ってど
こよ?』
「そこから一番近いとこ。」
「ああ~、あそこね、オッケーわかった
すぐ行くわ。」
ブツン・・・
もう少し間を置いて切れよ。
俺が二人のことを話し始めてからもう
二十分も経っていたみたいだ。大正ロマ
ン的な内装にサックスの音が鳴り響く、
ノスタルジックな気持ちになりながら俺
は眼の前にある黒い頭頂部をぼーっと眺
めていた。髪が短くなってもこういう姿
は変わらない。
光也と雛森のことを知りたいと言われ
こうして喫茶店に来て話をしていたのだ
が、当事者の彼女はいつの間にか眠って
しまったらしい。
まあ、朝俺より先に集合場所に到着して
いたのが彼女なりの背伸びだったんだと
わかってなんだかホッとした。昨日の夜
は何時に寝たんだろう、もしかすると一
晩中寝ずに朝が来るのを待っていたのか
もしれないとか想像してみると少し微笑
ましくもあった。
グレーのタンクトップに七分丈のタイ
トジーンズ、グリーンのカーディガンを
肩に掛けたボーイッシュなコーデ。三四
年前に俺が教えたのはもっとガーリーな
やつだった気もするが、この三年間で彼
女なりに勉強したということだろうから
かなりの成長だろう。デートの日に時間
に遅れた彼女が寝間着として着ていたで
あろうペラペラのキャミソールとショー
トパンツで堂々と歩いてきたのを思い出
す。あの時は本当に周囲の目線が痛かっ
た。出会って早々に服屋に駆け込んだの
を覚えている。
自然と手が伸び、天音の髪に触れてい
た。前より少し毛質が固くなった感じが
する。髪と服装だけ見たら本当に男みた
いだな。
指で髪を梳いているとスマホに着信が
入る音がした。慌てて腕を引っ込めると
一瞬髪が引っかかったみたいで天音が寝
ぼけた顔を上げた。幸い俺が彼女の髪を
触っていたことには気付いていないみた
いで「えっ、あたし寝てた?」という間
抜けな質問をしてきただけだった。
「ああ、爆睡してた。」
「あー、マジか。最悪や・・・」
「何が最悪なんや?」
「んー、まあ・・・それより電話出やん
の?」
そうだ、忘れてた。まさか天音から指
摘される日が来ようとは・・・
天音が何を躊躇ったのかも気にはなる
が今はコール音が消える前に出ないとい
けない。未だになってるってことは結構
緊急なのだろう。スマホを取り出すと赤
と緑の洗濯しが目に入ったのですかさず
緑を押した。
「もしもし日比谷です。」
スマホを耳に当てると何やら向こうでざ
わざわ声がしていた。
『この時間に来てないっておかしいよ
ね・・・そうだよ、あいついつも無駄に
早く来るから・・・まさか寝坊と
か・・・事故ったとか・・・ええ、そん
なこと・・・って、ああっ繋がってるじ
ゃない・・・ああ、ほんまや。』
気付くの遅えよ。
『もしもし賢一、今どこにおる?』
元軽音楽部で大学入学直後に髪の毛を
金色に染めただけある軽い口調の男だっ
た。そういえばもう十二時だ。
「今は喫茶店におる。今日も無駄に早く
着いたからな・・・いや、今日は無駄に
ならずに済んだわ。」
さり気なく天音を見る。彼女は飲みき
ったグラスに入った氷をなんとも言えな
い表情で睨みつけていた。なんか・・・
よう分からんわ。
『なんか分からんけどとりあえず喫茶店
におるんやな。・・・で、喫茶店ってど
こよ?』
「そこから一番近いとこ。」
「ああ~、あそこね、オッケーわかった
すぐ行くわ。」
ブツン・・・
もう少し間を置いて切れよ。
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