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1B-1(Amane)
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朝、目が覚めた俺はまずスマホの画面
を確認した。
『6月13(土)5:00』
休日なのに早起きをしてしまった。別
に悪いことでは無いのだが・・・それ
に、そういえば今日って土曜参観の日だ
ったな。そうだった、すっかり忘れてい
た。今日登校日やんか。
重い身体をぐっと一息に起こし、両腕
を思いっきり突き上げた。凝り固まった
筋がミチミチと音を鳴らす。日頃から早
寝早起きを心がけていたのが吉と出たみ
たいだ。アラームも設定していなかった
から下手すりゃ遅刻もあり得た。
だいたい土曜参観ってなんだよ。次の
月曜が代休になるとは言え、親たちに授
業風景を見せるためだけにわざわざイレ
ギュラーなことしないで欲しい。中学二
年になった今、親に来られたところで恥
ずかしいだけだ。
階段を降り、リビングに着くと、イヤ
ホンを付けながらテーブルでコーヒーを
飲むいつも通りの母親がいた。イヤホン
の先はスマホに繋がっており、画面には
今流行りの韓流アイドルのライブ映像と
思しきものが映っていた。
「おはよう、そういえば今日は保護者参
観日やったな。」
ふと、イヤホンを耳から離した母親が
こちらを見ていた。まさか見に行くとか
言うんじゃないだろうな・・・
「ごめんな、図案がまだ描けてないから
今日は行かれへんわ。」
「ええよ。お仕事優先してください。」
むしろその方が俺的には喜ばしい。母に
仕事を依頼してくるテキスタイルデザイ
ン会社に感謝しなければ。
「あっ、賢一。」
「なに?」
「今日も天音ちゃんと一緒に登校?」
「おん。」
「仲睦まじいね~、お母さん嫉妬しちゃ
いそう。」
「へいへい、で、なに?」
「冷たくなっちゃったなぁ、ほんのちょ
っと前までは何かあればすぐ母ちゃん母
ちゃん言ってきたのに・・・」
「わかったから、なに?」
「この前、田舎のお土産で果物いっぱい
もらったやろ。そのお返しでコレ渡しと
いて。」
そう言うと母はテーブルの隅に寄せて
あった紙袋を俺に突きつけた。中はっ
と・・・ああ、この前墓参りで高野山に
行った時のやつか。こんなの買ってたの
か。
「天音ちゃん、今日が授業ってことわか
ってるんかな?」
母がぼそっと呟いたものだから急にそ
の事が心配で仕方なくなってしまった。
先渡されたばかりの紙袋はいったんテー
ブルに戻し、俺は自分のスマホが充電さ
れている自室枕付近に早足で戻りチャッ
トアプリを起動させた。画面上端の時刻
表示は五時半、まあ授業の有無に関係な
く大抵の中学生は運動部の朝練でも無い
限り寝ているであろう時間帯だ。メッセ
ージを送信しても今すぐ天音が既読を付
けることはまず無いだろうが、とりあえ
ず送信して七時くらいまで反応を待って
みよう。
賢一:今日授業あるけどわかってるか?
さて、問題はこれでいつまで経っても
既読が付かなかった場合だ。とりあえず
家に電話してみようとは思うが多分誰も
出ない。天音の両親は近い内マラソン大
会に出場するとかで、休日の朝は夫婦揃
ってジョギングに繰り出していて家には
眠ったままの娘が一人ということが多い
らしい。天音、いっそのことお前も一緒
に走りにいけよ。対照的過ぎんだよ、ど
こからその遺伝子もらってきたんだ。
を確認した。
『6月13(土)5:00』
休日なのに早起きをしてしまった。別
に悪いことでは無いのだが・・・それ
に、そういえば今日って土曜参観の日だ
ったな。そうだった、すっかり忘れてい
た。今日登校日やんか。
重い身体をぐっと一息に起こし、両腕
を思いっきり突き上げた。凝り固まった
筋がミチミチと音を鳴らす。日頃から早
寝早起きを心がけていたのが吉と出たみ
たいだ。アラームも設定していなかった
から下手すりゃ遅刻もあり得た。
だいたい土曜参観ってなんだよ。次の
月曜が代休になるとは言え、親たちに授
業風景を見せるためだけにわざわざイレ
ギュラーなことしないで欲しい。中学二
年になった今、親に来られたところで恥
ずかしいだけだ。
階段を降り、リビングに着くと、イヤ
ホンを付けながらテーブルでコーヒーを
飲むいつも通りの母親がいた。イヤホン
の先はスマホに繋がっており、画面には
今流行りの韓流アイドルのライブ映像と
思しきものが映っていた。
「おはよう、そういえば今日は保護者参
観日やったな。」
ふと、イヤホンを耳から離した母親が
こちらを見ていた。まさか見に行くとか
言うんじゃないだろうな・・・
「ごめんな、図案がまだ描けてないから
今日は行かれへんわ。」
「ええよ。お仕事優先してください。」
むしろその方が俺的には喜ばしい。母に
仕事を依頼してくるテキスタイルデザイ
ン会社に感謝しなければ。
「あっ、賢一。」
「なに?」
「今日も天音ちゃんと一緒に登校?」
「おん。」
「仲睦まじいね~、お母さん嫉妬しちゃ
いそう。」
「へいへい、で、なに?」
「冷たくなっちゃったなぁ、ほんのちょ
っと前までは何かあればすぐ母ちゃん母
ちゃん言ってきたのに・・・」
「わかったから、なに?」
「この前、田舎のお土産で果物いっぱい
もらったやろ。そのお返しでコレ渡しと
いて。」
そう言うと母はテーブルの隅に寄せて
あった紙袋を俺に突きつけた。中はっ
と・・・ああ、この前墓参りで高野山に
行った時のやつか。こんなの買ってたの
か。
「天音ちゃん、今日が授業ってことわか
ってるんかな?」
母がぼそっと呟いたものだから急にそ
の事が心配で仕方なくなってしまった。
先渡されたばかりの紙袋はいったんテー
ブルに戻し、俺は自分のスマホが充電さ
れている自室枕付近に早足で戻りチャッ
トアプリを起動させた。画面上端の時刻
表示は五時半、まあ授業の有無に関係な
く大抵の中学生は運動部の朝練でも無い
限り寝ているであろう時間帯だ。メッセ
ージを送信しても今すぐ天音が既読を付
けることはまず無いだろうが、とりあえ
ず送信して七時くらいまで反応を待って
みよう。
賢一:今日授業あるけどわかってるか?
さて、問題はこれでいつまで経っても
既読が付かなかった場合だ。とりあえず
家に電話してみようとは思うが多分誰も
出ない。天音の両親は近い内マラソン大
会に出場するとかで、休日の朝は夫婦揃
ってジョギングに繰り出していて家には
眠ったままの娘が一人ということが多い
らしい。天音、いっそのことお前も一緒
に走りにいけよ。対照的過ぎんだよ、ど
こからその遺伝子もらってきたんだ。
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