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Introduction-1(Amane)

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 心変わり。

    口ではそう言ってきたが、実際のとこ

ろ、俺はただただ挫折を繰り返してきた

だけなのだろう。もともと自分には合っ

てなかったんだと言い訳し、本当に自分

がやりたかったことをやろうとまた生半

可な覚悟で目標を変える。それは一種の

逃げだ。

    周りが結果を残していく中、結局俺は

何一つ十分にできないまま辞めては始め

てを繰り返し続けていた。

    やりたいことが多いのにも困ったもの

だ。周りからはこう言われる、君はやり

たいことが、目指すものがいっぱいあっ

て良いね、と。でも実際やりたいことが

多いということはそれだけ逃げ道がある

と同時に気も散漫するわけだから一つの

ことを一生懸命やってる人にはもちろん

敵うはずもなく、なんならやりたいこと

が無いからとりあえず一般企業に努めて

休日を遊んで過ごすために働いている人

のほうがまだ質の良い人生を送っている

と俺は思う。

    要するに、今までの俺は何もかもが中

途半端だった。

    小学生の時、発明家になってノーベル

化学賞を手にするのが夢だった俺は中学

でなんとなく入った美術部で絵を描くこ

とにハマり、いつしかプロの漫画家を目

指してその三年後には美術系の高校に通

っていた。確かに思春期というのは変化

の激しい時期だが、それにしたって著し

かった。その後の三年も、俺はふいにラ

イトノベル作家を目指したり、高校二年

の後半からは安定した職を求めてデザイ

ンの勉強を始め、デザイン科のある国公

立大学を目指して受験勉強に勤しんだ。

いや、本当のところ『勤しむ』なんて言

葉を使う資格は俺にはなかった。有ろう

事か俺は受験生でありながら小説の執筆

をダラダラと続け、更に外部でバンドを

組んだりしていた。

    もちろん、そんな中途半端な人間が国

公立大学に合格できるほど人生は簡単に

できておらず、大学に足を運ぶことすら

しなかった生半可な俺は、スマホに映さ

れた自分の番号がない合格者発表をベッ

ドの上で眺め、そのまま二度寝した。



 
 さて、次は何をしよう・・・
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